ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

手取川第3ダム

2022-09-06 13:00:00 | 石川県
2022年7月30日 手取川第3ダム
 
手取川第3ダムは石川県白山市河内町口直海の一級河川手取川右支流直海谷川にある北陸電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。 
戦後の電力不足を補い主として大規模発電事業を行うために設立された電源開発(株)は開発余地のある手取川に着目、建設省(現国交省)、石川県との共同事業により手取川ダム建設が決定します。
同事業で発電された電力は全量北陸電力に売電されるため両者の連携は不可欠で、手取川第一発電所は電源開発が、調整池である第2第3ダムおよび第二第三発電所は北陸電力によって事業化されることになりました。
手取川第3ダムは一連のダム発電所と同じく1979年(昭和54年)に竣工し、第一発電所の逆調整池として機能するほか、手取川第三発電所で最大3万キロワットのダム水路式発電を行います。
さらに同発電所の放流水は下流の石川県土木部水道課が管理する鶴来取水口で取水され、上水道用水及び工業用水として県内各所に送水されます。

ダムは白山市河内町口直海町市街直上にあり、直下の橋から正対できます。
堤高は50メートルですが、基礎岩盤が地中深くになるため見た目は20メートルほど。
放流設備はクレストラジアルゲート2門、導流壁はわずかに漸縮しています。
また導流部は放流水を洪水吐両端に寄せるため、下部で中央が盛り上がる独特の形状。


導流部の盛り上がり。


ダムの直下には墓地があります。
ダムとお墓が同じフレームにはいる眺めはかなりレア。


これは除塵機が集めた塵芥の排出設備。


堤体左岸側に『カド』があります。


上流面
堤頂長は354メートルと結構な長さ。


ダムサイトには北陸電力吉野第一発電所で使用されていたフランシス水車と手取川第二発電所の水圧鉄管の一部が展示されています。


毎度おなじみ、『カド』を真上から。


天端は車両通行が可能。
左岸に管理事務所があります。


ダム湖は総貯水容量424万7000立米。
手取川第一発電所の出力調整による流量変動を平準化させる逆調整池となっています。


取水口沿いの浮桟橋と巡視艇。


これは除塵機。
集められた塵芥は4枚目写真の設備で排出されます。


下流面。


(追記)
手取川第3ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0918 手取川第3ダム(1882)
石川県白山市河内町口直海
手取川水系直海谷川
 
 
50メートル 
35.4メートル 
4247千㎥/3156千㎥ 
北陸電力(株) 
1978年
◎治水協定が締結されたダム

手取川第2ダム

2022-09-05 14:00:00 | 石川県
2022年7月30日 手取川第2ダム
 
手取川第2ダムは石川県白山市仏師ヶ野町の一級河川手取川本流にある北陸電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
戦後の電力不足を補い主として大規模発電事業を行うために設立された電源開発(株)は開発余地のある手取川に着目、建設省(現国交省)、石川県との共同事業により手取川ダム建設が決定します。
同事業で発電された電力は全量北陸電力に売電されるため両者の連携は不可欠で、手取川第一発電所は電源開発が、調整池である第2第3ダムおよび第二第三発電所は北陸電力によって事業化されることになりました。
手取川第2ダムは第一発電所の放流水の逆調整池である手取川第3ダムのある直海谷川に流域変更するための調整池として、一連のダム発電所と同じ1979年(昭和54年)に竣工しました。
ここで取水された水は約11キロの導水路で直海谷川に送られ、その際手取川第二発電所で最大8万7000キロワットのダム水路式発電を行います。
さらに当ダムからは手取川沿い左岸に広がる農地向け既得灌漑用水の供給も行われています。
 
上流の仏師ヶ野橋から遠望。


ラジアルゲート3門を備え、写真ではわかりづらいですが右手に取水口があります。


右岸から。


アングルを変えて。
手前に浮桟橋、奥に既得灌漑用水の取水口があります。


既得灌漑用水の取水設備。
表面取水用のフローティング式取水設備かと思います。


浮桟橋と繋留船。


門扉が閉まりダムの敷地には入れません。
管理事務所。


奥には分割式予備ゲートが置かれています。


左岸のも見学ポイントがありますが、農作業用の車が止まっていたので自重しました。
また下流からダムと正対できる場所があるようなので、機会があれば再訪しようと思います。

(追記)
手取川第2ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0919 手取川第2ダム(1881)
石川県白山市仏師ヶ野町
手取川水系手取川
 
