Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Tami Osborne

2007-12-30 | SSW
■Tami Osborne / Chasin’ Rainbows■

  今年も残すところあと1日となりました。 明日は更新する予定がないので、今日が 2007 年最後の投稿となります。 明日から本格的な寒波が到来するとのことですが、ひんやりした空気感と深い針葉樹林から漂い出るマイナスイオンを実感できる Tami Osborne のアルバムを取り上げることにしました。
 1978 年に発表されたこのアルバムは、Eaglear という自主制作と思われるレーベルからリリースされました。 このレーベルの他の作品は目にしたことはありません。

  この Tami Osborne の特徴は、彼女のクリアなハイトーン・ボイスにあります。 その声は穢れを知らない少女のような、あるいは俗世界から隔離されて育まれたかのような独特の響きを有しています。 似ている声質としては、Ann Mortifee を思い出しますが、彼女の場合は声楽を習っていたような優等生的なエッセンスを感じるのに対して、Tami Osborne の場合は自然に備わっている資質のように感じます。 そのうえ、音数が極端に少なく、エレクトリックがほとんど排除されているサウンドも相まって、コロラド周辺の SSW のなかでも孤高の存在感を示していいます。 美しいジャケットもあり、リスナーを崇高な気持ちにさせてしまう名盤といえるでしょう。

  Tami Osborne を代表する名曲「Dawn Arises」でアルバムはスタートします。 Tami のボーカルがセルフユニゾンとなって響くさまは神聖でスピリチュアルな雰囲気すら漂います。 A 面は淡々とした水墨画のようなイメージの曲が多く、「Upside Down」や「Sir Lancelot」、「Friends」といった曲には白黒以外の色彩は見えてきません。 そんななか「Promises」は唯一ボサノバタッチのスムースなサウンドに Tami Osborne のクリアなボーカルが映えるナンバー。 アルバムのなかでも個性的に光ります。  「The Island」は、「Dawn Arises」に通じるユニゾンとオーバーダビングのコーラスが美しく、フェードアウト寸前になってリズムセクションが導入されるあたりがソフトロック的な仕上がりとなっていてこれもお薦めです。

  B 面は、ラストの「I Came Along」を除く5 曲が Rainbow Suite と題されたメドレー構成となっています。 この Rainbow Suite は A 面には聴けなかった、リズムセクションの出番があり、より起伏のある展開となっています。 「Can’t Stop Believin’」は、Rainbow Suite のテーマ曲ともいえる軽快な曲。 アルバムのなかでも最も通俗的な仕上がりです。 シンプルな弾き語り調の「Chasin’ Rainbows」を挟んで、「Sunset In The West」は、ウェストコースト風のサウンドを聴かせる彼女としては明るい曲。  再び静寂の森に戻ったかのような「Be My Song」そして「Alone」の寂しげなリフレインが不意に絶たれると同時に「Reprise」へ。 この曲は「Can’t Stop Believin’」のサビのReprise ですでに懐かしさすら覚えます。 この Rainbow Suite はどんなに虹を追いかけても結局は見つけることはできずに元のところに戻ってしまうことをサウンドで表現しており、輪廻とかメビウスの輪のような無常観をテーマにしているのではないでしょうか。 ラストの「I Came Along」は両親に捧げた尊敬と感謝の歌。  Tami Osborne の清楚な歌声が可憐に響くバラードでアルバムは幕を閉じます。

  まだ夜 10 時だというのに、静けさとともに寒さが増してきたように思います。 きっと、このアルバムは部屋の体感温度を2度ほど下げる効果があるのでしょう。 いまさらですが、夏に取り上げた方が良かったかもしれないと思いながらも、終わりゆく 2007 年最後の聴いたレコードをラックに戻すことにしましょう。




■Tami Osborne / Chasin’ Rainbows■

Side-1
Dawn Arises
Upside Down
Promises
Sir Lancelot
The Island
Friends

Side-2
Can’t Stop Believin’
Chasin’ Rainbows
Sunset In The West
Be My Song
Alone
Reprise
I Came Along

Produced by Rolland Osborne and Dwight Oyer
Recorded and mixed at Eaglear Studio

All words and music by Tami Osborne
All instruments and back up vocals arranged by Dwight Oyer except ‘Sir Lancelot’

Tami Osborne : vocals , twelve string and six string guitars
Dwight Oyer : six string guitar , bass , piano , arp synthesizer , mandolin , trumpet , extra percussion and male back up vocal
Michael Berry : drums and gong
Billy Rowland : piano and steel guitar

Eaglear EP-001