Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Bill Puka

2007-01-08 | SSW
■Bill Puka / Bill Puka■

 ピアノ系シンガーソングライターの Bill Puka がメジャーの Columbia Records から 1970 年に発表した唯一のアルバム。 どうしたわけか、今まで国内盤のレコードも CD も発売されたことがありません。 海外においても未だ CD 化されていませんが、ニューヨーク系の SSW ファンには比較的有名で評価も高いアルバムだと思います。 以前中古レコード店で「男性版ローラ・ニーロ」という紹介文をみつけましたが、なかなか上手な表現だなあと感心したことを思い出しました。 同時代、同じレーベルということもあっての表現だとは思いますが、サウンド的にも通ずるものを感じます。
 
 さて、アルバム 1曲目の「Dry Spell」はいきなり仰々しいホーンセクションから入るので身構えてしまいますが、それもほんのさわりだけで、クールなピアノの音がしてからは安心して聴くことができます。 Bill Puka の繊細で澄んだボーカルとサウンド指向のエッセンスは、この1曲に凝縮されています。 インタリュード的な小曲「Movin’ Away」をはさんで、「Sunshine Days」はちょっと可愛らしいアレンジがふと射した陽だまりにいるような気持ちにさせてくれます。 「Barbara Knows」は、Mike Mainieri の手によると思われるビブラフォンをバックにした感傷的なナンバー。 いかにもニューヨークの SSW と感じる「Hudson Day Like」は、ピアノ系 SSW ならではの繊細さと陰影が微妙に交差するような作品です。

 B面の「City Nights」はジャジーな弾き語りですが、途中から仰々しく展開していくあたりは、難解なイメージを与えます。 この曲からは、先月にこのブログで取り上げた David Pomeranz の「Time To Fly」に近い世界を感じとることができます。 時代的にもほぼ同時期ですし、同じニューヨークということもあるからでしょう。 「She’s Just That Way」は Bill の音数の少ないピアノをバックに Joe Farrell らしきフルートを交えた小曲。 つづく「Nothing At All」はアルバムのなかでは最も親しみやすい楽曲です。 シンプルなメロディーとさりげないサビが印象に残ります。 「Selling Yourself Out」はでルーズなブルージーなエッセンスを感じる曲ですが、この曲は歌詞カードに描かれたイラストや曲のタイトルから夜の商売をする女性のことを題材にしています。 この曲も珍しく覚えやすい曲です。 ラストの「Beautiful Bird」は出来上がった詩に、即興でメロディーをつけたかのような小曲。 1970 年代前半のアルバムには、よくありがちなエンディングです。

 アルバムは 3分に満たない楽曲が半数を占めるなど、全体的にこじんまりとした印象を与えます。 何か遠慮がちでいて思慮深い、そんなイメージのアルバムに仕上がっていると思います。 1970 年のニューヨーク、もう 37 年も前の時代の息づかいを封じ込めたようなアルバムは、それほどありふれたものではないはず。 そうしたことを考えると、この Bill Puka がこの 1枚でシーンから消えていった理由を詮索したくなってしまいます。 アルバムのセールスが芳しくなかったということは容易に想像できますが、それだけが理由とは思えないのです。 

 もし、Bill Puka が次のアルバムを残したとしたら、どんなアルバムになったのでしょうか。 聴くたびにそんな夢想をしてしまう、そんなアルバムです。

 と、ここまで書き終えて、Bill Puka で検索をかけてみました。 すると出てきました。なんと彼は、哲学と心理学の教授になっていたのです。 そこには家族といっしょに写った初老の本人写真も掲載されており、アルバムの裏面に載っている若き日の Bill Puka と同日人物であること容易に確認することができました。
 
 音楽から学問の道へ、彼は自分自身の人生の舵を、早めに切っていたのでしょう。


 

■Bill Puka / Bill Puka■

Side-1
Dry Spell
Movin’ Away
Sunshine Days
Barbara Knows
Hudson Day Like

Side-2
City Nights
She’s Just That Way
Nothing At All
Selling Yourself Out
Beautiful Bird

Arranged and Produced by Ed Freeman
Songs by Bill Puka

Vocals and Piano by Bill Puka

Our thanks for the help of :
Neil Anderson , Gene Bianco , Sam Brown , Bob Bushnell , Gary Chester , Ray Colcord , Bob Devere , Norman Dolph , Joe Farrell , Jerry Jemmott , Jack Jenninngs , Jimmy Johnson , Artie Kaplan , Kim King , Mike Kropp , Joe Mack , Mike Mainieri , George Marge , Lou Mauro , Ruth Negri , T.T. (Doug) Pomeroy , Romeo Penquay , Sth Romain , Christopher Rhodes , Buddy Salzman , Jerry Smith , John Trotta , Paul Weiss , Philip Weiss and numerous friends

Columbia Records C30357