Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Ron Chrislock

2008-08-27 | SSW
■Ron Chrislock / Ode To A Warrior■

  ジャズやロックのフェスティヴァルで有名なカリフォルニア州モンタレー出身のシンガーソングライター、Ron Chrislock のセカンドアルバム。 ファーストも持っているのですが、訳があって 1977 年のセカンドから紹介することにします。
  カリフォルニアといえば、Eric RelphJoseph Nicoletti のような異色のシンガーソングライターが突然変異のように出没しては失踪するのですが、Ron Chrislock もそんな変り種の一人といえるでしょう。 まばゆい太陽の光、乾いた風といったウェストコースト感は全く感じられません。 ハードロックかと思ってしまうこのジャケットも減点ポイントとなっています。 しかし、内容は意外にもポップさの全くない玄人好みの作品なのです。 
  
  このアルバムの特徴は、コンガとパーカッション中心のリズム編成とほとんどの曲に参加しているチェロの音色にあります。 そして陽気な西海岸という気分を一貫して排除しているところが気になります。 アシッド感やドリーミーといった言葉は似合うのですが、「カリフォルニアの青い空」はどこにも見えてきません。

  アルバムは控えめなピアノをバックに歌われる「The Key」で静かに幕をあけるのですが、Ron Chrislock のネコ声が妙に耳に残ります。 同じ演奏でも声質によって印象がかなり変わってくることをついついイメージしてしまいますが、このネコ声になれてくる頃には徐々に演奏が高揚し、楽曲が盛り上がりを見せてきます。 この起伏はプログレのようでもあり、Andy Pratt を思い出したりもします。 一転して淡々としたミディアム「Departed Lover」につづく「Soldier Of The Light」は厚いコーラスによるわかりやすい曲。 フルートの音色が凛とした気分にさせる「My Heart Is An Eagle」は Tami Osborne に近いサウンドです。 もちろんボーカルが違うので全く印象は異なりますが、バックの演奏だけをとれば、冷たい浮遊感に支配されているといっても過ちではないでしょう。 この曲が個人的にはハイライトです。

  B 面の「Ginseng And Goldenseal Blues」は初めてドラムスの存在が確認できる曲。 オーソドックスなフォーキーで、♪Ginseng And Goldenseal Blues♪を繰り返すのですが、アルバムのなかで唯一ハッピーな気分にさせてくれる曲となっています。 勇気のいるタイトル「Love」は、ほんわかムードのワルツ。 B 面は A 面に比べてリラックスした気分になっています。 ピアノのイントロから寂しげな気配が伝わってくる「House Of Empty Halls」は美しいバラード。 Gregg Gotlieb によるチェロのソロが切なさを助長します。  つづく「The Quest」もマイナー調のミディアム。 ここでも悲しげなチェロの演奏でフェードアウト。 そしてラストの「Odes To A Warrior」ですが、ほぼ弾き語りの淡々とした曲で、静かにアルバムはクローズしていきます。

  アルバムを聴き終えて考えるのは、このアルバムの制作意図です。 シングルヒットに誘引されてアルバムにつながったという形跡はゼロですし、いい曲が揃ったのでアルバムにしたということは考えにくいのです。 アルバムの内容からも Ron Chrislock は難解な SSW という表現が似合うのですが、彼の音楽ルーツはどのようなものだったのでしょうか。 それを解明してくれるかどうかはわかりませんが、次回は彼が 1971 年に制作したファーストアルバム「Color Me A Thousands Rainbows」を取り上げることにしましょう。 5 年間に Ron Chrislock は変容していたのか否か。 少なくともその答えは出てくると思います。



■Ron Chrislock / Ode To A Warrior■

Side-1
The Key
Departed Lover
Soldier Of The Light
My Heart Is An Eagle

Side-2
Ginseng And Goldenseal Blues
Love
House Of Empty Halls
The Quest
Odes To A Warrior

Produced by Ron Chrislock
Recorded and mixed at Super Sound, Monterey, California
All songs written by Ron Chrislock

Ron Chrislock : acoustic guitar and vocals
Prentice Stanley : piano, background vocals
Roger Dubin : electric guitar, background vocals
Tim Olson : bass, percussion, drums, background vocals
Gregg Gotlieb : cello
Bill Wichman : percussion
Rosalind Roberts : flute
J.C. Maxwell : slide guitar
Lark Simmons : piano
John Mirani : harp

Silent Thunder Records C-1007