ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

北川ダム

2023-01-18 17:22:55 | 大分県
2022年11月20日 北川ダム

北川ダムは大分県佐伯市宇目南田原の一級河川五ヶ瀬川水系北川にある大分県土木建築部が管理する多目的アーチ式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令により日本発送電は解体され九州では新たに九州電力(株)が誕生します。
同社は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めますが、同社だけでは開発の手が足りず各県で公営発電による電源開発が併せて進められました。
大分県では1952年(昭和27年)に県電気局(現企業局)が設立され、高度経済成長に加え1959年(昭和34年)の大分臨海工業地帯造成事業着手による電力需要急増に対処するため積極的な電源開発を進めました。
北川は上流部が大分県、中下流部が宮崎県を流下する一級河川ですが電気局はここで発電用水利権を獲得し、土木建築部による北川総合開発事業に参加し1962年(昭和37年)に竣工したのが北川ダムです。
北川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、北川の洪水調節のほか県企業局北川発電所、下赤発電所、桑原発電所計最大2万9600キロワットの発電を目的としています。
注目すべきは北川ダムは大分県事業で建設されますが、洪水調節についてはその受益者は宮崎県となる点です。
建設当時、このダムの主目的はあくまでも発電にありその水利権を大分が獲得するバーターとして宮崎県が治水受益者となるダムを大分県の手で建設したのではないか?と推察するところです。

北川ダムは国道326号線沿いにありますが、日中の職員駐在時以外はダムへのゲートが閉められるので注意が必要です。
従来下流側からの展望ポイントはありませんでしたが、2022年(令和4年)春に、下流の山が伐採され高所からダムを俯瞰できるようになりました。
総貯水容量4100万立米は大分県所管ダムでは最大で、貯水池の北川ダム湖はダム湖百選に選ばれています。


放流設備はクレストラジアルゲート5門のほか写真では見えませんが低水放流設備があります。
発電目的の水利権が最大25立米/秒あり、約4キロ下流の北川発電所までの流量の大半は発電用導水路経由となります。


管理道路を進むとまず上流面が見えてきます。
訪問時は満水。


諸元及び施工者のプレート
施工の梅林建設は大分拠点の中堅ゼネコンですが、アーチダムの施工者としてはちょっと意外な感じ。


スペースがないので超広角じゃないと収まりません。
巻き上げ機は高欄下に収められ天端はすっきり、朱系のキャットウォークが鮮やか。


右岸の斜樋
多目的ダムに斜樋は珍しいのですが、河川維持放流義務化に合わせて刷新されたようです。
手前はカバーの付いた巡視艇の格納用浮き桟橋。


減勢工にはエンドシルと言ってよいのか?
細いコンクリートの壁。
右手は低水放流設備。


低水放流設備をズームアップ
結構放流されています。


ラジアルゲート。


左岸の発電用取水口
最大毎秒25立米を取水します。


左岸から
こちらから見るとドーム型アーチだとよくわかります。
対岸には改修中の管理事務所があります。


天端は1.5車線幅ほど
奥の橋は国道326号梅の里大橋。


ダム湖に架かる国道326号『唄げんか大橋』
建設省直轄事業としては初の斜張橋で、橋の向こう側には『道の駅宇目』があり休日にはかなりの集客力があります。


(追記)
北川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2757 北川ダム(1945)
大分県佐伯市宇目南田原
五ヶ瀬川水系北川
FP
82メートル
188.3メートル
41000千㎥/34700千㎥
大分県土木建築部
1962年
◎治水協定が締結されたダム

小中尾ダム

2023-01-17 17:44:52 | 大分県
2017年 6月19日 小中尾ダム
2022年11月20日
 
小中尾ダムは大分県佐伯市木立の一級河川番匠川水系小立川右支流(河川名不明)にある農地防災および灌漑目的のアースフィルダムです。
小立川流域の農地防災を目的に1958年(昭和33年)に農林省(現農水省)の補助を受けた県営防災ダム事業小立地区が採択されます。 
そして既設の灌漑用溜池である大中尾池および小中尾池に農地防災容量を付加するダム化事業が着手され、1966年(昭和42年)に大中尾ダム、小中尾ダムが竣工しました。
両ダムともに完成後は小立土地改良区が管理を受託し、小立川流域農地を洪水被害から守るとともに灌漑用水を供給しています。
 

小中尾ダムには2017年6月に初訪、2022年11月に再訪しました。 
日付のない写真はすべて初訪時のものです。 
佐伯市街から国道388号線を南下、小中尾入口バス停を左折して小中尾集落に入り突当たりを右折して川沿いに進むと小中尾ダムに到着します。
下流から遠望。


堤体直下。
(2022年11月20日)


洪水吐導流部
この横に底樋門がありますが、草木が繁茂し撮影不可能。
(2022年11月20日)  


天端には轍があります。
(2022年11月20日)


天端からの眺め
大中尾ダム と異なり、こちらは未整備
広場のように見えるのは放棄農地。


総貯水容量18万8000立米の貯水池
農地防災容量分だけ水位は低め。


左岸の斜樋。
(2022年11月20日)


