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山田詠美『指の戯れ』

2006-07-26 17:09:52 | ノンジャンル
 昨日に続き、今日は山田詠美さんの第二作目「指の戯れ」です。
 ルイ子こと私は2年前、純朴なリロイというアメリカ兵を気に入り、セックスの世界へ導きます。多くの男と体を重ねて来た私には、彼は新鮮で、味わい尽くします。が、彼は除隊し、アメリカに帰ることになり、私は新しい恋人を見つけます。
 リロイは日本に帰ってきます。その時の恋人DCから、彼はジャズピアニストの若手ナンバーワンだということを聞きます。私はリロイから逃げ回りますが、雨の中、路上で彼の車に誘われ、リロイは私を軽蔑するように犯します。そして過去など意味ない、と彼は言います。家に帰った私は今までと同じようにDCをこき使うことなどできなくなっています。
 そしてリロイはそれからも何回も私を呼び出し、私の体を求め、いじめます。リロイが帰国すると言った時、はずみで私は置き物を彼の頭の上に落としてしまい、彼は死んでしまいます。
 私は両手両足についていた縛られていた跡があったことから、軽い罪で済み、元気を私が取り戻すと、DCは狂喜すします。私は自分が蜜を吸い尽くされた花の屍であるのを知っているのですが、笑うことができます。
 要約すると、私の体も心も味わい奪い尽くした男の死で、私は屍となったままこれからの人生を生きて行かなければならない、という話です。一生に一回の激しい恋を経験した後、普通の人生に戻って行くという話は、映画でも良く出てきますが、ここまでサディスティックに男が女を肉体的にも精神的にも支配する恋というのは、あまり例がないと思います。そうした点では、非常に珍しい小説と言えるのかもしれません。
 前作とも同じように、ここでも一人称で話が語られ、それが著者の姿とダブルように書かれています。このスタイル、どこまで続いていくのでしょう?
 

山田詠美『ベッドタイムアイズ』

2006-07-25 15:53:34 | ノンジャンル
 今まで、昨年末の新聞に掲載されていた優香さんの対談で取り上げられていた本で、特に気に入った奥田英朗さん、瀬尾まいこさん、金城一紀さんの、手に入れられる本をすべて読破してきたのですが、今回山田詠美さんを読破するに当たって、今手許に集められた本は29册もあります。書かれた順に読んで行きたいと思いますが、しばらくの間、このブログも山田詠美一色になるかもしれません。その点、ご了解くださいませ。

 ということで、彼女の処女作「ベッドタイムアイズ」です。彼女は「ひとりの男を愛すると三十枚の短編小説が書ける」と言っているように、自伝的な作品が多いようです。この小説では「私」と、米軍基地を脱走してドラッグの卸しをしている黒人スプーンとの暮らしぶりが「私」の言葉で語られ、途中私の相談相手マリア姉さんがスプーンと一回だけ体を重ねるという事件がありますが、それ以外はずっとスプーンの体をどう味わい、彼にどのような思いを抱き、彼にどのような嫉妬をし、彼をどのように怒り、彼とどのような喜びをともにするか、が延々と語られます。そこで語られるのは、精神に対する肉体の絶対的優位で、これが彼女の小説を単なる一人称小説にしていない、魅力なのだと思います。
 短い小説ですので、一晩でも読めます。興味のある方、オススメです。

瀬尾まいこ『図書館の神様』

2006-07-24 16:51:45 | ノンジャンル
 スカパー275チャンネルの「みうらじゅん・安斎肇のなまはげ兄弟」第2回のオンエアを見ました。相変わらずしもネタ満載、絶好調のお二人でした。

