ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

大椴ダム

2019-10-31 15:31:11 | 北海道
2019年10月21日 大椴ダム
 
大椴(おおとど)ダムは北海道留萌郡小平町大椴の大椴子川源流部にある防災・灌漑目的のアースフィルダムです。
留萌振興局管内には道営の防災ダム事業で建設された防災ダムが5基ありますが、大椴ダムはそのうちの一つです。
大椴子川は河川改修が手つかずの原始河川で洪水期・融雪期にはたびたび流域農地に洪水被害をもたらす一方、夏場には水不足による干ばつ被害も多く、抜本的な治水対策が求められていました。
1983年(昭和58年)に北海道は農水省の補助を受けた道営防災ダム事業・かんがい排水事業大椴地区に着手し2003年(平成15年)に竣工したのが大椴ダムです。
大椴ダムは大椴子川の洪水調節と、受益農地106.3ヘクタールへの灌漑用水の供給を目的としており、運用開始後は小平町が受託管理を行っています。
 
小平町大椴の国道239号線から大椴子川沿いに東に進むと正面に大椴ダムが見えてきます。
美しいアースフィルの堤体とまるで重力式コンクリートダムのような洪水吐が絶妙のコラボを見せています。
 
ちょうど見ごろとなった紅葉が良いアクセントになっています。
 
洪水吐だけを切り取れば、まるで一つの重力式コンクリートダムのようです。
自由越流式クレストゲートと自然調節式オリフィスゲートがあり、オリフィスから越流しています。
 
通常フィルダムの洪水吐導流部はフィル斜面に合わせた緩やかな傾斜になっていることが多いのですが、大椴ダムの洪水吐は越流面から急角度で切れ落ちています。
 
洪水吐越流部は越流した水を減勢させる目的でしょうか?S字の段差がついた珍しい形状。
 
減勢工は二つに仕切られ、オリフィス放流の水は右手に流下します。
またバッフルピアが一列に並び減勢効果を向上させています。
減勢工は左手に折れ副ダムを経て大椴子川へ流下してゆきます。
 
ダム湖の総貯水容量は172万9000立米あり、見た目より大きくなっています。
ダム湖は上流側に長く伸びているのでしょう。
 
左岸から下流面
綺麗に刈り払われ行き届いた管理を伺わせます。
 
天端
対岸に管理事務所が見えます。
周囲の山々の紅葉もちょうど見ごろです。
 
上流面はロック材が敷かれています。
 
水利使用標識。
 
アースの堤体、コンクリートダムのような洪水吐、ロックフィルで護岸された上流面と一つのダムで三つの要素が楽しめる大椴ダム。
事前から期待していたダムでしたが、天気にも恵まれ周辺の紅葉もちょうどいい按配。
最高のコンディションでダムを見学することができました。
今回の北海道遠征で一つダムを挙げるとすれば迷うことなくこのダムでしょう。
 
0179 大椴ダム(1537) 
北海道留萌郡小平町大椴
大椴子川水系大椴子川
FA
34メートル
124メートル
1729千㎥/1329千㎥
小平町
2003年

三渓ダム

2019-10-31 12:25:38 | 北海道
2019年10月21日 三渓ダム
 
三渓ダムは北海道苫前郡苫前町三渓の古丹別川水系三毛別川右支流マルシメ沢川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムで、ダム便覧には北海道の事業により1960年(昭和35年)に竣工と記されています。
一方現地竣工記念碑では1959年(昭和34年)竣工となっており、ここでは現地記念碑を採用することにします。
完成以来苫前土地改良が管理を行い長く三毛別川流域の貴重な灌漑用水源となってきましたが、1999年(平成12年)に三毛別川上流に新たに苫前ダムが竣工し、流域の水事情は一段と改善しました。
 
苫前町古丹別の国道239号線から道道1049号線、通称ベアロードを南に進み三渓神社の先を左に折れると三渓ダムに到着します。
北海道の農業用ダムとしては非常に珍しいゲート装備の重力式コンクリートダムです。
 