左岸の洪水吐導流部
3枚目写真に流下します。
(2022年11月20日)


横越流式洪水吐。
(2022年11月20日)


上流面はロック材で護岸
草付きとの境が洪水時最高水位でその間が農地防災容量=洪水調節容量となります。
(2022年11月20日)


斜樋機械室。
(2022年11月20日)


斜樋のシャフト。
(2022年11月20日)


(追記) 
小中尾ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2761 小中尾ダム(1061)
大分県佐伯市木立
番匠川水系木立川
FA
22.3メートル
113.1メートル
188千㎥/169千㎥ 
木立土地改良区 
1966年
◎治水協定が締結されたダム

大中尾ダム

2023-01-16 17:40:03 | 大分県
2017年 6月19日 大中尾ダム
2022年11月20日   
 
大中尾ダムは大分県佐伯市木立の一級河川番匠川水系小立川にある農地防災および灌漑目的のアースフィルダムです。
小立川流域の農地防災を目的に1958年(昭和33年)に農林省(現農水省)の補助を受けた県営防災ダム事業小立地区が採択されます。 
そして既設の灌漑用溜池である大中尾池および小中尾池に農地防災容量を付加するダム化事業が着手され、1966年(昭和42年)に大中尾ダム、小中尾ダムが竣工しました。
両ダムともに完成後は小立土地改良区が管理を受託し、小立川流域農地を洪水被害から守るとともに灌漑用水を供給しています。
 

大中尾ダムには2017年6月に初訪、2022年11月に再訪しました。 
日付のない写真は初訪時のものです。 

佐伯市中心部から国道388号線を約7キロ南下、木立集落を抜け大中尾トンネル手前を右手に折れると大中尾ダムに到着します。 
ダム下は大中尾公園として整備され、広く桜が植えられるとともに人工池や東屋などが設けられています。 
トイレが清潔なので桜の季節には相応の人出があるんでしょう。 


池と下流面。 


右岸のトンネル
洪水吐導流部の吐口です。


こちらは底樋門。


ダム下のバルブ
底樋門の先にあり、灌漑用水と公園の人工池への分水を行うようです。
(2022年11月20日)


天端への左岸沿いの道から。
再訪時は朝霧が立ち込め幻想的な眺めでした。
(2022年11月20日)


天端には轍があり車両の走行も可能ですが、対岸で行き止まり。
(2022年11月20日)


天端からの眺め
これが桜で埋め尽くされればさぞかし壮観でしょう。
下流彼方に見えるのが受益地となる小立地区。


総貯水容量41万6000立米の貯水池
農地防災容量が配分されているため、水位はやや低め。


右岸の洪水吐導流部
3枚目写真のトンネルに通じます。


横越流式洪水吐。


上流面はロック材で護岸
草付きとの境が洪水時最高水位で、その間が農地防災容量=洪水調節容量となります。(2022年11月20日)


右岸湖畔にある斜樋機械室
管理事務所を兼ねますが普段は無人。
(2022年11月20日)


斜樋のシャフト。
(2022年11月20日)


見た目もサイズも『ため池』ですが、大分県のため池データベースには記載がなく農業用ダムと言う括りになります。

(追記)
大中尾ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2760 大中尾ダム(1062)
大分県佐伯市木立
番匠川水系木立川
FA
25.4メートル
138.31メートル
416千㎥/374千㎥
木立土地改良区 
1966年
◎治水協定が締結されたダム

黒沢ダム

2023-01-16 06:03:04 | 大分県
2022年11月19日 黒沢ダム 
 
黒沢ダムは大分県佐伯市青山の一級河川番匠川水系堅田川にある大分県土木建築部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
堅田川は洪水や渇水が多く早くから抜本的な治水や利水対策を求められていました。
そこで大分県は1968年(昭和43年)に堅田川上流部への治水ダム建設を採択、1975年(昭和50年)に竣工したのが黒沢ダムです。
黒沢ダムは建設省(現国交省)の補助を受けた補助治水ダムで、堅田川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給を目的としてしています。
 
佐伯市青山の県道37号線から黒沢ダムの標識に従って堅田川沿いを5.5キロ南下すると黒沢ダムに到着します。
ダム便覧にはダムを正面から撮った写真が掲載されていますが、今はダム下へ下りるすべはありません。
便覧の写真を見るとクレストラジアルゲート1門、自然調節式オリフィス2門を備え、ゲートレスへの過渡期形態のダムのようです。


ゲート部分をズームアップ
かまぼこ型のゲートハウス特徴的。


ダムサイトの概要図
錆びて判読不能。


管理事務所
大分県営ダムは基本職員さん常駐のはずですが、ベルを押しても返答なし
あいにく不在のようでした。


天端から減勢工を見下ろす
2門のオリフィスから放流中。
減勢工にはエンドシルがあります。
しかし、ダム便覧のダム下からの写真ですがどうやって下りたんだろう?




