Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Prairie Madness

2006-05-02 | SSW
■Prairie Madness / Prairie Madness■

 今日、ご紹介するのは 1972 年に発表された Prairie Madness の唯一のアルバムです。Prairie Madness は、ジャケットで並んでいるむさ苦しい無精ヒゲ面の男ふたり Chris Ducey と Edward Millis によるユニットです。 
このアルバム、まずプロデューサーが、元 Procol Harum の Matthew Fisher というところが注目されます。 Procol Harum の 3 枚目「Salty Dog」の後に脱退した Matthew Fisher がどのような経緯で彼らをプロデュースすることになったのかは不明ですが、彼の最初のプロデュースワークとなったようで、ジャケットの裏面にもそのことがわざわざ記載されています。 無名の二人組みを売り出す際の、プロモーション・トークにしようとしたのでしょうか。

 さっそく内容をご紹介しましょう。 「Nothing For Sophia 」は、オーソドックスなバラードでスケール感じのある Chris のボーカルが光ります。 ストリングスアレンジが冴えていると思ったらと、クレジットには大御所 Sid Sharp の名前が。 指揮は Edward が務めています。 続いて、Matthew Fisher も参加している「Up You Go」です。 かなりしっとりしとした曲調ですが、ふたりのコーラスが見事です。 「Girl From Cincinnati」に続く、「Choo Choo Nairobi 」は、アルバム全体のアクセントとして配置された風変わりな曲。 アフリカやブラジルのパーカッションや Edward の弾く Tack Piano がスティールドラムの音のように聴こえます。 この Tack Piano というのはプリペアド・ピアノの一種のようですが、あまりお目にかかったことのないクレジットです。
 A 面ラストの「Moondust」は、ふたりのハーモニーが美しいバラードですが、名曲というにはもう一歩という感じです。 ここまで聴いてきての感想は、カントリーテイストがまったく無いということです。 ジャケットのイメージやプレイリーという言葉から、少なからずカントリー色はあるだろうと思ってしまいますが、このアルバムは B 面も含めて、バンジョー・フィドル・マンドリンといった楽器は一切登場しません。
 B 面に移ると、「Shame The Children」、「Sunbeam To His Heart」と完成度の高い曲が並びます。 とくに後者は Patti Austin も名を連ねる女性バックコーラスや Edward のピアノがいい感じです。 ややブルース色の強い「Broke Down」、やや翳りのある「I’m Ready」と続いてアルバムは終わります。 

 アルバムを通じて何かしっくり来ないのは、サウンドとふたりの声質の微妙なアンマッチなのではないかと考えます。 サウンド面を活かすのであれば、もっと優しい James Taylor や Jackson Browne のようなボーカルのほうがしっくりしたでしょうし、声質を活かすのであれば、もっとスワンピーな音作りを目指すべきだったでしょう。 そうした中途半端さが、時代に受け入れられず、Prairie Madness はこのアルバムのみを残して解散。 Chris Ducey は、前回紹介したソロアルバムを残しましたが、Edward Millis のその後はまったくわかりません。 プロデューサーの Matthew Fisher は、イギリスに戻ってソロアルバムを数枚リリースしています。

■Prairie Madness / Prairie Madness■

Side-1
Nothing For Sophia *
Up You Go *
Girl From Cincinnati *
Choo Choo Nairobi *
Moondust

Side-2
Shame The Children *
Sunbeam To His Heart
Broke Down *
I’m Ready

* Produced by Matthew Fisher and Joel Sill
All Other Songs Produced by Matthew Fisher
.
The selections were written by Chris Ducey and Edward Millis
Except lyrics for ‘Girl From Cincinnati’ were written by Kendrew Lascelles

Chris Ducey : acoustic guitar , electric guitar
Edward Millis : piano , celeste , organ , accordion , tack piano

Jack Conrad : bass guitar on ①③④⑤⑥⑦⑧
Richard Hayward : drums on ①③⑥
Matthew Fisher : organ and harpsichord on ②⑤⑦
Ralph Bryan : electric guitar on ③
Emil Richards : assorted african percussion and steel drum on ④
Airto Moreira : assorted brazilian percussion ④
Jim Young : percussion and drums on ⑤⑦
Patti Austin , Joyce Vincent , Telma Hopkins : background chorus on ⑦
Michael Brecker , Randy Brecker , Barry Rogers , Lewis Delgatto : horns on ⑧
Richard Davis : upright bass on ⑨

Edward Millis : conductor on ①③⑥
Sid Sharp : concert master on ①③⑥

Columbia Records KC 31003


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