 ところで、瀬尾まいこさんの「図書館の神様」を読みました。
 学生の頃、バレーボールに打ち込み、ミスをしたえり子を責めたあと、えり子は自殺してしまいます。それ以来スポーツとは縁を切った生活を送った私は大学卒業後、海の見える高校の国語の講師になり、部員が一人という文芸部の顧問になります。唯一の部員垣内くんは体育に向いた体を持ち、文芸などに少しも興味がない私は不思議に思いますが、彼は黙々と本に取り組みます。家に帰るとお菓子作りの教室で知り合った結婚している浅見さんに甘える私。週末になると弟が海を見にやってきます。人に勧められ教員採用試験を受けると出来は最悪だったのに合格し、先輩づらしてた松井は落ちます。ある日、地元のバスケットチームの練習に行くという垣内君に付いて行った私は、そこの熱気、空気、これが私の好きなものだったと気付きます。私は月初めにはえり子の墓参りに行きます。私は子供ができたという浅見さんと別れ、来年から文芸部は廃止の意見に猛然と反対し、朝練を始めます。本の整理をする垣内君は、整理が終わった段階で廃部とし、ランニングをしたあとに垣内君が密かに部費で買ってあったサイダーを私と飲みます。卒業式前の主張大会では垣内君は見事に自分にとっての読書の意味を述べます。そして、教師として工業高校への配置が決まった私へ、浅見さん、垣内君、えり子のお母さんから手紙をもらい、未来に旅立ちます。
 これといった大きな事件(えり子の自殺を除いて)もなく、淡々と話が進んで行きますが、読みやすく、好感の持てる本です。瀬尾さんの本の中ではあまりメジャーではないようですが、瀬尾さんのファンの方で未読の方にはオススメです。

鈴木清順監督『オペレッタ狸御殿』

2006-07-23 16:03:00 | ノンジャンル
 今日見た「みうらじゅんと安斎肇の勝手に観光協会」で、宮崎のひょっとこ踊りというのを取材していました。男性が延々と行列を組んで、あの時のこしの振りをずーと続けて行くというもので、それだけでも笑えるのに、その中に凄い腰の振りをする小学生がいて、みうら、安斎両氏とも末恐ろしいと笑っておられました。

 と話は変りますが、鈴木清順監督の'05年作品「オペレッタ狸御殿」をWOWOWで見ました。
 狸御殿の狸姫と城主の若君雨千代との恋物語で、ストーリーは非常にストレート。したがって、「陽炎座」で味わったような理解不能の敗北感は感じなくて済みました。それどころか、面白い、面白い! 
 まず、色が綺麗で、赤、青を中心にして色彩の洪水です。また、オペレッタと歌っているだけあって、ミュージカル仕立てになっているのですが、ラップあり、ジャズあり、ゴスペルあり、ヘビメタあり、何でもありの音楽。
 そして由紀さおりの見事な歌声、薬師丸ひろ子の子供時代とは比べ物にならないうまい歌、舞台を想定したシーンでは、木村威夫さんの見事な装置など、見どころ満載でした。
 鈴木清順監督というと難解というイメージがつきまといますが、この作品は第一級の娯楽作品です。まだ見てない方、必見です。

柴田元幸『バレンタイン』

2006-07-22 16:19:34 | ノンジャンル
 今日の夕刊にジャック・ウォーデンの死亡記事が載っていました。享年85歳。ニューヨークにて死去。私が先ず彼の映画で思い付くのは、シドニー・ルメット監督の「12人の怒れる男」の中の、野球好きで短気なアロハシャツを着た男です。戦後活躍した名脇役の一人でした。

 さて、ポール・オースターの翻訳などで知られる柴田元幸さんの処女短編集「バレンタイン」を読みました。全部で14の短編が収録されていて、非常に短い短編ばかり収められています。過去の子供時代の自分に遭遇し週刊サンデーを取り合い、会話をする「バレンタイン」など、時間をテーマにしたものが多く、自分が過去にタイムスリップして、サイン会に行くと地下のホールなのですが、そこは実は昔の本屋のメインフロアだったという「書店で」など、SFめいた、ちょっと不思議な感じのする話の数々を楽しめます。一遍の長さに短いため、電車の中などで読むには最適の本だと思います。電車の中で退屈している方、オススメです。