年季の入った巻き上げ機。


総貯水容量410万立米のダム湖。

天端は車両通行できます
右手が管理事務所、左手はゲートハウス。


左岸から下流面。


上流面。

上流下流共にとにかく撮影ポイントがない黒沢ダムです。

(追記)
黒沢ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2782 黒沢ダム (1944)
大分県佐伯市青山
番匠川水系堅田川
FN
47.5メートル
203.5メートル
4100千㎥/3730千㎥
大分県土木建築部
1975年
◎治水協定が締結されたダム

直川ダム

2023-01-14 18:06:05 | 大分県
2022年11月19日 直川ダム
 
直川ダムは大分県佐伯市直川赤木の一級河川番匠川水系赤木川左支流道の内川にある農地防災目的の重力式コンクリートダムです。
1966年(昭和41年)に農林省の補助を受けた県営防災ダム事業直川地区によって着工され、1970年(昭和45年)に竣工しました。
完成後は佐伯市が管理を受託し赤木川流域農地を洪水被害から守ります。

佐伯市直川中心部から赤木川沿いを約5キロ南下すると直川ダムに到着します。
ダム便覧にはゲートを正面から撮った写真が掲載されていますが、木が伸びてこれが精いっぱい。
クレストにローラーゲートが2門あり、左岸側(向かって右手)が開放されています。


下流面もここまで。
対岸に管理事務所がありダム下の放流設備まで階段が伸びています。


大きなトンネルが常用洪水吐となる調節放流管。
平時は流入量はそのまま放流します。


上流面
半円形のゲージが調節放流管の取水口。


ズームアップ
一見ダム穴風で平時は流入量はそのまま放流し、洪水時は放流量を越える部分をダムでカットします。


天端は車両通行可
ゲート部分だけ下流にわずかにせり出しています。


ゲートピア
クレストゲートは久保田鉄工(現クボタ)製で、手前のゲートが開放されています。


天端から
右下が調節放流管放流口で、エンドシルはなく下流は洗堀を防ぐためブロック工が敷かれています。


ダム湖は総貯水容量74万立米。
堆砂容量11万7000立米だけ貯留されています。


右岸から下流面。


上流から
片方だけ開放されたゲートはウインクをしているよう。


農業ダムや農地防災ダムで見られる事業説明板はなく、受益農地などの詳細はわかりません。

(追記)
直川ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2772 直川ダム(1943)
大分県佐伯市直川赤木 
番匠川水系道の内川 
 

24.9メートル 
80.5メートル 
740千㎥/623千㎥ 
佐伯市 
1970年
◎治水協定が締結されたダム

野津ダム

2023-01-13 17:50:16 | 大分県
2022年11月19日 野津ダム

野津ダムは大分県臼杵市野津町垣河内の一級河川大野川水系垣河内川にある大分県土木建築部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の小規模ダム事業である生活貯水池事業の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、垣河内川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、臼杵市野津町への上水道用水の供給を目的として2001年(平成13年)に竣工しました。
大分県では唯一の生活貯水池ダムです。
ダムのある臼杵市野津町は大分中南部で広く伝承される民話『吉四六(きっちょむ)さん』の故郷とされ、ダム各所に『吉四六ばなし』を彫り込んだ石板が設置されています。

国道10号にあるダムの案内板、ここにも吉四六さんが描かれています。
ここから3キロ弱南下するとダムに到着します。


ダム下から
クレスト自由越流頂、自然調節式オリフィス各1門のシンプルな構造
洪水吐両側の背の高い導流壁が特徴的
右手は放流設備。


左岸から
堤高34.9メートル、堤頂長95メートルの小ぶりなダム。


天端は車両通行可能。


親柱にも吉四六さん。


左岸ダムサイトの管理事務所
嘱託の職員さんが常駐、
あれやこれや質問に親切にお答えいただいた上に、雨中の訪問と言うことでレモンケーキをごちそうになりました。


減勢工
堤体から放流設備への水路管はちょっと珍しい構造。


生活貯水池ダムと言うことでダム湖は総貯水容量33万1000立米と溜池サイズ。


上流面と管理事務所。


左岸には繋留設備
右手は選択取水設備。


クレストゲートとオリフィス取水口。


ブログには掲載しませんが、ダム湖を周回する道路各所に吉四六さんの石板が設置されています。雨のため車で周回しましたが、歩いて一周しても30分もかかりません。
好天時に再訪して吉四六さんをじっくり楽しむのも一興かと。

(追記)
野津ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

3142 野津ダム(1942)
大分県臼杵市野津町垣河内
大野川水系垣河内川
FNW
34.9メートル
95メートル
331千㎥/296千㎥
大分県土木建築部
2001年
◎治水協定が締結されたダム

