Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Paul Masse

2006-11-24 | SSW
■Paul Masse / Motels And Stations■

 どんよりした曇り空、あっという間にあたりは暗くなってしまうような晩秋にお似合いのアルバムを取り出して見ました。 ちょっと憂鬱な気分になってしまいそうな Paul Masse のセカンドアルバムです。 
 おそらく1970 年前後に発表されたと思われるこのアルバムは、さりげないガットギターをバックに、頼りなげな Paul Masse のボーカルが漂うモノクロームなイメージの作品です。 時折ストリングスやフルートなどが入ってくる瞬間に色彩が見えてくるのですが、その時以外は淡々とした世界が展開されていきます。 そんな内容からなのでしょうか、Paul Masse について語っているサイトが日本にも海外にも見つかりませんでした。 きっと人気のない作品もしくはミュージシャンなのでしょう。 メジャーの Liberty からのリリースということもあり、容易に入手可能な作品であることも一因なのでしょうか。

 そんなレコードを久しぶりに聴いてみました。 A 面はアルバムのタイトルともなっている「Motels And Stations」で始まります。 この曲はガットギターとパーカッションで構成されていますが、リコーダーが入ってくるところが新鮮に響きます。 他には、同じようにフルートが印象的な小曲「Candy」や、アシッド感が漂う「High On A Hill」が聴きどころですが、何よりも「The Bandana」が秀逸な出来となっています。 この曲は単調なコード進行でメロディもつまらないのですが、その代わり(と言っていいのかわかりませんが)に、右チャンネルから聴こえてくるギターソロに耳が釘付けになります。 何しろ最初からラストまで、音は小さいものの延々と即興的なギターソロが奏でられているのです。 ジャズ・ギタリストに近いセンスを感じるのですが、いったい誰が弾いてるのか、とても気になるところです。
 B 面では、最初の 2曲「Lazy Wind」、「There Is A River」のクオリティが高いです。 「Lazy Wind」は2本のギターのコンビネーションの良さが、「There Is A River」ではリコーダーに導かれてセリフが入るところなどが耳に残ります。 ラストの「Dragon Fly」心地よいギターのフレーズが印象的な佳作と言えるでしょう。 ほとんどの曲でギターの音が 2本聴こえてくるのですが、もしかするとこれは、Paul Masse 本人のオーバーダビングなのかもしれません。 ミュージシャン・クレジットがないので本当のことは不明ですが、アルバムを通して聴き終えるとそんな気がしてきました。 すると、あの「The Bandana」での名演も彼の手によるものになるのですが。
 
 さて、このアルバムに色彩を添えているのは、アレンジを手がけた Jack Daugherty です。 彼は、Jack Daugherty Orchestra 名義で自身のアルバムも発表しているようですが、最も有名なキャリアは、Carpenters のアルバム「A Song For You」のプロデューサーとしてものです。 このことは今日まで知らなかったのですが、それを思うと、今日ご紹介している「Motels And Station」は、彼がCarpenters を手がける前の作品に違いないと確信しました。 そうなると、「A Song For You」が 1972 年ですから、このアルバムは 1971 年よりも前のものではないかと推測できるのです。

 さて、Paul Masse はこのアルバムの前に、同じ Liberty から「Butterfly Lake」というファーストアルバムを発表しています。 こちらのアルバムは未聴なのですが、どうしても聴きたいという気持ちにはなれないでいます。 その理由は脱力感あふれる彼のボーカルに起因するものなのですが、そんなこともあってか、彼はこのアルバム以降は音楽シーンから遠ざかってしまったものと思われます。 インターネットで調べてもその足取りを追うことができませんでした。 世界的に人気が無いんですね。



■Paul Masse / Motels And Stations■

Side-1
Motels And Stations
The Way It Use To Be
Where It’s At
Candy
The Bandana
High On A Hill

Side-2
Lazy Wind
There Is A River
Love Won’t Come Easy
Brambles And Flowers
Seasons Sun
Dragon Fly

Produced by Higgins & Ervin of Wally Roker & Associates
Arranged and Conducted by Jack Daugherty
All Compositions by Paul Masse

Liberty Records LST-7628



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