洪水吐はクレストのローラーゲートだけ。
左岸(向かって右手)に利水放流ゲートがあります。
 
ゲートをズームアップ。
 
右岸の竣工記念碑。
ダム便覧よりも1年早い1959年(昭和34年)竣工となっています。
 
上流面と天端
赤い手すりが印象的。
 
天端
特に立ち入りは制限されていません。
 
導流部と減勢工。
 
一見小さめの貯水池ですが、総貯水容量は68万8000立米。
上流に向けて長く続いてるんでしょう。
需要期が終了し、例に洩れず水が抜かれています。
 
ゲート操作機。
 
ピアから見下ろす天端。
 
三毛別と言えば思い出すのが三毛別羆事件。
竣工記念の碑文にも『熊狐咆哮する中』という表現でこの地を開拓した先人たちの苦労を讃えています。
今は上流に苫前ダムが竣工し、流域の水利は大きく向上しています。
 
0052 三渓ダム(1536) 
北海道苫前郡苫前町三渓
古丹別川水系マルシメ沢川
17メートル
77メートル
688千㎥/606千㎥
苫前土地改良区
1959年

上小川ダム

2019-10-31 11:37:06 | 北海道
2019年10月21日 上小川ダム
 
上小川(かみこがわ)ダムは北海道苫前郡苫前小川の古丹別川水系チエボツナイ川源流にある防災目的のロックフィルダムです。
留萌振興局管内には道営防災ダム事業で建設された5基の防災ダムがありますが上小川ダムはそのうちの一つです。
チエボツナイ川は流路延長31キロメートルの二級河川ですが、蛇行の多い原始河川のため融雪期や豪雨の際には洪水が多発していました。
1974年(昭和49年)に北海道は農水省の補助を受けチエボツナイ川源流部への防災ダム建設事業に着手、2003年(平成15年)に竣工したのが上小川ダムです。
上小川ダムはチエボツナイ川の洪水調節を目的とするいわゆる農地防災ダムで、運用開始後は北海道留萌振興局が管理を行い受益農地371ヘクタールの防災を担っています。
なおダム便覧ではダムの型式がアースフィルになっていますが、留萌振興局のデータではロックフィルなっておりここではロックフィルとしておきます。
 
苫前町古丹別の国道239号線から道道1063号線を東に向かい、最後の集落を過ぎるとダム手前1キロ地点に関係者以外立ち入り禁止のゲートが現れます。
 
ゲートそばのチエボツナイ川にかある警告板。
 
ゲート手前左手に林道が分かれており、ダメモトで進むと釣師のものと思われる踏跡が川沿いに続いています。やがて蛇行した川を渡ると正面に上小川ダムの堤体が見えてきます。
堤高33.2メートル、堤頂長187.3メートルの立派な堤体です。
ロックフィルですが下流面には芝が張られぱっと見アースフィルのようです。
 
ここから先は立ち入り禁止エリアとなるため残念ながらここで引き返すことにします。
 
0127 上小川ダム(1535) 
北海道苫前郡苫前町小川
古丹別川水系チエボツナイ川
33.2メートル
187.3メートル
3677千㎥/3141千㎥
北海道留萌振興局
2003年

羽幌二股ダム

2019-10-31 11:07:03 | 北海道
2019年10月21日 羽幌二股ダム
 
羽幌二股ダムは北海道苫前郡羽幌町上羽幌の羽幌川水系デト二股川上流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
北海道開発局農水部による国営羽幌二股かんがい排水事業の中核施設として1967年(昭和42年)より事業着手、1978年(昭和53年)に竣工しました。
運用開始後は受益自治体である羽幌町が受託管理を行っています。
 
羽幌中心部から羽幌川に沿って道道747号線から741号線をひたすら東に進みます。
ところがダムのかなり手前でゲートアウト。
実は車両は通行止めですが、徒歩はOKみたい。でもクマが出るかもしれない車道を10数キロも歩くのはちょっと・・・。
 
