ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

鹿ノ子ダム

2023-12-08 17:13:44 | 北海道
2023年10月22日 鹿ノ子ダム

鹿ノ子ダムは北海道常呂郡置戸町の一級河川常呂川本流にある国土交通省北海道開発局が直轄管理する重力式コンクリートダムです。
常呂川はオホーツク地域の中核北見市街を貫流するほか流域は北海道有数の穀倉地帯となっています。
しかし昭和40年代までは河川整備が遅れる一方、農地開発や流域の人口増加を受け抜本的な治水・利水対策が求められていました。
これを受け建設省(現国土交通省)は『常呂川総合開発事業』を採択、1972年(昭和47年)にダム建設事業が着手され1983年(昭和58年)に鹿ノ子ダムが竣工しました。
鹿ノ子ダムは国土交通省が管理する特定多目的ダムで、常呂川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、流域約570ヘクタールへの特定灌漑用水の供給、北見市など1市2町への上水道用水の供給を目的としています。
また利水放流を利用した管理用発電所(最大出力580キロワット)を備えています。

置戸町中心部から約20キロ、車で20分ほどで鹿ノ子ダムに到着します。
かつてダム下にはキャンプ場がありましたが、今は閉鎖して立ち入りできません。
下流が見れるのはこのアングルだけ。
堤高55メートル、堤頂長222メートル
放流設備として非常用クレストローラーゲート2門と常用コンジット高圧ラジアルゲート1門、さらに利水放流設備2門を装備


右岸ダムサイトにはヘリポート、駐車場があり記念碑や説明板が並びます。


こちらは音声付説明版
ボタンを押すと間寛平や大泉洋など有名人の音声で説明が流れます。


右岸管理事務所と裏手のインクライン・艇庫。


天端親柱にはかわいいバンビの装飾。


天端右岸側からのダム下の眺め。
ダム周辺は紅葉真っ盛り、今回の北海道のダム旅一番の紅葉でした。


ゲートピアとゲートハウス。
一般に巻き上げ機はピアの上にあるのですが、このダムは天端と同じ高さにあります。
ゲートハウスはどうなってるんだろう?


ダム下の眺め
当所はキャンプ場になっていましたが、2008年(平成20年)に閉鎖。
ダム下の建屋は利水放流設備、その先の地下に管理用小水力発電所があります。


利水放流ゲートをズームアップ
放流管が2門あります。


上流面
クレストローラーゲートの間にコンジット予備ゲートが見えます。
右手は選択取水設備。
こちらから見ると、ゲートハウスが変わった位置にあるのがよくわかるでしょう。


左岸のクレーン台座跡が鹿ノ子ダム見晴台になっています。
総貯水容量3980万立米、湖岸各所に親水公園が整備されています。
天気が良ければダム湖の奥に大雪山系が見えるのですがあいにく雲の中。
でも湖岸の紅葉は見ごろ。


堤体を俯瞰
直線重力式ダムか?と思いきや左岸側がわずかに屈曲。


上流から遠望。


ダム名には鹿がつきますが、残念ながら鹿には遭遇せず。
その代わりキタキツネが出迎え。


実は鹿ノ子ダムでは平日限定で事前予約なしで内部見学ができるのですが、訪問したのが日曜日。
平日だったら監査廊やダム下にも行けたのに!!

(追記)
鹿ノ子ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0115 鹿ノ子ダム(2023)
北海道常呂郡置戸町
常呂川水系常呂川
FNAW
55.5メートル
222メートル
39800千㎥/35800千㎥
国交省北海道開発局
1983年
◎治水協定が締結されたダム

富里ダム

2023-12-07 17:02:28 | 北海道
2023年10月22日 富里ダム

富里ダムは北海道北見市本沢の一級河川常呂川水系仁頃川上流にある灌漑目的のロックフィルダムです。
北見市の常呂川流域では明治期より屯田兵の開拓により稲作が始まり現在も広大な水田が広がっています。
一方常呂川左岸から続く丘陵地帯は水利に乏しいうえに圃場も散在しており小規模な畑作経営を余儀なくされていました。
1970年(昭和45年)に北海道開発局により国営畑地かんがい事業(畑かん)北見地区が着手され、その灌漑用水源として1987年(昭和62年)に竣工したのが冨里ダムです。
完成後は北見市が管理を受託し、2500ヘクタールの畑地に灌漑用水を供給しています。
事業全体も1997年(平成9年)に完了し、圃場整備・灌漑施設などにより営農の大規模化・効率化がはかられ、北見は北海道有数の農業地帯となっています。
またダム湖の富里湖周辺は富里森林公園として整備されキャンプやボート、ハイキングなどが楽しむことができ、ダム湖百選に選ばれています。

