Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Joey Gregorash

2007-02-05 | SSW
■Joey Gregorash / Tell The People■

 Joey Gregorash のセカンドアルバムは、ライブアルバムなのかと思わせるようなジャケット。 1973 年の作品なので、Joey はまだ 24 歳前後。 にしては貫禄があるというか老けているという風貌です。 このセカンド「Tell The People」はこの安易なデザインもあって、あまり知られていないし評価されていないようなのですが、実は「North Country Funk」よりも内容は上ではないかと思います。

 その理由はいくつかあるのですが、まず第一にボーカルが上手くなっている点があります。 前作では奮闘しているもののまだどこか足りないものを感じましたが、このセカンドでは伸びる声質や柔らかい表現力を身につけているという印象を持ちます。 第二に、楽曲の傾向にバラつきが少なく、統一感が出ていることがあります。 なかでもミディアムやスローな楽曲には聴かせる曲が多いですね。

 ヒット狙いのポップソング「My Love Sings」は、トップ 10 ヒットの夢よ再び、という気持ちが込められています。 日本の GS、あるいは 70 年代中盤の UKニッチポップみたいな「The Time Is Right」も捨てがたい。 Paul Cannon のギター・ソロが泣ける「Won’t Be Home Anymore」、Joey Gregorash の表現力が見事な「For The Last Time」などA面はかなりの粒ぞろいです。 4 曲目に収録された「Down By The River」は、「North Country Funk」にも収録された Neil Young のカバーですが、こちらは 4分に満たないバージョンが収録されています。 おそらく、シングルバージョンなのだと思いますが、全くの別テイクでこのアルバムのために再録したというものではなさそうです。

 B 面は、A 面に比べてやや劣るという印象ですが、「You’ve Got Company」で見せるリラックスした Joey Gregorash の伸びやかなボーカルは魅力的。 ラストの「Tell The People」を聴いていると全盛期の「アリス」を思い出してしまいます。 イントロのギターソロが「遠くで汽笛を聞きながら」に酷似していることや独特のアレンジに共通したものを感じてしまうからでしょう。 個人的には「I Don’t Believe (My Mind Can Stand Much More)」が B 面では最もお気に入り。 静かなギターのアルペジオから次第にコーラスなどで音が厚くなり、サビへと流れていく予定調和なバラードなのですが、後半のコーラスのリピートからフェードアウトのあたりは、アメリカというよりは UK ロックの王道的な展開に近いものを感じます。

 アルバムは「Down By The River」だけが、前作と同じ時期のレコーディングで 1971 年の録音、他の曲は 1972 年ですが、「Won’t Be Home Anymore」、「You’ve Got Company」と「I Don’t Believe (My Mind Can Stand Much More)」の 3曲が 1973 年の録音となっています。 こうしてアルバムを通して聴くと、無理して「Down By The River」を入れなければ良かったと思いますね。 商業的な意図はあったのでしょうが、この「Tell The People」の空気感を印象付けているのは、Paul Cannon のギターだと思いますし、それは Bobby Manuel のギターとは全く趣を異にしているので、むしろ違和感を覚えてしまいます。

 Joey Gregorash は CANOE のページによると、この作品以降、数枚のシングルを出したもののアルバムが出ることはありませんでした。 1987 年にアルバムが出ていますが、どうやら企画物のようです。

 夢を持って、メンフィスへと何度も足を運び、夢が叶い 20 代前半で2 枚のアルバムを発表したわりに、彼はあまりにもあっけなくシーンから消えてしまいました。 そこには様々な要因があったのだろうと思いますが、個人的にはデビューが早すぎたが故の結果だったのではないかと考えています。 もう少し音楽的に熟成し、25 歳くらいでデビューしていれば、違った展開になったのではないでしょうか。

<追記>
 Joey Gregorash は、このアルバムでは、Joey Gregrash と o が抜けた表記となっています。 これは印刷ミスではなく、表記の変更だと思われるのですが、現在の彼の公式ページなどでも、Joey Gregorash と o が入ったスペルになっていますので、このブログにおいても人物の同一性を鑑み、Joey Gregorash と表記しています。

 
 
■Joey Gregorash / Tell The People■

Side-1
My Love Sings
The Time Is Right
Won’t Be Home Anymore
Down By The River
Take The Blindness
For The Last Time

Side-2
You’ve Got Company
Another Part Of Life
I Don’t Believe (My Mind Can Stand Much More)
Bye Bye Love
Tell The People

Produced by Ron Capone
Recorded at STAX Recording Studios , Memphis , Tennessee


David Beaver : vocals on ‘time Is Right’, moog on ‘My Love Sings’
Dick Bortolussi : drums
Paul Cannon : guitar on ‘Tell The People’ , ‘For The Last Time’ , ‘Take The Blindness’ , ‘My Love Sings’
Ron Capone : crackers
Steve Cropper : for the ‘chicks’
Sarah Fulcher : bacnground vocals on‘Take The Blindness’
Joey Gregorash : Rhythm , lead vocals , piano , harmony
Dick Hedlund : bass guitar
Bobby Manuel : guitar on ‘Down By The River’
David Bossa Nova Baby Mayo : vocals on ‘Time Is Right’ , guitar on ‘Won’t Be home Anymore’
Ron Risko : harmony arrangements , rhythm , lead guitar , six-strings sitar
Bobby Sabbellico : guitar on ‘Time Is Right’ , ‘Another Part Of Life’, steel guitar on ‘I Don’t Believe’
Marvel Thomas : keyboards on ‘Won’t Be home Anymore’

Polydor 2424 066