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バズ・ラーマン監督『オーストラリア』その3

2014-05-20 07:11:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 料理人「こんなに荷物、どこへ? 上海?」サラ「女には必要なの」。オマワリ現れる。デイジー「ナラ! 隠れて!」。北部警察署のキャラハン部長「ご主人を殺した罪でキング・ジョージを逮捕しに来た」。ナラとデイジーは水槽に隠れる。キャラハンの助手の黒人、水槽を見上げる。キャラハン「フレッチャーから混血の少年がいると聞いたが、教会へ連れていきたい」サラ「見つけたらお預けします」。オマワリ帰るが、デイジー、水槽の中で水死する。
 デイジーを火葬するドローヴァー。丘の上からキング・ジョージ「わが娘よ」。ドローヴァー「ナラには母親が必要」サラ「子供は苦手。(泣くナラに)お話、聞きたい?(ナラ、聞きたがる)」。サラ、“オズの魔法使い”の話をし、“虹の彼方へ”をぎこちなく歌う。ナラ「夢の歌だね。その歌は牛を鉄の船まで運べと教えてる」。
 サラらが出発しようとすると竜巻きが起こる。フリン「キプリング・フリンが“素面”でお出ましだぞ!」サラ「これで人数がそろったわ」ドローヴァー「ボスは俺だ。仕事は平等、酒は禁止。牛の暴走が起こったら、馬から降りて止める。(皆、自信満々に頷く)やれやれ」。『僕らは牛に向かってムチを鳴らし、ダーウィンという街を目指して大陸を旅することになった』。
 ダーウィンの映画館。「ヨーロッパ戦線に加えて日本軍も攻勢。日本がドイツとイタリアと同盟を結ぶという話もあり、オーストラリアにも大戦の波が近づいています。空での戦いが続いていますが、一方地上では陸軍省が食肉買い付けの契約相手を発表します」。カーニー「2日前だがいいだろ? 契約書にサインしよう」大尉「もう少し待って下さい。空軍機が“1500頭の牛の大群がマーモント川を渡っている”と」「ファラウェイ・ダウンズの川だ。牛を移動しているのか? フレッチャー君」「あそこは辞めた」「じゃ、レディ・アシュレイが牛を?(皆笑う)」「誰か付いてる」。『ミセス・ボスの目は最初は何も見ていなかった。でも今、その目が大きく開いた。(巨大な谷へ)白人にも見えない霊を宿した場所も見えている。行ってはいけない場所も』。フレッチャーら4人の馬。野営。ナラに請われ、フリンが“虹の彼方に”をハーモニカで。交替で牛の番。丘の上から見守るキング・ジョージ。
 夜明け前。フレッチャーら現れ、ガソリンを撒き、火をつける。牛の暴走始まる。跳ね起きて牛を追うドローヴァーら。「先は崖だ!」。何とかうまく囲い込むが、狭い崖の出口にも火が放たれ、それに驚いた馬にフリン振り落とされる。牛の群れに踏みつぶされるフリン。牛は崖へ突進していくが、その前に1人立つフリンは呪文を唱え、キング・ジョージも丘の上から呪文を唱え、牛を止めることに成功する。崖に落ちようとするナラを抱きとめるサラとドローヴァー。虫の息のフリン、ドローヴァーに「馬車の下のラム酒に付き合ってくれ。ナラは、あの槍の先はガラスだったと言った。奥様に裏帳簿のことを謝っといてくれ」と言って息絶える。ナラに渡されるハーモニカ。ドローヴァー「残ったのは幾つかの包みと肉の缶詰めとこれだけ」と言ってサラによそ行きの帽子を渡し、「フリンは言った。今は飾り物になってる、先がガラスの槍。キンバリー地方の槍だが、キング・ジョージはアーネム生まれ。フレッチャーが罪を被せた。証拠はないが」サラ「裁きをつけるわ」「もちろんだ」。
 真っ青な空。進みゆく牛の大群。フレッチャーの仲間「夜の間に進んでる。あのガキ、魔力で‥‥」フレッチャー「黙れ!」。川辺でドローヴァー「ナラ、馬の足を縛っておくんだ。“掟”を破る日が来るとはな。亡き紳士に!」。皆でラム酒を乾杯する。ムセるサラと料理人。しかし2人とも、もう1杯を求める。空の瓶が投げられ、そこにワラビー。料理人のギター。ドローヴァーをダンスに誘うサラ。そして2人がキスすると、樹上からナラ「“悪いコト”するの?」。2人離れ、ドローヴァーはアボリジニーと結婚していたが、英国のために戦っている間に妻が結核になって失い、サラは子供を産めない体だと告白する。「いい母親になれるのに残念だな」と言うドローヴァー。(また明日へ続きます‥‥)

