母に会わねば 六首 松井多絵子
「秋が来た秋が来たよと言う声が」「聞こえる虫のひそひそ話」
夏虫のなきごえ細くなってきた母に会わねば墓場の母に
りんどうの七、八本の花束をわれより受け取るあの世の母は
線香は燃え尽きけむりも消えうせて墓場にひとり残されている
空へゆくようにのぼりし丘はいま庭なき家に埋め尽くされて
近づいてゆけばひろがるススキの野そんな感じの青年だった
歌集『厚着の王さま』より
9月27日 父と母のお墓はこの区内のお寺にあるの先日のお彼岸に行きそこなって、母が怒っていることでしょう。これからお墓まいりをします。りんどうの✿を持って。 松井多絵子