ゲートからチャリでダムに入ってる方もいるようですが、遠征組はこのゲートであきらめることにします。
 
0096 羽幌二股ダム 
北海道苫前郡羽幌町上羽幌
羽幌川水系デト二股川
33.6メートル
125メートル
4300千㎥/3760千㎥
羽幌町
1978年 

有明ダム

2019-10-31 01:45:04 | 北海道
2019年10月21日 有明ダム
 
有明ダムは北海道苫前郡初山別村有明の茂築別川本流上流部にある北海道建設部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで、有明ダムは茂築別川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給を目的として1971年(昭和46年)に竣工しました。
しかし有明ダム運用開始以降も河川改修の進捗の遅れから洪水被害は絶えず、2017年(平成29年)に北海道は新たに茂築別川水系河川整備計画を策定、ダムと河川改修一体となった治水対策に取りかかっています。
 
初山別村内の国道232号線から道道708号線通称桜ロードを東に向かうと有明ダムに到着します。
クレストにローラーゲート1門のシンプルな構造です。
現在堤体改修工事に取り掛かっており、ダム下への立ち入りはできません。
 
堤高21.7メートルに対して堤頂長250メートル、北海道ではおなじみの横長ダム。
堤頂部のいわゆる『襟』がなく独特のバケットカーブとなっています。
 
天端は徒歩のみ立ち入り可能。
 
右岸からダム下の監査廊入り口に通じるスノーシェルター付きの管理通路。
透明のプラスチックカバーで覆われ、ちょっと近未来的な雰囲気。
 
アングルを変えて
夏は暑そう。
 
洪水吐導流部と減勢工
現在新たな導流壁が作られており、もしかしたらゲートレス化されるのかも?
 
これも導流壁??
 
ダム湖は『東山湖』で総貯水容量は244万立米。
ちょうど紅葉は見ごろで雲の切れ間から朝日が差し込み非常に美しい景色が広がりました。
 
ピアとゲート操作室
雪国らしくピア上の巻き上げ機は被覆されています。
 
左岸から見た下流面、工事の様子。
改修工事が終われば一体どんな姿になるんでしょうか?
 
 
0083 有明ダム(1534) 
北海道苫前郡初山別村有明
茂築別川水系茂築別川
FN
21.7メートル
250メートル
2440千㎥/1840千㎥
北海道建設部
1971年

上湯内ダム

2019-10-30 13:47:52 | 北海道
2019年10月20日 上湯内ダム
 
上湯内ダムは北海道深川市湯内の石狩川水系雨竜川左支流多渡志川上流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
北海道開発局農水部により1950年(昭和25年)より事業着手された国営多渡志かんがい排水事業の中核施設として1956年(昭和31年)に竣工、さらに1987年(昭和62年)には道営溜池等整備事業により大規模改修が行われました。
管理は多渡地土地改良区が受託し受益農地273.63ヘクタールに灌漑用水を供給しています。
 
上湯内ダムは道道98号線沿いにあります。
堤高15.5メートルと高さはありませんが、綺麗に手入れされた芝の緑が目立ちます。
 
ダムの下流左岸に底樋があり手前が底樋ゲート。
すでに灌漑期が終わり貯水池の水が抜かれており、流入量をそのまま流下させています。
 
洪水吐と下流面。
 
上流から見た洪水吐導流部と減勢工
堤高が低いため傾斜はありませんが、導流壁のうねり具合がエロチック。
多分土木屋さん泣かせだったんでしょうねえ。
 
洪水吐は円形越流式。
 
天端は立ち禁なので右岸から見るのみ
上流面はコンクリートで護岸されています。
 
取水設備をズームアップ
上流面に沿って斜樋が設置され、先端先に土砂吐があります。
左手は古い斜樋跡。
 
越流堤越しの貯水池。
総貯水容量は87万7000立米
例に洩れず水が抜かれています。
 
道道脇記念碑
これは1987年(昭和62年)の道営溜池等整備事業の竣工記念碑。
 
水利使用標識。
 
国営事業で建設された灌漑用ダムとしては堤高15メートルちょいは小規模ではありますが、綺麗な下流面の芝、洪水吐導流部のうねうねとした導流壁など心惹かれるものが多い上湯内ダムです。
 
