ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

大久保溜池

2023-01-31 17:28:07 | 熊本県
2022年11月22日 大久保溜池
 
大久保溜池は熊本県球磨郡球磨村三ヶ浦の一級河川球磨川水系鵜川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
現地説明板に溜池建設の経緯が詳しく書かれており、当地の開拓を企図した福岡県人の権藤猿三郎なる人物を開拓事業者として1912年(明治45年)に築造が着手され、1914年(大正3年)に完成しました。
現在は受益者で組織される大久保水利組合が管理し約8ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。

今回は人吉から大久保溜池を目指しましたが、2020年(令和2年)7月豪雨いわゆる球磨川水害により橋が多数落橋したためかなりの遠回りを余儀なくされます。
またグーグルのルート案内でダム至近まで車でアプローチできますが、最後の100メートルほどは山道歩きとなります。

山道に入るとすぐに溜池左岸に到着。
あいにく深い霧が立ち込め、視界は数メートルほど。
天端も下流面もきれいに刈りこんであり、今も貴重な水源であることが伺えます。


上流面はコンクリートで護岸。
貯水池はほとんど見えません。


下流面。


堤体脇の踏跡を降りてみます。
便覧、ため池データベースともに堤高は15メートル。


写真ではわかりづらいんですが、踏み跡中ほどに取水設備からのパイプが露出しています。


天端に戻ります
右岸の洪水吐。


こちらは洪水吐導流部
茂みの先は自然の岩盤になっています。


右岸から洪水吐越しの堤体。


池栓
この写真もわかりづらいのですが、写真中ほど左側に金属性の鎖と池栓が見えます。


大久保溜池の説明板。
このクラスの溜池としては丁寧な説明板です。


残念ながら深い霧に閉ざされ、池の全貌を見ることはできませんでした。
一方で池に至る道中各所で水害の傷跡が多数残っています。
いち早い球磨川流域の復興を願うばかりです。

2655 大久保溜池(1957)
ため池コード
熊本県球磨郡球磨村三ヶ浦
球磨川水系鵜川
15メートル
86メートル(ため池データベース 82メートル)
105千㎥/105千㎥
大久保農業組合
1914年

船津ダム

2023-01-30 17:07:13 | 熊本県
2022年11月21日 船津ダム

船津ダムは左岸が熊本県下益城郡美里町清水、右岸が同町豊富の一級河川緑川本流にある熊本県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1964年(昭和39年)に建設省(現国交省)直轄事業として緑川総合開発事業が着手されますが、熊本県企業局は同事業に発電事業者として参加し、緑川ダムと同じ1970年に船津ダム・緑川第1~第2発電所が竣工しました。
船津ダムは緑川第1発電所(最大出力3万1700キロワット)の出力調整による水位変動を緩和するための逆調整池に加え、緑川第2発電所(最大出力6800キロワット)でのダム式発電を目的としています。
さらに2001年(平成13年)には河川維持放流を利用した小水力発電を行う緑川第3ダム(最大540キロワット)が完成しました。

下流の国道445号線から
ゲート5門中4門だけが見えます。


ダム直下から全てのゲートが見えました。
右岸(向かって一番左)のゲートにはフラッシュボードがついています。


右岸から
右手は緑川第2発電所。


堤体右岸に発電用取水ゲートがあります。
クレーンは予備ゲート運搬用
左奥は管理事務所。


右岸ダムサイトの斜面に残るプラント遺構。


上流から見た取水口
ピアにはクレーンのレールが伸びています。


天端から
右手は第2発電所、さらに左手の小さな建屋が第3発電所。


ゲートは1門だけ開放中。


フラッシュボード付きゲートを真上から。


左岸から
天端は徒歩のみ開放されています。


ダムの上流の道路沿いには分割式予備ゲートが置かれています。


ダム下流にある霊台橋
江戸時代末期の石橋で国の重要文化財。
このほか美里町には通潤橋など多くの石造建造物があります。


(追記)
船津ダムは洪水調節容量のない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たな洪水調節容量が確保されることになりました。

2994 船津ダム(1956)
左岸 熊本県下益城郡美里町清水
右岸         同町豊富
緑川水系緑川
25.5メートル
175メートル
2495千㎥/1070千㎥
熊本県企業局
1970年
◎治水協定が締結されたダム

緑川ダム施設見学

2023-01-29 17:52:40 | ダム見学会
2022年11月21日 緑川ダム施設見学
 
熊本県美里町の国交省が直轄管理する緑川ダムでは事前予約をすれば堤体内も含めた施設見学が可能です。
しかし、今回は予約なしで見学に伺ったところ、ちょうど小学生の社会学習としてダム見学が実施されていました。
ダメもとで『自分たちもお願いできませんか?』と伺ったところ、小学生の見学終了後なら大丈夫と言う嬉しいご返答。
ということでここではその詳細をアップしたいと思います。
 
見学の前にダムの下流から
クレストラジアルゲート2門、その間にオリフィス高圧ラジアルゲート3門と言うちょっと変わったゲート配置。
洪水時には最大800立米/秒の洪水調節を行います。
右手は熊本県企業局緑川第1発電所(最大出力3万1700キロワット) 。

