Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Debbie Friedman

2009-01-18 | SSW
■Debbie Friedman / Not By Might Not By Power■
 
  このブログでは、Christian Music のアルバムを何枚か取り上げていますが、今日取り上げる Debbie Friedman は Jewish Music です。 すなわちユダヤ教の影響下にある音楽ですが、このジャンルにあるミュージシャンは、Debbie Friedman しか知りません。Contemporary Christian Music を略して CCM という呼び名は一般化していますが、CJM というのは聞いたことがありません。 
 
  Debbie Friedman は Wikipedia によると 1971 年のデビュー以来 19 枚ものアルバムを発表している女性 SSW です。 公式サイトも充実しており、すべてのアルバムが CD でネット販売されていました。 このアルバムは 1974 年に発表されたセカンドですが、このアルバムも CD で買うことができるのです。

  このアルバムは時代や宗教色もあり、厳かでスピリチャルなサウンドを想像しがちですが、パーカッシブなアレンジに加えアップテンポな曲調が多く、事前の予想はあっさりと裏切られます。 とくにパタパタしたドラムスは、Hal Braine の影響なのでしょう。 特にオープニングを飾るタイトル曲「Not By Mighty Not By Power」のパワフルな仕上がりには驚きました。 この強力なリズムセクションは、デビッド・テラオとケニー・タカオカという日系人によって支えられています。 彼らのクレジットを他のアルバムで見た覚えはありませんが、ミネアポリス周辺のセッションマンなのでしょうか。 

  もうひとつ特徴的なのは、Debbie Friedman のボーカルの多重録音です。 この時代に複雑なコーラスをオーバーダビングしながらも、不整合な感じがしないのはレコーディングの技量もあるとは思いますが、Debbie Friedman のリズム感の賜物でしょう。 A 面で唯一のバラード「L’Dor Va Dor」は American Springの「Thinking About You Baby」を思わせるようなメロディーとアレンジで、アルバムの代表する曲です。 つづく「Seu Shearim」と「L’cha Adonai」は、ソフトロック風な仕上がりです。

  B 面はソフトロック傾向がさらに強まります。 とくに「Maoz Tzur」や「Mi Y’maleyl」のフォーク調のメロディーは爽やかで清々しく、70 年代の女性 SSW らしさが最も強く表れています。 また、ラララだけで歌われる「Joy Cometh In The Morining」は透明感と温もりが共存した独特のたたずまいを見せています。 この雰囲気は、このブログで取り上げたことのある Anne Mortifee の世界の響きに共通するものです。 しっとりとした曲が続いた B 面ですが、最後は「Not By Mighty Not By Power」のリプライズで締めくくられ、あわただしく幕を閉じたような後味を残します。

  いい忘れていましたが、このアルバムは曲名からもわかるように「Not By Might Not By Power」以外はユダヤ語で歌われています。 どれだけの人が歌詞の意味を理解して、レコードを聴いたのかは謎ですが、おそらく北米の各地にユダヤ教の共同体が存在し、そこでの活動を通じて、Debbie Friedman の音楽が伝わっていったのでしょう。
  ユダヤに関してはほとんど知識がないないのですが、一昨年に衝動買いした「私家版・ユダヤ文化論」(内田樹:著)は、内容も初心者向けであっという間に読んでしまいました。 新書ですので安く買えますし、お勧めの一冊です。



■Debbie Friedman / Not By Might Not By Power■

Side-1
Not By Might Not By Power
Al Ha-Nissim
Nes Gadol
L’Dor Va Dor
Seu Shearim
L’cha Adonai

Side-2
Hodo Al Eretz
Eytz Chayim
Maoz Tzur
Mi Y’maleyl
Joy Cometh In The Morining
Not By Might Not By Power

Composed and sung by Debbie Friedman

Soloist Y lead guitar : Debbie Friedman
Bass guitar : David Terao
Piano : Judy Director
Drums : Kenny Takaoka
Sound Engineer : Dean Klinefelter
Recorded and Mastered by Sound 80

S80-741


最新の画像もっと見る

コメントを投稿