野田ダム

2023-01-12 17:40:35 | 大分県
2022年11月19日 野田ダム
 
野田ダムは大分県臼杵市野田の臼杵川水系田井ヶ迫川にある農地防災・灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
田井ヶ迫川上流は険峻な急流河川となっているのに加え、合流する臼杵川からのバックウォーターもあり、流域農地はたびたびは洪水被害を被ってきました。
一方、流域丘陵地の畑地・樹園地は水利が乏しいことから零細な営農を余儀なくされ、生産性向上のため灌漑施設の整備が強く求められていました。
そこで大分県は1981年(昭和56年)に農水省の補助を受けた県営防災ダム事業・かんがい排水事業野田地区に着手、その灌漑用水源として1991年(平成3年)に竣工したのが野田ダムです。
野田ダムは田井ヶ迫川流域120ヘクタールの農地防災および43ヘクタールの畑地・樹園地への灌漑用水の供給を目的としており、運用開始後は臼杵市が管理を受託しています。

臼杵市の国道502号線から田井ヶ迫川沿いを南下すると野田ダムに到着します。
先ずはダム下へ
クレスト自由越流頂2門、自然調節式オリフィス1門を装備
通常農業ダムは自由越流頂と利水放流設備と言う組み合わせが多いのですが、野田ダムには農地防災容量が配分されてるためクレスト・オリフィス装備となっています。


クレスト越流高77.15メートルとオリフィス敷高EL65.5メートルの間が農地防災容量(=洪水調節容量)となります。


農業用ダムではおなじみ、事業説明板。


右岸から下流面。


天端にはチェーン
一見立入禁止かと思いましたが錆びついた標識には『車両進入禁止』の文字
徒歩はOKです。


天端から減勢工を見下ろす
エンドシルの下流はブロック工が敷かれています。
右岸手前に維持放流ゲートがあり奥の建屋は電気室となります。


総貯水容量45万2000立米のダム湖
堆砂容量および灌漑容量分が貯留されています。


天端のバルブ
オリフィスの予備ゲート操作用です。


左岸から。


右岸の維持放流ゲート
左手は電気室。


上流面。


右岸展望台から俯瞰
手前は管理事務所ですが、職員の常駐はありません。

(追記)
野田ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2796 野田ダム(1941)
大分県臼杵市野田 
臼杵川水系田井ヶ迫川 
FA 
 
38.7メートル 
126メートル 
452千㎥/404千㎥ 
臼杵市 
1991年
◎治水協定が締結されたダム

乙見ダム

2023-01-11 17:30:07 | 大分県
2022年11月19日 乙見ダム
 
乙見ダムは左岸が大分県臼杵市野津町八里合、右岸が同市乙見の二級河川臼杵川本流にある農地防災および灌漑目的のロックフィルダムです。
臼杵川は上中流部は渓谷、下流域は平野になっており、豪雨のたびに平野の出口一帯で洪水が多発し流域農耕地が被災しました。
大分県は1961年(昭和36年)に農林省(現農水省)の補助を受けた県営防災ダム事業乙見地区を着手、1968年(昭和43年)に竣工したのが乙見ダムです。
管理は臼杵市が受託し臼杵川下流域約300ヘクタールの農地防災を担うとともに、灌漑期のみ灌漑容量が配分されます。
なおダム便覧では竣工年度を1970年(昭和45年)としていますが、ここではダムの銘板に従い1968年(昭和43年)とします。

ダム浚渫工事の際に設けられた作業道でダム湖に下りることができます。
クレストローラーゲート2門、ローラーゲートの下に越流高の異なる放流管2門、さらに右手に調節用放流管を2門装備。
灌漑期のみ灌漑容量が配分され常時満水位が変わるため、多様なゲート配置となっています。
灌漑期は一番左のゲージの付いた放流管、非灌漑期は左から2番目の放流管から流入量を放流します。
また洪水時は右手2門の開閉により放流量を調節します。
今回は非灌漑期の訪問でしたので、左から2番目の放流管から放流されていました。


左岸ダムサイトの管理事務所
職員の常駐はありません。


建設記念碑
摩耗が進み読みづらくなっています。
記念碑の建立は1969年(昭和44年)の運用開始時ですので、ダム便覧の1970年竣工と言う記載には誤りでしょう。


天端は市道で車両通行ができます。
ダムの銘板には昭和43年完成とあります。


ダムサイトの遺構
バッチャープラント跡。


上流面。


減勢工
右手の放流管から放流中
灌漑期は左手の放流管から放流されます。
また洪水時に使用される調節放流管用に右岸側はコンクリートの叩きが設けられています。


総貯水容量180万立米のダム湖
訪問時は非灌漑期のため空っぽですが、9月の台風14号の影響で大量の流木が積み重なっています。
ダムがなければこれが下流に流出したわけですからダムの効果は絶大ですが、後始末が大変。


臼杵川中上流部は阿蘇火砕流による凝灰岩で形成され深い渓谷になっています。
ダム湖左岸には柱状節理が並びます。


ゲートのプレート
このおかげで各ゲートの役割が把握できました。


ゲートピア。


(追記)
乙見ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2769 乙見ダム(1940)
左岸 大分県臼杵市野津町八里合 
右岸     同市乙見 
臼杵川水系臼杵川 
FA 
 