 
左岸ダムサイトに上がったところで、小学生の見学会
このあと職員さんにお願いしたら快諾していただきました。


さて、アテンドのお姉さんに着いて堤体内へ入ります。
本堤右岸側の監査廊入り口。


監査廊。


なぜかサワガニの死骸
職員さんもどこから入ってくるのか?思案顔。


階段で一階下へ。


こちらはダム右岸に置かれたリバースプライムライン。
ダムの水平方向の変位を検知します。


右岸フーチング上部
緩やかに湾曲し、巨大な猛禽が羽を広げたよう。


ゲート操作室にやってきました。


常用洪水吐となるオリフィス高圧ラジアルゲート。
3門あわせて最大2000立米/秒の放流能力があります。


オリフィスゲートは三菱重工製。


最下層までやってきました。
気温は14度。


ここに定礎があります。


こちらはノーマルプライムライン
堤頂部からピアノ線が張られダムのたわみによる変形を計測します。


堤体直下へ。。
堤高76.5メートルを見上げます。
目の前には堤体から突き出た水圧鉄管、そして真上が『カド』になります。


水圧鉄管と堤体の接続部
こんな間近で見るのはもちろん初めて。


これはちょっと他所ではお目にかかれない眺め。


水圧鉄管の直径は5メートルで、最大55立米/秒を発電所に送ります。
確か国内最大の鉄管が直径6メートルだったはずで、それに迫る大きさ。


『ここは広角で撮ったら迫力ある写真が撮れます』というガイドのお姉さんイチ押しポイント。
超広角で撮ったら本当に迫力ある1枚に。
壁紙にしよう。


ダム下には交換された取水設備のスクリーン
持って帰れるものなら欲しい。


エレベーターで天端に戻ります。


天端から超広角で撮ってみました。
右手はクレストラジアルゲートの操作室、ここも見たかったな。


細い管は?と尋ねると
灌漑用水路管だそうです。
既得灌漑用水になるのかな?


最後に管理所も見せていただきました。


高い位置から『Z』型堤体を俯瞰できます。
このダムは高い位置から見てこそ!


もう一枚
かっけー!!


さらに!!!


しつこい!!!!


副堤の緑川補助ダムも真上から。


1時間弱でしたが、まさか中を見せていただけるとは思っておらず、今回のダム旅一番のラッキー。
次回はダムサイトのバンガローに泊まるのもいいな。

緑川補助ダム

2023-01-28 17:35:07 | 熊本県
2022年11月21日 緑川補助ダム
 
緑川補助ダムは1970年(昭和45年)に緑川水系本流に建設された国交省九州地方整備局が管理する緑川ダムの副堤のロックフィルダムです。
緑川ダムがサーチャージ水位まで貯留した際に貯水池右岸から水が溢れてしまうため、高さ35メートル、全長244メートルの補助ダムが建設されました。
 
ダム管理所から
天端は2車線の車道で向って右手が下流、右手が上流になります。
下流面は芝が張られアースのようですがロックフィルダムです。
堤体積は本堤の36万7000立米に迫る34万7000立米もあります。


左岸から下流面。


天端の車道
町道になるのかな?


上流面
これだけ見るとこっちがリップラップのようです。


ダム上流はイベント広場になっており、毎年1月に行われるみどりかわ湖どんど祭りは参加者1000人の人気イベントです。


右岸から下流面
国交省直轄ダムとありきれいに草が刈られています。
雪国では凍上防止のため芝が張られたロックフィルダムは多数ありますが、西日本では珍しい。


副堤にも監査廊入り口があります。


右岸から上流面。
この奥が本堤の緑川ダムになります。


天端は車道。

補助ダムの上流側とダム湖の間には盛り土が施され、イベント広場が浸水することはなさそう。

2666 緑川補助ダム(1955)
熊本県下益城郡美里町畝野
緑川水系緑川
FNAP
35メートル
244メートル
46000千㎥/35200千㎥
国交省九州地方整備局
1970年

緑川ダム

2023-01-27 17:20:25 | 熊本県
2022年11月21日 緑川ダム
 
緑川ダムは左岸が熊本県下益城郡美里町洞岳、右岸が同町畝野の一級河川緑川にある多目的重力式コンクリートダムです。
熊本県中央部を東西に横断する緑川は古くから熊本平野を中心に流域の灌漑用水源として利用される一方、洪水や干ばつも多く特に1953年(昭和28年)6月豪雨は県下で300名近い死者が出る大惨事となり、抜本的な治水・利水対策が求められました。
1964年(昭和39年)に建設省(現国交省)の直轄事業による緑川への多目的ダム建設が採択され1970年(昭和45年)に緑川ダムが竣工しました。
緑川ダムは国交省九州地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、緑川の洪水調節(最大800立米/秒)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、流域水田への新規灌漑用水の供給、熊本県企業局緑川第1~第3発電所での合計最大3万5140キロワットの発電を目的としています。
また、本堤の北側は鞍部になっておりダムの満水時には水が溢れてしまうため、副堤としてロックフィルの緑川補助ダムが建設されました。

緑川ダム周辺はレジャースポットとして各種施設が充実しており町営の『美里の森キャンプ場ガーデンプレイス』では多様なキャンプを楽しめるほか、日本初のダム湖を横断するジップトリップなどアウトドア施設が設置されています。
また補助ダム上流側はイベント広場となっており、県内有数規模のどんどん焼きもここで行われます。
ダム湖の肥後みどりかわ湖はダム湖百選に申請すれば間違いなく選ばれると思うんですが…

