ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

田沢川ダム

2023-09-30 17:00:11 | 山形県
2016年9月 4日 田沢川ダム
2023年7月25日
 
田沢川ダムは山形県酒田市山元の最上川水系相沢川左支流田沢川にある山形県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
相沢川および田沢川は古くから流域の貴重な灌漑用水源となっていましたが洪水や渇水が多く抜本的な治水・利水対策が求められていました。
一方人口増や生活様式の変化により酒田市では都市用水需要が増加し、新たな上水道水源の確保が課題となっていました。
そんな中、1972年(昭和47年)に相沢川流域で甚大な洪水が発災、これを契機に県は最上川2次支流田沢川への多目的ダム建設を採択、2001年(平成13年)に竣工したのが田沢川ダムです。
田沢川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで田沢川および相沢川の洪水調節(最大毎秒200立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、酒田市への上水道用水の補給を目的とするほか河川維持放流を利用した小水力発電(最大出力490キロワット)を行っています。
田沢川ダムには2016年(平成28年)9月に初訪、2023年(令和5年)7月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
ダム下へ通じる管理道路は立ち入り禁止。
右岸ダムサイトに駐車場がありここから見学を始めます。
クレスト自由越流頂8門、自然調節式オリフィス1門を備えたゲートレスダムです。
(2023年7月25日)

 
ダムサイトのモニュメント。
(2016年9月4日)

 
天端は徒歩のみ開放
右手はエレベーター棟、左手は取水設備機械室。
(2023年7月25日)

 
再訪時は直前の梅雨前線による大雨を受けて満水
オリフィスから越流しています。
減勢工には副ダムのほか導流堤が設けられています。
(2023年7月25日)

 
天端にもモニュメントがあります。
完成は2001年(平成13年)ですが、着工がバブル期だったためかあれやこれや贅沢な作り。
(2016年9月4日)

 
総貯水容量910万立米のダム湖(ひらた赤滝湖)。
(2016年9月4日)

 
右岸の浮桟橋と巡視艇。
(2023年7月25日)

 
左右両岸には堤趾導流壁とフーチング。
(2023年7月25日)

 
左岸ダムサイト
左手は監査廊入り口。
(2023年7月25日)

 
上流面。
(2016年9月4日)

 
左岸の展望台から。
(2023年7月25日)

 
ズームアップ。
(2023年7月25日)

 
右岸上流から
取水設備とオリフィスゲートの並びがよくわかります。
(2016年9月4日)

(追記)
田沢川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0449 田沢川ダム(0539)
山形県酒田市山元
最上川水系田沢川
FNW
81メートル
185メートル
9100千㎥/7900千㎥
山形県県土整備部
2001年
◎治水協定が締結されたダム

高坂ダム

2023-09-28 17:00:38 | 山形県
2016年9月 5日 高坂ダム
2023年7月25日
 
高坂ダムは山形県最上郡真室川町差首鍋の一級河川最上川水系鮭川にある山形県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
鮭川では1952年(昭和27年)、1956年(昭和31年)と立て続けに甚大な洪水被害が発生し、これを契機に山形県は『大沢川総合開発事業』を採択し治水ダム建設に着手します。
これに発電事業者として県企業局が参加し1967年(昭和42年)に竣工したのが高坂ダムです。
高坂ダムは建設省(現国交省)の補助を受けた補助多目的ダムで、鮭川の洪水調節(最大毎秒410立米の洪水カット)および山形県企業局大沢川発電所(最大出力5000キロワット)でのダム式発電を目的としています。
高坂ダムには2016年(平成28年)9月に初訪、2023年(令和5年)7月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
国道344号からダムの標識に従い東に折れるとゲートに到着します。
ここに車を置いて徒歩でダムへと向かいます。
(2023年7月25日)

 
歩くこと1~2分で正面にダムが姿を現します。
放流設備はクレストラジアルゲート1門だけ。
(2016年9月5日)

ゲートをズームアップ
フラッシュボードがついています。
右手は取水設備機械室。
(2016年9月5日)

 
ダムの手前にはトンネル。
(2016年9月5日)


トンネル内部
(2016年9月5日)

 
ダムサイトに到着。
(2016年9月5日)

 
上流面
対岸に管理所とインクライン・艇庫があります。
ダムから離れた国道344号線沿いに新しい管理所がありますが、ゲート操作はこちらで行います。
(2023年7月25日)

 
ゲート越しに減勢工を見下ろします。
手前はフラッシュボードのフラップ
ダム左下が県企業局大沢川発電所。
(2023年7月25日)

 
位置を変えて
水色の屋根が大沢川発電所
当初はダム水路式で計画されましたが、河川傾斜が緩く有効落差が稼げないためダム式に変更されました。
そのためか、発電所はダム下の狭いスペースに無理やり押し込めたように建っています。
(2023年7月25日)

 
総貯水容量1905万立米のダム湖《梅花里湖(ばいかりこ)》
中国の南画の様な山が続きます。
一見水位が低そうですが、撮影時は洪水期のためこれでほぼ満水。
(2016年9月5日)

