Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Sleepy Hollow

2006-12-10 | US Rock
■Sleepy Hollow / Sleepy Hollow■

 今年も John Lennon の命日がやってきました。 といっても 2日ほど過ぎてしまいましたが。 そして、The Beatles の新作(なのかなあ?)「LOVE」も発売され、世の中は少しビートルズ色になっているのでしょうか? 僕は年末ということもありけっこう忙しく、すっかりレコードショップに足を運ぶ機会がないのでそのあたりよく分りませんが。

 さて、今日ご紹介するアルバムは、1972 年に Family Productions から発売された Sleepy Hollow の唯一のアルバムです。 このアルバムはコアな音楽話のネタ的に使われることが多いのですが、そのネタはアルバムの 1曲目にあります。 その曲「Sincerely Yours」を初めて聴いた人は、おそらくほとんどの人が、「これ、ジョン・レノン?」と思い込んでしまうほど、声や歌い方がそっくりなのです。 僕も友人に聴かせたら、絶句していました。 ちょっと大げさかな。 とはいえ、「ジョン・レノンそっくり大賞」の歌唱部門があったら、間違いなく優勝すると思われるその人物は Richard Billay によるもの。 そう、Sleepy Hollow は、すべての作曲も手がけている彼の実質的なソロ・プロジェクトなのです。

 アルバムはシングルカットもされた「Sincerely Yours」でスタート。 この曲は前述のとおりですが、続く曲にも 後期の The Beatles のテイストが感じられるものがあります。 王道のポップな「One Time」や泣かせるバラードの「Take Me Back」などはまさに The Beatles の影響をモロに受けています。 時代から言っても不思議ではないのですが、このようなサウンドがイギリスではなくアメリカのフィラデルフィアから産みだされたのは、意外な感じがします。
 B面では、ストリングスとメロディーがまろやかな「Lady」、アルバム中最もロックンロールしている「Roller Coaster Man」といった起伏のあとに、唯一の大作とも言える「Hades」で幕を閉じます。 この曲はゆったりしたバラードですが、歌詞にクリスマスが出てきたり、その背景でベルがなったりと、今の季節感にぴったりな曲です。 やや大げさなアレンジも AB 面合わせて 30 分に満たないアルバムのラストなので、違和感がありません。 
アルバムを久しぶりに聴きましたが、やはり主人公の Richard Billay の才能ばかりが目立ち、他のメンバーの存在感はまったくありません。 特に Joe Zucca のドラムスは、パタパタしていて耳障りにさえ感じてしまいます。 Richard Billay はその後どのような活動をしたのか、ネットで検索してみましたが、1973 年に映画音楽を手がけている記録があった以外、誰かのアルバムに参加したとか、自らソロを出したというような記録は残っていませんでした。 彼のソングライティングの資質はかなり優れたものだっただけに、このアルバムしか残さなかったとは残念なことです。

 その理由はアルバムが売れなかったこと、Family Productions が後に閉鎖(倒産)してしまったことなどもあるでしょう。 しかし、個人的にひっかかるのが、プロデューサーとしてクレジットされている John Madara の存在です。 初期の Hall & Oates を手かげていたプロデューサーとして有名な人物ですが、その有名な理由が敏腕とかセンスとかによるものではなく、ダーティーな話が多いからなのですね。 特に有名なのは、マスターテープを自分のものにして、Hall & Oates がブレイクし始めのころに、Daryl Hall がかつて在籍していたグループ「Gulliver」のアルバム(これは当時、お蔵入りで未発売でした)を勝手に発売して、Hall & Oates の活動を妨害したというエピソードです。 ちなみに Gulliver には Daryl Hall のほかに、名曲「Rock’n Roll Love Letter」の作者として有名な Tim Moore やこのアルバムにストリングスなどで参加している Tom Sellers が在籍しています。  Sleepy Hollow としては、アルバムが売れたり後にブレイクしたりしていないので、Hall& Oates のような問題はなかったのでしょうね。 むしろ、このアルバムが録音されたシグマ・サウンドは、フィラデルフィア・ソウルのメッカで、こういったポップ作品のレコーディングに使用されたのは、珍しいことだと思います。 そのあたりは、 John Madara のホームグラウンドという理由だとは思いますが。

 さて、Sleepy Hollow といえば、Johnny Depp 主演の映画で同名の作品がありました。 僕はこのアルバムと同名だということで、劇場公開してすぐにその映画を見たのですが、ちょっと怖かったですね。 「あの程度で!」と言われてしまうかもしれないのですが、ホラーやスリラーはまったく駄目なのです。 映画はダーク・グレイの色彩的印象ですが、このアルバムは映画とは異なったポップな作品となっています。 いまだに CD になっていないようですが、若き日の Richard Billay の才能が封印された作品として、高い評価と認知を得るべきアルバムだと思います。

 

■Sleepy Hollow / Sleepy Hollow■

Side-1
Sincerely Yours
One Time
Take Me Back
Talking Out Of Turn
Lay It On The Line

Side-2
Love Minus Zero
Lady
Roller Coaster Man
Hades

Produced by John Madara and Tom Sellers
Directed by Richard Billay
Recorded at Sigma Sound Studios , Philadelphia , Pennsylvania
Strings and Horn Arrangements by Tom Sellers
All Songs composed by Richard Billay

Richard Billay : lead vocals , guitar , piano
Joe Zucca : drums
Richie Bremen : bass

Family Productions
FPS 2708


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