えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

あなたの才能

2013-09-25 14:13:31 | 歌う

          「あなたの才能」

★シルバーのスプーンを磨きいて淋し才能とうは天つ賜物 (松井多絵子)

 今日の朝刊に『自分の才能の見つけ方』 6・4万部突破!という本の広告、「才能」という言葉にはうんざりしている私なのに、広告をていねいに見てしまう。▲どんな人でも才能を持っている。▲さあ、才能を見つける旅に出かけよう!のキャッチフレーズを見ながら思い出す4年前の日光の旅、戦場が原など「紅葉の終わりを楽しむ」ツアーだった。

 北からはじまる紅葉は11月末になると関東では落葉し、見損なってしまうことが多い。近場はつい見逃がす。急いで申し込んだツアー「日光の麓をまわる旅」のなかに一名参加の、やや若い女性がいた。「紅葉が大好き」という彼女。日光はその年の秋は、すでに3回も訪ねていた。頂上から色づき麓が紅葉するまで約1か月かかる。彼女は週末に頂上から中腹のあたりまで日光の紅葉を3度も満喫していたのだ。そして4度目はフィナーレ、「これを見逃したら来年まで見られませんから」と云いながらうっとりと木々の紅葉を眺めていた。カメラもメモ帳も持たず、ただ眺めていた。写真も俳句も短歌も特に関心がないと言う、だだ紅葉が好きなひと。まるで葡萄酒に酔うように紅葉をながめ、楽しんでいた。

 このひとは36歳で未婚の女性だった。この人なら俳句も短歌もいい作品ができるのではないか、無理なく自然に親しんでいる。よき歌を得るために旅をしている私とは違う、彼女は自分の才能に気が付いていないのか。或いは何の目的もないから自然を楽しめるのかもしれない。

  明後日に「あまちゃん」が終わり9月も終わりますね。 9月25日 松井多絵子  


いもうと

2013-09-24 20:40:02 | 歌う

※ 4年前のいまごろ世を去った妹をおもいながら、歌集『厚着の王さま』より抄出します。  

          ❤ いもうと 二十首     松井多絵子

病室の前にてわれは立ちすくむ、扉のむこうに癌のいもうと

点滴にか細き腕を任せいてなにも話さぬいもうと、われも

眠いわと小声にて言いいもうとは瞼をとじる、眠ってほしい

なぜ癌になったのですかと妹の主治医に問えば「さあ、ねえ」と応える

自殺する癌細胞もあるらしい逞しく生きる癌細胞も

終戦の年に生まれたいもうとはいま癌細胞と戦っている

いもうとよ癌細胞を削除せよ、笑えばいいのだ笑えばいいのだ

子宮とはこんな形のものなのか茄子ひとつが俎板の上

海へむく手術室にていもうとは子宮を失い笑顔を失う

癌はまだ体に残るいもうとの「快気祝」の干菓子は紅梅

死が迫る、緩和ケアーを言う医師の口調はやんわりのんびりしている

病室はスカイブルーに塗られいて窓のむこうの空は汚い

われのみが話していたり話さねば空気がさらに重くなりそう

たちまちに地上に降りきて十階の緩和ケアー病棟仰ぐ

この秋の旅の予定の記されぬ手帳の空白、白がふるえる

すでに遠くへゆきてしまいし妹の亡骸に会う真昼なりけり

苦しまず逝きしとう嘘あたたかく我はうなずき供花にふれる

死はふかき眠りか生はごく浅きねむりか、窓にひろがる夕日

あと幾度ここに来て骨を拾うのか火葬を待つこの四十分は

病む日々のいもうとのメールを収めたるケータイはいま枕辺にあり

                                  (了)            


三次会のこと

2013-09-23 14:38:47 | 歌う

         「三次会のこと」

❤すがるのは避けたいけれど近頃は何かに誰かにすがりたくなる (松井多絵子)

 ことしの短歌研究賞の大口玲子、新人賞の山木礼子も文句なしの才媛だ、そして強い女だ。過去の、男に泣かされる歌人ではなく、男を支配できる女。男に泣かされる女は私たち女からも嫌われる。そんな風潮がこの賞に反映しているかもしれない。賢くてズッコケない娘の母親は老後も安泰だ。私のまわりにズッコケない娘を持った老女が何人もいて安らかに暮らしている。残念ながら私には娘がいない。

 三賞授賞式、その後の祝宴ののち駅ビルのなかのレストランになだれこんだが、店の名も何時に何人集まったかも憶えていない。私の左隣には山崎聡子、右には本多真弓、正面にはやすたけまりが座っていた。若手の三大歌人に囲まれていたのだ。この三人がわたしの娘だったら、ワインはわたしに楽しい想像をさせる。初夏に歌集『手のひらの花火』をだした山崎聡子は大胆な歌を詠む、いずれまた受賞して花束に埋もれる、私の次女にしたい。本多真弓は私とくだらない話をして二人で笑う仲。でも未来賞を二度受賞している。三女にしたい。長女はしっかり者のやすたけまり、パソコンを私に勧めたのは彼女。このキビシイ世の中への対応がすばやい。童話のような『ミドリツキノワ』という歌集を出したが大人の女だ。彼女がわたしの長女だったら私は安心して長生きできる。こんな想像をしながら何杯ワインを飲んだのか、そのとき「じやー、お先に」という声がして、やすたけまりが消えてしまった。京都から夜行バスで上京、そして又夜行バスで京都へ帰ったのだ。わたしの長女は「まぼろし」か。そして次女も三女も。

