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G・ガルシア=マルケス『百年の孤独』その2

2012-05-10 04:29:00 | ノンジャンル
 昨日の情報の追加分です。東京日仏学院・創立60周年記念イベントとして、5月13日には12時30分から、ジャック・ベッケルの『エスパラード街』の上映、15時からはトリュフォーの『隣の女』、17時30分からはファニー・アルダン監督の『灰と血』の上映があります。ファニー・アルダンさん、映画監督として既にデビューしていることを初めて知りました。
 そしてこれは蛇足ですが、実は一昨日に職場の仲間と川崎アートシアターで近日アキ・カウリスマキの映画の上映があると話していて、その夜、「そう言えば、ジャン=ピエール・レオは最近どうしているのだろう?」と考えたことを思い出しました。もしかしたら、これは東京日仏学院でトリュフォー生誕80周年記念上映があるのを虫が知らせたのかもしれません。

 さて、昨日の続きです。
 たまりかねてウルスラが叫びました。「変人は、あんただけでたくさんよ。ジプシーじゃあるまいし、この子たちにまで妙なことを吹きこまないで!」腹立ちまぎれに床に投げて天文観測儀を壊した妻のすさまじい形相にもひるまず、ホセ・アルカディオ・ブエンディアは村の男たちを自室に呼びあつめ、みんなには納得のいかない理屈を並べて、東へ、東へと航海すれば出発点に帰りつくはずだ、と説きました。ホセ・アルカディオ・ブエンディアもついに気が触れたと、村のみんなが思いはじめたころメルキアデスが戻ってきて、うまく事をおさめてくれ、ホセ・アルカディオ・ブエンディアの頭脳のすばらしさを称賛し、そのしるしとして、それ以後の村の運命に大きな影響を与えるもの、錬金術の工房を贈ったのでした。
 実はそのころまでに、メルキアデスは恐るべき速さで老いこんでいました。それは度かさなる世界一周の旅の途中でかかった、さまざまな奇病のせいでした。彼は人類を襲ったあらゆる悪疫と災厄、つまりペルシアのとうもろこし疹、マレー群島の壊血病、アレクサンドリアのハンセン病、日本の脚気、マダガスカルの腺ペスト、シシリアの地震、大勢の溺死者を出したマゼラン海峡での遭難などをしのいで来たのでした。そうした秘密を打ち明けられたホセ・アルカディオ・ブエンディアは、今こそ偉大な友情が始まったと固く信じ、子供たちもまた、空想ゆたかなメルキアデスの物語のとりこになりました。
 メルキアデスが残していった粗末な工房には、金をたやすく倍加する方法や、賢者の石の調製も可能だという霊液の処方についての一連のメモや絵図面も残されてあり、なかでも前者に惹かれたホセ・アルカディオ・ブエンディアは、ウルスラを粘り強く説得して、ウルスラが持っている例の金貨を実験に使わせてもらうことに成功しました。ホセ・アルカディオ・ブエンディアは、三十枚の金貨を鍋に放りこんで、メモに書いてある通りの手順でことを運びましたが、最後にできたのは焦げついた釜の底からひきはがすこともできない炭でしかありませんでした。
 ウルスラから事の次第を聞いた村人は、ジプシーたちに反感を抱くようになっていましたが、翌年の3月に若々しくなったメルキアデスが現れると、あっと言うまに反感は好奇心へと転じました。ホセ・アルカディオ・ブエンディアは彼から義歯を使っていることを教えられると、錬金術に対する関心を一夜にして失い、「わしらはこうしてロバなみの生活をしているが、つい鼻の先の、あの川の向こうには、いろんな不思議なものがあるんだ」とウルスラに言って、マコンドの村を建設した頃の熱意はすっかり冷めてしまっていくのでした。(またまた明日へ続きます‥‥)

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/