富里ダムは北見市中心から約17キロ、車で20分ほどに位置します。
堤高44.3メートル、堤頂長280メートル
凍上対策として芝が張られ『富里ダム』と書かれています。


右岸ダム中段にロッジ風の建物がありますが、訪問時は立ち入り禁止。
もとは公衆トイレ?


右岸ダムサイトのダム全体をモチーフにした変わった形の記念碑。


農業用ダムではおなじみの事業説明板。


水利使用標識
畑地灌漑のため年間を通して水利権が配分されています。


天端は徒歩のみ開放


上流面はロック材で護岸
逆光で黒くなってしまいました。


右岸の管理棟
訪問が日曜で職員は不在平日常駐しているかどうかは不明。

天端からダム下を見下ろす。
ダム下は立ち入り禁止
左岸に洪水吐減勢工、右岸に揚水機場と放流設備があります。
灌漑用水は揚水機場から専用幹線水路で供給されます。


総貯水容量280万立米の富里湖
北海道の農業用ダムとしては小ぶりなサイズ。
ダム湖には富里大橋が架かります。


右岸の取水設備。


左岸堤体中段に展示されているダクタイル鋳鉄管
幹線水路に使用されているものです。


左岸の円形越流式洪水吐


ダム湖に架かる富里大橋
対岸上流側に富里湖森林公園があります。
手前はインクライン。


ダム湖岸の富里湖森林公園
コテージやキャンプサイトが整備されています。
紅葉真っ盛りの日曜日、多くの家族連れがキャンプを楽しんでいます。


0126 富里ダム(2022)
北海道北見市本沢
常呂川水系仁頃川
44.3メートル
280メートル
2800千㎥/2630千㎥
北見市
1987年

卯内原ダム

2023-12-06 17:00:55 | 北海道
2023年10月22日 卯内原ダム
 
卯内原ダムは左岸が北海道網走市卯内原、右岸が同市越歳の卯内原川本流にある灌漑目的のロックフィルダムです。
網走市街西方の西網走地区では圃場と未墾地が混在するほか水利に乏しく、生産性向上のため大規模な土地改良が求められていました。
こういった状況を改善するため、1981年(昭和56年)に北海道開発局により国営畑地帯総合土地改良パイロット事業(畑総)西網走地区が着手され、その灌漑用水源として2000年(平成12年)に竣工したのが卯内原ダムです。
完成後は網走市が管理を受託し、当初約3100ヘクタール、現在は2855ヘクタールの畑地に灌漑用水を供給しています。
事業全体も2005年(平成17年)に完了し、圃場整備・灌漑施設・農道の整備などにより営農の大規模化・効率化がはかられました。
 
道道591号から卯内原川沿いを約6キロ南下すると卯内原ダムに到着、左岸ダムサイトに駐車スペースが設けられています。
ダムサイトの事業説明板。
なお、ダム下への管理道路は進入禁止です。

 
天端は車両通行禁止、ただし『徒歩での見学は可能』と書かれています。

 
上流面はロック材で護岸。
陰のため見づらい写真になってしまいました。
対岸に横越流式洪水吐と取水設備・艇庫とインクラインがあります。

 
右岸の管理事務所
日曜早朝のため職員は不在。
常駐しているかどうかは不明です。
実はここに水利使用標識があったのですが写真を撮り忘れました。

 
右手は横越流式洪水吐、左は取水設備と艇庫・インクライン。


ダム下
左は放流設備。
灌漑用水は卯内原川に放流し下流で取水します。

 
総貯水容量430万立米。
畑地灌漑のため年間を通じ水利権が配分され冬場も水は抜かれません。
ダム周辺はトドマツの植林で林業も盛んなようです。


堤体は堤高40.5メートル、堤頂長355メートル
北海道のロックフィルダムらしく凍上防止のため芝が張られています。

 
左岸の横越流式洪水吐。

 
なんと、洪水吐の中でシカが死んでいました。
首がおかしな方に曲がっているので、飛び越えようとして失敗し落下したようです。
合掌!