(追記)
上湯内ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。  
 
0048 上湯内ダム(1530) 
北海道深川市湯内
石狩川水系多渡志川
15.5メートル
109.5メートル
877千㎥/857千㎥
多渡志土地改良区
1956年
◎治水協定が締結されたダム

稲田ダム

2019-10-30 12:19:21 | 北海道
2019年10月20日 稲田ダム
 
稲田ダムは北海道深川市音江町の石狩川水系須麻馬内川右支流稲田川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
現地記念碑には北海道の事業により1928年(昭和3年)に建設され、1935年(昭和10年)には大規模な改修工事が行われたと記されています。
さらに1973年(昭和48年)~1979年(昭和54年)に道営の大規模溜池事業が行われ、ダム便覧ではこの改修の竣工をもって稲田ダムの竣工年度としています。
しかし竣工記念碑では1928年の竣工時に堤高49尺とあり、これは16.17メートルに相当するため、ここでは1928年(昭和3年)を竣工年度と記すことにします。
ダムの管理は空知土地改良区が行い、70.74ヘクタールの農地に灌漑用水の補給を行っています。
 
国道12号で深川市音江町稲田の稲田簡易郵便局先を右に折れ、高速の下をくぐると前方に稲田ダムの堤体が見えてきます。
堤高17.6メートルとさほど高くはありませんが、犬走りを挟んで二段の非常に美しい堤体です。
 
左岸の洪水吐導流部。
 
堤体基部は丸石積みの擁壁。
 
上流面はコンクリートで護岸
もろ逆光となりました・・・。
 
総貯水容量は41万立米。
需要期が終わり水が抜かれています。
 
西日に映えた赤い取水塔がとてもきれいです。
 
水利使用標識。
 
道営大規模溜池事業の概要説明。
 
右岸に竣工記念碑と水神宮が祀られています。
 
昭和10年改修時の竣工記念碑
このように池の由来を細かく残していただけるとブログを書く際にも大変重宝します。
 
(追記)
稲田ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。  
 
0026 稲田ダム(1533) 
ため池コード
北海道深川市音江町
石狩川水系稲田川
17.65メートル
220メートル
410千㎥/338千㎥
空知土地改良区
1928年
1979年 大規模老朽溜池事業竣工
◎治水協定が締結されたダム

江部乙1号ダム

2019-10-30 11:19:00 | 北海道
2019年10月20日 江部乙1号ダム
 
江部乙1号ダムは北海道滝川市江部乙の石狩川水系江部乙川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には北海道の事業により1977年(昭和52年)に竣工と記されており、現在は江部乙土地改良区が管理を行い68.79ヘクタールの農地に灌漑用水の補給を行っています。
 
ダムへは下流から江部乙川沿いにアプローチします。
国土地理院地形図には左岸の道道564号線からの道が記されていますが、この道は廃道で使えません。
ダムの右岸にある水利使用標識。
 
上流面は上部がコンクリート、下部が石積みで護岸されています。
 
右岸の多孔式斜樋。
 
天端には轍が残っています。
 
天端からのダム下の風景
やや色づいた木々が西日を浴びて美しい。
 
貯水池は総貯水容量35万4000立米
需要期が終わったため水が抜かれています。
 
斜樋と土砂吐。
 
左岸の横越流式洪水吐。
 
左岸から見た下流面。
 
左岸高台に竣工記念碑があります。
 
当ダムとは全く関係がありませんが、江部乙には全国でも珍しい嗤う狛犬が置かれた江部乙神社があります。
パワースポットとしても有名なので、このダムに来たらぜひお立ち寄りを。
 
 
 
