蒼井優主演で映画化された作品。木内愛菜と同級生だったユキオ、学を主人公とした第一部、本のタイトルにもなっている安曇春子が主人公の第二部、そして愛菜と春子の2人が交錯する第三部という構成。
地元の高校を卒業後、キャバ嬢のバイトをしばらくやっていた木内愛菜は、成人式に来ていたユキオと卒業以来で再会し、なんとなく付き合うことに。名古屋の大学の建築学科に進んだユキオは、大学生活に馴染むことができず地元 . . . 本文を読む
キュレーターとしての経歴を持つ著者が初めて美術を正面からテーマに据えた作品。山本周五郎賞を受賞し、直木賞候補作にもなる。
倉敷の大原美術館に監視員として勤める早川織絵、母と娘と3人で慎ましく暮らしていたが、突然日本で開催されるアンリ・ルソー展の目玉となる「夢」をニューヨーク近代美術館MoMAから借用する交渉窓口に指名される。彼女を名指しで指名したのはMoMAのチーフキュレーター、ティム・ブラウ . . . 本文を読む
2008年の第7回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。
知的障碍者施設至誠学園で起きた入所者の少女、水野彩の自殺事件。施設で彩と仲が良かった藤木司は彩が搬送される救急車の中で暴れて病院に入院させられる。司の担当になったのは新米臨床心理士の佐久間美帆。美帆は司の治療の手掛かりを得ようと、彩の自殺の詳細を調べ始める。
他人が話した言葉の感情が色で見えるという司の特殊能力、そしてかつての同級生 . . . 本文を読む
映画の予告編を見て気になったので、映画は観てないけど読んでみました。日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
隣人が全く別の人に入れ替わっていて、でもその人の名前を使って暮らしていて家族も全く変わりないように見える。ぞっと背筋が寒くなるような設定だけど、隣近所の交流が薄い近年だったら実際にあっても不思議じゃない設定、というのが怖い。
矢島善雄は犯罪的な面で『悪の教典』の蓮見聖司を彷彿させるような . . . 本文を読む
洋一郎の妻、そして凰介の母である咲江ががんで亡くなった葬儀のシーンから話は始まる。そして立て続けに、洋一郎と咲江と大学時代に同級生で、娘の亜紀も凰介と同級生という水城家の妻、恵が飛び降り自殺をして亜紀も交通事故に遭う。
洋一郎の言動には少し妙なところがあり、凰介は洋一郎と水城の恩師、田地に相談する。水城の家の夫婦仲は冷え切っていて、水城は幻覚に悩まされていた。凰介は洋一郎を救うため、亜紀と一緒 . . . 本文を読む
山本周五郎賞という文学賞の名前にもなっている山本周五郎の代表作のひとつ。江戸時代の三大お家騒動のひとつ、伊達騒動の内幕を、原田甲斐を悪役としてきた従来の解釈に真っ向から反対する義の人として描く。
仙台62万石の家督を継いだ伊達綱宗は、放蕩を理由に幕府から謹慎を命ぜられる。その夜、綱宗の近習4名が「上意討ち」を口実に襲われ、仙台藩は大騒動となった。綱宗謹慎の陰には、老中酒井雅樂頭と綱宗の叔父 . . . 本文を読む
第60回江戸川乱歩賞受賞作。主人公が69歳の全盲の視覚障碍者というかなり珍しい設定で、テーマも中国残留孤児という重いもの。
主人公の村上和久は、腎臓病を患い人工透析を続けている孫娘のために、実家の岩手で母親と暮らす兄、竜彦に生体腎移植を依頼するが、ドナー検査さえにべもなく拒否されてしまう。それをきっかけに兄が偽装中国残留孤児ではないかと疑い始めた村上は、戦中に満州開拓団で一緒だった人たちを訪ね . . . 本文を読む
『アンタイトル』の著者の作品。結婚をめぐり4人の主人公それぞれの想いが交錯する、これまた結婚したい自分にとっては気になるテーマ。