緑川ダムでは事前予約によりダムの堤体内を含む施設見学を実施しています。
今回、管理所のご厚意により飛び込みにもかかわらず施設見学の対応をしていただくことができました。
施設見学の詳細については別項
緑川ダム施設見学をご覧ください。

ダム下から
クレストラジアルゲート2門、その間にオリフィス高圧ラジアルゲート3門
右手は熊本県企業局緑川第1発電所(最大出力3万1700キロワット) 。


特徴的なゲート配置。
向かって右下の小さな穴は非常用放水管。


堤体は珍しい『Z』
よく似た堤体は富山の有峰ダムですが、あちらは『S』。


ズームアップ。


左岸管理所下の擁壁にはくまモンが描かれていますが・・・
描かれて10年以上経過し薄くなってしまいました。


右岸の繋留施設。


右岸上流から
こちらからも堤体がZ字になっているのがわかります。


天端から
右岸のこの細い管は灌漑用水路管とのこと。
既得灌漑用水になるのかな?


減勢工と緑川第1発電所
利水放流設備や低水放流設備は見当たらないので、発電放流で対応するのでしょう。


発電所の屋上にはくまモンの絵
市房など他の県企業局の発電所の屋上にも描かれています。


天端越しに管理所とダム湖の『肥後みどりかわ湖』
総貯水容量4600万立米、有効貯水容量3520万立米
総貯水容量は運用中のは熊本県のダムでは最大。
天端は車両の通行ができます。


左岸の屈曲点
下流に折れているので『カド』認定
カドの先にはエレベーター棟があります。

ちょっと見づらいですが、選択取水設備。


上流面
取水設備、ゲートが一望できる場所を探しましたが見つかりませんでした。
湖岸の木をちょびっとだけ切っていただければありがたいのですが…。


これは右岸フーチングから見た下流面
見学の際に撮ったもので、猛禽が羽を広げたようでかっこいい。


ダム直下から
これも見学の際に撮ったものです。
堤体から突き出た水圧鉄管を間近で見れる機会はなかなかありません。
しかもこの鉄管は直径5メートルと日本の水圧鉄管でも最大クラス。


上でも書きましたが、飛び込みにもかかわらず見学対応していただき感謝に耐えません。 

(追記)
緑川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2665 緑川ダム(1954)
左岸 熊本県下益城郡美里町洞岳 
右岸         同町畝野 
緑川水系緑川 
FNAP 
 
76.5メートル 
295.3メートル 
46000千㎥/35200千㎥ 
国交省九州地方整備局 
1970年 
◎治水協定が締結されたダム 

桑野内ダム(仲山ダム)

2023-01-26 17:48:31 | 熊本県
2022年11月21日 桑野内ダム(仲山ダム)
 
桑野内ダムは左岸が熊本県上益城郡山都町花上、右岸が宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町桑野内の一級河川五ヶ瀬川本流にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1955年(昭和30年)に九州電力によって建設され、ここで取水された水は約4.5キロの導水路で桑野内発電所に送られ最大6400キロワットのダム水路式発電を行っています。
五ヶ瀬川では大正末期より日本窒素肥料(日窒)のほか複数の発電事業者による電源開発が進められ、桑野内発電所の水利権も1925年(大正14年)に付与されました。
しかし何らかの事情(たぶん技術的問題)で開発は見送られ、戦後、電気事業再編政令で誕生した九州電力が水利権を継承し改めて事業を再開したとみるのが妥当でしょう。

五ヶ瀬町桑野内の県道8号に桑野内ダムを示す案内板があり、これに従い隘路の道路を進みます。
途中に阿蘇五岳が一望できる場所があります。


最後は標高差200メートルの九十九折れを下りますが、ここは急坂が続くうえに道が狭く、離合は100%無理。とにかく前から車が来ないことを祈りながらの運転となります。

一帯は阿蘇火砕流による凝灰岩で形成され『蘇陽峡』と呼ばれる深さ200メートルを超えるU字渓谷が続きます。
ダムサイトは文字通りの谷底で、この地形を見ると戦前桑野内ダム建設が見送られた理由が何となくわかります。
川が県境で、向かいは熊本県。
ダムは左岸で所在地を決めるのでアプローチは宮崎ですが、熊本県のダムとなります。


残念ながら厳重な門扉が閉まりダムへは立ち入りできません。
右岸に桑野内発電所への取水口があり、最大15立米/秒の取水を行います。


超広角で
民家のような管理棟があり、かつては職員が常駐していました。


それにしてもすさまじい断崖。


ゲートピアをズームアップ。


ダム湖は総貯水容量96万1000立米、有効貯水容量26万2000立米。
蘇陽峡は美しい紅葉で知られ、湖面を使ったカヌーなども楽しめます。


実はグーグルにはダム下から撮った写真が掲載されています。
ダムの対岸すぐ下流に小さな畑があり、崖の上から畑に下りる山道があるようです。
標高差200メートルなので往復40分ほど、時間があればチャレンジしてみたいものですが九州は遠い。
 
(追記)
桑野内ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2816 桑野内ダム(仲山ダム)(1953)
左岸 熊本県上益城郡山都町花上
右岸 宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町桑野内
五ヶ瀬川水系五ヶ瀬川