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

バズ・ラーマン監督『オーストラリア』その2

2014-05-19 07:13:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 らくだの荷馬車で運ばれてきた酔っ払いの会計士キプリング・フリン。サラ「ファラウェイ・ダウンズはまだ?」ドローヴァー「2日前から入ってる」。ドローヴァーは馬の種付けで、英国生まれのメス馬カプリコルニアに一目惚れしたと言い、英国のサラブレッドに野性の種馬というのが最高のかけ合わせだと言うと、サラは侮辱されたと勘違いする。ナレーションの男の子、サラのトラックを見る(冒頭のシーン)。サラらはファラウェイ・ダウンズの屋敷に到着する。牛は死に、柵は燃え、屋敷の中にはサラの夫のアシュレイ郷の死体が置いてある。管理人のフレッチャー「俺の家は3代前からこの土地の持ち主に仕えてきた。(サラの夫の墓の前で)荒れた過酷な土地。(様子を覗くナレーションの男の子)だがアシュレイ郷はこの土地を手放さなかった。善良で勇敢なその彼に性悪な黒人が槍を向けた。キング・ジョージって奴だ。必ず裁きを下す」。フリン、ハーモニカを吹く。フレッチャー「明朝一番でダーウィンへ」サラ「そうするわ。主人はここの何に惹かれたの?」「不思議な土地だ」。『その夜、太陽が眠りについた時、キング・ジョージは言った。“癒しが来る。遠い遠い国からはるばる来た女の人が雨の働きをする”と。歌であの女を引き寄せよう、大地にも歌わせよう』。歌声に飛び起きるサラは屋敷の外に出て、中に戻ると、そこに男の子がいる。「あなたは?」「ナラ。ガラパの魔法で姿を消してた。あのフレッチャーは災いを呼ぶ。あなたは水の女神の“虹のヘビ”。とてもいい人。この土地を癒す。僕は歌であなたを呼ぶ。母さんとフレッチャーにも歌うんだ。“悪いコト”をしてる時に」「“悪いコト”?」「一緒に寝てくすぐり合う」「まあ‥‥そのこと?」「秘密だよ」。ナラはフレッチャーがカーニーの土地にアシュレイ郷の牛を追い込むのをアシュレイ郷に見つかり、アシュレイ郷を殺したことを話す。「フレッチャーが告げ口をし、僕はオマワリに捕まり、“伝道の島”へ閉じ込められる」。
