えくぼ

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浅羽佐和子の空

2014-12-19 09:20:00 | 歌う

             ~ 浅羽佐和子の空 ~

      ☀ 清潔なハンカチのような嘘をつく この青空をなくさないため                        

 今月刊行されたばかりの、浅羽佐和子歌集『いつも空をみて』の始めの頁の歌である。
空は時刻により変化する。天気により変化する。彼女の『空』は自身の体のなかの、心のなかの空であろう。二人の幼児を育てながら仕事をしている、歌誌「未来」でも活躍している、スゴイ女性だ。しかも自在に詠んでいる。というより彼女の空へ発信しているのだろう。

    ☀ 九日目あなたに会えない夕暮れに冬空色の入浴剤を

    ☀ 保育園のにおいがしている髪の毛にこの子の一日の長さを思う

    ☀ 何をしたくて走っているのだろう 冷えたレタスをひたすらちぎる

    ☀ 今日やるべき仕事と吾子をだきしめること両方ともできないままで

 先週、浅羽佐和子から送られた歌集を、私はメールのように読んだ。「私だって何をしたくて走っているのかわからないですよ」「家事だって短歌だって両方ともいいかげんよ」

    ☀ 腕時計をみただけなのに 「お子さんが待っているんですね」 と言う運転手

    ☀ ジャンパーのポケットから出てくるドングリを数えてこの子の一日を思う

    ☀ 気づかないふりでなく本当にわからないんだ父親とは

 二人の子育てだけでなく「夫育て」にも苦労してますね、佐和子さん。私も夫という不可解な動物の飼育に苦労してますよ。私がオイシイものはマズイ私が楽しいテレビは退屈な夫。

 ☀ 生ぬるいタイツを脱いで一日が終わるということだけががリアルで

 何気なく詠まれたであろうこの一首に私は共感し感動しました。自分の気持ちをストレートに詠める、推敲に推敲を重ねた歌は完成度が高くても読者に響かないかもしれない。浅羽佐和子サマ 、あなたの空を、青空を失わないように詠み続けてくださいね。

                               12月19日  松井多絵子

   ◆ 浅羽佐和子 ◆

 1972年生まれ。2000年より祖父・浅羽芳郎の影響で作歌をはじめる。 
 2001年 未来短歌会入会 2002年短歌研究新人賞最終選考通過
 2009年 未来年間賞受賞