「伊波真人さま✿✿✿」
歌を十首作るために私は旅をすることが多い。崩れ落ちるかもしれぬトンネルや橋をいくつも通り、命がけで十首を作っているわけである。10月22日朝日夕刊の「あるきだす言葉たち」を読んでいると「なにも旅をしなくたって周りを見渡せばいくらでも詠めるじゃないですか」という伊波真人さまの声が聞こえてくる。「あかりヶ丘ニュータウン」十首は伊波真人さまの周りのことばかり。よく気がつく方ですね。
★猫よけのペットボトルは人間の一日分の水を満たして
※なるほど。私はボトル1本分の水のおかげでこの世にいることができるのだ。
★公園で子供の声がしたけれど覗いてみれば誰もいなくて
※公園には常に子供が遊んでいるという私たちの思い込み。我が家の近くの公園は老人
が多くベンチに座ってぼうっとしている。私も自分の庭のようにおもいながら時々くつろぐ。
★千年後日本であまた出土するイオンモールという名の遺跡
※イオンモールというショッピングセンターは千葉幕張をはじめ大阪、伊丹、福岡、京都など
全国各地にある。千年後は遺跡になり、観光客が平成の御世をどのように想い描くか。
★マンションの窓に明かりがともりだしみんな家庭という庭を持つ
※ 「家庭」のなかには「庭」がありますね。マンションに庭がなくても。
✿✿✿ 伊波真人さまは1984年群馬県生まれ。埼玉県在住。第59回角川短歌賞受賞。
所属結社「かばん」では山田航・法橋ひらく と共に「新かばん三兄弟」と言われるらしい。
山田航からバトンタッチして今年30周年の歌誌「かばん」編集長に。
10月23日 歌壇はどんどん若返り、冬になっても✿✿✿、、松井多絵子