 翌朝、サラはナラから、フレッチャーが川を越えてカーニーの土地にアシュレイの牛を追い込んだと聞いたと、フレッチャーに話す。フレッチャー、ナラを呼び、耳許で「お袋をぶちのめすぞ」。ナラの母「あれはカーニーの牛よ」。『嘘つきは僕じゃない。あいつだ。風車も動く。フレッチャーの嘘つき』。フレッチャーはナラを追い、殴る。サラ、フレッチャーを鞭打つ。「あんたはクビよ!」。フレッチャー「他の男たちも出ていくぞ。牛もだ。どうせカーニーに乗っ取られる」。フリンは残る。フレッチャー、牛の囲いを開け、トラックで他の男たちと去る。『変わった女だ。フレッチャーはクビ。母さんはもう殴られない。この日から僕らはこう叫んだ。“ミセス・ボス”と』。
 サラ「フレッチャーはなぜ風車を止めたの?」フリン、酒を飲みながら「ご主人のための帳簿とカーニー氏のための裏帳簿がある。秘かに送られた太った牛の記録だ。少年はフレッチャーの子。カーニーの娘はフレッチャーの許嫁。全てカーニーが裏で糸を引いてる。ご主人は牛をダーウィンまで動かす計画を立てていたが、あなたもそれを実行するしかない」「あなたの酒を飲ませて」「ダーウィンで牛を軍に売り、カーニーの鼻を明かし、その儲けでここを立て直せば、一生安泰」。そこへドローヴァーが野性の馬の一団とともに戻ってくる。サラ「フレッチャーが囲いを開けて出ていったので、牛が散ってしまった」「黙って見てたのか? 俺の稼ぎがとんだ」と怒るドローヴァー。「3人で100万エーカーに散った1500頭を集めることなどできない」「フレッチャーはカーニーと組んでたの」「カーニーに勝てる訳ない。カーニーの言い値を飲み、国に帰れ。それで万事解決。人のケンカに手は出さん」。サラ、土下座して「力になってくれたら、カプリコルニアをあげる」「だが3人では牛を追えない」ナラ「“牛追い少年”だった母さんとバンディは馬に乗れる」ドローヴァー「白人の中にはアボリジニーの女に“夜の相手”をさせる奴がいた。男の子のように丸刈りにして昼間は雑用をさせてた。とにかく熟練の追い手が7人。最低5人は必要だ。何人いる? 俺とマガリ、グーラジ、ナラの母のデイジーとバンディ。あと2人。(ナラ、立候補)あと1人と4分の3。(サラも名乗り出る)“馬のおケイコ”じゃない。本気か? 面白い」。サラに牛追いの練習をさせるドローヴァー。最初は全く動かなかった牛が動くようになっていく。(また明日へ続きます‥‥)

