ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

神水ダム

2019-04-22 08:00:00 | 群馬県
2015年12月09日 神水ダム
2018年11月23日
2019年 4月13日
 
神水ダムは左岸が群馬県藤岡市鬼石町、右岸が埼玉県児玉郡神川町の利根川水系神流川中流部にある群馬県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
群馬県企業局は水資源開発公団(現水資源機構)による下久保ダムに発電業者として事業参加し、ダム式発電所である下久保発電所を建設しました。
神水ダムは同発電所の放流水による水位変動を緩和するために下久保ダム下流3キロ地点に建設された逆調整池で、下久保ダムと同じく1968年(昭和43年)に竣工しました。
さらに2002年(平成14年)には、利水従属発電の鬼石発電所が建設され最大出力790キロワットのダム式発電を行っています。
 
本庄児玉インターから国道462号線を西進、神流川を渡り群馬県に入り藤岡市内の旧鬼石町中心部を抜けると神水ダムに到着します。
国土地理院地形図にはダム名はなく、単に『逆調整池』と記載されています。
ダム左岸から
(2018年11月23日)
 
越流面直下に副ダムがありその下流側に洗堀防止のブロックが敷かれています。
堤高は20.5メートルですが基礎地盤が深いせいか見たところは15メートルあるようには見えません。
また川が県境になっており、対岸は埼玉県です。(2018年11月23日)
 
上流面
一番左岸寄りのゲートだけ上がっています。
 
天端は自動車通行可能、といっても軽でぎりぎり・・・
(2018年11月23日)
 
ダムの下流の眺め。
 
鬼石発電所
河川維持放流を利用して発電を行っています
建屋は波打つ水をモチーフにしたデザイン。
 
貯水池(2018年11月23日)
 
鬼石発電所の取水口。
 
右岸に艇庫とインクラインがあります。
こちらは埼玉県
(2018年11月23日)
 
右岸から見た天端
今は下流に神流川を渡る立派な橋がありますが、それができる前は県境をまたぐ重要な生活道路だったようです。
 
国道462号から上流面
洪水吐ゲート4門に排砂ゲート1門
(2019年4月13日)
 
(追記)
神水ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0614 神水ダム(0099)
左岸 群馬県藤岡市鬼石
右岸 埼玉県児玉郡神川町上阿久原
利根川水系神流川
20.5メートル
130.5メートル
502千㎥/200千㎥
群馬県企業局
1968年
◎治水協定が締結されたダム

下久保ダム

2019-04-21 08:00:00 | 群馬県
2015年12月05日 下久保ダム
2016年 2月13日
2016年 6月26日
2018年11月23日
2019年 4月13日
 
1947年(昭和22年)のカスリーン台風により利根川流域各所では未曾有の洪水被害が発生、これを受け経済安定本部により『利根川改訂改修計画』が策定され、建設省(現国交省)により利根川水系9カ所に多目的ダムを建設し利根川の総合的な治水が企図されました。
群馬県西部においては利根川の主要支流であり群馬県西部地域大半を流域とする烏川水系へのダム建設が計画され、烏川右支流の神流川中流部下久保地点へのダム建設が決定しました。
1959年(昭和34年)より建設省により下久保ダム建設が着手されますが、『利根川水系水資源総合開発計画(フルプラン)』採択により、事業は建設省から新たに組織された水資源開発公団(現水資源機構)に移管され1968年(昭和43年)に竣工したのが下久保ダムです。
下久保ダムは水資源開発公団法(現水資源機構法)によって建設された多目的ダムで神流川および烏川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、東京都および埼玉県への上水道用水と工業用水の供給、群馬県企業局下久保発電所でのダム式発電を目的としています。
2001年(平成13年)には下久保第二発電所が建設され、河川維持放流を利用して最大290キロワットの小水力発電を行ています。
下久保ダムは右岸岩盤の透水性が高く、その遮水処理のために堤体が『L字』に折れ曲がっており、ほぼ直角に曲がった特異な形状から『カド』の愛称で親しまれています。
 
鬼石から国道462号を西に向かうと左手に下久保ダムの堤体が見えてきます。
こちらは主堤となり、クレストにラジアルゲート2門、オリフィスゲート2門、コンジットゲート2門が見えます。
(2016年2月13日)
 
管理所裏手の展望台から。
 
右岸の副堤も上流側に『へ』の字に屈曲しています。
(2018年11月23日)
 
標高500メートルの城峯公園からはより高い位置から俯瞰できます。
(2018年11月23日)
 
左岸主堤上流面。
 
天端は車道
巨大な取水設備操作室が天端を跨いでいます。
 
減勢工は右手に大きく湾曲。
(2016年2月13日)
 
『カド』にある竣工記念碑、建設当時の水資源開発公団となっています。
(2016年2月13日)
 
『カド』の標石
(2016年2月13日)
 
『カド』を真上から見下ろします。
(2016年2月13日)
 