 
天端はゲート部分が上流側にクランク
奥はゲートハウス、手前は取水設備機械室。
(2023年7月25日)

水利使用標識。
(2023年7月25日)


左岸の管理所とインクライン。
(2023年7月25日)

 
左右両岸共にスペースがなく下流面が見れるのはこの位置だけ。
(2016年9月5日)


上流面
取水設備の水色の塗装が際立ちます。
(2023年7月25日)

 
インクラインの下に巡視艇が2隻。
(2023年7月25日)

 
(追記)
高坂ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0434 高坂ダム(0548)
山形県最上郡真室川町差首鍋
最上川水系鮭川
FP
57メートル
118.7メートル
19050千㎥/12750千㎥
山形県県土整備部
1967年
◎治水協定が締結されたダム

桝沢ダム

2023-09-26 17:00:04 | 山形県
2016年9月 3日 桝沢ダム
2023年7月25日

枡沢ダムは山形県最上郡金山町下野明の最上川水系枡沢川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
新庄盆地北部、最上川支流の泉田川・金山川流域では広大な扇状地に農地が広がりますが、水源となる河川は伏流水が多いため用水不足が頻発し生産性向上のため安定した水源確保と灌漑施設の整備が求められていました。
これを受け1952年(昭和27年)に国営かんがい排水事業として『泉田川農業水利事業』が着手され、その灌漑用水源として1963年(昭和38年)に桝沢ダムが竣工、事業全体も1967年(昭和42)に完了しました。

桝沢ダムの管理は山形県農林水産部が受託し、泉田川土地改良区管内の水田(当初は約3500ヘクタール、現在は減反や離農などにより1500ヘクタール)に灌漑用水を供給しています。
ダム建設に際し、当地区の主水源である土内川にダム建設適地がなかったことから北側約1.5キロの桝沢にダムを建設し土内川の頭首工からダムに導水しています。
桝沢ダムには2016年(平成28年)9月に訪問、今回2023年(令和5年)7月は土内川の取水堰である第一頭首工を見学しました

下流から。
堤高65.8メートル、堤頂長194.8メートルと農業用コンクリートダムとしてはなかなかのスケール。
昭和30年代竣工ということでクレストゲート2門を装備。

 
堤体上には巨大な取水設備機械室。
そして農業用ダムでは珍しいエレベーター棟を備えています。

 
アングルを変えて。

 
残念ながらダム敷地は開放されておらず、ダムへ通じる管理用トンネル入り口でゲートアウト。

こちらは桝沢ダムと土内川の取水堰である第一頭首工の位置関係
桝沢ダムの流域面積29.8平方キロのうちその9割近い26平方キロが第一頭首工からの導水によります。


右岸にローラーゲート2門
自由越流頂で土内川を閉め切ります。

 
ゲート直上にある取水口
最大毎秒2.5立米を取水します。


桝沢ダムへ通じる導水隧道
訪問時は灌漑期ですが、直前の梅雨前線による大雨でダムが満水のためか取水は行われていません。

 
上流から。
 
頭首工の操作室。

 
水利使用標識
取水量が毎秒2500立米になっていますが、明らかに桁間違い。


機会があれば管理者である山形県農林水産部もしくは泉田川土地改良区にダム敷地での見学許可をお願いしたいと思います。
 
(追記)
桝沢ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0432 枡沢ダム(0536)
山形県最上郡金山町下野明
最上川水系泉田川
65.8メートル
194.8メートル
6805千㎥/6751千㎥
山形県農林水産部
1963年
◎治水協定が締結されたダム

神室ダム

2023-09-20 17:00:24 | 山形県
2016年9月 3日 神室ダム
2023年7月24日
 
神室ダムは山形県最上郡金山町有屋の一級河川最上川水系金山川にある山形県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
最上川3次支流の金山川は古くから流域の貴重な灌漑用水源となる一方、洪水や渇水が多く抜本的な治水対策が求められていました。
また高度成長以降の都市用水需要増加への対処も重要課題となっていました。
これを受け、県は1977年(昭和52年)に金山川上流部への多目的ダム建設を採択、1993年(平成5年)に竣工したのが神室ダムです。
当所は金山ダムとして事業化されましたが、同名のダムが北海道にあることから神室ダムに名称変更されました。
神室ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、金山川の洪水調節(最大毎秒272立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、新庄市・真室川町・金山町への上水供給を目的としています。
さらに2017年(平成29年)には河川維持放流を利用した小水力発電所(最大出力420キロワット)が稼働しました。
ダム建設地点は栗駒国定公園内にあることからダム建設に際してはシビックデザインを採用し環境との調和が図られています。
さらにダム建設がバブル期を挟んだこともあり、ダム一帯をレクリエーション拠点化とするためダム下の公園整備など周辺環境整備がことさら注力されました。
しかしダム完成から30年、バブル崩壊以降の景気低迷や財政のひっ迫等もあり公園施設は荒廃、廃墟化。
各種モニュメントや天端高欄の意匠などが当時の面影を残すのみです。
神室ダムには2016年(平成28年)9月に初訪、2023年(令和5年)7月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
金山中心部から県道72号雄勝金山線を約9キロ東進すると神室ダムに到着します。
クレスト自由越流頂10門、自然調節式オリフィス2門を装備
初訪時は事前に通過した台風10号の影響で水位が上がり2門のオリフィスから放流中。
また堤体直下では小水力発電所の建設工事が進められていました。
(2016年9月3日)