 
左岸の取水設備
表層取水設備ですがちょっと見たことのないタイプ。

 
(追記)
卯内原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0159 卯内原ダム(2021)
左岸 北海道網走市卯内原
右岸     同市越歳
卯内原川水系卯内原川
40.5メートル
355メートル
4300千㎥/4000千㎥
網走市
2000年
◎治水協定が締結されたダム

協栄ダム

2023-12-05 17:00:10 | 北海道
2023年10月22日 協栄ダム

協栄ダムは北海道北見市川東の一級河川常呂川水系チャシポコマナイ川にあるある灌漑目的のアースフィルダムです。
北見市の常呂川流域では大正末期より水田開拓が着手されますが、耕作期となる4~9月の平均降水量は400ミリに留まり渇水による干ばつが頻発、稲作経営は困難を極めました。
戦後昭和30年代より灌漑用貯水池築造機運が高まり、北海道営事業により1963年(昭和38年)に着工、1965年(昭和40年)に竣工したのが協栄ダムです。
その後、北海道営のため池等整備事業による大規模改修を経て現在に至っています。
当初の管理は受益農家で組織される協栄ダム土地改良組合が受託していましたが、現在は北見市管理となっています。
ダムサイトの記念碑には完成当時の受益農家は51戸、受益農地は412町歩(416ヘクタール)と刻されていますが、現在の受益農地は75.8ヘクタールまで減少しています。
これは減反政策や高い採算性を求めての畑作や園芸農業への転作が主因と思われます。

道道122号線からチャシポコマナイ川沿いのダート道を約1キロ南下すると協栄ダムに到着します。
堤高18.6メートル、堤頂長88メートルのアース堤体。
左岸に洪水吐があります。


洪水吐斜水路と減勢工
北海道の溜池でよく見られるようにコンクリートの梁が渡されています。
減勢工わきに底樋管があるのですが、撮影ポイントがありません。


ダム下が土捨て場として盛土されているため、見た目の高さは12~3メートルほど。


天端は立ち入り禁止。


ため池等整備事業の説明板。
実際は溜池スペックなんですが、北海道のため池データベースや北見市のため池ハザードマップに記載はないので、農業用ダムという扱いなんでしょう。


水利使用標識。


ダムサイトの竣工記念碑。

隣には日本の代表的水神である『水波之女(ミズハノメ)大神』が祀られています。


総貯水容量40万立米の貯水池。
灌漑対象は水田ですでに灌漑期は終わっているため水が抜かれています。


上流面はコンクリートで護岸
対岸に横越流式洪水吐と取水設備があります。


取水設備は北海道で多く採用されている多孔式斜樋。
足元に土砂吐ゲートが見えます。

北見は北海道稲作発祥の地とも言われていますが、今や当地区の農業の主体は畑作。
受益農地は築造当初の5分の1まで減少し、協栄ダムの行く末が気になるところです。

(追記)
協栄ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

3354 協栄ダム(2020)
北海道北見市川東
常呂川水系チャシポコマナイ川
18.6メートル
88メートル
400千㎥/385千㎥
北見市
1965年
◎治水協定が締結されたダム

古梅ダム

2023-12-04 17:00:19 | 北海道
2023年10月21日 古梅ダム
 
古梅ダムは左岸が北海道網走郡美幌町古梅、右岸が同町日並の一級河川網走川水系石切川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
オホーツク総合振興局管内の女満別町(現大空町)と美幌町にわたる美女地区では、冷涼な気候と夏場の少雨の下で非効率な畑作営農を余儀なくされ、生産性向上のため抜本的な農業水利支援が求められていました。
こういった状況を改善するため、1972年(昭和47年)に北海道開発局により国営かんがい排水事業女満別地区が着手され、その灌漑用水源として1996年(平成8年)に竣工したのが古梅ダムです。
完成後は女満別町、現在は大空町と美幌町が共同で管理を受託し、約3150ヘクタールの畑地に灌漑用水を供給しています。
事業の完成により美女地区では営農の効率化・集約化がはかられ北海道有数の小麦・馬鈴薯・てんさい産地となっています。

美幌町古梅の国道243号線から南東に約4キロ超、車で15分ほどで古梅ダムに到着します。
途中にゲートがありますが、これは害獣防除用のため開閉して通ることができます。
開けたら必ず閉めましょう!