 
37.5メートル 
210メートル 
1700千㎥/1695千㎥ 
北陸電力(株) 
1979年
◎治水協定が締結されたダム

手取川ダム・手取川第一発電所見学会

2022-09-04 12:00:00 | ダム見学会
2022年7月30日 手取川ダム・手取川第一発電所見学会
 
全国各地のダムが一斉に見学会等のイベントを実施する『森と湖に親しむ旬間』、しかしながらコロナ禍のためこの2年はほぼ休止状態となっていました。
ようやく世の中が正常化に向かい始めた今年、多くのダムでイベント再開の動きが出てきました。
たまたまこの時期に北陸のダム巡りをすることになり、手取川ダム真名川ダムどちらの見学会に参加するか?迷ったのですが、最終的に普段敷地に立ち入りできない手取川ダムの見学会を選択しました。
日時は7月30日、午前と午後の部それぞれ定員20名ということでちょっと早めの9時過ぎに手取川ダム左岸ダムサイトのダムPR広場に到着。
 
その前に、普段手取川ダムの下流面を唯一見ることができる国道157号線から。

 
午前10時に見学会がスタート
参加者はそれぞれマイカーで右岸のダム管理事務所に向かいます。
正式名称は『国土交通省金沢河川国道事務所手取川ダム支所』。


国交省の職員さんよりダムについての基本的な説明。


事務所内にあるダムの模型。
もともと天端や管理事務所は一般に公開させる前提でしたが、天端に通じる管理道路で落石の恐れがあるため、立ち入り制限を設けています。


次に天端の見学
こちらは主ゲートのローラーゲート。


予備ゲートはなく、改修や補修、塗装などは水位が低下した時期に行います。


落差150メートル以上の洪水吐斜水路。


ダム下では毎秒1立米で河川維持放流が行われています。
もともとこの放流設備はありませんでしたが、維持放流の義務化を受けて2004年(平成16年)に増設されました。


洪水吐の上流側
維持放流用の取水設備は左手の管理事務所上流の水中にあります。


堤頂長420メートルの下流面。


天端幅は12メートル
トラッククレーンが走れる幅が確保されています。


上流面
奥に発電用取水塔が見えます。


ダム湖の手取湖
総貯水容量2億3100万立米は全国のロックフィルダム中第4位
北陸では九頭竜ダムに次ぎ第2位。


左岸天端脇のモニュメント
ダム完成20周年を記念して2000年(平成12年)に設置されました。
銘板は地元選出の当時の森首相の筆です。


モニュメントの説明版。


こちらは左岸ダムサイトの竣工記念碑。


再びマイカーでダム下に移動し、監査廊と放流設備の見学に移ります。
実際にダムを施工したのは電源開発(株)であり、堤体の管理も同社が行っています。
見学会のアテンドも同社の職員さんに交替。
左岸ダム下の監査廊入り口。


監査廊に入るとすぐに螺旋階段
これは天端へと続く竪坑になります。




気温は11度、
外気の34度からのギャップが激しい。


岩盤変位計。


ドレーンホール。


地酒が貯蔵中
ほぼ気温と湿度が一定のため、熟成にはぴったりだとか?

さらに洪水吐の下をくぐるため階段が下りてゆきますが、見学はここまで。


つづいてダム下の見学
真下から見上げると超広角でもフレームに収まらない。
昭和50年代前半のダムですが、同時期のロックフィルダムに比べるとかなりきれいに成型されています。


洪水吐斜水路
超広角でデフォルメされていますが、実際はかなりの高度差を実感できます。
斜水路手前側に小水力発電所が増設される予定。


すでに小水力発電所向けの分水バルブが設置されています。


奥のトンネルは仮排水路。


アングルを変えてもう一度斜水路。


最後は電源開発(株)手取川第一発電所へ
もりみずのイベントでこの発電所が公開されるのは初めてだそうです。


玄関先のプレート。


いよいよ発電所内に。


天井には住友重機製クレーン
最大240トンまで釣り上げ可能。


電源開発職員さんによる説明。


富士電機製発電機が2基並びます。
それぞれ最大12万9000キロワットの発電能力をち、認可出力は合わせて25万キロワット。




発電機の銘板。


発電所の認可最大出力25万キロワットは石川県及び手取川水系の水力発電所最大を誇ります。
常時発電は3万キロワットで、主に電力需要ひっ迫時を中心にピーク発電に近い運用が行われ、ちょうど昼前の見学時は運転休止中でソーラーの出力が落ちる夕刻から運転に備えていました。
また当発電所には逆調整池として手取川第2第3ダムおよび第二、第三発電所がありますが、こちらは北陸電力(株)が管理運用を行っています。
発電所と逆調整池の発電事業者が異なるのは非常に珍しいケースです。

