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ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

山田溜池

2024-05-01 08:00:00 | 千葉県
2017年1月28日 山田溜池
2024年3月31日
 
山田溜池は千葉県南房総市和田町中三原の温石川水系温石川左支流にある灌漑目的のアースフィルダムです。
房総半島の南端の館山市や南房総市周辺は地味豊富ながら大河がないなど水利に乏しく長く零細な農業経営を余儀なくされていました。
大正期に入り南房総一帯では新田開発や耕地整理に合わせた溜池築造機運が高まります。
山田溜池もそんな溜池の一つで、千葉県の補助を受けた当時の南北三原耕地整理組合の事業で1922年(大正11年)に建設されました
その後沼松田耕地整理組合との溜池統合決議を受け溜池のかさ上げが実施され1932年(昭和7年)にかさ上げ改修が竣工し今の山田溜池の規模となりました。
現在は耕地整理組合を引き継いだ南房総市南三原土地改良区が管理を行い、南房総市和田町中三原から南三原に至る約110ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
なおダム便覧では堤高17メートルとなっていますが、ため池データベースでは同14.1メートルとなっておりこれを採れば河川法のダムの要件を満たしていません。

山田溜池は池の入口に厳重なゲートが設置され関係者以外の立入りを禁じており、2017年(平成29年)1月初訪時は堤体を下流から見るのみでした。
2024年(令和6年)3月の再訪時は安房中央ダム見学の際に知己を得た安房中央土地改良区の事務局長様に取次していただき、南三原土地改良区の理事長さま同行での見学が叶いました。
掲載写真のうち最初の3枚が初訪時、撮影日時のないものはすべて再訪時のものとなります。
 
県道296号の寺谷トンネル西側に山田溜池へ通じる道路が分岐しています。
農耕車以外進入禁止になっており、初回訪問時はここに車をデポし徒歩で溜池へ向かいました。
(2017年1月28日)


県道から約600メートル、歩くこと10分ほどで溜池に到着。
便覧では堤高17メートル、ため池DBでは14.1メートル。
見た目には17メートルあるかな?といった感じ。
(2017年1月28日)


堤頂まで九十九折れの道が続きますが、入口に厳重な門扉が設置され関係者以外の立入りを禁じています。
また天端には転落防止用と思われる牧柵のような木の柵が並びます。
初訪時はここで引き返しました。
(2017年1月28日)


ここからは再訪時の写真となります。
警告看板は減りましたが依然として関係者以外の立入りを禁じています。

 
右岸池下の底樋管。
訪問時は非灌漑期のため放流はありません。

 
門扉そばの警告板。


堤体右岸中段に建つ竣工記念碑
溜池築造およびかさ上げに至る経緯が詳しく刻されています。

 
初訪時、木の柵が並んでいた天端にはフェンスが設置されています。

 
総貯水容量は17万5000立米。
房総らしくかなりの濁水。
今年の房総は少雨に悩まされ、灌漑期間近ですがまだ満水には至りません。

 
上流面。
法面上部の線が入っているところが満水位。
水位で2メートル弱下回っています。

 
右岸湖畔を上流へと向かいます。
今は使われない巡視艇。


フローティング式の取水塔。

 
湖岸にあるかつての斜樋の遺構。

 
斜樋の遺構のさらに上流に洪水吐があります。

 
アングルを変えて
開水路流入型で導流部は隧道になっています。
南房総一帯は掘削が容易な砂岩や泥岩で形成され、多くの溜池で隧道式の洪水吐が採用されています。

 
池の入口で立入りが制限され、全容がわからなかった山田溜池。
今回管理する土地改良区の許可を得て構内を見学することができました。
管理する南房総市南三原土地改良区および取次していただいた安房中央土地改良区には厚く御礼申し上げます。
 
0646 山田溜池(0820)
ため池コード 122340114
千葉県南房総市和田町中三原
温石川水系温石川左支流(河川名不明)
16メートル(ため池データベース14.1メートル
60メートル
175千㎥/175千㎥
南房総市南三原土地改良区
1922年