 
再訪時も梅雨前線による大雨を受け薄く越流中
手前の建屋は2017年(平成29年)に稼働した小水力発電所。
(2023年7月24日)

左岸から下流面。
堤高60.6メートル、堤頂長257メートル。
(2023年7月24日)


天端は徒歩のみ開放。
(2023年7月24日)

 
ダムサイトにも種々のモニュメントが並びます。
(2023年7月24日)

管理事務所の壁には巨大なレリーフ。
(2023年7月24日)

天端から
初訪時は発電所が建設中で手前の利水放流設備から放流中。
ダム完成当時、写真左手の森は芝生の公園として整備されましたが今は木が茂り荒廃。
県ダムあるあるです。
(2016年9月3日)

 
ほぼ同じアングルで。
(2023年7月24日)

左が放流設備、右が小水力発電所。
(2023年7月24日)


総貯水容量740万立米の神室湖
一帯は国定公園で豊かなブナ林が広がっています。
山を越えると秋田県。
(2023年7月24日)


初訪時
天端路面は石敷風の化粧型枠、高欄も石積み風とさすがバブル期のダム。
(2016年9月3日)


再訪時、路面はアスファルトに変わっていました。
(2023年7月24日) 


上流面。
(2023年7月24日) 


再訪時、湖畔はヤマユリが満開
気温35度超えの猛暑でしたが、ダム周辺にはユリの馨しい香りが漂い絶好の暑気払いとなっていました。
(2023年7月24日) 


(追記)
神室ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0445 神室ダム(0537)
山形県最上郡金山町有屋
最上川水系金山川
FNW
60.6メートル
257メートル
7400千㎥/5800千㎥
山形県県土整備部
1993年
◎治水協定が締結されたダム

最上小国川流水型ダム

2023-09-18 05:00:40 | 山形県
2016年9月10日 最上小国川流水型ダム
2023年7月24日

最上小国川流水型ダムは山形県最上郡最上町富澤の一級河川最上川水系最上小国川にある山形県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
最上小国川は手つかずの自然が残りアユが遡上する川として知られる一方、原始河川として治水対策が施されず川が貫流する赤倉温泉街ではたびたび出水被害を被っていました。
当所は目的FNの補助治水ダムとして着手されますが、自然保への配慮もあり境への負荷が低いとされる流水型治水専用ダムに変更し2019年(令和元年)に竣工しました。
併せてダムの名称も当初の最上小国ダムから最上小国流水型治水ダムに変更されました。
補助ダムとしては全国で5番目、東北初の流水型治水ダムとなり、洪水時には最大毎秒250立米の洪水をカットします。
最上小国流水型ダムには本体掘削中の2016年(平成28年)9月に初訪、2023年(令和5年)7月に再訪しました。
前半3枚は初訪時、残りは再訪時の写真となります。
 
赤倉温泉から県道262号を南下するとダム建設現場が見えてきます。
道路わきには骨材プラントとコンクリート精製プラント。


ちょうど本体掘削が始まったばかり。

 
ダム建設予定地直上の砂防ダム。
流水型治水ダムですので、ダムが完成してもダム湖には沈まず貯砂ダムとして機能させるようです。

ここからは2023年7月の再訪時の写真となります。
堤高41メートル、堤頂長143メートルの小ぶりな堤体。
放流設備としてクレスト自由越流頂6門と常用洪水吐となる放流管2門を装備。
副ダムにはスリットが入っています。


少しズームアップ
平時は流入量はそのまま放流管から放流されます。

 
波返しの付いた堤趾導流壁。


左岸ダムサイトの記念碑。


残念ながら天端は立ち入り禁止
左は監査廊入り口。

親柱には施工業者によるプレート。

竣工プレート。

 
ダムサイトの管理事務所
職員の常駐はなく巡回のみ。

 
上流面。
天端の赤い手すりがいいアクセント。

 
流水型ですので、当然普段はダム湖は空っぽ
総貯水容量230万立米のうち、洪水には有効貯水容量210万立米を貯め込み、最大毎秒250立米の洪水調節を行います。
奥にあるのは3枚目写真の砂防ダムで今は貯砂ダムとして機能
手前は転流工のための仮締切を利用した流木除け。
流水型にして水質は保全できますが、俎上した魚はこの砂防で行き止まりのような・・・