26.5メートル
96.4メートル
961千㎥/262千㎥
九州電力(株)
1955年
◎治水協定が締結されたダム

星山ダム

2023-01-25 17:10:03 | 宮崎県
2022年11月21日 星山ダム
 
星山ダムは左岸が宮崎県西臼杵郡日之影村七折、右岸が同村分城の一級河川五ヶ瀬川本流にある旭化成(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
五ヶ瀬川水系では日本窒素肥料(株)(日窒)が1923年(大正11年)の延岡進出を契機に、自家発電向け電源開発に着手します。
日窒は重要軍事物資である火薬の最大手メーカーだったこともあり、日本発送電による発電施設接収を免れたのみならず電力国家管理法成立後も自社発電施設の建設を進めます。
そして1942年(昭和17年)に完成したのが星山ダムおよび発電所で、星山ダムで取水された水は約2キロの導水路で発電所に送られ最大最大1万2200キロワットのダム水路式発電が開始されました。
戦後の財閥解体により延岡の日本窒素化学は旭化成工業(株)(現旭化成)として独立、五ヶ瀬川の発電施設も同社が継承し現在に至っています。

これまで下流からは道路沿いの木が邪魔になりダムの全景が見える場所はありませんでした。しかし2022年(令和4年)9月の台風14号により右岸道路の路肩が崩落し視界が広がりました。
12門のラジアルゲートで五ヶ瀬川を締め切ります。

 
左岸の水叩き
戦中戦後の発電ダムで多く見られます。


河川維持放流のため中央1門が開放中。


左岸の魚道の奥にバットレス状の建造物があります。
プラント跡のようです。


星山ダムでは巻き上げ機や梯子は黄色で統一。


訪問時は巻き上げ機のメンテナンス中
撮影はダメかと思ったんですが、『いいよ』。

部品をすべて解体し、一点ずつチェックしていました。


こちらは発電用取水口
最大毎秒49立米取水します。


左岸の魚道
擁壁のコンクリートは白く、近年改修があったようです。


天端は車両の通行ができますが、9トンの重量制限があります。
戦時色が激しくなる時期のダムですが、天端高欄には四角い窓が施され今どきの無機質な大量生産ダムと一線を画します。


水利使用標識。


上流から
ダム湖は総貯水容量173万1000立米、有効貯水容量93万5000立米。


ダム湖を跨ぐ第三五ヶ瀬川橋梁
2008年(平成20年)に廃線になった高千穂鉄道の鉄道橋で、鋼製トラス橋と日本初の連続方杖ラーメンの複合構造で、国の重要文化財に指定されるとともに選奨土木遺産に選ばれています。


5キロ上流の旭化成五ヶ瀬川発電所
1925年(大正14年)竣工で最大出力1万3500キロワット。
水圧鉄管も含め、これぞ由緒正しき水力発電所と言った美しい佇まい。

五ヶ瀬川は一級河川ですが、本流には治水機能を持つダムはありません。
2021年(令和3年)に『五ヶ瀬川水系河川整備基本方針』 が変更され、五ヶ瀬川の計画高水量が大きくなりました。
喫緊の話ではありませんが、いずれ五ヶ瀬川への新たな治水ダム建設が俎上に上がるかもしれません。

(追記)
星山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2812 星山ダム(1952)
左岸 宮崎県西臼杵郡日之影村七折
右岸          同村分城
五ヶ瀬川水系五ヶ瀬川  
30.5メートル
142メートル
1731千㎥/935千㎥
旭化成(株)
1942年
◎治水協定が締結されたダム

沖田ダム

2023-01-23 17:17:21 | 宮崎県
2022年11月21日 沖田ダム 
 
沖田ダムは宮崎県延岡市小野町の二級河川沖田川本流にある宮崎県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
沖田川では1963年(昭和38年)9月の大洪水を契機に小規模河川改修事業が着手されるとともに、1971年(昭和46年)に上流部への治水ダム建設が採択されました。
しかし本体着工は27年後の1998年(平成10年)にずれ込み、2001年(平成13年)に沖田ダムが竣工しました。
沖田ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで、沖田川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給を目的としてしています。
沖田川は洪水多発河川でしたが、ダム効果はてきめんで事業完成後は浸水を伴う洪水被害は皆無となっています。
実業団駅伝の強豪旭化成がある延岡らしく、ダム湖周回道路はランニングコースとして整備されているほか、ダム湖上流部は親水公園になっており特に夏場に開設される河川プールは家族連れの人気スポットになっています。
 
残念ながら下流からの展望ポイントはなく、樹間から垣間見るのが精いっぱい。


右岸から下流面
クレスト自由越流頂3門、自然調節式オリフィス1門を備えオリフィスから越流中。


天端は対岸の管理事務所まで車で入れます。


右岸天端が一周8.16キロの周回路スタート地点
訪問したのは平日の早朝でしたがすでに市民ランナーが数人ランニング中
さすが駅伝王国延岡。


水位は低く見えますが総貯水容量275万立米のうち8割超の225万立米が洪水調節容量なのでこれで常時満水位。


減勢工
右手は利水放流設備。


ダム湖には堆砂容量および不特定利水容量併せて50万立米が貯留されています。

左岸の繋留設備。


左岸ダムサイトの管理事務所
宮崎県所管ダムではおなじみ、民間人が住み込みで管理を受託しています。
こちらではシニアのご夫婦が管理人をやっていますが、ご主人がとにかく話好きで一度話し出すとなかなか解放してもらえません。


