ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

苫前ダム

2023-12-18 18:00:54 | 北海道
2023年10月24日 苫前ダム

苫前ダムは北海道苫前郡苫前町三渓の古丹別川水系三毛別川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
苫前周辺では明治中期より入植がはじまり、大正期には開拓の手は三毛別川中上流域まで伸び、その過程で有名な三毛別羆事件の惨禍も発生しました。
戦後は稲作のほか海岸沿いの丘陵地で酪農や畑作が展開されますが、水源となる古丹別川や三毛別川は渇水が多い上に灌漑設備が未熟なため非効率な営農を余儀なくされていました。
これを受け1984年(昭和59年)に北海道開発局により国営かんがい排水事業苫前地区が着手され、その2期事業により1999年(平成12年)に竣工したのが苫前ダムです。
運用開始後は苫前町が管理を受託し1600ヘクタール超の田畑に灌漑用水を供給しています。
事業全体も2002年(平成14年)に完了し、営農の集約化・合理化が進んだほか、新たにメロン・かぼちゃ・スイートコーンなど高収益作物の生産も開始されています。

道道1049号、通称ベアロード射止橋手前から三毛別川沿いを約5キロ東進すると苫前ダムに到着します。
ちょっと木が邪魔になりますが、下流の橋からダムと正対できます。


農業用コンクリートらしく放流設備はクレスト自由越流頂6門と利水放流設備の組み合わせ。
残念ながら放流設備は見えません。


左岸ダムサイトにはクマが抱き着く事業説明板と水利使用標識
凄惨な三毛別羆事件の現場近くとなりますが、苫前町はこの惨禍を逆手に取り熊を使って町のアピールを行っています。


天端は立ち入り禁止。
右手はダム下へ通じる管理階段で雪に備えてシェルターがついています。


定礎。


竣工記念碑。


立派な管理事務所
巡回のみで職員の常駐はないようです。


上流面


取水設備は多段式。


管理事務所裏手のインクライン。


総貯水容量740万立米の貯水池。
灌漑最盛期は過ぎていますが、受益農地の6割強は畑地で年間を通じて水利権が配分されているため、秋冬も貯水池の水は抜かず水位低下させての運用となります。


湖畔の苫前ダム水天宮。


0180 苫前ダム(2023)
北海道苫前郡苫前町三渓
古丹別川水系三毛別川
34.8メートル
155メートル
7400千㎥/5700千㎥
苫前町
1999年
◎治水協定が締結されたダム