約2時間の見学会でしたがあっという間に終了、疑問点などはできるだけ質問したつもりでしたが、振り返ると聞き洩らしたことも多々あり後悔しきり。
でも見学会はやっぱり楽しい。

手取川ダム

2022-09-03 15:00:00 | 石川県
2016年11月 5日 手取川ダム
2022年 7月30日
 
手取川ダムは左岸が石川県白山市東二口、右岸が同市女原の一級河川手取川本流上流部にある国交省北陸地方整備局と電源揮発(株)が共同管理する多目的ロックフィルダムです。
手取川は加賀地方中央部をほぼ南北に縦断する石川県最大河川で、中下流部に広がる広大な扇状地は加賀平野を形成します。
古くから流域の灌漑用水源として利用され加賀百万石の礎となる一方、氾濫や渇水が多く抜本的な治水・利水対策が求められていました。
建設省(現国交省)、電源開発、石川県がそれぞれ当地へのダム建設計画を進めていましたが、1970年(昭和45年)に三社の共同事業によるダム建設事業が着手され、電源開発による施工により1979年(昭和54年)に手取川ダムが竣工しました。
手取川ダムは三者の共同事業で建設された兼用工作物で、手取川ダムの洪水調節、石川県8市4町村への上水供給、金沢港臨海工業地域への工水供給、電源開発手取川第一発電所での最大24万キロワットのダム水路式発電を目的としています。 
運用開始後は湖面管理及び洪水調節は国交省が、堤体管理及び発電所は電源開発が管理を担っています。
運用開始後は湖面管理及び洪水調節は国交省が、堤体管理及び発電所は電源開発が管理を担っています。

手取川ダムは堤高および総貯水容量ともにロックフィルダム第4位、北陸地方第2位と日本屈指のロックフィルダムとなっていますが、国道から天端へ通じる管理道路で落石リスクがあるため普段は天端への立ち入りができません。
初回訪問時は左岸からの見学に留まりましたが、ダム見学会に合わせて再訪し天端や監査廊、発電所を見ることができました。
見学会の詳細については別項
 
普段手取川ダムの下流面を見ることができるのは、国道157号線東二口第2トンネル手前からのみです。
堤高153メートル、堤頂長420メートルの巨大ロック。




こちらは天端へ続く管理道路入口
この先で落石リスクがあるため、普段はゲートが閉められ立ち入ることができません。


国道157号線沿いのダム展望公園には、手取川ダムに使われているロック材が展示されています。


手取川第一発電所の取水塔
最大使用水量180立米/秒でここから約1500メートルの導水路で発電所に送水されます。
さらに北陸電力手取川第二、第三発電所を経て下流に放流され、放流水は石川県向け上工水として利用されます。


対岸の管理事務所とインクラインを遠望。


ここから先は立ち入り禁止区域の写真となります。
左岸の竣工記念碑。


右岸のクレストローラーゲートと上流面
発電用取水口から180立米/秒の取水を行うため、放流設備はこのゲートと利水放流バルブのみです。


洪水吐斜水路
153メートルの高さを実感できます。


減勢工をズームアップ
毎秒1立米の維持放流中。

下流面。


天端はトラッククレーンが通行可能な2車線幅で対岸まで420メートル。


総貯水容量2億3100万立米は全国のロックフィルダム中第4位
北陸では九頭竜ダムに次ぎ第2位で黒部ダムを凌ぎます。


ダム下へ
斜水路をフレームに納めるため超広角で撮りました。
写真ではデフォルメにより高度感が感じられませんが、実際には相当の高さとなります。
斜水路の右手に小水力発電所が計画されています。


河川維持放流用バルブは毎秒1立米で放流中
もともとここに放流設備はありませんでしたが、河川維持放流の義務化により2004年(平成16年)に増設されました。
小水力発電所用の分水バルブが取り付けられています。


斜水路を見上げます。

(追記)
手取川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0920 手取川ダム(0701)
左岸 石川県白山市東二口
右岸     同市女原
手取川水系手取川
FWIP
153メートル
420メートル
23100千㎥/19000千㎥
国交省北陸地方整備局・電源開発(株)
1979年
◎治水協定が締結されたダム