親柱の銘板は九州らしく金箔文字。


左岸から下流面。


利水放流設備
オリフィスから越流しているせいか、放流はなし。

河川プールが開設されていれば上流まで足を運んだんですが、夏場限定とのこと。
宮崎県営ダムでは日南の広渡ダムでも天然プールが開設されます。

2839 沖田ダム(1951)
宮崎県延岡市小野町  
沖田川水系沖田川
FN
36メートル
111メートル
2750千㎥/2350千㎥
宮崎県県土整備部
2001年

門川防災ダム

2023-01-22 18:30:32 | 宮崎県
2022年11月21日 門川防災ダム
 
門川防災ダムは宮崎県東臼杵郡門川町加草の二級河川鳴子川本流にある農地防災目的のロックフィルダムです。
1966年(昭和41年)に農林省の補助を受けた県営防災ダム事業門川地区によって着工され、1972年(昭和47年)に竣工しました。
完成後は門川町が管理を受託し鳴子川流域約70ヘクタールの農地を洪水被害から守ります。
 
さらに農村農業整備事業によりダム下に運動場、貯水池内に門川防災ダム公園が整備され周辺住民の憩いの場にもなっています。

下流から遠望しますが・・・・
てっきりこれが堤体だと思ったんですが、実はダム下に盛土して作られた運動場の法面。


ダム右岸の洪水吐導流部
手前の白い建屋は常用洪水吐の放流設備。


右手が洪水吐の流路、手前は常用洪水吐放流口からの流路
普段はダムに貯留しない防災専用ダムのため流入量がそのまま放流されています。
右手は運動場の法面。


右岸から
こちらが正真正銘の堤体で下流側が盛土され運動場になっているのがよくわかります。
手前に洪水吐導流部があります。


洪水吐下流側
2枚目の写真はこの下から撮ったもの。


非常用となる横越流式洪水吐。


天端から超広角で
天端は車両通行可能で左岸に管理事務所があります。
ロックフィルですが、草が生えている上に堤体の下半分が盛土で隠れているので、見た目はロックかアースか判別がつきません。
遮水方式はロックフィルでは珍しい傾斜コアが採用されています。


総貯水容量73万7000立米、有効貯水容量60万2000立米のダム湖
平時は流入量はそのまま放流するため堆砂容量分13万5000立米だけ貯留。
ダム湖内は東屋やベンチ、芝生の広場などが設けらダム公園になっています。
ダム湖の中が公園と言うのは非常に珍しい。


こちらが常用洪水吐で、普段は流入量はここから流下し2枚目写真の放流設備から放流されます。


左岸から
管理事務所は普段は無人
運動場は野球グラウンド2面が取れる広さ。


ダム湖内の公園に下りてみます。
親水護岸されなかなかいい雰囲気ですが、もろ逆光。
写真右手の竹藪の手前に常用洪水吐があります。


こちらは順光
洪水になれば水没してしまいますが、大丈夫なんでしょうか?

ダム湖内の公園は全国でも珍しい。
そういえば同じ宮崎の高鍋防災ダムもダム湖内が湿原になり遊歩道が整備されています。

2835 門川防災ダム(1950)
宮崎県東臼杵郡門川町加草  
鳴子川水系鳴子川 
 

31メートル 
172メートル 
737千㎥/602千㎥ 
門川町
1972年

西畑ダム(再)

2023-01-21 18:38:49 | 宮崎県
2022年11月20日 西畑ダム(再)
 
西畑ダム(再)は左岸が宮崎県延岡市北方町下鹿川、右岸が同県西臼杵郡日之影町七折の一級河川五ヶ瀬川水系網の瀬川にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編整令により新たに誕生した九州電力は朝鮮戦争特需を契機とした電力需要急拡大に対処するため管内各所で積極的な電源開発を進めます。
網の瀬川では大正期に三菱鉱業(現三菱マテリアル)が黒原および梁崎発電所を稼働させていましたが、九州電力は両発電所上流で新たに水利権を獲得、1958年(昭和33年)に西畑ダム(元)及び新菅原発電所を建設し最大7500キロワットのダム水路式発電が開始されました。
しかし2007年(平成19年)台風5号による記録的豪雨でダム施設が大きく損壊、これを受け九州電力は2012年(平成24年)より十分なダム放流能力を確保するための再開発事業に着手し2016年(平成28年)に西畑ダム(再)が竣工しました。
再開発事業では、3門あったローラーゲートを撤去して自由越流にしたほか天端の嵩上げや堤頂長の延伸が行われました。
 
五ヶ瀬川から網の瀬川沿いに県道214号を約10キロ北上すると西畑ダム(再)に到着します。
ダムの敷地は立ち入り禁止ですが県道からダムと正対できます。

再開発によって3門あったローラーゲートは撤去され、全面越流式になっています。
堤高23.7メートルですが見た目は10メートルもありません。
基礎岩盤がかなり深いんでしょう。
また総貯水容量24万7000立米の貯水池は堆砂が進み有効貯水容量はゼロ、つまり堆砂率100%となっています。
取水ができればOKと言うことなんでしょうが、堆砂の放置は次なる水害の元凶にもなりかねません。

 
右岸の山道を辿るとダムのそばまで接近できます。


左の縦長のスクリーンが発電用の取水口。


上流にも遠望ポイントがあるようですが、私有地の農地に入るので自重しました。
ダムとは関係ありませんが、ダムに向かう途中には比叡山と言う花崗岩の岩峰が聳えており、これがかなりの絶景です。


