Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Papa John Kolstad

2006-10-09 | Folk
■Papa John Kolstad / Goin' Home■

 引き続き、Swallowtail Records の特集に戻りまして、レーベル9番目の作品を紹介します。 1970 年初頭から活動していた Papa John Kolstad が 1980年に発表した「Goin’Home」です。 ジャケットの手触りやセピア色のジャケットは、いかにも Swallowtail という印象です。 そういえば、このレーベルのジャケットで 2色刷りのものばかり。 こうした点も Swallowtail のアイデンティティを伝える要素になっていると思います。

 さて、アルバムの内容はひと言で言うならば、「珠玉のアコースティック・スィング・アルバム」となるでしょう。 Papa John Kolstad とフィドルの名手 Randy Sabien の 2人による息のあったパフォーマンスは見事としか言い様がありません。 ほぼ半数がトラディショナルで、Papa John Kosltad 自身の曲はひとつもないのですが、アルバム全編に渡って整合感があるのは、楽曲に対する理解と演奏の成熟さのなせる技なのでしょう。
 Papa John もさることながら、フィドルの Randy Sabien のテクニックとセンスには驚かされます。 ただ者ではないと思ったら、ジャケットの裏面には、彼が 22歳の時に、バークリー音楽大学の弦楽器部門を主席となったというプロフィールが記載されていました。

 さて、アルバムには Ry Cooder ファンにはお馴染みの曲が 2曲あります。 A面 2曲目の「Diddy Wa Diddy」と「Irene Goodnight」です。 「Diddy Wa Diddy」は、Ry Cooder の「Paradise and Lunch」のラストに収録の「Ditty Wah Ditty」と同じ曲です。 作曲者は Blind Arthur Blake なる人物。 あの Bo Diddley のお得意ナンバーとしても知られていますが、Captain Beefheart のデビュー曲も実はこの曲だったという逸話もあったりします。
 もう 1曲の「Irene Goodnight」は、Ry Cooder の「Chicken Skin Music」 と同様にアルバムのラストに収録されています。 通常は、「Goodnight Irene」と表記されるこの曲は説明の必要のない Leadbelly の名曲。 20 年くらい前に見た Ry Cooder の来日コンサートでもアンコールの最後に演奏されていました。 Papa John Kolstad のバージョンは、フィドルが参加しないギターのみの弾き語りですが、かなりリラックスした一発録りというものです。
 「Fishin’ Blues」と「Old Time Religion」は、Doc Watson に影響されたと本人が明記していますが、ここにもカントリー・フォーク・トラッド、といった音楽を実直に再現しつづける姿勢を感じることができます。 このアルバムが発売されたのは、1980年。 世の中は、産業ロック(当時、渋谷陽一がこう呼んで一律に批判していましたね)全盛の時代。 商業的な成功など、まるで気にしていなかったであろう Swallowtail Records ならではのリリースだと思います。

 Papa John Kolstad はこのアルバムの前に少なくとも 2枚のアルバムを残しています。 1971 年の「Mill City Blues」、1975 年の「Beans Taste Fine」ですが、いずれも未聴。 おそらく、このアルバムのもつ味わいとは大きな違いはないのでしょう。 アルバムの盟友、Randy Sabien も Flying Fish からソロ・アルバムをリリースするなど、元気に活動しているようです。

 

■Papa John Kolstad / Goin' Home■

Side-1
Keep Your Hands Off Her
Diddy Wa Diddy
Corn Likker
Sorry Mama To My Heart
Goin’ Home
Gooseberry Pie

Side-2
Talkin Wolverine 14
Fishin’ Blues
This Ain’t No Place For Me
Looky Looky Yonder
Old Time Religion
Kinfolks In Carolina
Irene Goodnight

Papa John Kolstad : 6 and 12 strings and vocals
Randy Sabien : fiddle

Producer : Phil Shapiro
Recording Engineer : Ken Coleman

Swallowtail Records ST-9