バズ・ラーマン監督『オーストラリア』その1

2014-05-18 07:09:00 | ノンジャンル
 昨日の朝日新聞に鈴木則文監督の訃報が掲載されていました。享年80歳。マキノ雅弘監督の直弟子として活躍されました。ご冥福をお祈り申し上げます。

 さて、バズ・ラーマン監督・原案・共同脚本・共同製作の'08年作品『オーストラリア』をWOWOWシネマで見ました。
 “アボリジニーとトレス海峡諸島民の皆様 故人の映像が含まれる場合があります”の字幕。“1941年12月7日真珠湾攻撃。日本軍はオーストラリア北部のダーウィンにも攻撃の矛先を向けた。そこはワニと牛成金と先住民戦士の土地、そして冒険とロマンスに満ち満ちていた。先住民アボリジニーの血をひく混血の子供たちは白人社会への奉仕を目的に、力づくで家族から引き離され、『盗まれた世代』と呼ばれるようになった”“1939年9月”の字幕。男の子のナレーション『僕の“大人になる旅”の道連れは、おじいちゃんのキング・ジョージ。先住民の生き方と何にも増して大切なことを教えてくれた。それは『物語』を語ること。あの日、キング・ジョージは魔法の歌で魚を捕る方法を教えてくれた。僕は黒人でも白人でもない。白人は僕のことを『混血』『ハーフ』『クリーム色』と呼ぶ。僕は僕1人。あの日、僕は白人が牛の群れをカーニーの土地に追い込むのを見た』。(以下、『』は男の子のナレーションを表します。)フレッチャー「姿を見られるな!」。『キング・ジョージは白人を罵った。(水に潜って姿を隠す男の子)そしてこう言った。“白人は悪い霊を呼ぶ。この土地から追い出す”と』。殺された白人の死体が男の子の上に浮かぶ。馬に乗った男の子は村へ着くが、近づくトラックを見て「オマワリだ!」と叫ぶ。『僕を捕まえて“伝道の島”へ連れていく。(逃げ出す男の子)僕は白人にされる。しかしそれはオマワリじゃなかった。その代わりに僕は初めて見た。ミセス・ボスを。見たこともないような女。この国の女じゃない。僕の祖先はいろいろな名で呼んだが、白人はこの国をこう呼ぶ。“オーストラリア”と。この物語の始まりは、この日をさかのぼる少し前。遠い遠い国で起こった。“英国”と呼ばれる国だ』。
 「“遠くの土地(ファラウェイ・ダウンズ)”を売らねば」と馬に乗る貴族のサラ(ニコール・キッドマン)が言う。召使い「“食肉王”キング・カーニー氏の付け値は時価の6分の1です」「お金が要るわ!」「だから旦那様のアシュレイ郷は牛を集めて売ろうとされてる」「主人がなぜオーストラリアに居着いてしまったのか。目的は“牛”じゃないの。“牛”じゃない生き物よ」「奥様、それは言い過ぎです」「私は自分で向こうに行き、土地を売り、夫を連れ戻すわ」。
 サラには夫が「信頼できるドローヴァーという男が出迎える」と言ってくる。ドローヴァーは黒人の仲間だと言われ、酒場から出ていくように店の主人と客たちに言われ、ケンカを始める。軍の食肉買い付け責任者である知事「この北部ではファラウェイ・ダウンズだけが、キング・カーニーの土地ではない」。アシュレイの土地の管理人であり、カーニーの娘の許嫁でもあるフレッチャーに、カーニーは「アシュレイの牛は1頭たりとも港に入れるな」と命ずる。サラは水上機で港に着くが、ドローヴァーはケンカの真っ最中。そこを訪ねたサラは、トランクをケンカの道具に使われてしまい、開いたトランクからはサラの下着が舞い上がる。恥ずかしさから呆然とするサラに、ケンカに勝ったドローヴァーは「オーストラリアにようこそ」と言う。
 『ドローヴァーは大きなトラックにミセス・ボスを乗せ、自分の水筒を飲ませた。(犬にも水筒で飲ますドローヴァー)気が合ったみたい。荷物の上にはマガリ。いとこのグラージも一緒に付いてきた。(走ってきて荷台に駆け上がるグーラジ)皆、仲良くなった』。ドローヴァー「あんたの夫は1500頭の牛を俺に任せると約束した。俺は牛追いだ。最後に残るのは人生の物語」。トラックに並んで跳ねるカンガルーの群れに感激するサラ。先頭のカンガルーが撃たれ、驚くサラ。フロントガラスに垂れる血。荷台に積まれたカンガルーの死体と喜々として銃を持つグラージ。
 ドローヴァーの水浴びを驚いて見るサラ。テントは1つ。ドローヴァー「夜は冷えるから皆でくっついて寝よう」。驚くサラ。寒がりだす男3人。ドローヴァー「からかっただけだ。俺たちは焚火のそばで寝るよ」サラ「私は男と同格よ」ドローヴァー「アボリジニーの女なら付き合えるが、あんたはダメだ」。(明日へ続きます‥‥)