39.9メートル 
120メートル 
1800千㎥/1697千㎥ 
臼杵市 
1968年
◎治水協定が締結されたダム

石場ダム

2023-01-10 18:20:03 | 大分県
2022年11月19日 石場ダム
 
石場ダムは大分県臼杵市野津町東谷の一級河川大野川水系野津川左支流三重谷川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
大野川中流右岸に位置する旧大野郡三重町(現豊後大野市三重町)から旧野津町(現臼杵市野津町)一帯は、地味は豊かながら水利に乏しく灌漑施設の整備が強く求められてきました。
1967年(昭和42年)の大干ばつを受け、1968年(昭和43年)に農林省(現農水省)の補助を受けた県営用水改良事業野津地区が、さらに1971年(昭和46年)には県営畑地帯総合土地改良事業野津地区が着手され、その灌漑用水源として1973(昭和48年)に竣工したのが石場ダムです。
運用開始後は野津土地改良区が管理を受託し約900ヘクタールの畑地に灌漑用水を供給しています。
所在地は臼杵市野津町東谷ですが、天端が境界線となっており貯水池は豊後大野市三重町となります。
 
ダム下から
堤高47メートル、堤頂長236メートルのロックフィル堤体
地山を挟んで右岸側に洪水吐があります。
ロックフィルでは珍しい傾斜コアを採用しています。


洪水吐導流部
軽トラが止まっていますが、シイタケ栽培用の原木を伐採に来た地元の方でした。

ダム下流のトンネル
仮排水路ですが、現在は河川維持放流として使われています。
ダムは三重谷川上流部にありますが、受益地はこの川の下流域ではなく山の北側の農地となります。


天端に上がります
右岸の洪水吐。


右岸から上流面
堤体は緩やかなアーチ状
止まっている車は釣り師のもの。


右岸の横越流式洪水吐。


天端右岸側の竣工記念碑。


天端からダム下を見下ろす
1~3枚目写真はダム下から撮ったものです。


総貯水容量219万立米
約900ヘクタールの農地に灌漑用水を供給します。
右岸の湖岸にはキャンプ場がありますが、かなり荒れておりあまり使われてない様子。


左岸の取水設備
受益地は山の向こう側。


山を挟んでダムの北側約400メートルにある土地改良区の建屋
表札には『野津土地改良区田中管理室』とあります。


建屋の向かいの調圧水槽。

追記
石場ダムはは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2776 石場ダム(1939)
大分県臼杵市野津町東谷  
大野川水系三重谷川
 
 
47メートル 
236メートル 
2190千㎥/2154千㎥
野津土地改良区
1973年
◎治水協定が締結されたダム

篠原ダム

2023-01-09 17:46:00 | 大分県
2022年11月18日 篠原ダム
 
篠原ダムは左岸が大分県由布市庄内町櫟木、右岸が同市狭間町小野の一級河川大分川本流にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1914年(大正3年)に大分市周辺で電源開発を進めていた大分水力電気(株)により篠原発電所が建設されますが、当時は規模の小さな取水堰堤による水路式発電でした。
同社は1916年(大正5年)に九州水力電気(株)に併合され、さらに電力国家管理法による日本発送電(株)の接収を経て、戦後の電気事業再編政令により九州電力が篠原発電所を継承します。
九州電力は戦後の電力不足を補うために各地で積極的な電源開発を進め1957年(昭和32年)に完成したのが篠原ダムで 、ダムの完成により篠原発電所の出力は最大8000キロワットに増強にされました。
なお正式名称は『篠原ダム』ですが、地元では櫟木(いちのき)ダムと呼ばれ一部の地図等でも櫟木ダムの記載が見られます。

今回は夕刻の訪問となり、ダム直上からの見学に留まりました。
クレストローラーゲート6門を備え、右岸に取水口があります。



ダム湖は総貯水容量166万3000立米ありますが、堆砂が進み有効貯水容量は40万6000立米。


今回は時間がなくダム直上からの見学のみ。
ダム便覧にはダム下からの写真が掲載されていますが、現在はダム下の河原に下りるルートはなさそうで再訪しても見学ポイントは限られそう。

(追記)
篠原ダムはは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2753 篠原ダム(1938)
左岸 大分県由布市庄内町櫟木
右岸     同市狭間町小野
大分川水系大分川
22.7メートル
96メートル
1663千㎥/406千㎥
九州電力(株)
1957年
◎治水協定が締結されたダム