有名なクライミングスポットのようで、福岡や関西ナンバーの車も止まっていました。
一方、西南戦争の際にはこの辺りで大激戦があり、敗北した西郷軍は鹿児島への退却を余儀なくされたそうです。

(追記)
西畑ダム(再)は洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2820 西畑ダム(元)
左岸 宮崎県延岡市北方町下鹿川
右岸  同県西臼杵郡日之影町七折
五ヶ瀬川水系網の瀬川
17.8メートル
45メートル
247千㎥/85千㎥
九州電力(株)
1958年
----------------
3673 西畑ダム(再)(1949)
左岸 宮崎県延岡市北方町下鹿川
右岸  同県西臼杵郡日之影町七折
五ヶ瀬川水系網の瀬川
23.7メートル
87.5メートル
247千㎥/0千㎥
九州電力(株)
2016年再開発竣工
◎治水協定が締結されたダム

浜砂ダム

2023-01-20 16:58:56 | 宮崎県
2022年11月20日 浜砂ダム
 
浜砂(はまご)ダムは宮崎県延岡市宮長町の一級河川五ヶ瀬川水系祝子川にある宮崎県企業局が管理する発電・工水目的の重力式コンクリートダムです。
祝子川では1972年(昭和47年)に県土整備部による祝子川総合開発事業により祝子ダムが竣工し、祝子川の治水のほか発電、工水供給が開始されました。
しかし、旭化成の企業城下町である延岡の電力・用水需要は増加の一途をたどり新たな水源確保が迫られます。
一方、祝子発電所の出力調整による祝子川の水位変動は下流の既得灌漑用水等に悪影響を与え、その改善が求められていました。
これを受け1992年(平成4年)に祝子ダム下流約8キロ地点に建設されたのが浜砂ダムです。
浜砂ダムは祝子発電所の出力調整による水位変動を緩和するとともに併設する浜砂発電所で最大2400キロワットのダム式発電を行います。
また有効貯水容量91万8000立米のうち23万立米が工水容量として配分されています。

 浜砂ダムは県道207号岩戸延岡線沿いにありますが、これが離合も困難な隘路の険道で運転には気を使います。
ダム便覧にはダム下流の発電所からの写真が掲載されていますが、今は発電所への管理道路入り口にチェーンが張られ立入禁止のため、下流側は県道から垣間見るのみ。
発電用ダムではよく見られる全面越流式ですが、トラス橋の天端は珍しい。
ダムでは群馬の坂本ダム(再)くらいしか思い浮かびません。


天端は車道になっており、対岸からは林道が続きますが入り口にチェーンが張られ関係車両以外は進入禁止。
路面がかなり畝っており、重量超過の車の進入が多いのかも?


上流から
越流はしていませんがほぼ満水。


県企業局による浜砂ダム・発電所建設事業の概要銘板。


水利使用標識。


発電用取水塔とダム湖
ダム湖は総貯水容量243万立米で細く長く上流に続きます。


減勢工。


左岸の浜砂発電所
下流の水位変動を抑えるため常時発電を行います。
放流口から減勢工に放流が見えます。


右岸から
鉄道の廃線跡のよう。


右岸のリムトンネル。


(追記)
浜砂ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

3055 浜砂ダム(1948) 
宮崎県延岡市宮長町
五ヶ瀬川水系北川
IP
42.7メートル
86メートル
2430千㎥/918千㎥
宮崎県企業局
1992年
◎治水協定が締結されたダム

祝子ダム

2023-01-19 18:46:29 | 宮崎県
2022年11月20日 祝子ダム

祝子(ほうり)ダムは宮崎県延岡市北川町川内名の一級河川五ヶ瀬川水系祝子川にある宮崎県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
祝子川上流域は年間降水量2500ミリの多雨地帯となっており、豪雨のたびに下流延岡市街で洪水被害が多発していました。
一方延岡は旭化成の企業城下町として発展し、増加する電力、工水需要への対処が求められていました。
そこで宮崎県は祝子川上流への多目的ダム建設を軸とした祝子川総合開発事業に着手し、1972年(昭和47年)に竣工したのが祝子ダムです。
祝子ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、祝子川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、延岡市への工業用水の供給、宮崎県企業局祝子発電所(最大出力1万6800キロワット)でのダム水路式発電を目的としています。
またダム建設により廃止された九州電力(株)祝子川発電所の機材を活用してダム湖上流に上祝子発電所(最大出力3300キロワット)が建設されました。
さらに1992年(平成4年)には下流8キロ地点に逆調整池も兼ねた浜砂ダム・発電所(最大出力2400キロワット)が竣工、2012年(平成12年)には河川維持放流を利用した祝子第二発電所(出力35キロワット)が稼働しました。
一方2005年(平成17年)台風14号による計画を超える洪水量を受け、設計洪水量を従来の毎秒686立米から880立米に引き上げるための堰堤改良工事が2017年(平成29年)に竣工、左岸ラジアルゲート1門をゲートレス化するとともクレスト自由越流頂1門が増設されました。

祝子ダムへのアプローチは延岡から県道207号岩戸延岡線経由が一般的ですが、今回は下赤ダムから下赤祝子川林道を利用して祝子ダムに至りました。
下赤ダムからは車で30分ほどの行程です。