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菊池寛『真珠夫人』その4

2014-05-17 00:16:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 美奈子は自分に対して、母のような慈愛と姉のような親しさを持って接してくれている瑠璃子を慕っていた。ある日、両親の墓参りをしていた時、妹を連れて墓参りをしている青年に美奈子は一目惚れをする。やがて美奈子はその青年が瑠璃子の取り巻きの1人である青木だと知る。瑠璃子は夏を箱根で過ごそうと美奈子に言い、青木を連れていくと言った。
 箱根に出発する日、東京駅には瑠璃子を送りに多くの男性が集まった。青木は品川から電車に乗ってきた。箱根に着いた3人は夕食後に散歩に出かけるのが日課となった。ある日、フランス大使の令嬢と会った瑠璃子は、夕食後2人を残して去った。2人は散歩に出かけると、青木は美奈子に結婚する気はないかと問い、その後、瑠璃子が結婚しないのは美奈子が未婚であるからだという噂があると言い、美奈子を憤慨させた。翌日美奈子は手紙を書くと言って散歩を辞退し、中庭の暗いベンチに座った。そこへ彼女に気づかない瑠璃子と青木がやって来て、青木は自分と結婚する気があるのか瑠璃子に迫り、瑠璃子は明後日の晩にはっきりと答えると言った。それを聞いた美奈子は居ても立ってもいられず、葉山に幽閉されている兄に急に会いたくなり、服を着替え、箱根を去ろうとしたが、出口で瑠璃子にばったりと会い、その場で泣き崩れてしまった。そして明後日の晩、母は図書館に行くと言う美奈子を強引に散歩に誘った。青木の顔は烈しい怒りのため、黒くなっていた。強引に2人を散歩に誘った瑠璃子は、ホテルに帰るとレストランで夕食を終え、公園で美奈子を真ん中にしてベンチに座り、一昨日の青木の申し出に否と答えた。青木は瑠璃子を妖婦呼ばわりしたが、瑠璃子はあなたに対する愛は夫に対するものではなく、弟に対するものだと言った。美奈子はそれが自分に対する心づくしと感じ、瑠璃子に感謝した。青木は去っていった。瑠璃子は美奈子に、ある人から青木を遠ざけるように言われたので、それに対する意地で青木を連れてきたと言い、美奈子の初恋の相手を自分が蹂躙してしまったことを詫びた。美奈子は本当に悪いのは自分の父で、瑠璃子の初恋を蹂躙した父の報いが子に及んだのだと言った。
 ホテルで青木はばったりと信一郎に出会った。信一郎は青木の兄の話をし、ノートも見せ、瑠璃子に近づかないように助言したが、それは遅きに失し、青木の憎悪の炎に油を注ぐ結果となった。その夜、美奈子は瑠璃子の隣で眠りにつこうとしたが、なかなか眠りは訪れなかった。深夜になり、やっとうとうととした時、美奈子は瑠璃子の苦悶の声に目を覚ました。瑠璃子は何者かに腹を刺され、相当の出血をしていた。助けを求めに部屋を出た美奈子は、青木の部屋がもぬけの空になっているのを発見した。瑠璃子は意識不明になったが、一旦持ち直し、神戸の杉野直也を呼んでほしいと言った。やがて芦ノ湖で23、4の学生風の水死体が見つかり、遺書には青木と書いてあったとの知らせが入った。衰えゆく瑠璃子は「まだ? まだ?」と叫んだ。瑠璃子の容態は険悪になり、医者が今夜中が危険だと宣言すると、直也がやっとやって来た。瑠璃子は大粒の涙を流し、直也も涙を滂沱として流した。瑠璃子は直也に美奈子を託し、息絶えた。瑠璃子の亡骸を棺に収めた後、瑠璃子の肌襦袢を手に取った美奈子は、その内側に直也の写真が縫いつけられているのを見つけた。瑠璃子は、黄金の力のために偽りの結婚をしたときも、美しき妖婦として、群がる男性を翻弄していたときにも、彼女の心の底深く、初恋の男性に対する美しき操は、汚れなき真珠の如く燦然として輝いていたのであった。
 瑠璃子について世間は妖婦扱いをして騒ぎ、本当の姿を知っているものは美奈子と直也だけだった。そして瑠璃子の兄が描いた『真珠夫人』と題する絵は、去年の二科会で絶賛され、近代的な女性に特有な、理知的な、精神的な、表情の輝きがあると評されたのだった。

 大正時代(今から100年近く前)に書かれたとは思えないほど、読みやすい文体で、575ページという大作ながら、最後まで読み終えることができました。“通俗小説”という扱いをずっと受けてきた小説らしいのですが、人がきちんと描かれていれば、後世にも生き残れるという1つの例だと思います。

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菊池寛『真珠夫人』その3

2014-05-16 07:35:00 | ノンジャンル
 先日WOWOWライブで『洋楽主義 ビリー・ジョエル』を見て、ビリーのアルバム『52nd Street』を聴き直し、その完成度の高さに驚きました。世界で初めてCD化されたのに納得した次第です。