流木除けをズームアップ。
仮締切を利用しており、ダム建設中は写真右手に仮排水路が設けられていました。


3250 最上小国川流水型ダム(0552)
山形県最上郡最上町富澤
最上川水系最上小国川
41メートル
143メートル
2300千㎥/2100千㎥
山形県県土整備部
2019年

鶴沢溜池(鶴沢ダム)

2023-09-16 17:00:58 | 山形県
2016年9月 3日 鶴沢溜池(鶴沢ダム)
2023年7月24日

鶴沢溜池は山形県尾花沢市鶴子の最上川水系丹生川左支流鶴子沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1931年(昭和16年)に鶴子沢土地改良区の事業で竣工と記されており、土地改良区の前身となる耕地整理組合もしくは水利組合の事業、つまり受益農家の持ち出しにより建設されたと思われます。
その後2016年(平成28年)~2021年(令和3年)にかけて山形県営ため池等整備事業による大規模な改修が行われました。
現在の管理者は鶴子六沢土地改良区です。
なおダム便覧では鶴沢ダムとなっていますが、ここではため池データベースや現地記念碑に倣い鶴沢溜池と記します。
またダム便覧の堤高17メートルに対しため池データベースや尾花沢市ため池ハザードマップでは堤高14.9メートルとなっており、これを採ればダムの要件未達となります。

鶴沢溜池には改修工事着手直後の2016年(平成28年)9月に初訪、2023年(令和5年)7月に再訪しました。
まずは初訪時の写真です。
すでに改修工事は着手され、池へ通じる道路にはバリケードが設置されていましたが、工事関係者の了解を得て見学しました。
 
池下には重機が置かれ、堤体を斜行して作業用道路がつけられています。


測量用のポールが各所に立てられています。
右岸(向かって左)に洪水吐導流部がありますが、自然の流れを利用した原始的な作り。


天端。建物は斜樋の機械室。


工事に備え水は抜かれています。


この溝が洪水吐
堤体に切り込みを入れた簡易な洪水吐です。


ここからは2023年7月の再訪時の写真となります。
堤体はきれいに成型され右岸(向かって左手)にはコンクリート製の立派な洪水吐が設けられました。
見た目の堤高は15メートルほど、ただダム下には土が盛られているようで基礎地盤からだと17メートルもありか?


洪水吐斜水路
そばに放流設備があり灌漑用水が放流されています。


左岸から下流面。


天端
車止めの柵が置かれています。


上流面はウレタン製素材で護岸。


改修工事竣工記念碑
右手は石仏。


天端からの眺め
下流には受益水田が続きます。


総貯水容量15万8400立米(ため池データベース)の貯水池。


湖岸の水没林

刷新された斜樋


右岸の横越流式洪水吐。


改修前の貧相な洪水吐からすっかり様変わり。


斜水路と底樋桝。


改修工事で奇麗に生まれ変わった鶴沢溜池ですが、一方で公式データの堤高は14.9メートル。
このままではダム便覧から姿を消すかもしれません。
 
0407 鶴沢ダム(0532)
ため池コード
山形県尾花沢市鶴子
最上川水系鶴子沢川
17メートル(ため池データベース 14.9メートル)
145メートル(ため池データベース 93メートル)
360千㎥(ため池データベース158.4千㎥) /360千㎥
鶴子六沢土地改良区
1931年

馬神溜池

2023-09-14 17:04:41 | 山形県
2016年7月10日 馬神溜池
2023年7月24日
 
馬神溜池は山形県西村山郡朝日町大谷の一級河川最上川水系大谷川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
大谷地区には明治から昭和にかけて約10基の溜池が築造され、この溜池群を総称して『馬神ため池』と呼んでいます。
記念碑によればもともと当地区は養蚕業主体でしたが、昭和恐慌による生糸価格下落を契機に桑畑の開田を企図、その灌漑用水源として1949年(昭和24年)に馬神溜池が竣工しました。
事業主体は大谷村整地耕地組合ですので事業費の大半は受益農家の持ち出しで築造されたと思われます。
1986年(昭和61年)に県営ため池等整備事業が竣工し、ダム便覧ではこれを竣工年度としています。
管理者は耕地整理組合を引き継いだ朝日町土地改良区です。
馬神ため池群にはニッコウキスゲやヒメサユリが自生する一方、周辺の里山や農地と一体化した東北の農村風景を今に残しており、農水省により『ため池百選』に選ばれています。

馬神溜池には2016年(平成28年)7月に初訪、2023年(令和5年)7月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ訪問日時を記載しています。
 
池は県道112号沿いにあり、天端は車道。
左岸の洪水吐にかかる馬神橋の先に駐車スペースがあります。
(2016年7月10日)

 
天端に並ぶ記念碑
右が昭和24年の竣工碑、左が昭和61年の改修記念碑。
(2023年7月24日)

 
土地改良区の案内板。
(2016年7月10日)


本来の下流面はもっと上流側ですが、農道建設に合わせて土が盛られました。
斜行する道を下ると洪水吐減勢工に至ります。
(2016年7月10日)

 
こちらが減勢工。
越流した水がまるで滝のようで、このまま大谷川として流下します。
(2023年7月24日)

