ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

平取ダム見学

2023-12-01 09:00:00 | ダム見学会
2023年10月19日 平取ダム見学
 
2023年(令和5年)10月19日から一週間かけて北海道のダム巡りをしてきました。
そのうち事前に説明付き見学を要請した3基の国土交通省直轄ダムで管理支所長さま直々のガイドによる見学が叶いました。
まずは北海道初日の10月19日の平取ダム見学について内容を詳しく紹介したいと思います。
ダムの詳細については『平取ダム』を参照ください。
 
今回は平取ダム管理支所長様直々のガイドによる見学です。
約束したのは13時。
昼過ぎに激しい雨が降り内心ひやひやしましたが、ダムに到着するころには雨も上がりホッと一息。
左岸ダムサイトで支所長様と待ち合わせし、ダムの概要について簡単に説明を頂きました。
こちらはダムサイトにある電源室。
実は管理支所は堤体から約800メートル東方のダム湖岸にあります。


ダム左岸段丘上は透水性の高い砂礫層となっています。
そのため、地中に連続地中壁を設け遮水を行います。
写真の砂利の下に連続地中壁が埋設されています。


このマンホールのある場所が堤体と連続地中壁の接続地点。


堤頂350メートルの過半を左岸段丘部が占めます。


上流側。


ダム周辺にはアイヌの聖地が多く所在し、ダムサイトにはその説明板が設置されています。


左岸は川によってもたらされた砂礫が堆積してできた段丘です。


天端
徒歩のみ開放。


天端高欄のダムのプレート。
竣工後まだ1年ちょっとということでピッカピカ。


天端からの眺め
河床部は左右両岸に堤趾導流壁とフーチングが設けられています。


過度の装飾が許されないご時世
天端高欄や建屋はシンプル。


クレスト越流頂と取水設備。


総貯水容量は4580万立米
ダムは額平川と宿主別川の合流地点直下に建設されており左は額平川、右手が宿主別川になります。


左から魚道、利水放流設備、非洪水期オリフィス、洪水期オリフィス、融雪期放流設備という並び。


利水放流設備と魚道をズームアップ。
河川維持放流は魚道優先で行われます。
また俎上する魚が利水放流ゲートに向かわないよう段差が設けられています。 


オリフィスをズームアップ
左が非洪水期、右のデフレクター付きが洪水期オリフィス。 


一番右岸にあるのが融雪期放流設備。
4~6月の融雪期は水量豊富で利水供給に余裕があるため、平取ダムの貯水池を空にし流水運用を行います。
豊富な流量の掃流により貯水池内の土砂を排出して堆砂を防ぐ仕組みです。


右岸から見た天端建屋群。
手前が融雪期放流ゲートの機械室。


融雪期放流ゲートを開閉するためのワイヤーが見えます。


右岸から下流面
堤趾導流壁とフーチングで仕切られた部分は堤体の半分でしかありません。


次にダム下に向かいます。
普段は立ち入り禁止ですが、今回は特別の配慮で見せていただきます。


多彩なゲートに目が釘付け。
しかも見えているのは350メートルの堤体全体の半分に過ぎないという…
洪水調節は自然調節で、非常用洪水吐としてクレスト自由越流頂11門、非洪水期および洪水期用オリフィス各1門ずつを装備。
堤体下部には向って左手から土砂流下を目的とする融雪期放流設備、利水放流ゲート、魚道が並びます。

 
土砂排出を目的とする融雪期放流設備は摩耗を防ぐためステンレス等でライニングされています。
これは宇奈月ダムでの実績を生かした技術だそうです。


下流のポールは水位計。


河床の左岸に魚道が設置されています。
サクラマスの遡上に配慮したもので、河川維持放流は魚道を優先して行われます。


魚道はそのまま堤体を潜ります。


熟成のためにお酒が貯蔵されていました。


以上がダムの見学。
最後にダム管理所に併設されている「ノカピライウォ・ビジターセンター」に案内していただきました。
ここではアイヌの文化保全の取り組みについてパネルや展示物で紹介され、アイヌの文化や風習を詳しく知ることができます。
プロジェクトマッピングを使った斬新な展示となっています。


アニメが人気化し実写映画化も決まった「ゴールデンカムイ」で注目を浴びるアイヌ料理についても詳しく説明されています。


北海道で一番新しいダム、そして全国でもここだけという融雪期放流設備など見どころの多い平取ダム。
今回は特別のご配慮でダムを詳しく見学させていただきました。
一般の方が同じような見学を求めるのは無理ですが、今後もりみず旬間などで見学会が開催される機会もあるでしょう。
ただダムを見てカードをもらうだけじゃなく、珍しい運用方法にも興味を持っていただければ、併せてアイヌの文化や風習にも触れていただければと思います。

最後に繰り返しになりますがご多忙の中貴重なお時間をとっていただいた平取ダム管理支所及び支所長様には厚く御礼申し上げます。


2 コメント

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感謝🙏 (tibineko)
2023-12-01 14:14:50
今回のダムのご案内、いつも興味深いのですが、今回は更に興味深く拝読しました。
朝一で読ませて頂き、通院の為に中断し、帰宅して再読。
改めて「平取りダム」の凄さに圧倒されました。
魚道優先の画像も、また最後のアイヌ文化の紹介も
何もかも、まるで短編小説を読んでいるような感じで、心に残りました。
知らない世界を見せて頂き、今日も感謝です。
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Unknown (tibinekoさま)
2023-12-04 02:16:43
アイヌの信仰も仏教伝来以前の日本と同じ森羅万象を信仰の対象として崇めるというスタイルです。
大きく異なるのは個人や家庭によって信仰の対象が異なるという点。
Aさんはあの山を、Bさんはあの岩をという感じで、人それぞれの信仰の対象を持っていました。
アイヌが「国家」という形態に至らなかった理由が何となく理解できました。
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