 さて、また昨日の続きです。
 勝平は瑠璃子と2人きりになるため、葉山の別荘に行くことにした。瑠璃子はトランクの中に短剣を入れた。勝平は本当の妻になってくれと瑠璃子に懇願し、それが拒まれると、力ずくで犯そうとした。するとそこへ勝彦が現れ、勝平と乱闘を演じ、勝平は心臓マヒを起こして死んでしまった。勝平は死の直前、自分の非を認め、瑠璃子に美奈子と勝彦を託して死んでいった。最後に人間の相を現して死んでいった勝平は人間として救われ、勝った瑠璃子は救われなかった。彼女は、荒んだ心と、処女としての新鮮さと、未亡人としての妖味とを兼ね備えた美しさと、その美を飾るあらゆる自由とをもって、孔雀の如く、その双翼を拡げていた。
 音楽会で信一郎は瑠璃子と再会し、その夜の帝劇に誘われた。そこで行なわれた文学談義に、瑠璃子は信一郎のことを「自分を理解してくれた最初の男性」と言い、2人だけでまた話せるように、次の日曜日に自宅に来るように誘った。その日、信一郎は喜々として瑠璃子の邸宅に向かったが、そこには既に多くの男性が招かれていた。信一郎は、かなり激しい失望と幻滅とで、夫人の言葉が耳に入らぬほど不愉快だったが、夫人の鮮やかな姿を見ていると、いつの間にか心が和んでくるのだった。そこでは明治を代表する文豪が話題になっており、意見を求められた信一郎は紅葉を推した。やがて秋山という小説家がやって来ると、信一郎を軽々と論破し、夫人に侮辱されたと思った信一郎は席を立った。瑠璃子は信一郎を追いかけてきて、秋山を含めた取り巻きが帰るまで別室で待ってほしいと言った。それでも信一郎が帰ると言うと、瑠璃子はあっさりと諦め、信一郎は淋しい思いにかられた。邸から出ると、そこでは死んだ青木にそっくりの弟が村上海軍大尉と歓談していた。それを見た信一郎は、腕時計の持ち主が瑠璃子であると確信し、『汝妖婦よ!』とまた心の中で叫んだ。信一郎が自宅に戻ると、瑠璃子の車が先回りして来ていた。運転手が持ってきていた手紙は信一郎の手の中にあった。
 手紙には「さっきはあなたを試したのよ。私は取り巻きの男性たちには飽き飽きしていて、男らしく真剣に振舞う方がほしい。あなたのために、私がどんなことをしたか、するかをお試しになるため、すぐに車で来てほしい」と書いてあった。信一郎は青木の弟を救うため、この機会を利用しようと考えた。信一郎は死んだ青木のノートを武器として、瑠璃子の邸宅に向かった。信一郎は瑠璃子の私室に通されたが、そこには「信一郎、わが恋人よ!」と何度も書かれた紙が置いてあった。現れた瑠璃子に、信一郎は死んだ青木の無念を伝え、男性を弄ぶのを止めてくれるように頼んだが、瑠璃子は忠告ならご免こうむりたいと言うのだった。信一郎は瑠璃子の中に良心など存在しないことを知り、最後の手段として青木のノートを突きつけた。読み終わった瑠璃子は「青木さんも普通の男性と同じように、自惚れが強くて我がままであることが分かった」と言い、信一郎の怒りを買った。瑠璃子は「女性が男性を弄ぶとあなた方男性は、すぐ妖婦だとか毒婦だとか、あらん限りの悪名を浴びせかける。しかし、世間の男性がどんなに女性を弄んでいるかをご覧なさい。女性が男性を弄ぶに致しましたところで、それは男性の浮動し易い心を、弄ぶのにすぎないじゃありませんか。男性が女性を弄ぶ場合は、心も肉体も蹂躙し尽くすじゃありませんか。眼にこそ見えませんが、この世間には男性に弄ばれた女性の生きた惨たらしい死骸が、幾つ転がっているかも分かりません」と言った。信一郎の瑠璃子に対する憎悪は、またある尊敬に変わっていた。旧道徳の殻を踏みにじっている瑠璃子を、古い道徳の立場から、非難していた自分が、かなり馬鹿らしいことに気が付いた。信一郎は「青木の弟だけはあなたの目指す男性から除外してほしい」と頼んだが、瑠璃子は「青木さんの弟がわたくしを慕っていらっしゃるのでしたら、それがあの方の一番本当の生活じゃござませんでしょうかしら」と言うのだった。信一郎は「あなたからの脅威から青木君の弟を救うことに相当の力を尽くすつもりです」と答えた。(また明日へ続きます‥‥)

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