右岸から上流面
(2016年2月13日)
 
ゲートをズームアップ
ラジアルゲートの間にオリフィスの予備ゲートが並びます。
右手は選択取水設備。
 
2016年6月26日放流設備点検イベント
 
6月26日に実施された下久保ダム放流設備点検イベントに参加してきました。
イベントの具体的な内容については別項にて詳細を記載しています。
今回は通常の訪問では見ることができない場所からの写真を中心に掲載したいと思います。
 
右岸から
 
分画部、つまりカドの内部。
 
堤体直下。
クレスト、オリフィスのほかにコンジットゲートも装備。
 
副ダム。
 
下久保発電所。
 
水車ランナー。
 
クレストゲートが全開しました。
 
 
普段はそばでは見れない減勢工
形状の異なるバッフルピアが2列に並びます。
右手は河川維持放流を利用した下久保第二発電所。
 
オリフィスゲートが開き始めると溜まっていた雨水が流れ落ちました。
 
すべてのゲートがオープン。
 
展望台から
 
2016年のイベントでは渇水のため水位が低くクレスト放流はありませんでした。そのせいか参加者は昨年の半分程度だった様ですが、カドの内部を見られる堤体B1トレッキングなど楽しいイベントも多く、充実した1日となりました。
 
(追記)
下久保ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0615 下久保ダム(0095)
左岸 群馬県藤岡市保美濃山
右岸 埼玉県児玉郡神川町矢納
利根川水系神流川
FNWIP
129メートル
605メートル
130000千㎥/120000千㎥
水資源機構
1968年
◎治水協定が締結されたダム


間瀬ダム

2019-04-20 08:00:00 | 埼玉県
2015年12月09日 間瀬ダム
2019年 4月13日
 
間瀬(まぜ)ダムは埼玉県本庄市児玉町小平の利根川水系神流川右支流間瀬川上流部にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
戦前埼玉県の事業により建設されましたが、竣工年度についてはダム便覧では1936年(昭和11年)、ダム親柱の銘版では1937年(昭和12)と1年のずれがあります。
管理は美児沢用水土地改良区が管理を行っています。
ダム便覧では『日本最古の農業用コンクリートダムか?』と書かれていますが、兵庫県の上田池ダム山田池、香川県の豊稔池ダムなどが先に竣工しておりこれは誤りです。
正確には東日本最古の農業用コンクリートダムであり、型枠によって建設された農業用コンクリートダムとしては日本最古という表現が正しいものになります。
いずれにしても土木建築物としては貴重なダムであることは間違いなく、2000年(平成12年)に国の有形文化財に登録された、近代土木遺産、日本100ダムに選定されています。
貯水池の間瀬湖は関東有数のヘラブナ釣りスポットとなっており季節を問わず多くの釣師が訪れるほか、桜の名所としても知られています。
 
本庄児玉インターから国道462号を南下し、旧児玉町中心街から県道44号に入りさらに県道287号を南下すると間瀬ダムに到着します。
初回訪問時は晩秋、2度目は桜満開の時期での訪問となりました。
黒く着色したコンクリートが歴史を感じさせます。
 
浮き出た打継面、落ち葉と白糸のような細い流水が何とも言えない哀愁を漂わせ晩秋の景色とマッチしています。
 
2度目の訪問は春爛漫、桜満開の時期となりました。
(2019年4月13日)
 
苔むした導流壁
 
洪水吐の扶壁の配置や高欄のデザインも凝っています。
 
取水設備からの樋門(2019年4月13日)
 
天端と親柱 天端は車両通行可能です。(2019年4月13日)
 
昭和拾二年竣工の銘板、ダム便覧の竣工年度とは1年ずれています。
 
銘板では間瀬堰堤となっています。(2019年4月13日)
 
手が込んだ天端高欄。
 
ぱっと見ると本物の木の幹が使われているよう。
 
 
取水設備建屋はどこかの文豪の別荘みたいな雰囲気
(2019年4月13日)
 
導流壁と減勢工、桜満開です。(2019年4月13日)
 
天端から見下ろした減勢工と水路(2019年4月13日)
 
貯水池の間瀬湖は総貯水容量53万立米
間瀬湖は管理釣場となっており関東有数のヘラブナ釣りスポットとして知られています。
(2019年4月13日)
 
取水設備は戦前のダムらしく半円形
釣り用の貸しボートが並びます。
 
下流の管理橋
堰堤ともども有形文化財に登録されています。
左側は灌漑用水路へのゲートになります。(2019年4月13日)
 
登録有形文化財のプレート(2019年4月13日)
 
晩秋と春爛漫、全く雰囲気の異なる季節に訪問しましたが、どの季節も似合う古い名堤です。

(追記)
間瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0633 間瀬ダム(0098)
埼玉県本庄市児玉町小平
利根川水系間瀬川
27.5メートル
126メートル
美児沢用水土地改良区
1936年
◎治水協定が締結されたダム