 
貯水池は細長く上流に続き総貯水容量は124万4000立米と本州の溜池としてはかなりのスケール。
ただし堆砂が多く有効貯水容量は50万立米に留まります。
(2023年7月24日)

 
上流面はコンクリートブロックで護岸。
(2023年7月24日)

洪水吐
5枚目写真はここを下から見上げたものです。
(2023年7月24日)

 
左岸の横越流式洪水吐
梅雨前線による大雨で水位が上昇、勢い良く越流しています。
(2023年7月24日)

 
アングルを変えて
見た目は美しい越流ですが、水は濁り受益農家にとっては宜しくない状況。
(2023年7月24日)

 
洪水吐の奥の斜樋。
(2023年7月24日)

 
シャフトは一本
池のスケールにしては簡易な取水設備。
(2023年7月24日)

 
天端
右が本来の天端
農道建設により堤体下流側が厚く盛土されました。
(2023年7月24日)

 
『本来の』天端から。
(2023年7月24日)
 
0419 馬神溜池(0480)
ため池コード
山形県西村山郡朝日町大谷
最上川水系大谷川
24.8メートル(ため池データベース 23.3メートル)
123.2メートル(ため池データベース 85メートル)
1244千㎥/500千㎥
朝日町土地改良区
1949年竣工
1986年大規模改修 

藤田溜池

2023-09-12 17:00:12 | 山形県
2016年7月10日 藤田溜池
2023年7月24日
 
藤田溜池は山形県西村山郡大江町富沢の一級河川最上川水系富沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には左沢土地改良区の事業で2003年(平成15年)に竣工と記されています。
一方ダムサイトには1995年(平成7年)から2004年(平成16年)に実施された県営ため池等整備事業の竣工記念碑があり、ここには1943年(昭和18年)着工、1951年(昭和26年)竣工と刻されています。
もともとの藤田溜池は土地改良区の前身であった耕地整理組合もしくは水利組合の事業で1951年(昭和26年)に建設され、2004年(平成16年)に大規模改修が竣工したとみるのが妥当でしょう。
現在は土地改良区の統合で大江町土地改良区が管理を引き継いでいます。

藤田溜池には2016年(平成28年)7月10日に初訪、2023年(令和5年)7月24日に再訪しました。
掲載写真はすべて再訪時のものです。

池下から
ダム便覧では堤高18.8メートルとなっていますが、ため池データベースや現地記念碑では21メートル。
右岸(向かって左手)に洪水吐斜水路がありますが写真では木に隠れてしまいました。

 
溜池にしては立派な放流設備。

 
天端は車の乗り入れができますが対岸で行き止まり。
軽トラが1台駐車中。

 
上流面は親水護岸
普段は多くの釣り師が糸を垂れるようですが、訪問時は水が濁り釣果が期待できないせいか人影はありません。


左岸には東屋、東屋の奥は斜樋機械室。

 
改修事業竣工記念碑。


斜樋。
ここで取水された水は2枚目写真の放流設備に送られます。


天端から。
池の下は改修の際に整地されました。


貯水池は総貯水容量16万3000立米
梅雨前線による大雨で満水、水はかなり濁っています。

 
右岸から。

 
斜樋を遠望。

 
右岸の横越流式洪水吐
薄く越流しています。

洪水吐導流部。

 
0421 藤田溜池(0479)
ため池コード
山形県西村山郡大江町富沢
最上川水系富沢川
18.8メートル(ため池データベース21メートル)
70メートル
163千㎥/163千㎥
大江町土地改良区
1951年竣工
2004年県営ため池等整備事業竣工

前田溜池

2023-09-10 17:08:25 | 山形県
2016年7月10日 前田溜池
2023年7月24日
 
前田溜池は山形県西村山郡大江町三郷乙の一級河川最上川水系深沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には土地改良区の事業で1951年(昭和26年)に竣工と記されており、団体営事業事業で建設されたと思われます。
現在の管理者は大江町土地改良区です。
2016年(平成28年)訪問時は入り口で規制があったため見学を断念、今回大江町土地改良区に規制解除の確認を取り再訪しました。

