Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Patti Dahlstrom

2007-08-11 | SSW
■Patti Dahlstrom / Your Place Or Mine■

  このジャケットにびっくりという感じの Patti Dahlstrom の 3 枚目です。 セカンドで見せたやつれたイメージから一転して、いいとこのお嬢様みたいなジャケット写真を見たときには、本当に驚きました。 同時に何か不安な気持ちが心を過ぎったことも事実です。
  クレジットを見ても前作と大きな変化があります。 プロデューサーが、Michael Omartian から Jack Conrad と Bill Schnee に交代しています。 それもあって、キーボードから Michael Omartian の名前が消え、名手 Larry Knechtel などに変わっています。 デビュー作から 3 作連続でプロデューサーが交代するというのもあまりないことだと思いますが、本来ベーシストである Jack Conrad がプロデュースに関わった作品としては、ブログでも取り上げた、Chris Ducey くらいしか思い出せません。
  また、作曲面でも重要な変化があります。 Severin Browne の作曲は 2 曲に激減し、その代わりに Al Staehely 、Artie Wayne といった職業作家がそれぞれ 3 曲、2 曲を書き下ろしています。 アルバム制作の段階で、Severin Browne との関係は解消してしまったのでしょうか。

 さて、そんなこのアルバムを聴きなおしてみました。 冒頭の「Used To Be In Love With Love」は、ホーンセクションが活躍するファンク・チューン。 いきなりR&B路線に転向なのかという感じです。 「If You Want It Easy」は、Patti のお得意とするミディアムなバラード。 ピアノ系のステディな演奏をバックにしっとり決めてくれます。 地味なミディアム。「Break Of Day」を挟んでは、Severin Browne の作曲「Painter」です。 この曲はまったりしたアップナンバーですが、もっとグルーヴ感を出せるのではないかと感じてしまいます。 つづく「Louisiana」は Randy Newman ではありませんが名曲です。 メロディーのうねりと淡々としたアレンジが Patti Dahlstrom のボーカルと重なって、いかにも 1970 年代の女性 SSW という雰囲気をかもし出しています。

 B 面は、アダルトでアーバンな「He Did Me Wrong , But He Did It Right」でスタート。 作曲は、Al Staehely ですが、もしHe = Severin Browne だったら露骨すぎですね。 平凡なミデイァム「Runnin’ Out Of World」を挟んで、バラード「When It Comes To You」が始まります。 この曲は彼女の良さが全面に出た佳作で、仮に Patti Dahlstrom のベストを編成するとしたら間違いなくピックアップします。 淋しげなホーンのソロや、落ち着いたリズムセクション、大人びたPatti のボーカルなどが溶け合っています。  つづく「Good To Be Alive」は、Maria Muldaur のようなオールドタイミーな雰囲気。 いい曲だと思ったら Severin Browne の作曲です。 アルバムラストの「Sending My Good Thoughts」は、しっとりとしたバラード。 ほぼ全編が Larry Knechtel のピアノとストリングスのみの演奏となっており、悪くはないのですが、Artie Wayne の書くメロディーにもう少し華やかさが欲しいところです。 とはいえ、この B 面のラスト 3 曲は、このアルバムの最も充実した部分だと思います。

  こうして聴いてみると、豪華なミュージシャンがこれだけ集まっても、際立った名曲やメロディーが無いだけに、強い印象の残らないアルバムになってしまったことも事実です。 そして、1976 年に 4 枚目にしてラストアルバムを発表するときには、またプロデューサーが交代します。 そのプロデューサーは、このアルバムにも参加していますので、予想してみてください。 David Foster ではありませんよ。



■Patti Dahlstrom / Your Place Or Mine■

Side-1
Used To Be In Love With Love
If You Want It Easy
Break Of Day
Painter
Louisiana

Side-2
He Did Me Wrong , But He Did It Right
Runnin’ Out Of World
When It Comes To You
Good To Be Alive
Sending My Good Thoughts

Produced by Jack Conrad and Bill Schnee

Keyboards : Larry Knechtel , Michael Utley , Andy Cahan , George Clinton
Bass : Jack Conrad , David Hungate , Klaus Voorman
Drums : David Kemper , Gary Mallaber , Jim Keltner
Guitars : Dean Parks , Al Staehely , Art Munson , Freddy Tackett , Steve Cropper , Jay Graydon , Al Casey
Banjo , Fiddle and Slide : David Lindley
Accordion : Nick Decaro
Horns : Jim Horn , Chck Findley , Jackie Kelso , Lon Van Eaton
Flute : Jim Horn
Percussion : Steve Foreman , Milt Holland
Background Vocals : Patti Dahlstrom , Don Dunn , Ray Kennedy , Chuck Higgens

Horn arranged by Jim Horn except ‘Break Of Day’ by Chuck Findley
Strings Arranged by David Foster except ‘He Did Me Wrong’ by Jimmie Haskell
Concert Master : Sid Sharp

20th Century Records T-461