Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Chris Rawlings

2008-07-13 | SSW
■Chris Rawlings / Pearl River Turnaround■

  社内で人事異動があったりして、なかなかブログを書く時間がとれません。 ここしばらくは娘が寝静まった週末だけとなりそうです。 
  今日取り上げるのは、カナダの現役 SSW である Chris Rawlings が 1972 年に発表したデビュー作。 ユニコーンが描かれた線の細いイラストとエンボス加工のジャケットが印象的です。 参加しているミュージシャンで見覚えのある人物はいないのですが、ただ一人 Anna McGarrigle の名前を見つけることができました。 彼女が Kate & Anna McGarrigle としてデビューしたのが 1975 年ですから、レコーディング・クレジットとしてはかなり初期のものになります。 Kate McGarrigle が何故いないのかが気になり、ネットで調べたところ詳細が分かってきましたが、それについては後ほど触れることにします。

  Chris Rawlings のサウンドは特に強烈な個性を感じるものではありません。 取り立てて歌がうまいわけではなく、声はマイルドさと微妙な震えが特徴ではあるものの、圧倒的な存在感が伝わってくるわけでもありません。 ただどの曲にも共通しているのがナチュラルな手作り感です。 楽器はアコースティックな編成ばかりで、曲によっては 1960 年代風のフォークもあります。 そこで、個人的に気に入っている曲をピックアップすることにしました。 
  まずは「Bridge Of The Night」です。 この曲からはヒューマニズムや自然との調和といった 1970 年代の SSW シーンならではのメッセージを強く感じます。 こじんまりした楽曲や私的な印象の曲が多いなか、この曲の存在感は重要です。 B 面にのみ参加してういるパーカッショニスト Tony Poupa McGouche の演奏が効いている「Song Of the Creation」や「Iris Of Flowers」はカナダ産ならではの静寂感が表れています。 アルバム最大の聴きものといえるのが「Schmaltz」です。 この曲には Anna McGarrigle を含む Mountain City Four が全面参加しているのです。 曲調はゆったりしたワルツですが、ウッドベース、ピアノを背景にしたオールドタイミーなアレンジも素晴らしく、さらにはクラリネットのソロも秀逸です。 この曲と「Bridge Of The Night」が双璧でしょう。

  さて、Anna McGarrigle の参加についてですが、Kate & Anna McGarrigle の略歴について非常に詳しく書かれているサイトがあり、そこで時代考証をすることができました。 1963 年に Kate McGarrigle と Anna McGarrigle は Peter Weldon と Jack Nissensen と 4 人で Mountain City Four を結成。 その後 1968 年に解散し、Kate は単身でニューヨークに渡りソロ活動を始めています。 Kate はそこで知り合った Loudon Wainwright Ⅲと結婚し、そこで生まれたのが Rufas Wainwright というのは有名な話ですね。 
  Chris Rawlings のこのアルバムが発表されたのは 1972 年ですから、ちょうどKate はニューヨーク、Anna はモントリオールという具合に姉妹が離れて活動していた時期だったわけです。 とっくに解散していた Mountain City Four の名前がクレジットされている理由は分かりませんが、Peter Weldon とJack Nissensen も参加したことから、この名前が使われたのかもしれません。 いずれにしても、いつも二人で活動していると思っていた Kate & Anna McGarrigle の知られざる過去がここに記録されたことになります。
  そういえば、15 年くらい前に初めて友人とニューヨークに行ったときに、Kate & Anna McGarrigle のライブを観たことがあります。 時差ボケと僕たちのテーブルにだけ白熱灯の熱が強烈に伝わってきたこともあって、二人して寝てしまったという情けない話なので詳細を語る資格はありませんが...
  なんだか、主役のChris Rawlings だということを忘れてしまった感がありますね。 彼は今も現役で活動している様子で、公式ページも存在しています。 最新作の「Rocks And Water」のために設けられたサイトのようですが、Children’s Music with an Earth Science Theme と表現されていることからエデュケーショナルな作品のようです。 



■Chris Rawlings / Pearl River Turnaround■

Side-1
Pearl River Turnaround
Brook Song
Bridge Of The Night
Pshaw
Lady Nancy

Side-2
Lions & The Jackal
Song Of the Creation
Iris Of Flowers
Schmaltz
Sally Cooking Fat

All songs written by Chris Rawlings except ‘Song Of Creations’ co-written by P.Lauzon

Jim Hochanadel : winds, electric bass, harp, guitar
Gilles Losier : fiddle, keyboard, acoustic bass
Rejean Emond : percussion
Tony Poupa McGouche : percussion
Skeeter : percussion
Ron Dann : pedal steel
Bill Garrett : lead guitar,
Wayne ross : lead guitar
Scott Lang : electric bass
Mountain City Four : vocal accoppaniment
(Anna McGarrigle , Peter Weldon, Jack Nissensen)
Chris Rawlings : vocal, rhythm guitar
Milton Park Citizen’s Committee Kazoo Band :
(Sean Gagnier, as Lion and Vince Griffin)
Gail Rawlings : cover

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