「三次会のこと」
❤すがるのは避けたいけれど近頃は何かに誰かにすがりたくなる (松井多絵子)
ことしの短歌研究賞の大口玲子、新人賞の山木礼子も文句なしの才媛だ、そして強い女だ。過去の、男に泣かされる歌人ではなく、男を支配できる女。男に泣かされる女は私たち女からも嫌われる。そんな風潮がこの賞に反映しているかもしれない。賢くてズッコケない娘の母親は老後も安泰だ。私のまわりにズッコケない娘を持った老女が何人もいて安らかに暮らしている。残念ながら私には娘がいない。
三賞授賞式、その後の祝宴ののち駅ビルのなかのレストランになだれこんだが、店の名も何時に何人集まったかも憶えていない。私の左隣には山崎聡子、右には本多真弓、正面にはやすたけまりが座っていた。若手の三大歌人に囲まれていたのだ。この三人がわたしの娘だったら、ワインはわたしに楽しい想像をさせる。初夏に歌集『手のひらの花火』をだした山崎聡子は大胆な歌を詠む、いずれまた受賞して花束に埋もれる、私の次女にしたい。本多真弓は私とくだらない話をして二人で笑う仲。でも未来賞を二度受賞している。三女にしたい。長女はしっかり者のやすたけまり、パソコンを私に勧めたのは彼女。このキビシイ世の中への対応がすばやい。童話のような『ミドリツキノワ』という歌集を出したが大人の女だ。彼女がわたしの長女だったら私は安心して長生きできる。こんな想像をしながら何杯ワインを飲んだのか、そのとき「じやー、お先に」という声がして、やすたけまりが消えてしまった。京都から夜行バスで上京、そして又夜行バスで京都へ帰ったのだ。わたしの長女は「まぼろし」か。そして次女も三女も。
✿鏡のなかに秋がきているベランダに動き止まざるりんどうの藍 松井多絵子 9月23日
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