ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

川原子ダム

2023-12-27 17:00:22 | 宮城県
2016年 9月11日 川原子ダム
2023年11月 3日
 
川原子ダムは宮城県白石市福岡八宮の一級河川阿武隈川水系白石川左支流青沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
白石川左岸段丘に位置する旧福岡村では17世紀初頭に青沢の湧水を水源とした川原子堰用水路を開削し約400へクタールに及ぶ新田が開拓されました。
しかし水量が乏しく渇水による干ばつが頻発し安定した水源確保は福岡地区永年の悲願となっていました。
昭和初頭より貯水池築造機運が高まり、1944年(昭和19年)に当時の福岡村営事業としてダム建設が着手されますが、戦争激化により中断。
1951年(昭和26年)に県営事業により再着工されますが、基礎地盤が悪く漏水対策に時間を要し1969年(昭和44年)にようやく川原子ダムが竣工しました。
運用開始後は白石市が管理を受託し同市福岡地区約450ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
その後2001年(平成13年)に県のため池等整備事業で改修が行われ現在に至っています。

川原子ダム周辺は水源地の環境を守るため『不伐の森』(伐採をしない森)として保護され豊かな自然が残されています。
ダム湖をめぐる一周5.4キロの散策路が整備され春秋には多くのハイカーが訪れる憩いの場となっています。
川原子ダムには2016年(平成28年)9月に初訪、2023年(令和5年)11月に再訪しました。
掲載する写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
ダム湖周辺は散策路が整備されており、ダム入り口には駐車場と清潔な公衆トイレが設置されています。
ダムの入り口。
(2023年11月3日)

 
左岸の横越流式洪水吐。
(2023年11月3日)

 
初回訪問時は直前にまとまった雨があり越流していました。
(2016年9月11日)

 
洪水吐導流部。
(2023年11月3日)

事業説明版。
(2023年11月3日)

 
完成記念碑。
(2023年11月3日)

 
川原子ダムは宮城蔵王三十六景に選ばれています。
奥の山は南蔵王の主峰、不忘山。
(2023年11月3日)

 
堤体はススキに覆われています。
意図して草を刈らないのかも?
(2023年11月3日)

 
天端は舗装され車両通行できます。
ただし対岸から先はかなり荒れたダートの林道。
(2023年11月3日)

 
上流面はロック材で護岸。
(2023年11月3日)

 
左岸の斜樋
再訪時は灌漑期が終わったこともあり、斜樋の大半が顔を出しています。
(2023年11月3日)


初訪時は満水でした。
(2016年9月11日)

 
ススキに覆われていますが、ダム下に続く階段があります。
立ち入り禁止の表記はありませんでしたが、草が深く自重。
(2016年9月11日)

 
総貯水容量は233万3000立米。
本州の農業用アースフィルダムとしてはかなり大規模。
風がなければ湖面に蔵王が映るのですが・・・・。
(2023年11月3日)

揚水技術のない時代、大河の段丘上はどこも目の前の水を指をくわえて眺めるのみ。
そんな中、遥か高所に水源を求めた先人たちの意地ともいえる川原子ダムです。
 
(追記)
川原子ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0296 川原子ダム(0556)
宮城県白石市福岡八宮
阿武隈川水系白石川左支流青沢川
20メートル
121メートル
2333千㎥/2150千㎥
白石市
1969年
◎治水協定が締結されたダム