ななせダム

2023-01-08 17:32:28 | 大分県
2022年11月18日 ななせダム
 
ななせダムは大分県大分市下原の一級河川大分川水系七瀬川にある多目的ロックフィルダムです。
大分川の治水や大分市への上水及び工水供給を目的として1978年(昭和53年)に大分川ダム建設事業が着手されますが、補償交渉の長期化や社会情勢の変化による利水需要の鈍化などもあり2005年(平成17年)にダムの目的がFNWIからFNWに変更されます。
本体工事着工は2013年(平成25年)にずれ込み、2020年(令和2年)にようやく大分川ダムが竣工しました。 
さらに大分川右支流七瀬川に建設されたにもかかわらず『大分川ダム』と命名されたことで各所からの異論が多く運用開始後に『ななせダム』に名称変更されました。
ななせダムは国交省九州地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、七瀬川および大分川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、大分市への一日最大3万5000立米の上水道用水の供給を目的としています。 
洪水調節については洪水時にダムで毎秒400立米をカットすることで、  芹川ダムと併せて下流の大分川基準地点で毎秒700立米の洪水調節を行い大分市街を洪水から守ります。    

ななせダムは建設にあたり景観や生態系などに配慮したダム造りが進められ日建連による土木賞を受賞、また湖畔への道の駅の設置や多目的広場の建設などダムを拠点にした地域活性化にも積極的に取り組んでいます。

ダム左岸を通る国道442号のダム下への入り口。


ダム下展望台から
右岸側には地山が残り下流からダムの全貌を見ることはできません。


日建連土木賞のプレート。


左岸のバスタブ型洪水吐
非常用・常用兼用で上流の青いゲートが常用洪水吐になります。


洪水吐導流部。


天端から見た洪水吐
中央の穴が常用洪水吐。


放流設備と河川維持放流。


天端は車両通行可能
正面は管理事務所で山の上に多目的広場があります。


総貯水容量2400万立米
所在地が合併前の旧野津原町であることから『のつはる湖』と命名されました。
ダム湖に架かるのはまんじゅう大橋。


堤頂長は496.1メートル
歩いて往復1キロ、約15分。
奇麗なリップラップは出来立てほやほや感。


上流面
堤体は中央右岸寄りでわずかに屈曲しています。


取水塔とバスタブ型洪水吐。


ダム湖畔の第2展望台にある『ダム式万歳』の図
ダム関係者の飲み会ではこれが必ず行われるという噂は真実なのか?


ななせダムの完成により、既設の芹川ダムと併せて下流の大分川府内大橋地点では最大毎秒700立米の洪水調節が可能となり、大分川の治水能力は大きく向上しました。

(追記)
ななせダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2793 ななせダム(1937)
大分県大分市下原 
大分川水系七瀬川 
FNW 
 
91.6メートル 
400メートル 
24000千㎥/22400千㎥ 
国交省九州地方整備局 
2020年 
◎治水協定が締結されたダム 

師田原ダム

2023-01-07 18:00:46 | 大分県
2022年11月18日 師田原ダム
 
師田原ダムは大分県豊後大野市大野町澤田の一級河川大野川水系十時川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
大野川中流左岸の洪積台地に位置する大野原地区は火山灰度に覆われ地味は豊かながら水利に乏しく灌漑施設の整備が強く求められてきました。
1967年(昭和42年)の大干ばつを受け、1969年(昭和44年)に農林省(現農水省)の補助を受けた県営かんがい排水事業および畑地帯総合土地改良事業大野原地区がが着手され、その灌漑用水源として1980年(昭和55年)に竣工したのが師田原ダムです。
運用開始後は大野町土地改良区が管理を受託し1160ヘクタールの畑地・水田に灌漑用水を供給しています。

ダム下から
ダムの下流で十時川が蛇行しており、なかなかいい絵は撮れません。

 
放流ゲートのバルブ。


洪水吐斜水路。


ダム左岸の県道41号から
堤高57メートル、堤頂長219メートルと農業用ロックフィルとしてはなかなかのサイズ。
リップラップに草木が繁茂しているのは今のご時世やむを得ないか…


上流面も草が伸びています。


左岸ダムサイトの竣工記念碑。


天端は車両通行可能
右岸の斜面は芝生の公園。


天端からの眺め
十時川右岸に池があり手前と奥に水路管があります。
池は調圧水槽の役割なのか?


洪水吐
3枚目写真の斜水路に続きます。


横越流式洪水吐。


総貯水容量327万6000立米と、西日本の農業用ダムとしてはかなり大規模。
湖畔は師田原ダム公園として整備され東屋や吊橋などもありますが、あまり使われているようには見えず。


こちらがその吊橋。


(追記)
師田原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2780 師田原ダム(1936)
大分県豊後大野市大野町澤田
大野川水系十時川  
 
 
57メートル 
219メートル 
3276千㎥/2918千㎥ 
大野町土地改良区 
1980年
◎治水協定が締結されたダム

沈堕ダム(参考掲載)