県道143号線沿いの池への入口
2016年7月10日時点では立入禁止でした。


ここからは再訪時の写真です。
県道143号線から川沿いを500メートル弱遡上します。
改修されたばかりの真新しいコンクリートが周りの風景とミスマッチ。

水路半ばにある分水工
左は灌漑用水路。右は深沢川になります。
訪問直前の梅雨前線による大雨もあり水量は豊富。


歩くこと5分ほどで堤体が見えてきます。
堤体右手にブルーシートが見えますが、堤体が欠損でもしているのか?
池の下に底樋管がありますが、草が深いので接近は断念。

下流面
堤高15.2メートル、堤頂長53.5メートルの小ぶりな堤体。
定期的に草は刈られているようですが、今年はまだ。


天端には過激派のピケのような物々しい設置物。
実は池には電線が引かれていないため、水位監視カメラ用の電源としてソーラーパネルと蓄電池が設置されています。

右岸の洪水吐
堤体に切れ込みが入った簡易な洪水吐です。


見づらいですが写真を斜めに走るコンクリートが越流堤。


草刈り前なので天端もご覧のありさま。


天端からダム下を見下ろすと
左手が歩いてきた深沢川、右手に小さく見える構造物は簡易水道の遺構。

総貯水容量3万7000立米と小さな溜池。
直前の梅雨前線による大雨で満水、水もかなり濁っています。


左岸の階段式池栓。


てっきり立ち入り禁止だと思い大江町土地改良区に確認したら規制は解除したとのこと。
無事見学できたので到達認定。
通算2014基目のダムとなりました。
  
3401 前田溜池(2014)
ため池コード
山形県西村山郡大江町三郷乙
最上川水系深沢川
15.2メートル
53.5メートル
37千㎥/37千㎥
大江町土地改良区
1951年

伏熊溜池(伏熊ダム)

2023-09-08 17:10:04 | 山形県
2016年7月10日 伏熊溜池(伏熊ダム)
2023年7月24日
 
伏熊(ふしくま)溜池は山形県西村山郡大江町三郷丙の一級河川最上川水系田沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
大江町の最上川両岸には河岸段丘上の農地を潤すための中小溜池が点在しており、伏熊溜池もその一つです。
ダム便覧には1945年(昭和20年)竣工(事業者不明)と記されており、水利組合もしくは耕地整理組合の事業で建設されたと思われます。
現在の管理は伏熊水利組合が行っています。
貯水池は『伏熊沼鱒釣場』として周辺では有名なヘラブナ釣りスポットとなっていましたが、2024年(令和6年)竣工をめどに県営老朽ため池改修事業が着手され、工事終了後は鱒釣場としての営業は行わない方針のようです。
なおダム便覧では『伏熊ダム』と表記されていますが、山形県ため池データベースや大江町のため池ハザードマップでは『伏熊溜池』となっており、ここでもそれに倣います。

伏熊溜池には2016年(平成28年)7月に初訪、改修終了との情報で2023年(令和5年)7月に再訪しましたが、竣工は2024年でした。
前半は初訪時、後半は再訪時の写真となっています。
 
県道143号線に『伏熊鮒釣場』の案内表示があります。


下流面は犬走を挟んで2段
奇麗に草が刈られています。

 
上流面。

 
貯水池(伏熊沼)は総貯水容量14万8000立米。
釣場の営業シーズンには管理釣り場となります。

 
左岸の斜樋。

 
堤体に穴をあけた簡易な洪水吐。

 
左岸ダム下の分水工。
木板のゲートで左の灌漑用水路と田沢川への水流を調節します。

 
ここからは2023年(令和5年)7月24日の再訪時の写真です。
てっきり改修工事竣工だと思って訪問したら竣工は来年でした。
改修工事は非灌漑期に水を抜いてから実施され訪問時は休工中。
池の敷地は立ち入り禁止で右岸からの撮影に留まります。
洪水吐越しの下流面。

 
天端。

 
右岸にコンクリート製の洪水吐が新設されています。
今後、管理橋が架けられる予定。

 
横越流式洪水吐。

 
改修工事竣工後に改めて訪問したいところですが、大江町農林課の話では完成の暁には柵を設け天端は立ち入り禁止にする方針のようです。
 
3398 伏熊溜池(伏熊ダム)
ため池コード
山形県西村山郡大江町三郷丙
最上川水系田沢川
17.5メートル
96メートル
148千㎥/128千㎥
伏熊水利組合
1945年

長井ダム

2023-09-06 17:03:29 | 山形県
2016年9月 5日 長井ダム
2023年7月23日
 
長井ダムは左岸が山形県長井市寺泉、右岸が同市平野の一級河川最上川水系置賜野川にある国交省東北地方整備局が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1969年(昭和42年)の羽越豪雨を契機に建設省(現国交省)は最上川水系全体の治水事業を見直し、特に洪水被害が甚大であった置賜白川、置賜野川、寒河江川への多目的ダム建設に着手します。
置賜野川にはすでに管野ダム木地山ダムと2基の補助ダムが建設されていましたが、治水能力に不足があることから河川管理を山形県から国交省に移管し、菅野ダム直下への国直轄事業による新ダム建設が着手され2010年(平成22年)に竣工したのが長井ダムです。
長井ダムは特定多目的ダム法によって建設された特定多目的ダムで白川ダム1981年竣工)、寒河江ダム1990年竣工)と連携した最上川水系の洪水調節(当ダムでは毎秒最大780立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、山形県中部地域への特定灌漑用水の供給、長井市への上水道供給、山形県企業局新野川第一発電所(最大出力1万キロワット)でのダム水路式発電を目的としています。
ダム建設に際しては豪雪地帯ということもあり工期が短縮できるRCD工法のほか、ダム建設としては初めてコンクリートの運搬・打設にテルハクレーンが採用されました。
長井ダムには2016年(平成28年)9月に初訪、2023年(令和5年)7月に再訪しました。
日時の記載のないものはすべて再訪時の写真です。
 
