■Patti Dahlstrom / Livin’ It Thru■
Patti Dahlstrom の夏季特別講座も今日が最終回。 というのも彼女の音楽活動は 1976 年のこのアルバム以降、ぱったりと消息が途絶えてしまうからです。
20th Century からの 3 枚目となるこのアルバムのプロデューサーは、なんと Larry Knechtel です。 キーボードの Michael Omartian からベーシストのJ ack Conrad 、そしてまたキーボードの Larry Knechtel へと、めまぐるしく交代していますね。 いったいこの交代の背景には何があったのでしょう。 レーベルの意向なのか、Patti Dahlstrom のわがままなのか、そのあたりを知る術はありません。しかし、彼女は浮気性だったのではないかとひそかに思ってしまいます。
そんなこのアルバムのジャケットは、レコードコレクターズでもおなじみの巨匠 Norman Seeff によるもの。 ですが、個人的にはあまりいい写真だとは思いませんね。 デザインを含めても、すでに力が入っていないなあという印象を覚えてしまいます。
さっそく各曲を紹介しましょう。 Simon & Garfunkel の「明日に架ける橋」のピアノで有名な Larry Knechtel のピアノで始まる「He Was A Writer」は、憂いのあるミディアム。 サビの繰り返しが切々と訴えてくるような名曲です。
「One Afternoon」は、ボーカルに纏わりつくフルートがのどかな雰囲気をかもし出しています。
「Lullaby」は、Steve Eaton の書き下ろし。 彼によるレコーディングはありませんので、ここでしか聴くことのできない曲です。 Patti Dahlstrom には申し訳ないのですが、Steve Eaton が歌っていたら最高なのに、と思ってしまいます。 彼のファーストアルバムに収録されていてもおかしくないミディアムなバラードです。 「Magician Of Love」は、懐の深いミディアム。 アレンジもちょっと凝っています。 ここまでは、ミディアム・テンポで和んできたのですが、「I Remember You」は、凡庸なアップ・ナンバー。 こういう曲をやってはいけないのに、と叫びたくなります。
B 面は、A 面に比べると出来がよくありません。 それは個々の曲のクオリティに起因するものです。 アダルトな雰囲気のあるゴージャスなナンバー「Without Love」で始まるのですが、つづく「Wild Things」や「Lookin’ For Love」は地味な出来でコメントする言葉はありません。 「Fool’s Gold」は、抑揚の効いた展開を見せるのですが、バックのコーラスワーク以外に引き立てる要素がなく、もう一歩という曲です。 ラストも Larry Knechtel の流麗なピアノに導かれて始まります。 作曲も Larry Knechtel という「Changing Minds」は、ラストにふさわしいドラマティックな曲です。 曲調も複雑で仰々しさが鼻につくところもありますが、彼女の音楽はここで終止符を打ったのかと思うと、じーんと胸に来るものがあります。
どうして彼女が売れなかったのか、それはアルバムを聴けばすぐにわかることです。 それよりも、なぜ彼女が 4 枚ものアルバムを残すことができたのかということのほうが気になります。 当時の代表的なミュージシャンを従えて、プロデューサーは交代しつつも一流のスタッフに恵まれながらも全くといって開花することのなかった彼女のレコードを聴く行為は、単なる時代に埋もれた価値のない遺跡の発掘調査なのかもしれません。
でも、それはそれでいいと納得することにしましょう。 これだけ多くのスタッフが、1971 年から 1976 年にかけて、Patti Dahlstrom とともに夢を描いていたことは事実なのです。 夢はかなわないものかもしれません。 彼女が元気にどこかで暮らしていたら、どんな余生を過ごしているのでしょうか。 そんなことを熱帯夜に思いながら、特集を終えたいと思います。
■Patti Dahlstrom / Livin’ It Thru■
Side-1
He Was A Writer
One Afternoon
Lullaby
Magician Of Love
I Remember You
Side-2
Without Love
Wild Things
Lookin’ For Love
Fool’s Gold
Changing Minds
Produced by Larry Knechtel
The Cast
Mike Baird , Ben Benay , Gary Coleman , Jack Conrad , Jay Cooper , Michael Deasy , Daryl Dragon , Don Dunn , Chuck Findley , Bernie Grundman , Jimmie Haskell , Duitch Halmer , Jim Horn , Jackie Kelso , Larry Knechtel , Shelly Knechtel , Jeff Porcaro , Russ Regan , Jerry Scheff , Norman Seeff , Sid Sharp , Bob Siller , Melissa Tennille , Toni Tennille , Garry Ulmer