(追記)
江部乙1号ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。  

3362 江部乙1号ダム(1531) 
ため池コード
北海道滝川市江部乙町
石狩川水系江部乙川
18.55メートル
206.5メートル
354千㎥/354千㎥
江部乙土地改良区
1977年
◎治水協定が締結されたダム

エルムダム

2019-10-30 10:16:11 | 北海道
2019年10月20日 エルムダム
 
エルムダムは北海道赤平市百戸北町の石狩川水系空知川右支流赤間沢川源流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
北海道開発局農水部による国営音江山地区土地改良事業の中核施設として1981年(昭和56年)より工事着手、1997年(平成9年)に竣工しました。
運用開始後は受益自治体である赤平市・滝川市・深川市・芦別市が受託管理者となっていますが、実際の管理業務は赤平市に委任されています。
ここで貯留された水は上記4市の受益農地計980ヘクタールに灌漑用水の補給を行っています。
エルムダムはダム名としては珍しいカタカナ表記になっていますが、ダム建設地点周辺には楡(ニレ)の樹林が多く、楡の英語名であるエルムをダム名にしたとのことです。
 
赤平市百戸町からエルム町の標識に従って赤間沢川を北に進むとダム2キロ手前で写真のゲートが現れます。
残念ながらこの先は立ち入り禁止。
 
ゲート前の分岐を左手に取りエルム森林公園方面に登ってゆくと樹間から僅かにエルムダムの堤体が垣間見えます。
 
農業用としてはスケールの大きなロックフィルダムですが、じかに目にするのは難しそう。
 
(追記)
エルムダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。  
 
0133 エルムダム 
北海道赤平市百戸町北
石狩川水系赤間沢川
53.7メートル
258メートル
3300千㎥/2950千㎥
赤平市(滝川市・深川市・芦別市より管理を委任)
1997年
◎治水協定が締結されたダム 

尾白利加ダム(暑寒ダム)

2019-10-29 22:48:48 | 北海道
2019年10月20日 尾白利加ダム(暑寒ダム)
 
尾白利加ダムは左岸が北海道雨竜郡雨竜町第3町内、右岸が樺戸郡新十津川町美沢の石狩川水系尾白利加川上流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
北海道開発局農水部により1953年(昭和28年)より事業着手された国営尾白利加土地改良事業の中核施設として1966年(昭和41年)に竣工し、管理は雨竜土地改良区が受託しています。
尾白利加ダムの総貯水容量は1097万9000立米と農業用ダムとしては屈指の規模を誇り、雨竜町及び新十津川町の受益農地2793.5ヘクタールに灌漑用水を供給しています。
ダムの正式名称は尾白利加ダムですが、尾白利加川の源流には雨竜沼湿原を擁する名峰暑寒別岳があり現地では暑寒ダムの名前が一般的で、道路標識や案内板も『暑寒ダム』と表記されています。
 
尾白利加ダムの天端を道道432号線が走っており左岸ダムサイトは駐車場やトイレ、ベンチなどが設置された公園になっています。
まずは堤体の階段を下りてダム下へ。
穂別ダムや幌向ダム同様ロックフィルの下流面に芝が張られていますが、一部芝がはがれロック材が露出しています。
 
左岸洪水吐導流部
この先で尾白利加川に直接流下します。
 
横越流式洪水吐
全長140メートルの巨大な洪水吐。
 
総貯水容量1000万立米を越える大きな貯水池で、彼方には暑寒別岳が遠望できます。
灌漑期が終わり貯水池の水は抜かれています。
 
左岸の管理事務所と取水塔。
 
天端を道道432号線が通っています。
この日は雨竜湿原へ入れる林道のゲート閉鎖前の最後の日曜日ということで多くのハイカーの車が通り過ぎました。
 
ダムサイトへ戻ります。
上流側から見た洪水吐、やはりでかい!
 
堤体上流面。
逆光で見え辛いのですがロック材で護岸されています。
 
取水塔
 
水利使用標識。
 
とにかくスケールの大きな農業用ダムです。
水が満々と湛えられる新緑と残雪期がお薦めでしょうか?
 