ダム下から
放流設備としては非常用クレスト自由越流頂4門、常用コンジット高圧ラジアルゲート1門を装備。
左岸側(向かって右手)の導流壁のコンクリートが白くなっているのが増設された洪水吐です。
改良工事以前の姿はダム便覧に掲載されているのでそちらをご覧ください。


左岸の県道から
管理事務所は斜面に張り付くように建っており、宮崎県ではおなじみ民間人のご夫婦が住み込みで管理業務を受託されています。


一番手前が2017年(平成29年)に後付けされたクレストゲート。
導流壁のコンクリートの色が違うのですぐにそれとわかりますが、知り合いの土木屋さんに言わせれば堤体の目地と後付けの導流壁の目地がずれているのがよろしくないとのこと。
ダミーゲートの上にはこちらも宮崎県営ダムではおなじみ、コルゲートパイプを使ったチューブ状のシェルターが設置されています。 


前面に張り出したコンジットゲート操作室
いかにも昭和30年~40年代のダムの体。


右岸ダム下の祝子第二発電所
2012年(平成24年)に稼働した小水力発電所です。


天端は立ち入り禁止。


門扉越しに天端を撮影
右岸側が屈曲しています。


上流面
2022年(令和4年)9月の台風14号の影響で大量の流木が残っています。
また祝子ダムでは計画を超えるペースで堆砂が進み、すでに計画堆砂容量を超えており今後堆砂の排出が重要な課題になりそう。


ゲートをズームアップ
左から2門目の扶壁にはゲートの跡が残っています。
右手はコンジット予備ゲート。


こちらは取水設備
実際の取水口は土手の下の水中にあります。


ダムの上流には日本300名山大崩山の大岩壁が遠望できます。


ダムの下流にはダム建設に合わせて廃止された九州電力祝子川発電所の遺構が残ります。
廃墟マニアには有名なスポットらしい。

ダム見学の2か月前、2022年(令和4年)9月の台風14号襲来の際にはEL324メートルのサーチャージ水位を超過、異常洪水時防災操作(緊急放流)が実施されました。

(追記)
祝子ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2834 祝子ダム(1947)
宮崎県延岡市北川町川内名
五ヶ瀬川水系祝子川
FNIP
60メートル
196メートル
5774千㎥/4864千㎥
宮崎県県土整備部
1972年
◎治水協定が締結されたダム

下赤ダム

2023-01-19 08:33:47 | 宮崎県
2022年11月20日 下赤ダム

下赤ダムは宮崎県延岡市北川町川内名の一級河川五ヶ瀬川水系北川にある大分県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
高度経済成長や大分臨海工業地帯造成事業着手による電力需要を賄うため、大分県電気局(現企業局)は昭和20年代後半より積極的な電源開発を展開します。
北川水系では県土木建築部による北川総合開発事業に参加し北川ダムおよび北川発電所とともに建設されたのが下赤ダムです。
下赤ダムは北川発電所の出力調整による水位変動を緩和するための逆調整池として北川ダムと同じ1962年(昭和37年)に竣工し、併せて併設する下赤発電所で最大1700キロワットのダム式発電を行っています。
注目すべきは大分県企業局の北川発電所及び下赤ダムが県境を越えた宮崎県で運用されている点で、地方自治体が運用する公営発電施設が県外で稼働しているのは全国でここだけです。

北川ダムから国道326号を約7キロ、10分弱で下赤ダムに到着します。
ダムのすぐ下流、地元公民館の広場にはロボット兵や王蟲などジブリ関連の象が多数設置され、インスタ映えスポットとして人気スポットになっています。
ジブリの地元、三鷹市民としてはこれは見ないわけにはゆきません。
天空の城ラピュタに登場するロボット兵。


王蟲。


ほかにも多々設置されていますが、ダムの見学に戻りましょう。
広場の裏手から河原に下りダムと正対できます。
向って右手が下赤発電所
放流設備は左岸にローラーゲート3門、右岸は鋼製起伏ゲートを備えた自由越流頂2門。


ピアがにょきにょきしており一見中国四国型のよう見えますが?
ゲート巻き上げ機がピアのトップにあり中国四国型とは構造が異なります。
一番右手のゲートにはフラッシュボードがついています。


ゲート直下は水叩きになっていますが、右岸側の叩きは厚く一段高くなっています。
こちらには国道が走っており、護岸や洗堀防止目的でしょう。
また天端はなく、鉄骨トラスの管理橋が渡されています。


右岸側自由越流頂の鋼製起伏ゲート。


堤体右岸側が屈曲し『カド』に。


水利使用標識
宮崎県にあるのに水利使用者名が大分県と言うのが味噌。


ダム湖は総貯水容量48万立米
奥に北川発電所の水圧鉄管が見えます。


上流面。


左手に取水用ゲートが見えます。
実際の取水口は水中に没して見えません。


上流から遠望。


(追記)
下赤ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2827 下赤ダム(1946)
宮崎県延岡市北川町川内名
五ヶ瀬川水系北川
17.8メートル
153メートル
480千㎥/300千㎥
大分県企業局
1962年
◎治水協定が締結されたダム