まずはダム下へ
下流からその全貌を見ることはできません。

 
河原に下りると洪水吐斜水路と正対できます。
副ダム下流には洗堀防止のブロック工が敷かれています。

 
左岸ダムサイトまで車で入れます。
堤高48メートル、堤頂長215.9メートル
北海道のロックフィルダムらしく凍上防止のため芝が張られています。

 
天端は車止めがあり徒歩のみ開放。

 
ダムサイトの事業説明板。


左岸に展望台がありダムを俯瞰できます。

 
展望台にある竣工記念碑。


左岸ダムサイトの水利使用標識。
畑地灌漑のため年間を通して水利権が配分されています。

 
立派な管理事務所
訪問したのは土曜日ですが、職員が駐在しています。

 
管理事務所裏手にはインクラインと取水塔があります。
傾きかけた日差しに照らされ赤が鮮やか!

 
上流面はコンクリートで護岸。

 
天端からダム下を望む
右手に洪水吐斜水路、中央の建屋は河川維持放流設備
林の奥に調圧水槽やポンプ室があります。
受益農地へはここから専用の幹線水路で送水されます。

 
総貯水容量は350万立米
北海道の農業用ダムとしては小規模な方です。
水利権は年間を通して配分されていますが、10月~4月までの取水量は毎秒0.045立米に留まるため、貯水位もそれに応じて下げられています。

 
右岸の横越流式洪水吐。

0122 古梅ダム(2019)
左岸 北海道網走郡美幌町古梅
右岸        同町日並
網走川水系石切川
48ートル
215.9メートル
3500千㎥/3230千㎥
大空町・美幌町
1996年

緑ダム

2023-12-03 17:00:05 | 北海道
2023年10月21日 緑ダム
 
緑ダムは北海道斜里郡清里町の斜里川水系アタックチャ川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
北海道北東部のオホーツク総合振興局管内の斜網地域では冷涼な気候と乏しい水利の下、非効率な畑作営農を余儀なくされ生産性向上のため抜本的な農業水利支援が求められていました。
こういった状況を改善するため、昭和40年代より北海道開発局により小清水・斜網西部・斜里3地区で国営畑地帯土地改良パイロット事業が採択され、その共同水源として1974年(昭和49年)に事業化されたのが緑ダムです。
ダム建設工事は1985年(昭和60年)に着手され2003年(平成15年)に竣工、各土地改良事業も2005年(平成17年)から2010年(平成22年)にかけて完了しました。
緑ダムの管理は清里町と網走市が受託していますが、実際の管理は清里町に委任され3地区合計1万8500ヘクタールもの畑地に灌漑用水を供給しています。
事業の完成により斜網地域では営農の効率化・集約化がはかられ北海道有数の小麦・馬鈴薯・てんさい産地となっています。
また2016年(平成28年)には農業用ダムとしては北海道初となる利水放流を利用した小水力発電所(最大出力523キロワット)が稼働しました。
 
清里町清泉の道道1115号から1車線の舗装路を約10キロ、車で30分ほど東進すると緑ダムに到着します。
ダム下への管理道路は進入禁止のため、下流面は右岸からのみ。
堤高73メートル、堤頂長345メートルと横長堤体の多い北海道のフィルダムの中ではかなりの高さを誇ります。
また凍上対策の芝も張られていません。

