まてぃの徒然映画+雑記

中華系アジア映画が好きで、映画の感想メインです。
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朱花(はねづ)の月

2011-10-12 23:51:56 | 日本映画(は~わ行)

万葉集の恋の歌から着想を得て。

大和三山(天香具山、畝傍山、耳成山)を望む集落に住む数少ない若者であるてっちゃんとかよこの夫婦、そしてかよこの幼馴染で木彫師をしている拓未、この3人の静かな三角関係が、大和三山の和歌を模して描かれる。

河瀬監督らしい、少し止まってじっと自然を凝視するカメラワークとはっとするような緑の色使いはやっぱり自分好みです。かよこが布を染めるときの紅や、遺跡の排水溝に照り返す太陽の光、燕の巣で雛が孵る様子や山間の段々畑の風景など、その土地と一体になって自然を感じさせるものがたくさんあります。

一方、今回の映画のテーマにおける陰の部分を映像で現したものが仄暗い闇を行く虫であったり、よくわからなかった変な暗い棺が開いているようなシーンなんだろうな。そこから何が伝わってくるかというと、無気味でよくないことだろうという印象はありますが、想いや美を感じるまでには至りませんでした。

いつもの河瀬作品のように科白が極端に少なくて、説明的な描写もないから3人がどうしてそうなったのかは、想像力を働かせるしかないのだけれど、なぜそうなったのか、という理由や経過よりも、それこそ山のように、ただそこにそういう事情がある、ということそのものが大事なことなのでしょう。

拓未の祖父にあたるのか、若い軍人さんもどういう意図で出てきているのか、よくわかりませんでした。時代が現代から出征の頃に戻ったりするところも、演出の狙いがわからず妙な気分です。

藤原京の遺跡発掘現場は、発掘を待つ遺跡たちが、何事も待つ拓未の心を表しているのかもしれない、と思いましたが、最初と最後に出てくるのだからもう少し大きな枠組みの中にあるような気もします。藤原京遺跡の発掘は全然進んでおらず、まだまだ地層に隠されたままだと言いますが、そうした表に現れない何か隠れたものの象徴なのでしょうか。

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