長井市街から県道252号線を西進すると右手に長井ダムが姿を見せます。
大規模ダムですが2010年(平成22年)竣工ということで洪水吐はゲートレス。
クレスト自由越流頂3門、自然調節式オリフィス2門を備えています。
(2016年6月18日)

再訪時はオリフィスから越流中。

右岸ダムサイトには管理事務所と資料室を兼ねた展望所があります。
こちらは展望所。
(2016年6月18日)

お結びのような記念碑。

ダムサイトのモニュメント。
芸術音痴には評価の仕様がない作品。


上流面。
洪水吐の奥は選択取水設備
これで常時満水位です。


親柱はピカピカの御影石
直轄ダムということで天端は2車線幅以上ありますが、徒歩のみ開放。

ダム下には駐車スペースも設けられていますが、残念ながら立ち入り禁止。
放流バルブ1条が見えますが、訪問時はオリフィスから越流してたためバルブは閉じていました。

アングルを変えて。

よく見ると左岸側導流部の水が跳ねています。
竣工時は異常がなかったことから、のちにコンクリートが欠落したと思われます。
いずれにしてもこのまま放置はできないのでは?

ガラス張りのモダンな建屋。

総貯水容量5100万立米のダム湖(ながい百秋湖)。
上流ではカヌー、カヤックなど湖面利用ができるほか夏期は水陸両用バスを使った遊覧船が運行されています。

左岸から
襟が高いのが特徴。

上流面。


上流から遠望
右手は艇庫とインクライン。


ゲート上流側をズームアップ。

直轄ダムということで資料施設なども充実していますが、ゲートレスということもあり今一つ面白みに欠けるというのが偽らざる印象。
 
(追記)
長井ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0448 長井ダム(0550)
左岸 山形県長井市寺泉
右岸     同市平野
最上川水系置賜野川
FNAWP
125.5メートル
381メートル
51000千㎥/48000千㎥
国交省東北地方整備局
2010年
◎治水協定が締結されたダム

木地山ダム

2023-09-04 17:00:51 | 山形県
2016年9月 5日 木地山ダム
2023年7月23日
 
木地山ダムは左岸が山形県長井市寺泉、右岸が同市平野の一級河川最上川水系置賜野川最上流部にある山形県県土整備部が管理する多目的中空重力式コンクリートダムです。
最上川の主要支流の一つである置賜野川は古くから流域の貴重な灌漑用水源となる一方、河況係数が高く洪水や渇水が頻発していました。
終戦直後に山形県は『野川総合開発事業』を採択、1954年(昭和29年)に管野ダムを建設しますが、ダム建設中の1953年(昭和28年)に計画量を越える洪水が発生、さらに流域での新規農地開拓が進み管野ダムの利水容量不足が顕在化しました。 
これを受け県は管野ダム上流への新たなダム建設に着手、1960年(昭和35年)に竣工したのが木地山ダムです。
建設地点へのコンクリートプラント設置が困難なことからコンクリートの節約が見込める中空重力式が採用され、東北地方初の中空ダムとして完成しました。
木地山ダムは建設省(現国交省)の補助を受けた補助多目的ダムで、当初は置賜野川の洪水調節、不特定灌漑用水への補給、山形県企業局野川第二発電所(最大出力1万1000キロワット⇒のちに8900キロワット)の発電を目的として運用が開始されました。
その後、2010年(平成22年)の長井ダム完成に伴い洪水調節容量は省かれダムの目的はNPに変更されました。
木地山ダムには2016年(平成28年)9月に初訪、2023年(令和5年)7月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時が記載してあります。
 
長井ダムから隘路の県道252号線を約10キロ北上すると、木地山ダムに到着します。
(2016年6月18日)

同じアングルから
再訪時は左岸ゲートから放流中。
(2023年7月23日)

ズームアップ
右岸(向かって左)ゲートにはフラッシュボードがついています。
豪雪地帯ということでピアは被覆。
(2023年7月23日)


中空ダムらしく堤頂部には襟がなく堤頂からすぐにスロープが始まります。
(2016年6月18日)


天端高欄には十字が施された窓があります。
簡素ですがこだわりが感じられる意匠。
上段の手すりは後付け。 
(2023年7月23日)


天端は県道252号線で車両通行ができます。
ダム上流には日本300名山の祝瓶山登山口があり、約1時間の見学中も2台ほど車が通過しました。
(2023年7月23日)

上流面
再訪時は水位が高く、中空ダムのウリであるタコ足スリットは見えず。
奥の三角屋根は管理事務所。
(2023年7月23日)


天端はゲート部分だけ上流側にクランクしています。
(2023年7月23日)

ゲート越しに導流部と減勢工を見下ろします。
導流部先端にはシュートブロックが設置されています。
(2016年6月18日)