(追記)
尾白利加ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。  
 
0065 尾白利加ダム(暑寒ダム)(1530) 
左岸 北海道雨竜郡雨竜町第3町内
右岸 北海道樺戸郡新十津川町美沢
石狩川水系尾白利加川
31.8メートル
233メートル
10979千㎥/10126千㎥
雨竜土地改良区
1966年
◎治水協定が締結されたダム

日進甲号ダム

2019-10-29 19:17:53 | 北海道
2019年10月20日 日進甲号ダム
 
日進甲号ダムは北海道樺戸郡新十津川町総進の石狩川水系総富地川右支流炭山川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧および現地竣工記念碑によれば北海道の事業により1924年(大正13年)に竣工し、1964年(昭和39年)から1969年(昭和44年)にかけて農林省(現農水省)の補助を受けた北海道の大規模老朽溜池事業によって改修が行われました。
ダムの管理は新十津川土地改良区が行い、69.73ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
ダムの上流に小さなため池がありそれが日進乙号ダムになります。
 
新十津川町内の国道274号線から南10号線を西に折れ西7線十字路の次の分岐を左に取ると日進甲号ダムに到着します。
車で天端まで乗り付けられますが、まずはダム下から
写真でわかり辛いですが、左手に底樋樋門があります。
 
車道は天端を斜行して登っています。
この風景、同じ新十津川土地改良区管理で昨年訪れた和歌ダムによく似ています。
 
左岸の洪水吐導流部。
 
横越流式洪水吐。
 
水利使用標識。
 
上流面はコンクリートで護岸されています。
 
取水設備は近年改修があったようで、左手に真新しい多孔式斜樋、右手に古い斜樋が見えます。
 
取水設備からの水路と分水工
ここもコンクリートが白いので近年改修されたようです。
 
灌漑期が終わったので水が抜かれています。
総貯水容量は80万3000立米。
 
右岸の斜樋と土砂吐
真新しい取水設備。
 
(追記)
日進甲号ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。  

0007 日新甲号ダム(1529) 
ため池コード
北海道樺戸郡新十津川町総進
石狩川水系炭山川
26.5メートル
213.5メートル
842千㎥/803千㎥
新十津川土地改良区
1924年
◎治水協定が締結されたダム

美唄ダム

2019-10-29 16:48:11 | 北海道
2019年10月20日 美唄ダム
 
美唄ダムは北海道美唄市東美唄町の石狩川水系美唄川上流部にある北海道建設部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、美唄川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権としての灌漑用水への補給、美唄市への上水道用水及び工業用巣の供給を目的として1982年(昭和57年)に北海道営としては初の多目的ダムとして竣工しました。
その後2000年(平成12年)~2004年(平成16年)にかけてクレストゲートを撤去するゲートレス化工事が実施されました。
 
美唄インターから道道135号線を進むと美唄ダムに到着します。
ダム下
堤高35.5メートルに対して堤頂長228メートルの横長ダムで、洪水吐はダム右岸側にあります。
 
2004年(平成16年)の改修工事でゲートが撤去され、余所では見られないユニークな形になっています。
常用洪水吐として自由越流式クレストゲートを2門装備、間にあるオリフィスゲートは改修により閉塞され現在は使用されていません。
一方にダム湖右岸に横越流式の非常用洪水吐を新設、越流した水は写真上部左側の口からフーチングを流下する珍しい構造です。
 
左岸ダムサイトに駐車場やトイレがあり自由にダムを見学できます。
堤頂長228メートルの横長ダムで、右岸寄りで上流側に屈曲しています。
 
上流面に『カド』があり右手には橙色の取水塔。
 
びばい湖と命名されたダム湖は総貯水容量150万立米で都道府県営の多目的ダムとしては小ぶり。
 
右岸から取水塔
対岸(左岸)に管理事務所が見えます。
 
ゲート直上から見た減勢工
前日の雨の影響でクレストゲートからかなり激しい放流となっています。
このダムはクレストゲートが常用洪水吐。
減勢工両岸には河川維持放流用放流設備と非常用放流管1条がそれぞれ設置されています。
 
