Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Frank Kinsel

2010-09-11 | SSW
■Frank Kinsel / At Home■

  残暑のなか、Frank Kinsel の唯一のアルバムを取り出してみました。 1970 年前後の作品と思われますが、いまだに CD 化されたことがないレコードです。 Epic のような大手レーベルからのリリースですが、まだまだメジャーのなかにもCD化されないアルバムは数多く眠っているようです。
  この Frank Kinsel の場合は、同時代にもほとんど聴かれることのなかったと思われ、彼の経歴や詳細を語るサイトは見つかりませんでした。 Paul Humphrey や Wolfgang Melzといったセッションマンや一時 The Byrds に在籍した Kevin Kelly が参加 していることが手掛かりですが、そこから紐解いても意味は無さそうです。
  
  ジャケットからして思慮深そうな青年の私小説的なフォークというイメージを受けますが、曲によって雰囲気が変化することもあって、捉えどころのない SSW アルバムという印象です。 アシッド・フォークと表現する人もいるようですが、そもそも同時代にはそんなジャンル表現はなかったので、あまり適切ではないような気もします。 レコードを聴いて感じるのは、Frank Kinsel の音楽の軸はフォークではなくリズム&ブルースではないかということです。 歌詞も社会風刺や批判が主になっているようで、どちらかというと黒人音楽に近いエッセンスを感じ取ることができます。 たとえば、ロスアンジェルスを人口過多の都市として皮肉った「Overpopulated City」などはその傾向が顕著に表れていました。 この曲だけが 5 分を超える大作なのにもFrank Kinsel の意志を感じます。 歌詞カードがないので正確なことはわかりませんが、「Gamer」、「Sparrow」や「Long Tail Sally’s Sister」も同じ傾向にある曲のように感じますが、歌詞がわからないので本当のことはわかりません。 ラストの「Anger Epilogue」などは他人からクレームが入って曲を中断させられるかのような曲で、41 秒のなかに強い創作意欲を感じさせる仕上がりとなっています。 「怒りのエピローグ」というタイトルもインパクトがありますね。

  個人的なお気に入りはブルーズ指向の薄い楽曲で、たとえば、孤独感あふれるギターの弾き語りが沈痛な気にさせる「Revelations 100」、カントリー風味の強い「Have A Good Day」、
、Grant Johnson のピアノがリリカルで美しい「1964」などです。 なかでも「1964」はアルバムの中でのベストトラックに推したいほどのお気に入り。 Anne Goodman によるチェロの伴奏も素晴らしいことを添えておきましょう。

  さて、このような渋い作品であることから、Frank Kinsel の「At Home」はなかなか評価されないまま 40 年以上の月日が流れようとしています。 アメリカのフォークや SSW を語る上で、不可欠な作品であるわけもなく、CD 化される必要があるかどうかも判りません。 ただ、メジャーレーベルの作品のなかで、こうして置き去りにされてしまうレコードがあるのは、少し淋しい気がすることも事実です。 それは、誰も思い出すことができない小学生時代のクラスメートみたいな存在だからです。

■Frank Kinsel / At Home■

Side 1
You Know Why
Gamer
Revelations 100
Have A Good Day
Like A Child
‘1964’
Sparrow

Side 2
Overpopulated City
Good Life Folk Bossa #1
You Know Why (part 2)
White Port And Lemon Juice
Sunni
Long Tail Sally’s Sister
Hey, Who’s Been Talking To You
Anger Epilogue

Priduced by Vibrations Productions
Engineer : Bob Breault
All songs written by Frank Kinsel except ‘White Port And Lemon Juice’ written by D.Woods, W.Graham and R.Bryant

Jimmy Smith : 12 and 6 string guitars
Grant Johnson : piano
Bill wolfe : 6 stirng guitar
Wolfgang Melz : bass
Kevin Kelley : drums
Paul Humphrey : drums
Anne Goodman : cello
Red Rhodes : steel guitar
Nick Ceroli : drums
Frank Kinsel : 12 snd 6 string guitars, vocals

Epic Records BN 26492


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