20th Century Records T-521
Patti Dahlstrom の夏季特別講座も今日が最終回。 というのも彼女の音楽活動は 1976 年のこのアルバム以降、ぱったりと消息が途絶えてしまうからです。
20th Century からの 3 枚目となるこのアルバムのプロデューサーは、なんと Larry Knechtel です。 キーボードの Michael Omartian からベーシストのJ ack Conrad 、そしてまたキーボードの Larry Knechtel へと、めまぐるしく交代していますね。 いったいこの交代の背景には何があったのでしょう。 レーベルの意向なのか、Patti Dahlstrom のわがままなのか、そのあたりを知る術はありません。しかし、彼女は浮気性だったのではないかとひそかに思ってしまいます。
そんなこのアルバムのジャケットは、レコードコレクターズでもおなじみの巨匠 Norman Seeff によるもの。 ですが、個人的にはあまりいい写真だとは思いませんね。 デザインを含めても、すでに力が入っていないなあという印象を覚えてしまいます。
さっそく各曲を紹介しましょう。 Simon & Garfunkel の「明日に架ける橋」のピアノで有名な Larry Knechtel のピアノで始まる「He Was A Writer」は、憂いのあるミディアム。 サビの繰り返しが切々と訴えてくるような名曲です。
「One Afternoon」は、ボーカルに纏わりつくフルートがのどかな雰囲気をかもし出しています。
「Lullaby」は、Steve Eaton の書き下ろし。 彼によるレコーディングはありませんので、ここでしか聴くことのできない曲です。 Patti Dahlstrom には申し訳ないのですが、Steve Eaton が歌っていたら最高なのに、と思ってしまいます。 彼のファーストアルバムに収録されていてもおかしくないミディアムなバラードです。 「Magician Of Love」は、懐の深いミディアム。 アレンジもちょっと凝っています。 ここまでは、ミディアム・テンポで和んできたのですが、「I Remember You」は、凡庸なアップ・ナンバー。 こういう曲をやってはいけないのに、と叫びたくなります。
B 面は、A 面に比べると出来がよくありません。 それは個々の曲のクオリティに起因するものです。 アダルトな雰囲気のあるゴージャスなナンバー「Without Love」で始まるのですが、つづく「Wild Things」や「Lookin’ For Love」は地味な出来でコメントする言葉はありません。 「Fool’s Gold」は、抑揚の効いた展開を見せるのですが、バックのコーラスワーク以外に引き立てる要素がなく、もう一歩という曲です。 ラストも Larry Knechtel の流麗なピアノに導かれて始まります。 作曲も Larry Knechtel という「Changing Minds」は、ラストにふさわしいドラマティックな曲です。 曲調も複雑で仰々しさが鼻につくところもありますが、彼女の音楽はここで終止符を打ったのかと思うと、じーんと胸に来るものがあります。
どうして彼女が売れなかったのか、それはアルバムを聴けばすぐにわかることです。 それよりも、なぜ彼女が 4 枚ものアルバムを残すことができたのかということのほうが気になります。 当時の代表的なミュージシャンを従えて、プロデューサーは交代しつつも一流のスタッフに恵まれながらも全くといって開花することのなかった彼女のレコードを聴く行為は、単なる時代に埋もれた価値のない遺跡の発掘調査なのかもしれません。
でも、それはそれでいいと納得することにしましょう。 これだけ多くのスタッフが、1971 年から 1976 年にかけて、Patti Dahlstrom とともに夢を描いていたことは事実なのです。 夢はかなわないものかもしれません。 彼女が元気にどこかで暮らしていたら、どんな余生を過ごしているのでしょうか。 そんなことを熱帯夜に思いながら、特集を終えたいと思います。
■Patti Dahlstrom / Livin’ It Thru■
Side-1
He Was A Writer
One Afternoon
Lullaby
Magician Of Love
I Remember You
Side-2
Without Love
Wild Things
Lookin’ For Love
Fool’s Gold
Changing Minds
Produced by Larry Knechtel
The Cast
Mike Baird , Ben Benay , Gary Coleman , Jack Conrad , Jay Cooper , Michael Deasy , Daryl Dragon , Don Dunn , Chuck Findley , Bernie Grundman , Jimmie Haskell , Duitch Halmer , Jim Horn , Jackie Kelso , Larry Knechtel , Shelly Knechtel , Jeff Porcaro , Russ Regan , Jerry Scheff , Norman Seeff , Sid Sharp , Bob Siller , Melissa Tennille , Toni Tennille , Garry Ulmer
20th Century Records T-521