2004年(平成16年)のゲートレス化工事で非常用洪水吐として増設されたのがこれ
重力式コンクリートダムでは非常に珍しい横越流式洪水吐。
 
横越流式洪水吐を越流した水はフーチングを流下する仕組み。
そのためこの堤趾導流壁も新たに設置されました。
 
右岸から見た下流面
横越流式洪水吐からの水は手前の口から放流されます。
 
改修によって重力式コンクリートダムとしては非常に珍しい横越流式洪水吐を備える美唄ダムです。
ゲートレスによって洪水吐の形状もユニークなものとなっており、見どころ満載の美唄ダムでした。
 
(追記)
美唄ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0108 美唄ダム(1528) 
北海道美唄市東美唄町
石狩川水系美唄川
FNWI
35.5メートル
228メートル
1500千㎥/1090千㎥
北海道建設部
1982年
◎治水協定が締結されたダム

ヌッパの沢ダム

2019-10-29 14:46:48 | 北海道
2019年10月20日 ヌッパの沢ダム 
 
ヌッパの沢ダムは北海道三笠市柏町の石狩川水系幾春別川右支流抜羽の沢川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
1882年(明治15年)に三笠に空知集治監(刑務所)が設置され、職員受刑者数千人の飲料水を賄うために1888年(明治21年)にヌッパの沢に上水用水源池が建設されました。
1901年(明治34年)の空知集治監の廃止により水源池の役割はいったん終了しますが、大正末期から昭和にかけて幾春別川流域で新田開発が進められ灌漑用水源として改めて見直されることになりました。
道の事業で1931年(昭和6年)から再整備工事が開始され1933年(昭和8年)に灌漑目的のアースフィルダムとしてヌッパの沢ダムが竣工しました。
現在は北海土地改良区が管理を行い、受益農地11.83ヘクタールに灌漑用水を供給しています。
 
三笠市営火葬場手前にダムに続く林道入り口があります。林道は車両通行止めのため徒歩で約500メートルほど歩くと到着です。
ダム下から見上げる下流面。
 
左岸に洪水吐導流部があります。
 
林道をさらに進むと天端右岸に到着します。
水利使用標識。
 
天端。
 
貯水池は総貯水容量35万立米。
ダム便覧では30万立米になっていますが、ここは水利使用標識の35万を採用します。
水はすでに抜かれ、貯水池周りの木々はいい按配に色づいています。
 
堤体上流面の多孔式の斜樋。
 
上流面
コンクリート等の護岸処理はなさそう。
 
左岸に横越流式洪水吐があります。
 
アングルを変えて。
 
洪水吐導流部。
 
よくある灌漑用溜池かと思ったら、1988年(明治21年)の空知集治監(刑務所)の水源にその起源をもつ由緒ある貯水池でした。
 
(追記)
ヌッパの沢ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。  
 
3358 ヌッパの沢ダム(1527) 
ため池コード
北海道三笠市柏町
石狩川水系抜羽の沢川
22.7メートル
190メートル
350千㎥/300千㎥
北海土地改良区
1933年
◎治水協定が締結されたダム