再訪時、同じアングルで
梅雨前線による雨で水位が上がり絶賛放流中。
シュートブロックによる減勢効果がよくわかります。
(2023年7月23日)

ダム湖は総貯水容量820万立米
奥には朝日連峰が連なり、左の尖峰が日本300名山の祝瓶山。
(2023年7月23日)

三角屋根のおしゃれな事務所とインクライン。
巡視を終えた船がちょうど格納中。
(2016年6月18日)


上流面
初訪時は水位が低く、タコ足スリットが頭を出していました。
(2016年6月18日)


右岸湖岸にある山形県企業局野川第二発電所(最大出力8900キロワット)の取水口。
(2023年7月23日)


巡視を終えた船艇
このあと艇庫に格納されます。
(2016年6月18日)


左岸ダムサイトの記念碑
ダム建設に至る経緯が詳細に刻されています。
(2023年7月23日)
 

木地山ダムでの中空ダム建設の経験は、同じく建設地点へのプラント建設が困難だった蔵王ダムに生かされてます。

(追記)
木地山ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0428 木地山ダム(0549)
左岸 山形県長井市寺泉
右岸     同市平野
最上川水系置賜野川
NP
HG
46メートル
168.2メートル
8200千㎥/6400千㎥
山形県県土整備部
1960年
◎治水協定が締結されたダム

白川ダム

2023-09-01 17:05:32 | 山形県
2016年6月18日 白川ダム
2023年7月23日
 
白川ダムは山形県西置賜郡飯豊町高峰の最上川水系置賜白川にある国交省東北地方整備局が管理する多目的ロックフィルダムです。
1969年(昭和42年)の羽越豪雨を契機に建設省(現国交省)は最上川水系全体の治水事業を見直し、特に洪水被害が甚大であった置賜白川、置賜野川、寒河江川への多目的ダム建設に着手します。
置賜白川では農林省(現農水省)と山形県企業局が事業参加し、1971年(昭和46年)よりに本体工事が着手され1981年(昭和56年)に白川ダムが竣工しました。
白川ダムは国交省が直轄管理する特定多目的ダムで寒河江ダム1990年竣工)、長井ダム(2010年竣工)と連携した最上川水系の洪水調節(当ダムでは毎秒最大1100立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、白川土地改良区管内約3800ヘクタールへの特定灌漑用水の供給、飯豊町への上水・工水の供給、山形県企業局白川発電所(最大出力8900キロワット)でのダム式発電を目的としています。
白川ダムには2016年(平成28年)6月に初訪、2023年(令和5年)7月に再訪しました。
日付の記載のない写真はすべて再訪時のものです。

ダム下から
ダム下へ向かう管理道路入り口には関係者以外立ち入り禁止の標識がありますが、職員さんに確認したところ『写真を撮るだけならOK』との言質を頂きました。
クレストラジアルゲート2門、コンジットローラーゲート2門を装備
向って右手は山形県企業局白川発電所。
ラジアルゲートは径間11メートル、扉高16メートル、重量150トンのわが国最大クラスのラジアルゲートですが、下流からはその大きさを実感できません。

 
ダムサイトへ上がります。
ロックフィルの断面を模した竣工記念碑。
同様の石碑は北海道の十勝ダムでも見られます。

日本有数の巨大ラジアルゲートを真上から
この写真もは実際の大きさが伝わらないかな?


ラジアルゲートのプレート。


ダム湖は『白川湖』で総貯水容量5000万立米。
ダム湖には取水塔が2基あり、手前は白川発電所の白川取水塔。
奥は白川土地改良区向け灌漑用水を取水する犬川・黒川取水塔。

 
発電所の水利使用標識。


天端から
左手は白川発電所、1枚目の写真は奥の橋から撮影しました。


直轄ダムらしく天端は2車線幅で徒歩のみ開放
堤体左岸側が下流側に屈曲し『カド』に。


『カド』を
手前はプラムライン。


堤頂長348.2メートル
右岸接岸部に脆弱地盤があったことから、右岸側もロック材で補強されています。
この地盤対策のため工期が4年も伸びました。


右岸から。


右岸の監査廊入り口。


左岸上流から。


ズームアップ
茶色い建物は管理事務所で手前はインクラインと艇庫
右手は発電用取水塔とクレストラジアルゲート。

ゲートをズームアップ
この写真で初めてゲートの大きさが伝わるかと思います。
ラジアルゲートは径間11メートル、扉高16メートルで日本最大と言われる岩屋ダムのゲートに迫るサイズ。
(2016年6月18日)


位置を変えて
ラジアルゲート間にコンジット予備ゲートがあります。


ダム湖上流の貯砂ダム
この上流には水没林があり春には人気の観光スポットになりますが、訪問時は洪水期のため水位が低くただの森になっていました。


(追記)
白川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0439 白川ダム(0464)
山形県西置賜郡飯豊町高峰
最上川水系置賜白川
FNAWIP
66メートル
348.2メートル
50000千㎥/41000千㎥
国交省東北地方整備局
1981年
◎治水協定が締結されたダム