真面目で自分には華がない、と思っている朋美は同年代の友人たちが次々と結婚していくことに、焦りにも似た感情を抱いていた。そんな折、結婚には全く興味がないと思っていた友人の紗雪が幼馴染でカフェの店長をしている治樹と結婚するという。紗雪と治樹の結婚パーティで、朋美は貴人と . . . 本文を読む
釧路湿原を臨む高台にあるラブホテル、ホテルローヤルを舞台に繰り広げられる物語。打ち捨てられて廃墟と化している時から、ホテルが建てられる頃、30年以上前まで時を遡りつつ7つのストーリーが語られる。
ラブホテルが舞台だから男女の営みが当然出てくるけれど、登場人物はホテルの利用客以外にもホテルの経営者だったりアダルトグッズの販売業者、清掃のパートさん、そもそものオーナー、町のお寺の大黒さんなど、バラ . . . 本文を読む
2~3年くらい前から脚光を浴びだした「アドラー心理学」、欧米ではフロイト、ユングと並んで「心理学の三大巨頭」と称されるアドラーの思想を、哲学者と青年の対話を通じて語る。
トラウマの否定、原因論ではなく目的論、人は変われる、すべての悩みは対人関係の悩み、われわれは同じではないけれど対等、といった刺激的な考え方やキーワードが紹介されて、アドラー心理学が掲げる目標が述べられる。
行動面の目標が2つ . . . 本文を読む
久しぶりに書店の小説コーナーをぶらぶらと眺めていたら、帯のキャッチコピーに目を引かれたこの本。
子供のころから優等生で今も生真面目な31歳独身の宮原桃子、唯一の秘密は会社の先輩佐野課長と7年も不倫関係を続けていることだが、お互いの生活に干渉しないというルールを決めて家庭には干渉しないし職場にも関係を持ち込まない。
何事もなく平穏だった桃子の暮らしが、出来の悪い弟健太の電話をきっかけに崩れ始め . . . 本文を読む
警察小説で有名な横山秀夫の直木賞候補作。
W県警の教官を長く務めている梶聡一郎警部が「妻を殺しました」と自首してきた。取り調べを担当した志木は、殺害から自首までの空白の2日間に不審を募らせるが、梶がその2日間以外は全て自白していること、そして警察内部の事件は早々にケリをつけたいという管理部門の意向があり、すぐに送検される。その後、梶の事件に携わった検事の佐瀬、新聞記者の中尾、弁護士の植村、裁判 . . . 本文を読む
第51回江戸川乱歩賞受賞作、乱歩賞の作品を読むのは久しぶりだけどWOWOWでドラマ化されたというニュースを見て興味を持ちました。
幼い一人娘、愛実を育てながらフライチャイズのカフェを切り盛りする桧山貴志、彼の妻祥子は4年前、自宅で当時13歳の少年3人組に殺された。その時の犯人の1人、沢村和也が殺されて、再び桧山の身辺は慌ただしくなる。4年前、13歳だった犯人たちは少年法により処罰されることなく . . . 本文を読む
二階堂ふみと浅野忠信主演の映画『私の男』の原作で、第138回直木賞受賞作。
小説は花の結婚の時から時間を遡っていく構成で一人称も章ごとに入れ替わるけど、全体を貫くねっとりとした濃密な何かの間から時々顔をあげて息を継ぐかのような文体は変わらず、短く区切る読点やちいさな「ぁぃぅぇぉ」が息苦しさを増幅させる。
小説では美郎が花と結婚するけれど、映画ではなぜ別の相手になったのか、監督の意図を知りたい . . . 本文を読む
映画『渇き。』の原作で、第3回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。映画は好きな部類ではなかったけれど、圧倒的な暴力と嗜虐性が心の底にこびりついて、中島監督がどんな原作をこういう映画にしたのか興味がありました。
藤島は役所広司、加奈子は小松菜奈のイメージそのままにストーリーを追いかけて、映像化はかなりグロテスクな部分が多かったけど原作に意外と忠実なんだと、改めて納得しました。
映画で妻夫木 . . . 本文を読む