・・・ 殻ちゃん~32回 ・・・
夏休み第一日の殻ちゃんは11時半に昼食をすませ、QA会へ行く。途中で図書館に寄るつもりだったが止めた。この夏休みは本を読むのを楽しみにしていた。図書館に寄って本を借りたら勉強する時間が無くなる。図書館を素通りしQA会へ。テストの始まる25分前に。
ビルの入り口の隅にあるベンチに座り代数のプリントを開く。その時、タワー君が現れる。
殻 ♠ 「あら、足立さん、ちょうどよかったわ。この問題がわからなくて、、。」
足立♠ 「これですか、僕も始めは理解できなかった」 タワー君はメモ帳にボールペンで。
Y= と書く。長い指。きちんとした字だ。「ここが大事です」とボールペンは赤に。
三度繰り返して、ムダのない説明。殻ちゃんは理解できた。
殻 ♠ 「わかりました。昨晩ここを考えていたら眠ってしまって、助かりました」、
40分の数学のテストはタワー君とは別の部屋。終わるとすぐに阿部先生に呼ばれて小部屋で個人指導だ、第1問、こんな初歩的な計算を間違えるなんて困るね。第3問も途中から狂ってる。しかし一番難解な第4問、これは完璧だ。キミは意外に優秀なんだなあ」
殻 ♠ 「実は、この問題、さっき足立さんに教えてもらったばかりで、、」
阿部 ♠ 「彼は熱心に勉強している。ときどき教えてもらうといいね」
数学の後は英語、古文のテスト、まあまあだった。ホッとしてQA会を出て殻ちゃんはビルの外でタワー君を待っていたが現れない。神山中の顔見知りの女の子が三人出てきた、男の子も二人出てきたがタワー君は現れなかった。帰宅するとアキが「テストはできた?」と聞き、「タワー君は来てた?」と聞く。殻ちゃんは首をふるだけで部屋にこもってしまった。
夜の10時すぎ、勉強の途中でベランダで深呼吸する殻ちゃん。夏の星座がローマ字に見えたり、数字になったりする。タワー君の長い指が星を動かしている。星が瞬く。
まだ続きます。どうぞヨロシク。 12月12日 松井多絵子