北川ダム

2023-01-18 17:22:55 | 大分県
2022年11月20日 北川ダム

北川ダムは大分県佐伯市宇目南田原の一級河川五ヶ瀬川水系北川にある大分県土木建築部が管理する多目的アーチ式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令により日本発送電は解体され九州では新たに九州電力(株)が誕生します。
同社は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めますが、同社だけでは開発の手が足りず各県で公営発電による電源開発が併せて進められました。
大分県では1952年(昭和27年)に県電気局(現企業局)が設立され、高度経済成長に加え1959年(昭和34年)の大分臨海工業地帯造成事業着手による電力需要急増に対処するため積極的な電源開発を進めました。
北川は上流部が大分県、中下流部が宮崎県を流下する一級河川ですが電気局はここで発電用水利権を獲得し、土木建築部による北川総合開発事業に参加し1962年(昭和37年)に竣工したのが北川ダムです。
北川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、北川の洪水調節のほか県企業局北川発電所、下赤発電所、桑原発電所計最大2万9600キロワットの発電を目的としています。
注目すべきは北川ダムは大分県事業で建設されますが、洪水調節についてはその受益者は宮崎県となる点です。
建設当時、このダムの主目的はあくまでも発電にありその水利権を大分が獲得するバーターとして宮崎県が治水受益者となるダムを大分県の手で建設したのではないか?と推察するところです。

北川ダムは国道326号線沿いにありますが、日中の職員駐在時以外はダムへのゲートが閉められるので注意が必要です。
従来下流側からの展望ポイントはありませんでしたが、2022年(令和4年)春に、下流の山が伐採され高所からダムを俯瞰できるようになりました。
総貯水容量4100万立米は大分県所管ダムでは最大で、貯水池の北川ダム湖はダム湖百選に選ばれています。


放流設備はクレストラジアルゲート5門のほか写真では見えませんが低水放流設備があります。
発電目的の水利権が最大25立米/秒あり、約4キロ下流の北川発電所までの流量の大半は発電用導水路経由となります。


管理道路を進むとまず上流面が見えてきます。
訪問時は満水。


諸元及び施工者のプレート
施工の梅林建設は大分拠点の中堅ゼネコンですが、アーチダムの施工者としてはちょっと意外な感じ。


スペースがないので超広角じゃないと収まりません。
巻き上げ機は高欄下に収められ天端はすっきり、朱系のキャットウォークが鮮やか。


右岸の斜樋
多目的ダムに斜樋は珍しいのですが、河川維持放流義務化に合わせて刷新されたようです。
手前はカバーの付いた巡視艇の格納用浮き桟橋。


減勢工にはエンドシルと言ってよいのか?
細いコンクリートの壁。
右手は低水放流設備。


低水放流設備をズームアップ
結構放流されています。


ラジアルゲート。


左岸の発電用取水口
最大毎秒25立米を取水します。


左岸から
こちらから見るとドーム型アーチだとよくわかります。
対岸には改修中の管理事務所があります。


天端は1.5車線幅ほど
奥の橋は国道326号梅の里大橋。


ダム湖に架かる国道326号『唄げんか大橋』
建設省直轄事業としては初の斜張橋で、橋の向こう側には『道の駅宇目』があり休日にはかなりの集客力があります。


(追記)
北川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2757 北川ダム(1945)
大分県佐伯市宇目南田原
五ヶ瀬川水系北川
FP
82メートル
188.3メートル
41000千㎥/34700千㎥
大分県土木建築部
1962年
◎治水協定が締結されたダム

小中尾ダム

2023-01-17 17:44:52 | 大分県
2017年 6月19日 小中尾ダム
2022年11月20日
 
小中尾ダムは大分県佐伯市木立の一級河川番匠川水系小立川右支流(河川名不明)にある農地防災および灌漑目的のアースフィルダムです。
小立川流域の農地防災を目的に1958年(昭和33年)に農林省(現農水省)の補助を受けた県営防災ダム事業小立地区が採択されます。 
そして既設の灌漑用溜池である大中尾池および小中尾池に農地防災容量を付加するダム化事業が着手され、1966年(昭和42年)に大中尾ダム、小中尾ダムが竣工しました。
両ダムともに完成後は小立土地改良区が管理を受託し、小立川流域農地を洪水被害から守るとともに灌漑用水を供給しています。
 

小中尾ダムには2017年6月に初訪、2022年11月に再訪しました。 
日付のない写真はすべて初訪時のものです。 
佐伯市街から国道388号線を南下、小中尾入口バス停を左折して小中尾集落に入り突当たりを右折して川沿いに進むと小中尾ダムに到着します。
下流から遠望。


堤体直下。
(2022年11月20日)


洪水吐導流部
この横に底樋門がありますが、草木が繁茂し撮影不可能。
(2022年11月20日)  


天端には轍があります。
(2022年11月20日)


天端からの眺め
大中尾ダム と異なり、こちらは未整備
広場のように見えるのは放棄農地。


総貯水容量18万8000立米の貯水池
農地防災容量分だけ水位は低め。


左岸の斜樋。
(2022年11月20日)


左岸の洪水吐導流部
3枚目写真に流下します。
(2022年11月20日)


横越流式洪水吐。
(2022年11月20日)


上流面はロック材で護岸
草付きとの境が洪水時最高水位でその間が農地防災容量=洪水調節容量となります。
(2022年11月20日)


斜樋機械室。
(2022年11月20日)


斜樋のシャフト。
(2022年11月20日)


(追記) 
小中尾ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2761 小中尾ダム(1061)
大分県佐伯市木立
番匠川水系木立川
FA
22.3メートル
113.1メートル
188千㎥/169千㎥ 
木立土地改良区 
1966年
◎治水協定が締結されたダム