 
右岸の洪水吐斜水路

 
天端入り口には車止めのバリケードが設置されていますが、徒歩での立ち入り規制はありません。

 
横越流式洪水吐
奥は取水設備や艇庫を兼ねた管理棟
訪問したのが土曜日のため職員の常駐があるのかどうかは不明。

 
上流から見た洪水吐
左手は監査廊入り口。

 
竣工記念碑。

 
水利使用標識
受益農地は1万8514ヘクタールと広大
畑地灌漑のため年間を通して水利権が配分されています。


天端から管理棟を遠望
左手がインクライン、右手が斜樋。


堤体を管理道路が九十九折れに登りますがこれも通行禁止。
ダム下に放流設備や小水力発電所があるはずですがわずかに建屋が見えるのみ。

 
天端から見た右岸の眺め
対岸の高台に展望台があるのでこのあと行ってみよう。

 
左岸の監査廊入り口とリムトンネル。

 
車で展望台に上がってきました。
写真の事業説明板のほか、ダムの平面図と断面図が設置されています。


天端からの眺め
絶景です!
これが首都圏近郊なら一大観光地でしょう?
貯水池は総貯水容量710万立米で畑地灌漑のため冬場も水は抜かれません。

 
堤体をズームアップ
ダムの型式に関わらず、個人的にはこのアングルが一番の好み。

 
0176 緑ダム(2018)
北海道斜里郡清里町
斜里川水系アタックチャ川
73ートル
345メートル
7100千㎥/6400千㎥
清里町
2003年

牧の内ダム

2023-12-02 17:10:38 | 北海道
2023年10月21日 牧の内ダム
 
牧の内ダムは北海道根室市牧の内のコタンケシ川水系コタンケシ川にある根室市水道課が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
根室市水道事業の歴史は古く1896年(明治29年)に全国で6番目、北海道では函館について2番目に近代水道事業が開始されました。
戦後の復興から高度成長に併せ数次にわたる事業拡張が進められ、牧の内ダムは1980年(昭和55年)に根室市初の上水用ダムとして竣工しました。
現在は簡易水道を除く配水量の約3分の1を牧の内ダムが担っています。
牧の内ダムはロシアが不法占拠する北方4島を除き我が国最東端に位置するダムとしてダム愛好家に周知されていますが、上水用ダムという性格からダム周辺は広く立ち入り制限され見学ポイントは下流から遠望するにとどまります。
今回は写真を撮るだけという条件で、ダムの下流への接近を許可していただきました。
 
牧の内ダムは根室半島中央部に位置し、市街から車で10分超でダムに到達します。
ダムに通じるダートの道の行き止まりに2014年(平成26年)に改築された第二ポンプ場が現れます。
貯水池の水はここから約5キロの導水管で浄水場に送られます。

 
道路の終点は広場になっており、写真右方向約200メートルほどにダムがあります。
ダム下や天端に通じる道にはチェーンが張られ関係者以外立ち入り禁止の看板。

 
今回は写真を撮るためダムがよく見える場所までの接近を許可していただきました。

 
堤高18.5メートル
堤頂長は105メートル
市町村が管理する上水ダムらしく、洪水吐はクレスト自由越流頂1門だけ。
ダム直下に放流設備があるようですが、市との約束でこれ以上の進入は自重。

 
手前の建屋がは放流設備機械室か?


せっかく根室まで来たので、納沙布岬に立ち寄ります。


納沙布岬灯台。
灯台50選で、こちらもロシアが不法占拠する北方領土を除く我が国最東端の灯台という枕詞がつきます。


0170 牧の内ダム(2017)
北海道根室市牧の内
コタンケシ川水系コタンケシ川
18.5メートル
105メートル
696千㎥/500千㎥
根室市水道課
1980年

平取ダム見学

2023-12-01 09:00:00 | ダム見学会
2023年10月19日 平取ダム見学
 
2023年(令和5年)10月19日から一週間かけて北海道のダム巡りをしてきました。
そのうち事前に説明付き見学を要請した3基の国土交通省直轄ダムで管理支所長さま直々のガイドによる見学が叶いました。
まずは北海道初日の10月19日の平取ダム見学について内容を詳しく紹介したいと思います。
ダムの詳細については『平取ダム』を参照ください。
 
今回は平取ダム管理支所長様直々のガイドによる見学です。
約束したのは13時。
昼過ぎに激しい雨が降り内心ひやひやしましたが、ダムに到着するころには雨も上がりホッと一息。
左岸ダムサイトで支所長様と待ち合わせし、ダムの概要について簡単に説明を頂きました。
こちらはダムサイトにある電源室。
実は管理支所は堤体から約800メートル東方のダム湖岸にあります。


