
■John Corbin / Fragments■
ジャケットから中身を想像するのはレコード収集の楽しみの重要な要素だと思いますが、このジャケットには何の魅力も感じませんでした。 ヘタすると、B 級以下のロックンロールが飛び出してもおかしくありません。 今日、あらためてレコードを聴いていますが、John Corbin が持たなくてもいいエレキギターを抱えている意味がさっぱりわかりません。 というのも、John Corbin はボーカルとピアノをメインとするミュージシャンだからです。 アルバムを通じてエレキギターのカッティングやソロはいっさい聴こえてこないのです。
では、どんな内容なのかというとこれがひと言で表現できないサウンドです。 ダルシマーが響いたり、ARP シンセの音がしたり、一気にフォーキーになったり、陽気なカントリーになったりと支離滅裂とも言える編成なのです。 John Corbin がこのアルバムで何を表現したかったのかは、リスナーには理解不能なのです。 タイトルどおり「破片」の集まりといってはそれまでなのですが。
アルバムは 1981 年にミズーリ州の Mack’s Creek という片田舎でレコーディングされました。 ローカルなレーベルのリリースなので、ニューヨークやロスでこのレコードを手にした人はいなかったのと思われます。 音楽業界はすでにメガヒットの時代に突入し、AOR だ DISCO だという流れだったからです。
アルバムは一種のコンセプト・アルバムのように目まぐるしく変化します。 アルバムは冒頭の「Fragments (part one)」は、シンセによる SE やピアノ、ボーカルパートへと変容する序曲のような存在。 風のエフェクトから始まる「Cold Frosty Morning」は、ダルシマーとフィドルを主体としたインストです。 こんな展開はふつう予想できません。 再度、荒涼とした風が吹くと、アイリッシュ・トラッドのような「Sea Dawn Maiden」へ。 Judy Dockery のリコーダーの余韻が耳に残っているうちに始まる「Sourwood Mountain」は、またダルシマーといった具合にアルバムは展開していきます。 A 面ラストの「The Refugee」は、John Corbin の弾き語りによる「聴かせる」楽曲。 アルバムのなかでは最も SSW 的な楽曲なのですが、常に小鳥や虫の声の SE を入れているところが変わっています。
B 面に入るとしっかりと歌を聴かせる楽曲が並びます。 「German Band Waltz」は弾き語りのワルツから徐々にコーラスや管楽器が増えてくるアレンジ。 Tom Waits の名曲「In The Neighborhood」に近いセンスです。 つづく「The Ash Grove」は英国的な匂いがするトラッドですが名曲です。 「I Couldn’t Be Happy」は、John Corbin が仰々しく歌いあげ、コーラスも厚みを増してくるのですが、ドラで終わるのがいまひとつ。 ポエトリー・リーディングのような小曲「Interiors」は後半部分で叙情的なピアノ・ソロがつづきアルバムのハイライトへと向かう予感を感じさせます。 が、「The Fiddler」は電話の SE から始まる凡庸なカントリー。 一気にここで興醒めするのですが、ここの流れをどのように解釈すればいいのか、僕はいまだに答えが見つかりません。 フィドルやコーラスによる陽気で愉快な楽曲なのですが、だとすればその前の 4 曲の重々しさは何だったのでしょうか。 頭が混乱しているうちにラストの「Fragments (part two)」なのですが、1970 年代にありがちなラジオのチューニングをしているエフェクトからようやく選曲され始まります。 しかし、トロンボーンのソロとともにあっけなくフェードアウトしてしまい、リスナーをさらに困惑させたまま、アルバムは幕を閉じます。
このアルバムを聴いて思い出すアーティストが二組います。 ひとつは、このブログでも取り上げた Jeff Eubank です。 彼とは同じミズーリ州のミュージシャンということもあるのかもしれませんが、ARP シンセサイザーの入れ方や、アルバム全体の不安定さが良く似ていると感じます。 制作も 2 年しか違わないので、この頃のミズーリ州特有の何かがあるのでしょうか。 もうひとつは、1980 年代後半に活動した Camper Van Beethoven というバンドです。 彼らは解散したものの再結成しているらしいのですが、サウンドコラージュやあらゆるジャンルを飲み込んでしまう消化力に通じるものがあります。 しかし、この John Corbin は何を企んでいたのでしょうか。 あとアルバムが1枚あれば彼の本性が見えてくるはずなのですが…

■John Corbin / Fragments■
Side-1
Fragments (part one)
Cold Frosty Morning
Sea Dawn Maiden
Sourwood Mountain
The Refugee
Side-2
German Band Waltz
The Ash Grove
I Couldn’t Be Happy
Interiors
The Fiddler
Fragments (part two)
Produced by John Corbin
Production cordinator : Judy Dockrey
Executive Producer : B.J. Camahan
Recorded at Audio Loft Studios , Mack’s Creek, MO
John Corbin : vocals , kawai grand piano , Prinz hammer dulcimer , pianolin , tamborine , 6-strings golden era , tympani , ARP omni synthesizer
David Milligan : piano , electric bass
Brad Edwards : percussion
Tammy Kittrell : vocals, mandolin , mountain dulcimer
Judy Dockery : vocals , ARP omni synthesizer , alto recorder , soprano recorder , cymbal
Steve Carter : 6-strings golden era , triangle , manolin
David Wayne : T-40 bass , pedal , gyro , multi-effects , vocals
Kelly R.Jones : violin
Dan Crockett : trombones
Dwight Swadley : trumpet
April Armstrong : vocals
Susie Nicholas : vocals
Richard McDole : vocals
Alan Freeman : vocals
BOC-LPS-2016