岬ダム

2024-04-20 08:00:00 | 千葉県
2017年2月 4日 岬ダム
2024年2月27日
 
岬ダムは千葉県いすみ市岬町鴨根の夷隅川水系海老川にある上水目的のアースフィルダムです。
旧岬町では1985年(昭和60年)に広域簡易水道として町営水道事業が認可され、その水源として1989年(平成元年)に竣工したのが岬ダムです。
当ダムと隣接する音羽浄水場の完成により計画給水人口1万3200人となる水道事業が開始されました。
その後の水道需要の増加を受けて、1993年(平成5年)の第1次拡張事業により南房総広域水道企業団からの受水が開始され計画給水人口は1万4000人まで増加しました。
2005年(平成17年)の3町合併によるいすみ市誕生に合わせて水道事業も統合され、現在はいすみ市水道課が管理を行っています。
2025年(令和7年)4月に 夷隅地域2市2町の水道事業統合が予定されており、当ダムや浄水場の運営は新たに設立される水道企業団が引き継ぐ予定です。

いすみ市水道課が管理する山田浄水場及び隣接する東ダム東第2ダム、音羽浄水場及び岬ダムはいずれも関係者以外立入り禁止となっています。
再訪時は事前にいすみ市水道課に取材申請を行い、職員様同行による施設見学が叶いました。
掲載写真はすべて立入り禁止エリアのものとなります。
今回の見学は特例であり一般個人の見学については対応されておりません。
その点、強くご理解いただきたいと思います。
掲載写真はすべて再訪時のものです。
  
下流から遠望
向かって左手が音羽浄水場になります。

 
右岸側の洪水吐と減勢工
岬ダムは既設の灌漑用溜池である鴨根堰を取り込む形で建設されました。
貯水池に灌漑容量の配分はありませんが、灌漑期には旧鴨根堰の水利権向けの放流義務があります。
この辺りの田植えは非常に早く2月から田起こしが始まりそれに備えてすでに放流が行われています。

 
ダムサイトおよび浄水場への入り口はチェーンが掛けられ関係者以外立入りできません。

 
右岸から下流面
堤高23.7メートル、堤頂長128.9メートル。

 
右岸ダムサイトの定礎石。

横越流式洪水吐。


上流面はロック材で護岸
ロック材の色の変わっているところが常時満水位
今年は少雨のせいで水位は低め。

  
取水塔
4段の多段式。

 
洪水吐減勢工と放流設備
奥は水位低下用放流設備
手前は灌漑用放流設備でこちらは受益農家が操作します。

 
洪水吐越しの浄水場。
完成は山田浄水場よりも13年遅い1989年(平成元年)
その分建屋も新しく近代的。

 
総貯水容量は54万1000立米
いすみ市が管理する3基のダムでは最大
房総らしく貯水池は濁っていますが、南房総ほどひどくはありません。

 

  
浄水場の上には配水池が2基あります。
左は岬ダムを水源とした配水池、右は南房総広域水道企業団からの水。

 
管理棟の中も見学
ダムの概要板。

 
左はダム完成当時の航空写真
右はダム建設前の鴨根堰の写真。


音羽浄水場では日量5000立米の水を配水しており、うち3400立米が岬ダムを水源とし、残り1600立米は南房総広域水道企業団から受水しています。 
最後に特別のご配慮で見学要請に応じていただいたいすみ市水道課および職員様には厚く御礼申し上げます。
  
3609 岬ダム(0828)
千葉県いすみ市岬町鴨根
夷隅川水系海老川
23.7メートル
128.9メートル
541千㎥/516千㎥
いすみ市水道課
1989年

東第2ダム

2024-04-18 08:00:00 | 千葉県
2017年2月 4日 東第2ダム
2024年2月27日
 
東第2ダムは千葉県いすみ市山田の夷隅川水系奥山田川にあるいすみ市水道課が管理する上水目的のアースフィルダムです。
旧大原町では1972年(昭和47年)に水道事業が認可され、その水源として1976年(昭和51年)に東ダム が完成し計画給水人口9080人として水道事業が開始されました。
その後の水道需要増加を受けた第1次拡張事業により1984年(昭和59年)に竣工したのが東第2ダムで、計画給水人口は12670人に拡大しました。
さらに1992年(平成4年)の第2次拡張事業により南房総広域水道企業団からの受水が開始され計画給水人口は2万650人まで増加しました。
2005年(平成17年)の3町合併によるいすみ市誕生に合わせて水道事業も統合され、現在はいすみ市水道課が管理を行っています。
2025年(令和7年)4月に 夷隅地域2市2町の水道事業統合が予定されており、当ダムや浄水場の運営は新たに設立される水道企業団が引き継ぐ予定です。

