Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Dan Williams

2007-12-26 | AOR
■Dan Williams / Midnight Symphony■

 このアルバムを AOR とするのは異論もありそうですが、そもそもネットで全く論じられていないことから、勝手に決めてしまいました。 ジャケットから来るイメージが、B 級の AOR の匂いですよね。 
 このアルバムは、Dan Williams が 1976 年に発表したソロアルバム。 Dan Williams に関しては詳しい経歴がわからないのですが、おそらく彼のファースト・アルバムではないかと想像しています。 レコーディングは音楽の都 Nashville ということもあって、多くのミュージシャンが参加していますが、気になっていたカントリー色は全くありません。むしろ、メロウでマイルドな SSW 指向の AOR としては完成度の高いアルバムなのです。 クリスマスは終わってしまいましたが、聴いているだけで誰もが心優しくなれるような気分にさせてくれる魔法のような音楽とも言えます。 

 アルバムは A 面に名曲が並んでおり、ついつい片面を繰り返して聴きたくなるほどです。 オープニングの「I’ll Get To You」は、Dan Williams の良い面がすべて出た楽曲。 やや線が細い Dan のボーカルに、メリハリのあるメロディーが交錯し、軽快なアレンジがシロップのような甘さを引き立てるといった感じです。 「Good Ole Rock And Roll」は、ポップさではアルバム随一の楽曲。 スタンダードになってもおかしくない名曲中の名曲。 これに似たテイストの楽曲があったと思うのですが、すぐに思いつかずに無念です。 つづく「Are You Afraid Of Loving Me」は、一転してアコギをバックにした落ち着いたバラード。 ここまでの3曲の流れは完璧です。 「I’d Rather Be」も流れを踏襲したバラード。 エンディングなどで聴けるアコギの流麗なソロが最高です。 ピアノのイントロで始まる「Kneel Down」は、ややソウルフルなミディアム・ナンバー。  Dan Williams の裏声、表現豊なピアノ、ゴスペル的なコーラス、ホーンセクションが織り成す贅沢な楽曲に仕上がっています。 こうして書いてみると、ハズレ曲の一切ない完璧な A 面ですね。 こうしたソフト&メロウな音楽はまさに 1970 年代ならでは、です。

 B 面に入ると言葉が少なくなってしまいそうな予感です。 冒頭の「It Ain’t the Time」は、最もファンキーなナンバー。 正直言って、かなり残念です。 アルバムの減点ポイントになってしまいますが、1976 年という時代背景を考えると仕方ないとも思います。 アコースティックなミディアム「Midnight」、親しみやすいメロディーが光る「Memories To Lean On」、サビが明確で盛り上がりを見せるバラード「Don’t Want To Dream Alone」など、楽曲の出来はさほど悪くないのですが、黄金のA面に比べると小粒な印象は拭えません。 ラストの「Midnight Symphony」は期待通り繊細でロマンティックなバラード。 彼女と過ごしたある年の夏のことを歌った曲のようで、歌詞の一部が裏ジャケットに刻まれています。 アルバムは夏をイメージしたものと思いますが、僕はこのアルバムは夏よりも冬の方が断然似合うと思います。 それは、各々の楽曲が持っている温かみや親しみは、手編みのセーターのような温もりに似ているからです。

  無名の Dan Williams ですが、同名のミュージシャンが 2003 年に「Dan Williams」というタイトルのアルバムを出していることが判明しましたが、試聴サイトで音を聴いたところ、ボーカルが全く違いました。 残念ながら別人ですね。

 今日の主役である Dan Williams はこんなに素敵なアルバムを残してどこに消えていったのでしょうか。  ジャケットに描かれた浜辺のシェビーバンの後姿を見つめると、センチメンタルな気分が増すばかりです。



■Dan Williams / Midnight Symphony■

Side-1
I’ll Get To You
Good Ole Rock And Roll
Are You Afraid Of Loving Me
I’d Rather Be
Kneel Down

Side-2
It Ain’t the Time
Midnight
Memories To Lean On
Don’t Want To Dream Alone
Midnight Symphony

Producer : Ronnie Reynolds
Co-producer : Peggy Beard

Guitar : Steve Gibson , Michael Spriggs
Bass : Mike Leach , Jack Williams
Piano : Tony Migliore , Jerry Whitehurst , Shane Keister
Percussion : Farrel Morris , Kenny Malone
Drums : Larrie London
Violin : Carl Gorodetxky , Lennie Haight , Sheldon Kurland , Steve Smith , Sthephen Woolf
Viola : Marvin Chantry , Gary Vanosdale
Cello : Byron T. Bach , Roy Christensen
Trumpet : David Converse , George Cunningham
Tenor Saxophone : Billy Puett
Baritone Saxophone : Denis Solee
Trombone : Dennis Good
Voices : 21st Century Singers , Nashville Sounds , diane Tidwell , Polly Cutter , Julia Tillman , Maxine Willard Waters
Strings Arrangements : Bill Walker , Jack Williams
Horn Arrangements : George Cunningham
Vocal Arrangements : Janie Brannon

Zodiac Records ZLP-5008



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