2023-01-06 18:00:27 | 大分県
2022年11月19日 沈堕ダム
 
沈堕ダムは左岸が大分県豊後大野市大野町矢田、右岸が同市清川町臼尾の一級河川大野川本流にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリート堰堤です。
沈堕の滝は全長約100メートル、高さ20メートルの自然滝で、室町時代の画家雪舟の水墨画でも描かれるなど古くから名瀑として知られていました。
1909年(明治42年)に大分-別府間の路面電車を運営していた豊後電気鉄道(株)は沈堕発電所(当初は最大出力500キロワット)の取水堰堤として滝の直上に沈堕ダムを建設します。
1916年(大正5年)に同社は九州水力電気(株)に併合され、1923年(大正12年)には出力7200キロワットの新沈堕発電所建設に伴い堰堤の嵩上げが実施されますが、これにより滝の水量は激減しただの岩壁となり果てました。
電力国家管理法による日本発送電(株)の接収を経て、戦後の電気事業再編政令により九州電力が事業を継承、1980年(昭和55年)には出力が8300キロワットに増強されました。
一方で大量出水のたびに滝は崩落を繰り返し堰堤が脅かされる事態となります。
そこで九州電力は1996年(平成8年)に岩盤の補強を実施するとともに自然石や擬岩を利用した修景工事を実施し、これにより『直垂分かれて13条をなす』かつての名瀑の姿がよみがえりました。 
旧沈堕発電所遺構はCランクの近代土木遺産に選ばれているほか、沈堕の滝は2007年(平成19年)に国の登録記念物(名勝)に指定され、さらに『おおいた豊後大野ジオパーク』にも選定されています。  
 
沈堕の滝下流の県道26号三重野津原線に『沈堕の滝展望台』があり滝と正対できます。
右手は支流の平井川が落水する『雌滝』。

 
ズームアップ
滝の高さは約20メートルありますが、直上の堰堤は堤高5.5メートルにすぎず河川法上のダムの要件を満たしていません。
沈堕ダムはダム便覧には『参考掲載』となります。


沈堕の滝の下流、大野川左岸に駐車場があり発電所の水車が展示されています。
ただこれは宇佐市安心院町の須崎発電所で使われていたもの。

 
駐車場から滝までは遊歩道が整備されています。
訪問時はちょうど紅葉が見ごろ。


右手の落水は沈堕ダムで取水した水の余水。


滝一帯は阿蘇火砕流による溶結凝灰岩地帯でユネスコの豊後大野ジオパークにも含まれています。
対岸にも節理が見られますが、よく見るとジグザグの筋が見えます。
実はこれ魚道跡。


遊歩道は滝のすぐそばまで続きます。
1996年(平成8年)の修景工事により『直垂に分かれて13条をなす』名瀑が復活しました。


駐車場のすぐ下には1909年(明治42年)竣工の旧沈堕発電所の遺構が残ります。
壁は石積、当時の発電所はレンガ積みが多かったのですが、豊後大野は石積建造物が多く良質の凝灰岩が採取できるためここも石積となったようです。


ちょっとこの写真ではわかりづらいのですが、実は明治42年の竣工記念の銘板で豊後電氣鐡道株式會社や工事請負者として電業社の名が見えます。


駐車場から左岸沿いの道路を進むと滝の真上に出ます。
水利使用標識。


超広角で
手前が取水ゲート。


滝と堰堤をズームアップ
滝の直上に堰堤があるのがよくわかります。
滝の上には修景工事で設置された自然石や擬岩が並びます。
 
S515 沈堕ダム(1935)
左岸 大分県豊後大野市大野町矢田
右岸       同市清川町臼尾
大野川水系大野川
5.5メートル
115メートル
九州電力(株)
1909年

稲葉ダム

2023-01-05 17:32:52 | 大分県
2022年11月18日 稲葉ダム 
 
稲葉ダムは左岸が大分県竹田市久住町白丹、右岸が同市刈小野の一級河川大野川水系稲葉川にある大分県土木建築部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
竹田盆地は三方をくじゅう山系、阿蘇外輪山、祖母傾山系に囲まれ竹田市街を軸に大野川から稲場川と玉来川が分岐しています。
このため豪雨のたびに洪水を繰り返し、とりわけ1982年(昭和57年)7月および1990年(平成2年)7月の二度の豪雨災害では長期にわたる都市機能の喪失を伴う甚大な被害が発生しました。
これを受け1991年(平成3年)に大分県は『竹田水害緊急治水ダム建設事業』を採択、稲葉川および玉来川への治水ダムの建設に着手しました。
ちなみに緊急ダム事業は長崎大水害を受けて着手された『長崎水害緊急ダム事業』に次いで全国2例目です。
稲葉ダムは2003年(平成15年)に本体工事が着工されますが、ダム建設地点は阿蘇火砕流による火山堆積物で形成され透水性が高く地盤強度にも問題がありました。
そこで提体両岸の軟弱地盤対策として造成アバットメントを採用、また貯水池内の漏水対策として全面的な表面遮水処理を施すなど問題点を克服し、2010年(平成22年)に竣工しました。
稲葉ダムは国交省の補助を受けた補助治水ダムで、洪水時にはダムで毎秒290立米をカットすることで下流の基準地点で毎秒280立米の洪水調節を行い竹田市街を洪水から守ります。
また、安定した河川流量の維持と既得灌漑用水への補給のための不特定利水容量も配分されています。
その後2021年(令和3年)に河川維持放流を利用した稲葉発電所が完成、九州電力のグループ企業である西技工業(株)の運用により最大出力420キロワットの小水力発電が稼働しました。 
さらに、2022年(令和4年)の玉来ダム完成により『竹田水害緊急治水ダム建設事業』も竣工し、竹田市街の治水機能は大幅に向上しました。  