いすみ市水道課が管理する山田浄水場及び隣接する東ダム・東第2ダム、音羽浄水場及び岬ダムはいずれも関係者以外立入り禁止となっています。
再訪時は事前にいすみ市水道課に取材申請を行い、職員様同行による施設見学が叶いました。
掲載写真はすべて立入り禁止エリアのものとなります。
今回の見学は特例であり一般個人の見学については対応されておりません。
その点、強くご理解いただきたいと思います。
掲載写真はすべて再訪時のものです。

山田浄水場から 
奥が東第2ダム、右手が東ダム。

 
東ダム天端から
手前は汚泥(フロック)濃縮槽と天日乾燥床。


左岸ダム下の洪水吐減勢部から
手前のコンクリート内に山田浄水場への水管があります。
隣の鉄管は水位低下放流用。


ズームアップします。  


右岸から
堤体は犬走を挟んで2段
堤高21メートル、堤頂長115メートル
堤体の草刈はシルバーに委託
奥を洪水吐斜水路が流下します。

 
総貯水容量は20万1000立米
ダム便覧では流域面積4.4平方キロのうち大半の4平方キロが間接流域となっています。
完成当初は流域外からの揚水があったようですが、今はすべて自己流域での集水となっておりこれは誤りです。


左岸の横越流式洪水吐
左奥は取水塔。


天端からの眺め
ダムの左手から洪水吐斜水路が伸び、天日乾燥床の手前が減勢工になります。

 
東ダムと異なり天端はきれいに舗装されています。


洪水吐越しの上流面
東ダム同様ロック材で護岸されています。

 
横越流式洪水吐。


上流面にあるインクライン
こちらも東ダム同様今は使われていません。

 
取水塔への管理橋。


取水口は4段の多段式でハンドルが4基。
浄水場への取水は東ダムと交互に行い、取水操作は職員さんがここで手動で行います。


こちらは土砂吐ゲートへの階段。
ダム完成以来ほとんど使われておらず、今は操作できないだろうとのこと。

 
山田浄水場では日量4000立米の水を浄水・配水しており、そのすべては東ダムおよび東第2ダムから取水しています。
いすみ市全体では排水量の約5割を南房総広域水道企業団から受水していますが、山田浄水場に関しては自己水源からの取水で賄っています。
最後に特別のご配慮で見学要請に応じていただいたいすみ市水道課および職員様には厚く御礼申し上げます。
 
0685 東第2ダム(0830)
千葉県いすみ市山田
夷隅川水系奥山田川
21メートル
115メートル
201千㎥/185千㎥
いすみ市水道課
1984年

東ダム

2024-04-16 08:00:00 | 千葉県
2017年2月 4日 東ダム
2024年2月27日

東ダムは千葉県いすみ市山田の二級河川夷隅川水系上山田川にあるいすみ市水道課が管理する上水目的のアースフィルダムです。
旧大原町では1972年(昭和47年)に水道事業が認可され、その水源として1976年(昭和51年)に竣工したのが東ダムです。
当ダムと隣接する山田浄水場の完成により計画給水人口9080人となる水道事業が開始されました。
1984年(昭和59年)には第1次拡張事業により東第2ダムが完成、計画給水人口は12670人に拡大しました。
さらに1992年(平成4年)の第2次拡張事業により南房総広域水道企業団からの受水が開始され計画給水人口は2万650人まで増加しました。
2005年(平成17年)の3町合併によるいすみ市誕生に合わせて水道事業も統合され、現在はいすみ市水道課が管理を行っています。
2025年(令和7年)4月に 夷隅地域2市2町の水道事業統合が予定されており、当ダムや浄水場の運営は新たに設立される水道企業団が引き継ぐ予定です。