三笠ぽんべつダム

2019-10-29 13:08:15 | 北海道
2019年10月19日 三笠ぽんべつダム
 
三笠ぽんべつダムは北海道三笠市奔別地先の石狩川水系幾春別川右支流奔別川に国交省北海道開発局建設部の直轄事業で建設予定の治水目的の台形CSGダムです。
石狩川の主要支流である幾春別川水系では1957年(昭和32年)に北海道初の多目的ダムとして桂沢ダム(元)が建設されました。
しかし桂沢ダム竣工後も石狩川流域での洪水被害は絶えず、流域に甚大な被害をもたらした1981年(昭和56年)の台風12号豪雨を契機に桂沢ダムの嵩上げ再開発及び右支流の奔別川への三笠ぽんべつダム建設を軸とする『幾春別川総合開発事業』に着手します。
しかしバブル崩壊以降の経済状況の変化や公共工事見直し機運が強まる中、三笠ぽんべつダム建設事業については多目的ダムから治水ダムへの変更に加え、ダムの規模も大幅に縮小されました。
ダム便覧ではダム竣工は2020年となっていますがいまだ本体工事の着手もなされていません。
2023年竣工をめどに進められてる桂沢ダム再開発工事竣工後に三笠ぽんべつダム建設事業が本格化するのではないかと思われます。
 
三笠市幾春別から奔別川沿いを北に進むと奔別橋の先で道が二股に分かれます。
左手の二車線の道路が三笠ぽんべつダム建設予定地へと続く取り付け道路かと思われます。
 
ダム建設に伴い空知森林管理所から幾春別川ダム建設事業所への貸付地への立ち入り禁止注意看板。
 
本格的なダム建設工事が始まれば改めて足を運びたいと思います。
 
2929 三笠ぽんべつダム 
北海道三笠市奔別
石狩川水系奔別川
CSG
53メートル
160メートル
8620千㎥/8500千㎥
国交省北海道開発局
1985年 幾春別川総合開発事業着手
2023年 竣工予定

桂沢ダム(元)

2019-10-29 11:44:52 | 北海道
2019年10月19日 桂沢ダム(元)
 
桂沢ダム(元)は北海道三笠市桂沢の石狩川水系幾春別川にある国交省北海道開発局建設部が直轄管理する多目的重力式コンクリートダムです。
北海道発の多目的ダムとして1957年(昭和32年)に竣工し、幾春別川及び石狩川の洪水調節、美唄地区への灌漑用水、三笠市・美唄市・岩見沢市への上水道用水の供給、電源開発桂沢発電所での最大1万5000キロワットのダム水路式発電を目的としています。
しかしその後も石狩川流域での洪水被害は絶えず、流域に甚大な被害が出た1981年(昭和56年)の台風12号豪雨を契機に桂沢ダムの嵩上げ再開発および右支流の奔別川への三笠ぽんべつダム建設を軸とする『幾春別川総合開発事業』が着手されました。
このうち桂沢ダム再開発については2016年(平成28年)より本体工事が開始され2023年(令和2年)の竣工を目指し工事は大詰めを迎えています。 
新桂沢ダム(再)運用開始の暁には幾春別川および石狩川の洪水調節、既得取水権への用水補給及び幾春別川の流量の安定保持、美唄地区への灌漑用水の供給、三笠・美唄・岩見沢への上水道用水の供給、石狩新港向けの工業用水の供給、電源開発新桂沢発電所での最大1万6800キロワットのダム水路式発電を目的とする予定です。 
 
道道118号が桂沢ダム右岸を走っています。
しかし首都圏の八ツ場ダムのような工事展望所などの設置はなく道道からダムを垣間見るのが精いっぱい。
 
旧ダム下流側に旧ダムを取り込むような形で新ダムが建設されています。
2023年(令和5年)竣工予定ということですでにクレストゲートもほぼ完成しています。
 
定期的にダム建設工事見学会も実施されているようですが、東京から遠征する身にはなかなか見学会にスケジュールを合わせることはできません。
次は試験湛水が終わりダムの運用開始を待って訪問したいと思います。
 
(追記)
桂沢ダム(元)には洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0049 桂沢ダム(元) 
北海道三笠市桂沢
石狩川水系幾春別川
FAWP
63.6メートル
334.3メートル
92700千㎥/81800千㎥
国交省北海道開発局建設部
1957年
◎治水協定の締結されたダム
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2928 新桂沢ダム(再)(1526)
北海道三笠市桂沢
石狩川水系幾春別川
FNAWIP
75.5メートル
397メートル
147300千㎥/136400千㎥
国交省北海道開発局
1985年~
2023年竣工予定