Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Randy Palmer

2009-01-02 | SSW
■Randy Palmer / Calling Me Home■
 
  2009 年最初に取り上げるレコードは、Randy Palmer が 1979 年にリリースした名盤「Calling Me Home」です。 青くコーディングされた雪景色のジャケットだけを頼りに買ってしまったアルバムですが、その淡い期待を上回る内容だったので、そっと大切にしている作品です。 新年の「ブログ初め」としては、もってこいのアルバムでしょう。

  雪景色から反射的にコロラドやオレゴンあたりの産物かと思いがちですが、意外にもテキサスのマイナーレーベルからのリリースで、レコーディングは音楽の都ナッシュビルです。 Randy Palmer の魅力は、優れたソングライティングと温もりのある声質が、まろやかに溶け合って、いつ聴いても懐かしい気持ちにさせられるところにあります。 どこかで聴いたことがありそうなメロディーであったり声であったりするのですが、うまく思い出せない… そんな気分を毎回味わうことになるのです。 しかし、それがストレスになるのではなく、リラックスにつながっていくから不思議です。

  その和みの極みは A 面 1 曲目の「Calling Me Home」に尽きます。 Charles McCoy の咽ぶようなハーモニカに導かれて始まるスロウなワルツなのですが、円熟した演奏をバックに、故郷であるニューメキシコに帰りたいという想いが、しみじみと歌われる様は何度聴いても感動的。 この曲だけで、疲れた体が芯からほぐれてしまうようです。 つづく「My Own Man」と「Roam The Hills」は、ともにミディアムな楽曲ですが、Randy Palmer の声が James Taylor に酷似していて驚きます。 特に「My Own Man」の歌い出しは、別人と知っているのに毎回騙されそうになります。 「Like A Fire」は、もっとも地味な部類に入る楽曲ですが、Beegie Adair による端麗なピアノの音色が聴きどころになっています。 A 面ラストの「Fire On The Mountain Tonight」はアップテンポのカントリー・ナンバー。 ちょっと元気が良すぎて、A-1 から A-4 までのしっとりした流れが損なわれるところは勿体ない気がします。

  B 面は快活な楽曲が多く、A 面に比べて劣勢です。 「I’m So Blind」や「Wax Banana」は、カントリー色が濃く現れすぎで個性が乏しい感は否めません。 Randy Palmer の持ち味はメロウなスロウバラードにあるので、アクセントとしてこうしたアップな楽曲も必要だったのでしょう。 いっぽう、「Wasted Time And Wasted Points Of View」と「Eye Of The Storm」は Randy Palmer の得意とするミディアムな楽曲です。 特に後者は素朴な味わいがにじみ出たワルツで、透明感あふれる Beegie Adair のピアノと泣いているかのような Charles McCoy のハーモニカが印象的です。 アルバムのラスト「Family Gathering」は、のどかでオールドタイミーなフォーク・ソング。 何気ない毎日の暮らしの愛おしさに気づかせてくれるようなメロディーです。

  こうして一つひとつの曲をじっくり聴きなおすと、ナッシュビルのセッション・ミュージシャンの腕に支えられた部分が意外と多いことを発見しました。 とくに Charles McCoy のハーモニカは、その音色が入ってくるだけで、心が惹かれていくのです。 しかし、彼らの貢献は作品の完成度を高める要素として欠かせないものの、作品の魅力を貫く本質ではありません。  冒頭にも書きましたが、このアルバムの魅力は、Randy Palmer 自身の才能と人間性に拠るところが大きいと思うのです。 
  Randy Palmer のプロフィールや作品については、ネットで検索してみましたが、まったく判りませんでした。  おそらくはこのレコードが彼の唯一の作品なのでしょう。  こうした消息不明のミュージシャンと出会うたびに思うことは、そのレコードの制作に関わった人々のことです。  広大なアメリカの、どこかで誰かが、このレコードの思い出をそっと胸にしまっているはず…  そんなことを考えながら、もう一度「Calling Me Home」を聴くことにしましょう。



■Randy Palmer / Calling Me Home■

Side-1
Calling Me Home
My Own Man
Roam The Hills
Like A Fire
Fire On The Mountain Tonight

Side-2
I’m So Blind
Wasted Time And Wasted Points Of View
Wax Banana
Eye Of The Storm
Family Gathering

Produced by Charles F. Brown
All words and music by Randy Palmer except ‘Roam The Hills’ by Ginger Brown

Acoustic guitars : Dave Kirby, Charlie McCoy, Randy Palmer, Billy Sanford
Electric guitar : Billy Sanford
Keyboards : Beegie Adair, Tony Migliori
Bass : Ernie Chapman
Drums-percusson : Larrie Londin
Harmonica : Charlie McCoy
Banjo : Bobbt Thompson
Fiddle : Carroll Hubbard
Background vocals : Ginger Brown

Strings Arranged by Charles F. Brown

Strings : Eliot Chapo, William Hybel, Norma Davidson, Gloria Stroud, Peggy Zimmers, Lois Vornholt, George Papich, Mitta Angell, Monte Lnutson, Pam Washburn

Heartland Productions HRLP-100