いすみ市水道課が管理する山田浄水場及び隣接する東ダム・東第2ダム、音羽浄水場及び岬ダムはいずれも関係者以外立入り禁止となっています。
再訪時は事前にいすみ市水道課にお願いして、職員様同行による上記施設の見学が叶いました。
掲載写真の多くは立入り禁止エリアのものとなります。
今回の見学は特例であり一般個人の立入りや見学は対応されておりません。
その点、強くご理解いただきたいと思います。
掲載写真はすべて再訪時のものです。

南総広域農道を南下し山田六区を右折すると東ダムに到着します。
こちらは東ダム南側に隣接する東第2ダムからの眺め
堤高22メートル、堤頂長175メートル
ダム下に汚泥(フロック)濃縮槽と天日乾燥床、右手高台には山田浄水場と配水池があります。

 
場所を変え左岸高台の山田浄水場からの眺め
右手が東ダム、左奥が東第2ダム

 
やや低い位置から
ダム下手前建屋が汚泥濃縮槽、その先が天日乾燥床。

 
これは右岸ダム下の仮排水路吐口
水管は水位低下放流用。

 
手前のオレンジ色のハンドルは水位低下放流のバルブ開閉用。
奥の水路は東第2ダムの洪水吐減勢部となります。
両ダムともに河川維持放流義務はなくあくまでも水位低下用の放流設備となります。

 
左岸の洪水吐斜水路。

 
洪水吐導流部。

 
左岸の横越流式洪水吐。

 
上流から。


左岸湖畔にあるインクライン
今は使用されておらず厳密にはインクラインの遺構。

 
天端からダム下を見下ろすと
先述した汚泥濃縮槽と天日乾燥床が並びます。

 
天端と山田浄水場・配水池
高台に並ぶ建屋はまるで近世の山上城郭のよう
月山富田城!!

 
上流面はロック材で護岸
総貯水容量は45万立米。
ダム便覧には流域面積5.2平方キロのうち4平方キロが間接流域となっていますがこれは誤りで、東ダムについてすべて直接流域からの集水となっています。

 
取水塔
取水口は4段の多段式で、それぞれの操作用のハンドルが4つあります。
山田浄水場では東ダムと東第2ダムから交互に取水し、取水口の開閉は縮員さんが手動で行います。

山田浄水場では日量4000立米の水を浄水・配水しており、そのすべては東ダムおよび東第2ダムから取水しています。
いすみ市全体では配水量の約5割を南房総広域水道企業団から受水していますが、山田浄水場に関しては自己水源からの取水で賄っています。 
最後に特別のご配慮で見学要請に応じていただいたいすみ市水道課および職員様には厚く御礼申し上げます。
 
0672 東ダム(0829)
千葉県いすみ市山田
夷隅川水系上山田川
22メートル
175メートル
450千㎥/406千㎥
いすみ市水道課
1976年

山内ダム

2024-04-12 08:00:00 | 千葉県
2017年2月 4日 山内ダム
2024年2月26日
 
山内ダムは千葉県長生郡長南町山内の二級河川一宮川水系埴生川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
埴生川上流の山内地区は気候は温暖、地味も肥沃ながら水源となる埴生川の水量が不安定なうえに圃場整備も未着で非効率な稲作経営を余儀なくされていました。
そこで1997年(平成9年)に千葉県営かんがい排水事業山内地区が着手されその灌漑用水源として2004年(平成16年)に竣工したのが山内ダムです。
併せて圃場整備も進められ計約110ヘクタールの農地整備が実現し、効率的な稲作経営が可能となりました。
ダムの管理は長南町産業振興課が受託しています。
 
山内ダムには2017年(平成29年)2月に初訪、2024年(令和6年)2月に再訪しました。
ダムに通じる管理道路入口にはゲートが設けられ関係者以外立入禁止となっており、ダムは右岸下流側から垣間見えるのみです。
再訪時はダムを管理する長南町に見学を申請し、ダム便覧への記事掲載及び写真撮影を目的として立入許可を頂きました。
今回の見学はダムマイスターとしての取材の一環であり特例によるものです。
今後も部外者の立ち入りについては認められることがありませんので、その点はご留意いただきたいと思います。
また掲載写真はすべて再訪時のものとなります。
 
山内ダムに通じる管理道路入口
ゲートが設けられ関係者以外立入禁止。
 
ダムと正対
堤高21.6メートル、堤頂長99.8メートル
堤体は犬走を挟んで2段構成
右岸に残る地山を洪水吐斜水路が流下する特徴的な造形。
ダム下の寒緋桜がほぼ満開で、ちょっと立入禁止がもったいない気が?