利賀ダム

2022-09-02 14:00:00 | 富山県
2016年9月24日 利賀ダム
2022年7月29日
 
利賀ダムは富山県南砺市利賀村押場の一級河川庄川水系利賀川に国交省北陸地方整備局が建設中の多目的重力式コンクリートダムです。
庄川は神通川や黒部川と並ぶ富山を代表する大河川ですが、有史以来頻繁に流路を変える暴れ川で、河道が固定されたのは明治期になってからでした。
明治末期より豊富な水量を活かし電源開発が活発に進められる一方、治水については水系にある治水ダムは左支流の境川ダムのみで抜本的な治水対策が望まれていました。
1989年(平成元年)に当時の建設省は庄川の主要右支流利賀川への多目的ダム建設に着手し工事用道路建設などが着工されました。
しかし、2010年(平成22年)に検討対象ダムとなり、2016年(平成28年)にようやく継続が決定。現在は2031年(令和13年)の竣工をめどに工事用道路の建設や河道整備、転流工事などが進められています。

完成の暁には、堤高112メートル、堤頂長232メートル、総貯水湯量3110万立米の重力式コンクリートダムが出現し、利賀川および庄川の洪水調節、流域の不特定灌漑用水への補給および安定した河川流量の維持、工業用水の供給を目的として運用される予定です。

工事は右岸国道471号線にあるダムサイト展望台から俯瞰するのみ
こちらが展望台入り口。
 
ダムの案内板。


事業概略図。


建設予定地を俯瞰
左手がダム湖になる予定。


こちらが2016年9月の写真。
三角錐の法面の右手がダム軸となります。

こちらが2022年7月の写真。
ほとんど変わりません。

 
水没予定地を拡大。
橋は工事用道路を兼ねる国道471号線バイパス。

本体工事に着手するのはまだ先のようです。
 
3024 利賀ダム(0624)
富山県南砺市利賀村押場
庄川水系利賀川
FNI
112メートル
232メートル
31100千㎥/26400千㎥
国交省北陸地方整備局
2031年竣工予定

猿越ダム

2022-09-01 12:00:00 | 富山県
2022年7月29日 猿越ダム
 
猿越ダムは富山県富山市八尾町切詰の一級河川神通川水系井田川(大長谷川)上流部にある富山県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令により日本発送電は解体され北陸では新たに北陸電力(株)が誕生します。
同社は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めますが、同社だけでは開発の手が足りず北陸三県では公営発電である各県企業局による電源開発が併せて進められました。
富山県企業局は電源開発の手が付けられていなかった神通川水系山田川および井田川(上流は大長谷川)で水利権を獲得、1950年代半ばより順次発電所の建設に着手します。
猿越ダムは1981年(昭和56年)に竣工し、ここで取水された水は約5キロの導水路で大長谷第三発電所に送られ、最大8000キロワットのダム水路式発電を行います。
 
大長谷川沿いに国道471号線を南下し、右手の林道猿越線を辿ると大長谷第四発電所に到着します。
発電所のすぐ先に猿越ダムがあります。
クレスト自由越流頂1門と右岸に放流ゲートを備えています。


親柱の銘版。


天端は林道で車両通行ができ、この先は200名山である金剛堂山のサブコース登山口になっています。
上流側には建屋が二つあり手前は取水ゲート、奥は放流ゲートの操作室。


取水ゲート操作建屋と水利使用標識。


天端から
減勢工の先にはコンクリートブロックが四つ並んでいます。
右手の放流ゲートから維持放流中。


こちらは貯水池側。
貯水池と言っても水の貯留はなく、ダム便覧にも貯水容量は記載されていません。


左岸のリムトンネル
登山者のものと思しき車が一台止まっています。


ダムの貯水池に下りてみます。
左が放流ゲート、右が大長谷第三発電所の取水ゲート。
普段は維持放流用の水以外はすべて取水口に流入してるようです。


こちらはダムのすぐ手前にある大長谷第四発電所。
1989年(平成元年)完成で、最大266キロワットの水路式発電を行います。
取水堰は大長谷川のさらに上流にあり猿越ダムと水のやり取りはありません。


大長谷第四発電所のそばに第三発電所の沈砂池があり、猿越ダムで取水した水と第四発電所の放流水が流入します。


3590 猿越ダム(1880) 
富山県富山市八尾町切詰 
神通川水系井田川(大長谷川)
 
 
29.6メートル 
68メートル 
----千㎥/----千㎥ 
富山県企業局 
1981年