Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Mendelson Joe

2008-08-19 | AOR
■Mendelson Joe / Jack Frost■

  画家としても活躍している Mendelson Joe が最も盛んに音楽活動をしていたのが 1980 年前後のようです。 僕は 1980 年の本作しか聴いたことがありませんが、CANOE には、「Not Homogenized」(1979年)、「Let’s Party」(1981年)、「Fragile Man」(1986年)というディスコグラフィーが掲載されていますが、何故かこの「Jack Frost」は漏れていました。 そのくらいマイナーなミュージシャンだということでしょうか。
  
  しかし、このアルバムの全編に漂うビター・スウィートな香りは、けしてマイナーなものではなく、大人向けのアダルト・ロックの名盤として語り継ぐことのできる作品と言えるでしょう。 全ての曲を Mendelson Joe が書き下ろしており、まだ無名の Daniel Lanois がエンジニアとして参加しているこのレコードは、ジャック・フロスト(イングランドに伝わる霜の妖精)というタイトルどおり、秋の夜長や冬に似合うテイストですが、前回 Joe Hall のレコードを取り上げた流れで、コオロギの鳴く夜に取り上げることにしました。

  このアルバムのセンスの良さは、クールなコーラス・アレンジ、音の隙間を意識した音数の少ない演奏の 2 点に集約されます。 とくに曲調にブレのない A 面がお薦めですが、曲順にコメントしてみましょう。
  オープニングの「Jack Frost」は、チャイムやベルの音色が可愛らしい名曲。 後にソロとしてデビューする Hazel Walker とのデュエットで囁くように♪Happy New Year♪と歌っているところが最高です。 この曲でいきなり先制点を奪われた監督のような気分になります。 つづく「Tweet Tweet」もエレピの音色や鳥のさえずりのようなエフェクトがまろやかなバラード。 この曲も暖かさがひしひしと伝わってきます。 「The Kiss Tells All」もスムース&メロウ。 ホノルル・ハートブレーカーズなるコーラス隊が入ってくるのですが、ここまでは欠点の見出せない流れです。 つづく「Write Me」は静かなフォービートですが、ここでは Mendelson Joe のクールなジャズ・ボーカルが見事で、ピアノ・ソロやジャジーなギターソロが気品のある空間を演出しています。 そして A 面ラストには秀逸なバラード「I Want To Be With You」が控えています。 ここでのメリハリの効いたアレンジとサウンドはまさにプロのなせる巧みの技です。 ほれぼれするほど出来のいい A 面は完璧といえるでしょう。

  B 面は R&B 風のビートをバックにしたレイジーなナンバー「Huggle And Snuggle」でスタート。 スワンピーなスライドギターのソロなど、このアルバムでは異色な仕上がりで、やや戸惑いを覚えます。 地味ながらもメロウなバラード「Correspondent Love 」を挟んで始まる「Advertise」は 2 拍子のアップナンバー。 エキセントリックで滑稽な楽曲ですが、コーラス・アレンジのセンスが素晴らしく、ジャジーな後半は見事です。つづく「I’ve Got Love」と「Strugglesville」はともに Steely Dan の影響を強く感じるクールな楽曲。 打ち込みのデジタルサウンドが始まる以前、ある意味最も音楽にセンスが問われた時代の演奏のエッセンスが凝縮されているように思えます。

  こうしてこのアルバムのクオリティの高さを目の当たりにすると、前後のアルバムにも当然ですが興味が湧いてきました。 タイトルがやや心配なのですが、入手できたらまたここで取り上げたいと思います。 また、いつも読ませていただいている「S.O.N.G.S」によると、Joe Mendelson 名義で 1972 年にもアルバムを発表しているようです。 こちらも気になりますね。 それにしても Mendelson Joe とはユニークな名前です。



■Mendelson Joe / Jack Frost■

Side-1
Jack Frost
Tweet Tweet
The Kiss Tells All
Write Me
I Want To Be With You

Side-2
Huggle And Snuggle
Correspondent Love
Advertise
I’ve Got Love
Strugglesville

Produced and engineered by Edward William Purdy and Mendelson Joe
All songs composed and written by Mendelson Joe
Cover painting and back cover photograph and designed by Mendelson Joe
Engineered by Dan Lanois

Mendelson Joe : vocals, guitars , foot and various arrangements
Edward William Purdy : bass, guitars, synthesizers, keyboards and various arrangements
Colin Linden : guitar and guitar arrangements
Buck Berger : drums
Gord Neave : drums
Bob De Angelis : saxophones
Hazel Walker : vocals
The Honolulu Heartbreakers : vocals and vocal arrangements

Boot Records BRP2109