ダム左岸段丘上は透水性の高い砂礫層となっています。
そのため、地中に連続地中壁を設け遮水を行います。
写真の砂利の下に連続地中壁が埋設されています。


このマンホールのある場所が堤体と連続地中壁の接続地点。


堤頂350メートルの過半を左岸段丘部が占めます。


上流側。


ダム周辺にはアイヌの聖地が多く所在し、ダムサイトにはその説明板が設置されています。


左岸は川によってもたらされた砂礫が堆積してできた段丘です。


天端
徒歩のみ開放。


天端高欄のダムのプレート。
竣工後まだ1年ちょっとということでピッカピカ。


天端からの眺め
河床部は左右両岸に堤趾導流壁とフーチングが設けられています。


過度の装飾が許されないご時世
天端高欄や建屋はシンプル。


クレスト越流頂と取水設備。


総貯水容量は4580万立米
ダムは額平川と宿主別川の合流地点直下に建設されており左は額平川、右手が宿主別川になります。


左から魚道、利水放流設備、非洪水期オリフィス、洪水期オリフィス、融雪期放流設備という並び。


利水放流設備と魚道をズームアップ。
河川維持放流は魚道優先で行われます。
また俎上する魚が利水放流ゲートに向かわないよう段差が設けられています。 


オリフィスをズームアップ
左が非洪水期、右のデフレクター付きが洪水期オリフィス。 


一番右岸にあるのが融雪期放流設備。
4~6月の融雪期は水量豊富で利水供給に余裕があるため、平取ダムの貯水池を空にし流水運用を行います。
豊富な流量の掃流により貯水池内の土砂を排出して堆砂を防ぐ仕組みです。


右岸から見た天端建屋群。
手前が融雪期放流ゲートの機械室。


融雪期放流ゲートを開閉するためのワイヤーが見えます。


右岸から下流面
堤趾導流壁とフーチングで仕切られた部分は堤体の半分でしかありません。


次にダム下に向かいます。
普段は立ち入り禁止ですが、今回は特別の配慮で見せていただきます。


多彩なゲートに目が釘付け。
しかも見えているのは350メートルの堤体全体の半分に過ぎないという…
洪水調節は自然調節で、非常用洪水吐としてクレスト自由越流頂11門、非洪水期および洪水期用オリフィス各1門ずつを装備。
堤体下部には向って左手から土砂流下を目的とする融雪期放流設備、利水放流ゲート、魚道が並びます。

 
土砂排出を目的とする融雪期放流設備は摩耗を防ぐためステンレス等でライニングされています。
これは宇奈月ダムでの実績を生かした技術だそうです。


下流のポールは水位計。


河床の左岸に魚道が設置されています。
サクラマスの遡上に配慮したもので、河川維持放流は魚道を優先して行われます。


魚道はそのまま堤体を潜ります。


熟成のためにお酒が貯蔵されていました。


以上がダムの見学。
最後にダム管理所に併設されている「ノカピライウォ・ビジターセンター」に案内していただきました。
ここではアイヌの文化保全の取り組みについてパネルや展示物で紹介され、アイヌの文化や風習を詳しく知ることができます。
プロジェクトマッピングを使った斬新な展示となっています。


アニメが人気化し実写映画化も決まった「ゴールデンカムイ」で注目を浴びるアイヌ料理についても詳しく説明されています。


北海道で一番新しいダム、そして全国でもここだけという融雪期放流設備など見どころの多い平取ダム。
今回は特別のご配慮でダムを詳しく見学させていただきました。
一般の方が同じような見学を求めるのは無理ですが、今後もりみず旬間などで見学会が開催される機会もあるでしょう。
ただダムを見てカードをもらうだけじゃなく、珍しい運用方法にも興味を持っていただければ、併せてアイヌの文化や風習にも触れていただければと思います。

最後に繰り返しになりますがご多忙の中貴重なお時間をとっていただいた平取ダム管理支所及び支所長様には厚く御礼申し上げます。