 ✿鏡のなかに秋がきているベランダに動き止まざるりんどうの藍  松井多絵子 9月23日 


二次会のこと

2013-09-22 14:39:37 | 歌う

         「二次会のこと」

❤敵なのか味方なのかもわからない才色兼備の小百合と乾杯 (松井多絵子)

 お酒とは不思議な液体である。ひとたび体の中へ入ると私を異なる私にしてしまう。いや、本来の私にするのか。言葉が私の口からすいすい泳ぎだす。自分の受賞式でもないのに緊張していたのか、二次会の立食パーティは寛ぐ。今年も新人賞は「未来」の会員なので、おなじみの会員たちと私はビールを飲み、ワインを飲み、酔いがまわらないように食べつづけた。

 私がひそかに応援していた山木礼子の新人賞受賞はうれしい。しかし(ごあいさ)で「わたしは五月に結婚しました」なんて言わなければよかったのに。私は彼女に「結婚しました。なんてなぜ言ったのよ。男のファンを失うわよ」と苦言。彼女の傍に立っていた中年の男を山木礼子の夫だと思ってしまった。やはり彼女は賢い、大人の男を夫にしたのだ。才女は若い男なんて頼りなく、退屈だろう。ところがこの中年男が山木礼子の父君とは 父君は私のあのブログを読まれとのこと、恐縮した。「もっとお行儀の悪い歌を詠みなさい。礼子なんて名前古臭いわよ。
(ヒミコ)がいいわ」。なんて。聡明な彼女は彼女流で短歌研究新人賞を受賞。夫がいることも
発表したほうが今後の作品のためにはいいかもしれない。その夫は彼女から少し離れたところに静かに立っていられた。まだうら若い細身の夫はほほ笑みながら、古代の微笑?

 山木礼子さま おめでとうございます。いつまでも両手に花を、枯れない花を。♪♪♪
                               9月23日 松井多絵子  

 ※「三次会」のことは明日書きます。今日はこれからスーパーへ餌を仕入れに行きますので。


短歌研究三賞授賞式

2013-09-21 14:38:00 | 歌う

          ★「短歌研究三賞授賞式」★

 昨9月20日は「短歌研究三賞」の授賞式と祝宴が如水会館のスターホールで行われた。

★第49回短歌研究賞 大口玲(りょう)子さんは「心の花」会員。若山牧水賞もすでに受賞。
  東日本大震災を受け、夫を仙台に残し、息子と二人で宮崎市に移住。まだ44歳
        受賞作「さくらあんぱん」より3首抄出

 仙台を離脱したるゆゑ仙台から目を背けることができなくなりぬ
 「長崎まで来てなぜ宮崎に来ないか」といいくれし伊藤一彦の声
 ゆく春のゆふべパン屋に売れ残るさくらあんぱんよもぎあんぱん

★第56回短歌研究新人賞 山木礼子さんは「未来会員」 「未来賞」受賞 25歳
        受賞作「目覚めればあした」より3首抄出

 触ってはいけないものばかりなのに博物館で会はうだなんて 
 漢字とは占ふ文字でありしゆゑたくさん使ふ愛のてがみいに
 さかさまのビールケースに腰かけて都合のいいことだけを思った

★第31回現代短歌評論賞 久眞八志 「相聞の社会性」ー結婚を接点として
   三年ほど前より歌をはじめ、2012年「かばん」入会

  受賞式に、きものと袴、長身でカッコいい。作品は10月号掲載なので式での彼の言葉。

 いまサラリーマンの小遣いは平均3万ですが、僕は1万しか妻からもらえない。評論賞応募
 のため「短歌研究」の最近5年の10月号を買い、小遣いは半分になりました。(略)この5年
 の「短歌研究」となると私の3年前の10月号も久眞さんは買われたことになる。私の拙い評
 論のために1000円、アリガトウゴザイマス。いづれ「珈琲とケーキ」を、コワイ奥様もご一 諸にどうぞ。アナタが短歌を始めたのが3年前で助かりました。もし私と同じときアナタが応
 募してらしたら、私は落選したでしょう。珈琲とケーキじゃ失礼ですね。ランチタイムサービス
 でコース料理をご馳走しますよ。コワイ奥様もご一緒にどうぞ。 9月21日  松井多絵子

※明日のブログは授賞式の後の二次会、三次会のことを書きます。今日は二日酔いの私。