ポール・オースターの'85年作品「ガラスの街」を読みました。
半年探偵小説を書くのに費やし、残りの半年を無為に過ごすクインのところに、探偵ポール・オースター宛の間違い電話が3回かかってきます。クインはオースターになりすまし、電話をかけてきたヴァージニア・スティルマンのアパートメントに行くと、彼女は夫のピーターが3歳から9年間も父によって暗室に閉じ込められ、言葉を発すると暴力を受け続けていたこと、父は宗教学者で、人間と話さない状態を続ければ息子が神の言葉を話すようになると思い込んでいたこと、監禁が発覚後、父は狂っていると判断され病院に収容されたこと、前回父が退院間近になった時息子を殺しに行くという手紙を送ってきて退院が延期されたこと、数日後に今度は本当に退院することが決まったことをクインに話します。ピーターとも会いますが、動きがぎこちなく、話し方も明らかに異常で、事件の後遺症から抜けだせていないようでした。ヴァージニアは夫を父から守ってほしいと言い、クインは父を監視することに同意します。彼は父の著作を読みますが、そこにはアメリカを神の楽園にするために、神の言葉を創造しなくてはならないというヘンリー・ダークという人物の思想が紹介されていました。病院から出てきた父は安ホテルに滞在し、毎日あてどもなく彷徨しながら、路上に落ちているクズを拾ってはカバンに仕舞い込み、何やらノートに書き付けます。何日もそうした父を尾行することに疲れてきたクインは、ある日父の歩いた道筋がアルファベットを表していて、その文字をつなげていくと、父の著書に頻出していた言葉「バベルの塔」になることに気付きます。クインは思い切って父に話しかけてみますが、父はヘンリー・ダークというのは架空の人物で、あの思想は自分自身が作り出したものであることを語り、クインが息子になりすますと、父は平然としてクインに向かって話し始めるのでした。翌朝いつものように父の滞在するホテルに行くと、父はいつまでたっても出て来ず、昨晩のうちにチェックアウトしたことが分かります。クインは切羽詰まって本物のオースターに助けを得に行きますが、オースターは私立探偵などではなく、美しい妻とかわいい息子と住む作家でした。クインはオースター宛にヴァージニアが切った小切手を彼に渡すと、オースターは自分が現金化して後でクインに送ると言ってくれます。クインは万策尽きてヴァージニアに仕事を降りると電話しようとしますが、いくら電話しても話し中でつながりません。彼は自分の口座の金を現金化して、ピーターを父から守るためヴァージニアのアパートメントの前で24時間体制で監視を始めますが、ヴァージニアもピーターもその父も一向に現れません。数カ月過ぎ、金が底をついて浮浪者同然になったクインはオースターに預けた金をもらおうと彼に電話しますが、オースターは小切手は不渡りで、ピーターの父がブルックリン橋から身投げして自殺したことをクインに知らせます。クインが自分のアパートメントに戻ると、家賃滞納で部屋には既に別人が住んでおり、彼はヴァージニアの部屋に行き、何もなくなっているその空間で眠ってしまうと、目覚めた時暖かい食事が用意されています。彼はその部屋でノートにこの事件について書き記す毎日を送りますが、やがて行方不明になります。オースターは残された彼のノートを手に入れ、それをこの本の著者である私に渡すのでした。
この小説は一度読んでいて、その時は難解な文章が多くて辟易したのですが、今回は柴田元幸さんの翻訳ということもあってか、難解という印象よりも不思議な味わいのある小説に魅了されました。訳者が違うだけでこれほど印象が異なるということに驚きます。とにかく小説好きの方にはオススメです。
半年探偵小説を書くのに費やし、残りの半年を無為に過ごすクインのところに、探偵ポール・オースター宛の間違い電話が3回かかってきます。クインはオースターになりすまし、電話をかけてきたヴァージニア・スティルマンのアパートメントに行くと、彼女は夫のピーターが3歳から9年間も父によって暗室に閉じ込められ、言葉を発すると暴力を受け続けていたこと、父は宗教学者で、人間と話さない状態を続ければ息子が神の言葉を話すようになると思い込んでいたこと、監禁が発覚後、父は狂っていると判断され病院に収容されたこと、前回父が退院間近になった時息子を殺しに行くという手紙を送ってきて退院が延期されたこと、数日後に今度は本当に退院することが決まったことをクインに話します。ピーターとも会いますが、動きがぎこちなく、話し方も明らかに異常で、事件の後遺症から抜けだせていないようでした。ヴァージニアは夫を父から守ってほしいと言い、クインは父を監視することに同意します。彼は父の著作を読みますが、そこにはアメリカを神の楽園にするために、神の言葉を創造しなくてはならないというヘンリー・ダークという人物の思想が紹介されていました。病院から出てきた父は安ホテルに滞在し、毎日あてどもなく彷徨しながら、路上に落ちているクズを拾ってはカバンに仕舞い込み、何やらノートに書き付けます。何日もそうした父を尾行することに疲れてきたクインは、ある日父の歩いた道筋がアルファベットを表していて、その文字をつなげていくと、父の著書に頻出していた言葉「バベルの塔」になることに気付きます。クインは思い切って父に話しかけてみますが、父はヘンリー・ダークというのは架空の人物で、あの思想は自分自身が作り出したものであることを語り、クインが息子になりすますと、父は平然としてクインに向かって話し始めるのでした。翌朝いつものように父の滞在するホテルに行くと、父はいつまでたっても出て来ず、昨晩のうちにチェックアウトしたことが分かります。クインは切羽詰まって本物のオースターに助けを得に行きますが、オースターは私立探偵などではなく、美しい妻とかわいい息子と住む作家でした。クインはオースター宛にヴァージニアが切った小切手を彼に渡すと、オースターは自分が現金化して後でクインに送ると言ってくれます。クインは万策尽きてヴァージニアに仕事を降りると電話しようとしますが、いくら電話しても話し中でつながりません。彼は自分の口座の金を現金化して、ピーターを父から守るためヴァージニアのアパートメントの前で24時間体制で監視を始めますが、ヴァージニアもピーターもその父も一向に現れません。数カ月過ぎ、金が底をついて浮浪者同然になったクインはオースターに預けた金をもらおうと彼に電話しますが、オースターは小切手は不渡りで、ピーターの父がブルックリン橋から身投げして自殺したことをクインに知らせます。クインが自分のアパートメントに戻ると、家賃滞納で部屋には既に別人が住んでおり、彼はヴァージニアの部屋に行き、何もなくなっているその空間で眠ってしまうと、目覚めた時暖かい食事が用意されています。彼はその部屋でノートにこの事件について書き記す毎日を送りますが、やがて行方不明になります。オースターは残された彼のノートを手に入れ、それをこの本の著者である私に渡すのでした。
この小説は一度読んでいて、その時は難解な文章が多くて辟易したのですが、今回は柴田元幸さんの翻訳ということもあってか、難解という印象よりも不思議な味わいのある小説に魅了されました。訳者が違うだけでこれほど印象が異なるということに驚きます。とにかく小説好きの方にはオススメです。