左岸ダム下の放流設備
温暖な房総半島は田植えが早くこの辺りも3月初旬から灌漑期に
ダムの管理は長南町が受託していますが、灌漑期のバルブの操作は受益地区である山内地区が行います。

 
堤体と洪水吐斜水路の間に地山が残る独特の造形。
まるでスフィンクスの足のよう。

 
天端入口にも門扉があり職員さんに開けていただきました。


左岸から下流面
堤体の草刈も山内地区が行います。

 
左岸ダムサイトには記念碑と事業説明板が並びます
こちらは竣工記念碑。
農業ダムではおなじみの4文字熟語は『水潤豊実』。


事業説明版
WEBを検索しても山内ダムの情報はなかなか出てきません。
実はこれが一番見たかった?笑。


ダム下の眺め。


関係者以外立入できない天端ですが、2車線幅がありきれいに舗装されています。

 
総貯水容量は36万立米
約110ヘクタールの水田を潤します。
右手は管理事務所。

 
右岸の洪水吐。
斜水路手前に副ダムがあります。

 
上流面はコンクリートブロックで護岸。
房総の田植えは早く長南町でも3月には灌漑期が始まります。
田起こしに備えてほぼ満水。

 
右岸の横越流式洪水吐。

 
管理事務所と斜樋
職員の常駐はなく、日々の巡回のみ。


初回訪問時より構内の様子が気になっていた山内ダム。
今回は特別のご配慮で中を見学することができました。
堤体も含めてダム全体がきれいに整備され、受益農家にとって貴重な言灌漑用水源であること見て取れます。
対応していただいた長南町産業振興課には厚く御礼申し上げます。
 
3293 山内ダム(0825)
千葉県長生郡長南町山内
一宮川水系埴生川
21.6メートル
99.8メートル
360千㎥/340千㎥
長南町産業振興課
2004年

一の沢堰

2024-02-18 08:00:00 | 千葉県
2017年1月28日 一の沢堰
2024年1月27日
 
一の沢堰は千葉県南房総市小戸の温石川水系一の沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1951年(昭和26年)に岩糸第一土地改良区の事業で竣工と記されています。
一方現地記念碑には1946年(昭和21年)の大干ばつを契機に溜池築造機運が高まり、翌年岩糸第一耕地整理組の事業で事業着手するも戦後の食糧難と物価高騰で資金が枯渇。新たに千葉県営事業として採択され総工費2250万円のうち国県からの補助1657万円の補助を受け1952年(昭和27年)に竣工と刻されています。
管理は耕地整理組合を引き継いだ南房総市岩糸第一土地改良区が管理を行っています。

一の沢堰には2017年(平成29年)1月日に初訪、2024年(令和6年)1月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
南房総市小戸の県道296号から一の沢川沿いに市道を約1.5キロ北上すると一の沢堰に到着します。
最後は隘路ですが舗装済みで車で池直下まで到達できます。
堤高19メートル(ため池DB19.6メートル)、堤頂長84.5メートル
堤体の草は刈られ今も貴重な水源であることが伺えます。
池の手前は蓮根畑。
(2024年1月27日)

 
池下右岸側の導水路
隧道式洪水吐の吐口と取水設備からの放流口がここで合流します。
(2024年1月27日)
 
灌漑用水路
訪問時は非灌漑期のため水は流れていません。
(2024年1月27日)

右岸から
堤体は犬走を挟んで3段
きれいに刈りこまれています。
(2024年1月27日)
 
天端
初訪時にはなかったフェンスが設置されています。
(2024年1月27日)
 
右岸高所から
こちらは初訪時の写真で貯水池側にはフェンスはありません。
(2017年1月28日)

 
再訪時。
(2024年1月27日)

件の記念碑
池の築造10周年の1962年(昭和37年)に建立されました。
摩耗が激しく読み取るのに苦労しました。
(2024年1月27日)


総貯水容量34万6000立米の貯水池。
水は濁っていますが他所ほどひどくはありません。
取水設備は南房総の農業用貯水池で散見される取水塔。
(2024年1月27日)
 
