ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

武利ダム

2023-12-09 17:00:42 | 北海道
2023年10月22日 武利ダム

武利(むり)ダムは北海道湧別郡遠軽町丸瀬布上武利の湯別川水系武利川にある北海道電力(株)が管理する発電目的のアスファルト中央遮水壁(アスファルトセンターコア)型ロックフィルダムです。
湧別川水系では大正時代に湧別川発電所が建設され、戦後北海道電力が事業継承しますが発電能力はわずか690キロワットに留まっていました。
1973年(昭和48年)に始まったオイルショックを契機に電力各社は水力発電の新規開発や再開発に邁進しますが、ここ湧別川では北海道電力が湧別川と武利川で新たな水利権を獲得し、その取水ダム兼上部調整池として1980年(昭和55年)に竣工したのが武利ダムです。
ここで取水された水は約9キロの導水路で瀬戸瀬発電所に送られ最大2万5000キロワットのダム水路式発電を行っています。
武利ダムは日本で唯一のアスファルトセンターコア型ロックフィルダムで、堤体に中央にアスファルト性の遮水壁が設けられ、河床のコンクリート遮水壁と接続して遮水を行います。

丸瀬布中心部から武利川沿いの道道1070号線を約8キロ、車で10分ほど南下すると武利ダムに到着します。
ダムは立ち入り禁止で左岸の道道から見学するのみ。
堤高15.5メートル、堤頂長173メートルで左岸にローラーゲート2門を装備。


日本で唯一のアスファルトセンターコア型ダムですが、見た目は普通のロックフィルダム。
中を伺う由もありません。


ゲートを何とか撮影。


ちょっとユニークな警告板。
『ピンポンパンポ~ン』を聞いてみたい。


敷地はフェンスで厳重にガード。
左手に石碑があります。


ピア上部に巻き上げ機が見えます。
豪雪地帯ですが被覆はありません。


ダム上流の説明板と水利使用標識。

説明版には、堤体のアスファルト遮水壁と河床のコンクリート遮水壁の構造が描かれています。


水利使用標識。


上流面
通常発電用の上部調整池の取水口はダム湖岸に設けられることが多いのですが、ここは導流堤先端に設置されています。


導流堤先端に除塵機が見えます。


貯水池は総貯水容量82万立米。
写真右手のコンクリート構造物が湧別川取水堰からの流入口。
湖面が波立っているのが見えます。


ダム湖直上は日帰り温泉施設やキャンプ場などを備えた丸瀬布森林公園いこいの森として整備されています。
この公園では当地を走っていた森林鉄道の車両が動態保存され、特に森林鉄道蒸気機関車雨宮21号は国内で唯一動く森林鉄道蒸気機関車として多くの鉄道ファンの人気を集めています。
ちょうど訪問時は今期の運行を終えたSLを車庫に格納する式典が行われていました。


鉄道ファンを兼ねるダム愛好家も多く、ここはそういう皆さんにはイチ押しのダムです。

(追記)
武利ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0101 武利ダム(2024)
北海道湧別郡遠軽町丸瀬布上武利
湧別川水系武利川
FC
15.5メートル
173メートル
820千㎥/500千㎥
北海道電力(株)
1980年
◎治水協定が締結されたダム