ダム下は左右両岸共に立ち入り可能で、左岸側は公園になっています。
非常用洪水吐としてクレスト自由越流頂3門、常用洪水吐として自然調節式オリフィス2門を備えています。
右岸(写真向って左手)に維持放流ゲートがありますが、小水力発電所の完成により発電所休止時のみの使用となります。
オリフィスは2門ともに同じ高さのはずですが越流は右岸のみ
高さが違っちゃったんですね。補助ダムとしてはちょっと恥ずかしいかも…。


一般にデフレクターは三角が多いのですが、ここは縦長の四角
なんとなくテングザルの鼻っぽい。


右岸ダム下からは既得灌漑用水である井路が流れています。
奥のトンネルは仮排水路。


2021年(令和3年)に稼働した西枝工業稲葉発電所
奥に水圧鉄管が見えます。


左岸側の造成アバットメント。
堤体接続部に軟弱地盤があるため、コンクリートで人工岩盤を作り地盤の安定を図っています。


造成アバットメントの側面。


左岸ダムサイトから
堤高55メートル、堤頂長233.5メートルの横長堤体
左岸は公園になっており、ダムサイトから歩いて下りられます。


上流面
対岸にも造成アバットメントがあります。


天端から
右岸手前の建屋は従来の放流設備、奥は発電所。


貯水池は総貯水容量727万立米
堆砂容量および不特定利水容量計163万立米だけ貯留し、これで常時満水位。
貯水池は漏水対策として全面コンクリートなどで表面遮水処理されています。


天端は車両通行可能
左手が管理事務所で、一階は資料室として開放されています。


上流から
左岸造成アバットメントに繋留設備があります。


同様の地質に農水省の事業で建設された大蘇ダムは、地盤の亀裂や漏水などで30年を超える長期事業となりましたが、対照的に稲葉ダムは万全の準備と新工法の採用により諸問題を見事に克服しました。

(追記)
稲葉ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2917 稲葉ダム(1934)
左岸 大分県竹田市久住町白丹
右岸     同市刈小野
大野川水系稲葉川
FN
55メートル
233.5メートル
7270千㎥/6190千㎥
大分県土木建築部
2010年
◎治水協定が締結されたダム

芹川ダム

2022-12-30 22:17:34 | 大分県
2022年11月18日 芹川ダム

芹川ダムは左岸が大分県竹田市直入町下田北、右岸が大分市今市の一級河川大分川水系芹川にある大分県土木建築部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1953年(昭和28年)に大分県としては2例目となる河川総合開発事業により着工され、1956年(昭和31年)に竣工しました。
芹川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けた補助多目的ダムで、芹川及び下流の大分川の洪水調節、芹川下流域および旧挾間町約2500ヘクタールへの灌漑用水の供給、大分県企業局芹川第1~第3発電所での計2万3800キロワットの水力発電を目的としています。 

県道30号庄内久住線から芹川ダムの表示に従い南に折れると、ダムの左岸に到着します。
苔が生えた堤体は竣工から60年以上の時間経過を醸し出します。


上流面
手前は水位計。


ゲートピアのコンクリートは白く、近年改修があったようです。


左岸の繋留設備。


左岸高台にプラント遺構が残り展望台になっています
右下の扉は監査廊入り口。


展望台から俯瞰
右手は管理事務所
貯水池は総貯水容量2750万立米と補助多目的ダムとしては結構なサイズ。


左岸の発電用取水口
芹川ダムには灌漑容量、発電容量がそれぞれ配分されていますが、灌漑期には発電所経由で灌漑用水の供給が行われます。


ダムサイトからダム下に下りる山道があります。
入り口にチェーンが掛かっていますが『立入注意』の警告のみ。
管理事務所で確認すると、立ち入ってほしくはないが立ち入り禁止ではないとのこと。
と言うことでダム下へ、正直足元は悪いです。
堤高52.2メートルを見上げます
放流設備はクレストローラーゲート3門のみ。


天端から減勢工を見下ろします。


取水された水の一部を維持放流として戻しています。
ダム一帯は阿蘇火砕流による凝灰岩で形成され、滝の手前には柱状節理が。


右岸から下流面。


天端は車両通行可能
左手が管理事務所。

芹川ダムだけでは大分川の洪水調節は不十分でしたが、2020年(令和2年)のななせダム 完成により大分川府内大橋地点では最大毎秒700立米の洪水調節が可能となり、大分川の治水能力は大きく向上しました。

(追記)
芹川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2752 芹川ダム(1932)
左岸 大分県竹田市直入町下田北
右岸 大分県大分市今市
大分川水系芹川
FAP
52.2メートル
193メートル
27500千㎥/22300千㎥
大分県土木建築部
1956年
◎治水協定が締結されたダム