ジャケットから中身を想像するのはレコード収集の楽しみの重要な要素だと思いますが、このジャケットには何の魅力も感じませんでした。 ヘタすると、B 級以下のロックンロールが飛び出してもおかしくありません。 今日、あらためてレコードを聴いていますが、John Corbin が持たなくてもいいエレキギターを抱えている意味がさっぱりわかりません。 というのも、John Corbin はボーカルとピアノをメインとするミュージシャンだからです。 アルバムを通じてエレキギターのカッティングやソロはいっさい聴こえてこないのです。
では、どんな内容なのかというとこれがひと言で表現できないサウンドです。 ダルシマーが響いたり、ARP シンセの音がしたり、一気にフォーキーになったり、陽気なカントリーになったりと支離滅裂とも言える編成なのです。 John Corbin がこのアルバムで何を表現したかったのかは、リスナーには理解不能なのです。 タイトルどおり「破片」の集まりといってはそれまでなのですが。
アルバムは 1981 年にミズーリ州の Mack’s Creek という片田舎でレコーディングされました。 ローカルなレーベルのリリースなので、ニューヨークやロスでこのレコードを手にした人はいなかったのと思われます。 音楽業界はすでにメガヒットの時代に突入し、AOR だ DISCO だという流れだったからです。
アルバムは一種のコンセプト・アルバムのように目まぐるしく変化します。 アルバムは冒頭の「Fragments (part one)」は、シンセによる SE やピアノ、ボーカルパートへと変容する序曲のような存在。 風のエフェクトから始まる「Cold Frosty Morning」は、ダルシマーとフィドルを主体としたインストです。 こんな展開はふつう予想できません。 再度、荒涼とした風が吹くと、アイリッシュ・トラッドのような「Sea Dawn Maiden」へ。 Judy Dockery のリコーダーの余韻が耳に残っているうちに始まる「Sourwood Mountain」は、またダルシマーといった具合にアルバムは展開していきます。 A 面ラストの「The Refugee」は、John Corbin の弾き語りによる「聴かせる」楽曲。 アルバムのなかでは最も SSW 的な楽曲なのですが、常に小鳥や虫の声の SE を入れているところが変わっています。
B 面に入るとしっかりと歌を聴かせる楽曲が並びます。 「German Band Waltz」は弾き語りのワルツから徐々にコーラスや管楽器が増えてくるアレンジ。 Tom Waits の名曲「In The Neighborhood」に近いセンスです。 つづく「The Ash Grove」は英国的な匂いがするトラッドですが名曲です。 「I Couldn’t Be Happy」は、John Corbin が仰々しく歌いあげ、コーラスも厚みを増してくるのですが、ドラで終わるのがいまひとつ。 ポエトリー・リーディングのような小曲「Interiors」は後半部分で叙情的なピアノ・ソロがつづきアルバムのハイライトへと向かう予感を感じさせます。 が、「The Fiddler」は電話の SE から始まる凡庸なカントリー。 一気にここで興醒めするのですが、ここの流れをどのように解釈すればいいのか、僕はいまだに答えが見つかりません。 フィドルやコーラスによる陽気で愉快な楽曲なのですが、だとすればその前の 4 曲の重々しさは何だったのでしょうか。 頭が混乱しているうちにラストの「Fragments (part two)」なのですが、1970 年代にありがちなラジオのチューニングをしているエフェクトからようやく選曲され始まります。 しかし、トロンボーンのソロとともにあっけなくフェードアウトしてしまい、リスナーをさらに困惑させたまま、アルバムは幕を閉じます。
このアルバムを聴いて思い出すアーティストが二組います。 ひとつは、このブログでも取り上げた Jeff Eubank です。 彼とは同じミズーリ州のミュージシャンということもあるのかもしれませんが、ARP シンセサイザーの入れ方や、アルバム全体の不安定さが良く似ていると感じます。 制作も 2 年しか違わないので、この頃のミズーリ州特有の何かがあるのでしょうか。 もうひとつは、1980 年代後半に活動した Camper Van Beethoven というバンドです。 彼らは解散したものの再結成しているらしいのですが、サウンドコラージュやあらゆるジャンルを飲み込んでしまう消化力に通じるものがあります。 しかし、この John Corbin は何を企んでいたのでしょうか。 あとアルバムが1枚あれば彼の本性が見えてくるはずなのですが…

■John Corbin / Fragments■
Side-1
Fragments (part one)
Cold Frosty Morning
Sea Dawn Maiden
Sourwood Mountain
The Refugee
Side-2
German Band Waltz
The Ash Grove
I Couldn’t Be Happy
Interiors
The Fiddler
Fragments (part two)
Produced by John Corbin
Production cordinator : Judy Dockrey
Executive Producer : B.J. Camahan
Recorded at Audio Loft Studios , Mack’s Creek, MO
John Corbin : vocals , kawai grand piano , Prinz hammer dulcimer , pianolin , tamborine , 6-strings golden era , tympani , ARP omni synthesizer
David Milligan : piano , electric bass
Brad Edwards : percussion
Tammy Kittrell : vocals, mandolin , mountain dulcimer
Judy Dockery : vocals , ARP omni synthesizer , alto recorder , soprano recorder , cymbal
Steve Carter : 6-strings golden era , triangle , manolin
David Wayne : T-40 bass , pedal , gyro , multi-effects , vocals
Kelly R.Jones : violin
Dan Crockett : trombones
Dwight Swadley : trumpet
April Armstrong : vocals
Susie Nicholas : vocals
Richard McDole : vocals
Alan Freeman : vocals
BOC-LPS-2016
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