Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

The Flying Mountain

2007-12-16 | Folk
■The Flying Mountain / Mountain’s Dream■

 前回とりあげた Jim Woodyard に続けてバンクーバー出身のミュージシャンをピックアップしてみました。 The Flying Mountain は 1970 年代後半に、後にソロを数枚リリースする Dan Rubin を中心に結成されたフォーク・グループ。 世界地図を見るとわかるようにバンクーバー周辺の海域にはいくつもの島が点在しており、彼らのルーツはそれらの島嶼にあるようです。 クレジットを見れば分かるようにメンバー一人ひとりが多彩な楽器を担当していることもあり、サウンドはバラエティに富み曲によってかなりの起伏があります。 しかし、アルバム全体から見て、違和感を感じさせることはなく絶妙にまとまっていることもあり、クオリティの高いフォークグループとして評価されているようです。

この「Mountain’s Dream」は 1979 年に発表された彼らのセカンドアルバム。 このアルバム発売後に Dan Rubin は脱退しています。 さっそく A 面から聴いていきましょう。
  タイトルからインストの予感のする「Bouzouki Jam」は、メンバー 4 人の共作扱いです。 ブズーギをはじめ、ダルシマー、マンドリンといったアコースティックな楽器が主体となる楽曲ですが、トルコ音楽のような曲調からアレグロにテンポアップしていきます。 まさに、ジャムといった展開でメンバーの卓越した演奏とアンサンブルが堪能できます。 「Sailin’」は日系人と思われる Satoru Suttles の曲。 彼の名は「サトル・サットルズ」と発音するのでしょうか。 だとしたら、かなりユニークですね。 ゆったりした河の流れのような曲調です。  Suttle によるインタリュード的なインスト「Mountain Stream」からメドレーのようにつづく「Dreamer」 は Neville と Rubin の共作。 The Flying Mountain の典型的なサウンドといえるこの曲は、ヴァイオリンやペダル・スティールといった楽器とメンバー全員によるコーラスの清々しさが耳に残ります。 Dan Rubin による「One Fast Trip Through A Waking Dream」は、ジャジーなテイストの異色な曲。 Dan Rubin の SSW 指向を感じさせる1曲です。

  B 面に移ります。 「Little Bird」は Dan Rubin の曲。 この曲はメロディーの親しみやすさやポップ感からして、アルバムの代表曲といってよいでしょう。 つづくアルバムタイトル曲「Mountain’s Dream」は Neville の曲。 The Flying Mountain のアンサンブルの到達点ともいえるサウンドを見せるこの曲もハイライトですね。  土着的な世界観を見せる Suttles の「Birch Island」は佐渡とか太鼓とか秋田のナマハゲのようなイメージです。 ラストの「Step Right Up」は唯一の Mongovius の作品。 デキシーランド風のジャムから、牧歌的なワルツへと移行する二部構成の曲ですが、このワルツ部分は例えようもない穏やかな空間を演出してくれます。  強めの酒を煽って、このまま眠ってしまいたいと思いたくなるようなエンディング、といえば伝わるでしょうか。

 このアルバムで脱退した Dan Rubin の代わりに、Ferguson の弟 Drew Neville を迎えた The Flying Mountain ですが、ヨーロッパツアーを終えたものの、その後 Satoru が脱退し、3 枚目のアルバムを残すことはできなかったようです。 

 それにしても大胆な名前のグループだと思います。 「空とぶ山」のセカンドアルバム「山の夢」と言ってしまったら何の趣きもないのですが、当時のネイティブなカナディアンやアメリカンには、どのように響いていたのでしょうか。



■The Flying Mountain / Mountain’s Dream■

Side-1
Bouzouki Jam
Sailin’
Mountain Stream
Dreamer
One Fast Trip Through A Waking Dream

Side-2
Little Bird
Mountain’s Dream
Birch Island
Step Right Up

Produced by The Flying Mountain

Mountain’s Dream was recorded at Goldrush Studios in Vancouver during December 1978 and January 1979

Rawn Mongovius : vocals , bass , flute , percussion , pedal steel
Dan Rubin : vocals , violin , pianolin , mandolin and bouzouki
Ferguson Neville : vocals , dulcimer , harmonica , trombone , congas , percussion
Satoru Suttles : vocals , guitar , piano , saxophone , percussion

Golden Age GAS 104