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内田樹『街場の中国論』その2

2011-06-21 05:08:00 | ノンジャンル
(昨日の続きです。)
12、中華思想とは、中心に中華があり、その周辺に王化が及ばない『化外の民』がいて、二つの間に朝貢と下賜品に象徴される精神上の主従関係があればそれでいいという、非常に緩い権力関係を示していること

13、内容的に均質な国家が国境によって他国と分断されているという現在の国民国家の考え方は、宗教戦争であった三十年戦争を終結させた1648年のウェストファリア条約で初めて生まれてきた考え方であること

14、中華思想で比較的成功している現在の国というのはアメリカであること

15、中華思想による王道政治の伝統があったからこそ、日中戦争後、中国の人たちは日本兵に対してあれほど寛容であったこと

16、またチベットなどの少数民族が起こす独立運動への苛烈な弾圧は、これも中華思想という観点から説明できること

17、中華思想による王道政治の伝統があるので、もともと中国には、民衆が積極的に政治参加し、その責任を自ら引き受けるという発想は希薄であること

18、日本にとって『親米』と『親中国』はゼロサム(総量が決まっている)関係になっていること

19、1500年続いた中国を中心とする華夷秩序と、1853年のペリー来航から150年のアメリカ中心の華夷秩序を比べると、中国中心だった時代の方が日本は平和だったし、周辺諸国への迷惑もかけていなかったように思えること

20、華夷秩序の周辺国としての日本という立ち位置は、日本人にとってもう国民的エートスとなっていて、つまりオリジナルを作り出すのではなく『付加価値をつける』商売、昔の言い方で言えば『加工貿易』がすっかり身に付いているのですが、『私はオリジナルではない』というこの立ち位置自体が儒教の教えであり、つまり日本の文化的構えの原点が既に日本オリジナルではないこと

21、『オレが中心で、オレがオリジナルで、オレ的にオレはオレが好きだから、それでいいんだ』というグローバリズムのタフな思想でアメリカ人がやっていけるのは、キリスト教福音主義が『神』のサポートを担保しているからだということ

22、日本は幕末に帝国主義に踏みにじられた経験を糧に近代化を成し遂げたと思っているので、その恐怖と屈辱感をアジアの後進国に味わわせることが、それらの国に近代化の契機を与えてあげることになるのだと考えて、明治以降のアジアにおける帝国主義的蛮行を行ってきたこと

23、明治以降、日本の近代化が急速に進んだ最大の理由は、藩閥体制で日本に270個の藩があり、そこで有能な人材が育てられていたこと

24、そして幕府の中央集権的政策以上に、諸藩がリゾーム的に近代化を押し進めていったこと

(またまた明日へ続きます)

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