えくぼ

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蟹のように横歩き

2014-12-03 09:14:15 | 歌う

           ▼ 蟹のように横歩き ▼

▼ 縦に歩く蟹もいるらしさもあらば我は横へ横へと歩く  松井多絵子

 先週の土曜の朝、私は近江の百歳寺への石段を上っていた。200段もの階段を上り始めたとき雨が降り出す。すでに落葉している紅いモミジを踏もながら滑りそうになる。ようやく「わらじ門」に着いた。あと一息だが雨が激しくなった。この寺の次は金剛輪寺、西明寺へゆく予定だ。残念だが引き返すことにした。ぬれ落ち葉の下りの石段は滑り易い。私は横歩きをしながらゆっくり降りた。まるで蟹みたいだ。しかし下りは横歩きが私には安全なのだ。

 東京の紅葉は色あせて散りはじめたが、新聞の広告に紅が多いこと。多いこと。1頁に私の顔の大きさの蟹が2匹も載っていたり、10本の脚をひろげていたり。「豪華ズワイガニをまるごとお届け」「うま味と甘味がじゅわーつと広がる蟹の王さまタラバガニ」、私たちの正月のために育てられてきた蟹たちは旅行のDMにも賑やかだ。「稚内温泉、毛蟹半身、ズワイガニ半身、タラバ蟹脚3本」 北海道の旅で蟹を食すことが多いが細い脚から肉を取り出すのに手間がかかる。まるで白い糸のような肉、10本の脚は腕も兼用なのか蟹は。。

 あのタカアシ蟹は健在だろうか。数年前に水族館の水槽にピタリと添って長い脚を広げたまま立っていた。私から離れない。「この水槽から出たいよー」と私に助けを求めていた。あのタカアシ蟹は何処から来たのか、オスかメスか。いま何歳なのか。長生きしてほしい。      

                            12月3日    松井多絵子 

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