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長嶋有『電化製品列伝』

2011-06-24 05:40:00 | ノンジャンル
 今年の5月14日に日比谷野音で行われたパフィのライブ『Time For Action』をWOWOWで見ました。以前から亜美さんのファンで、『パパパパパフィ』放映時には番組を欠かさず見、また当時、カラオケに行くと『マザー』や『渚にまつわるエトセトラ』などをよく歌っていた、彼女と同じ誕生日である私にとっては、「Grey」のボーカルの方の妻となり彼の子供も産んだ今の彼女であっても、やはり強烈に魅力的で、つい見入ってしまいました。

 さて、山田詠美さんが著書『ライ麦畑で熱血ポンちゃん』の中で紹介していた、長嶋有さんの'08年作品『電化製品列伝』を読みました。さまざまな文学・映画・マンガ作品の中の電化製品について描かれている場面「だけ」を抜き出して熱く語った本で、ポプラ社Webマガジン「ポプラビーチ」と「小説現代」で連載されていたものの中から精選し、それに書下ろしを加えて一冊にまとめてできた本です。
 取り上げているのは、川上弘美『センセイの鞄』の電池、伊藤たかみ『ミカ!』のホットプレート、吉田修一『日曜日たち』のリモコン、柴崎友香『フルタイムライフ』のシュレッダー、福永信一『アクロバット前夜』のマグライト、尾辻克彦『肌ざわり』のブラウン管テレビ、映画『哀しい気分でジョーク』のレーザーディスク、吉本ばなな『キッチン』のジューサー、生田紗代『雲をつくる』の加湿器、アーヴィン・ウェルシュ『トレインスポッティング』の電気毛布、小川洋子『博士の愛した数式』のアイロン、干刈あがた『ゆっくり東京女子マラソン』のグローランプ、高野文子『奥村さんのお茄子』の「オクムラ電器店」、栗田有起『しろとりどり』のズボンプレッサー、映画『グレゴリーガールズ』の電動歯ブラシ、花輪和一『刑務所の中』の電気カミソリ、長嶋有『猛スピードで母は』の炊飯ジャー。中でも著者の文章で私が気に入った部分を引用させていただくと、「『日曜日たち』では『男たち』のつかうリモコンが実にうまく描かれているが、僕は女性がリモコンをつかう様も好きだ。ノースリーブの女性がえいっと確信をこめて押す。上品な女性が、おずおずと押し込む。疲れた女性がソファに倒れ込んで卓上のリモコンにかろうじて手をのばす。リモコンは『意思』を具現化させる道具だから、意思の表明する瞬間は、それがつまらない意思でも、少し美しい。」「柴崎友香は会社でシュレッダー作業を連載小説の第一回の、それも冒頭に持ってきた。そのことは特筆すべきことだ。連載時、この冒頭に出会って、ほとんど身もだえするくらいに嫉妬した。俺がこれを書きたかった! と。」「この作品を、経済的に潤っていた時代のフィクションと捉える人もいるかもしれないが、作者は舞い上がっていない。地に足が着いている。この主人公はたとえジューサーを気軽に買えないような世界に暮らしても、その世界のなにかをきっかけにいつでも『思ったり感じたり』するだろう。」などでした。
 2回に渡って取り上げられている、高野文子さんのマンガ『奥村さんのお茄子』(『棒がいっぽん』に所収)は是非手に取って読んでみたいと思いました。身の回りにあるモノを描くことへの愛に満ち満ちた本です。