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原作・挿し絵;川崎ゆきお、脚色;北村想『戯曲 猟奇王』

2011-06-29 00:49:00 | ノンジャンル
 先日、長嶋有さんの著書『電化製品列伝』の中で紹介されていた、高野文子さんの『奥村さんのお茄子』(『棒がいっぽん』に所収)を読んでみました。醤油瓶に化けた先輩の宇宙人が、新たに開発した毒茄子を以前、奥村さんに食べさせたことを証明してもらうために、奥村さんの元を訪れた宇宙人(この宇宙人は人間の女性に化けているのですが、靴やメガネが体にくっついてしまっているなど、色んな部分が「勘違い」しています)と現在は電気屋を営む奥村さんとのやりとりを滑稽に描いた作品で、映画的なコマ割りと、独特の時間感覚を持つ不思議なマンガだったのですが、残念ながら長嶋さんが夢中になるほどのインパクトを私は感じることができませんでした。

 さて、原作・挿し絵;川崎ゆきお、脚色;北村想『戯曲 猟奇王』を読みました。
 猟奇的犯罪をもくろむ猟奇王とその弟分の忍者、そして忍者の手下である下忍1、2の主役グループ、そして猟奇娘と探偵・便所バエが組む第2グループ、そしてまた黒とかげ、光とかげが組む第3グループが、金持ちの社長が持つハテナの秘宝を手に入れようと争うというのがメインの物語で、秘宝を守るために社長の元にやって来た仲代刑事とその同僚の女刑事・西野も登場し、それに猟奇王の幼い頃の先生で、遠足の時に何者かに拉致された女センセ、そして先生に率いられて遠足に来ていた学童1から5まで、また彼らとは何の関係もなく、アドリブの権化として物語の主役を奪おうとする土方(どかた)三人姉妹のキリコ、コネコ、ウメコらも劇に色を添える、そんなナンセンス喜劇(?)でした。脱線に次ぐ脱線、くだらないギャグも思いつくままという感じで書かれていて、ウンコネタなど子供が喜びそうなネタも多くあり、あとがきで北村さんが書いている文章をそのまま引用すると「偉く面白かった(中略)このアホラシイ漫画を思い切って舞台化して世間の顰蹙をかおうと思いたった(中略)私はともかくアホラシク馬鹿らしい台本を書く決意をして、それを書いたのだけれど、まず観客の顰蹙をかう前に演じる方の役者から顰蹙をかってしまった」とのことでした。また一方、川崎さんの方はあとがきで、「猟奇王などでも言える事なのだが、メルヘンタッチの郷愁や、宮沢賢治的な空間を歩くのは非常に難しい。詩人のように思われるし、芸術をしているのがまる見えなので、非常にみっともないからである。(中略)(したがって)子供が夢想しているような、もう一つの現実世界(を作ろうとした結果)ロマンとリアリズムが混ぜ合わせたようなカウス焼きが出来上がってしまった」とも書いています。
 現代においてロマンティックな小説を書こうとした結果、その気恥ずかしさから、この戯曲ができがったと言えるのでしょうか? それを確かめるため、今度は川崎ゆきおさん著の『(小説版)猟奇王』の方も読んでみようと思っています。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto