「猫の写真」
現代短歌文庫『小島ゆかり歌集』のなかに「猫眼鏡」というミニ・エッセイがある。
~何かの集まりの折、携帯電話に保存してある愛猫たますけの写真を誰かに見せたりすると、一人二人と音もなく(まるで猫のごとく)近づいて来て、同じようにケータイの画面を差し出す。そこには老若雌雄さまざまな猫が映っている。そして互いの猫を眺めたのち、静かにケータイをしまう。その際必ずと言っていいほど口辺に「ふふっ」という感じの笑みを浮かべる。それは自分の猫の優位を確認した笑みなのだ。~
この辺りを読みながら、私はツイッターのプロフィールに猫の写真が多いことを思った。ほとんどが女性、ご自分の顔写真の代わりに愛猫の写真を。愛らしい顔、妖しい顔、悩ましい顔、さまざまな猫に会う。かなり前から猫を飼っていない私は好ましい猫の写真を見るとつい「フォロー」をクリックしてしまう。猫は一緒に暮らしていると飼い主に似てくるらしいから?
❤ふりむいてみれば黒猫一匹が歩いているのみ、たぶん雌猫
❤黒猫はタンゴが似合うその角をくいっと曲がりまたもどり来よ
❤黒猫と白猫の違いをおもうとき黄色い髪の女が過ぎる
猫はわたしたちに最も身近な動物だ。短歌にもよく詠まれる。わたしもよく詠んでいる。
❤猫ばかり詠まれて犬は詠まれない隣家の犬がわれを見ている
10月22日 松井多絵子