取水塔をズームアップ
灌漑用ですので当然表面取水となります。
岸から延びるケーブルは水位計の電源用。
(2024年1月27日)
 
下流面
池の受益農地は下流約3キロの岩糸地区になります。
(2024年1月27日)
 
こちらは初訪時
ほぼ満水。
(2017年1月28日)
 
洪水吐は写真左手の建屋向こう側になりますが、フェンスで囲まれ見ることはできません。
(2024年1月27日)
 
0658 一の沢堰(0819)
ため池コード 122340084
千葉県南房総市小戸
温石川水系一の沢
19メートル(ため池データベース19.6メートル)
84.5メートル
346千㎥/346千㎥
南房総市岩糸第一土地改良区
1951年(記念碑1952年)

仲尾沢堰

2024-02-15 08:00:00 | 千葉県
2016年2月21日 仲尾沢堰
2024年1月27日
 
仲尾沢堰は千葉県南房総市富浦町福澤の岡本川水系福沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧では1938年(昭和13年)竣工となっていますが、事業者は記されていません。
一方ため池データベースでは管理者は船形八束水利組合、所有者は船形八束耕地組合となっており、県の補助を受けた耕地組合の事業で1938年に竣工したと思われます。
ちなみに八束は富浦地区南部の旧村名、船形は現在の館山市北部に位置し、仲尾沢堰は市境界を越え館山市北部から南房総市富浦地区最南部を受益地区としているようです。
仲尾沢堰には2016年(平成28年)2月21日に初訪、2024年(令和6年)1月27日に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。

富浦町福澤の国道127号線から福沢川沿いの市道を約3キロ北上すると仲尾沢堰に到着します。
ただ、大上集落の最終民家の先からは未舗装、隘路となるため路肩に車をデポし最後の500メートルは徒歩で向かいました。
池を見て驚くのはその洪水吐の位置。
フィルダムでは越流による堤体崩壊を防ぐため洪水吐は堤体上に作らないのが原則。
ところが仲尾沢堰では右岸寄りですが堤体中ほどに洪水吐が設けられています。
(2024年1月27日) 


堤体はきれいに草が刈られ今も貴重な水源であることが伺えます。
(2024年1月27日) 


洪水吐には細い三本の木を束ねた簡易な橋が渡されています。
(2024年1月27日) 

 
上流面。
(2024年1月27日) 


洪水吐導流部。
(2024年1月27日) 

 
洪水吐を下から見上げます。
コンクリートは比較的新しいので、この位置に洪水吐があるのは改修によるものか?
(2024年1月27日) 

 
こちらは初訪時
貯水池はほぼ満水で越流寸前。
(2016年2月21日)
 
池の下に下りてみます。
右手に斜樋からの底樋管があります。
(2024年1月27日) 

 
(2024年1月27日) 


総貯水容量は13万7000立米
初訪時はほぼ満水
房総らしく貯水池は濁っています。
(2016年2月21日)


こちらは再訪時
水は涸れ貯水池は空っぽ。。
灌漑期終了後にいったん水を抜いたものの少雨で湛水できないのか?
はたまた改修を控えているのか?
(2024年1月27日) 

 
左岸の取水設備
階段式の池栓。
(2024年1月27日) 


左岸の湖底が低いところにわずかに水が残ります。
底樋管からは水は出ていないので、土砂吐ゲートは閉めてるはず。
水を貯めようとしてるけど少雨で堪らないとみるべきか?
(2024年1月27日) 


溜池としては非常に珍しい堤体中ほどに洪水吐がある仲尾沢堰。
同様の溜池としては島根県の深山池を想起します。
それにしても空っぽの貯水池が気がかりです。

0652 仲尾沢堰(0234)
ため池データベース 122340005
千葉県南房総市富浦町福澤
岡本水系福沢川
15.3メートル(DB 15.7メートル)
71メートル
137千㎥/137千㎥
船形八束水利組合
1938年

丹生堰

2024-02-13 08:00:00 | 千葉県
2016年2月21日 丹生堰
2024年1月27日
 
丹生堰は千葉県南房総市富浦町丹生の岡本川水系丹生川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には富浦町八束西土地改良区の事業で1940年に竣工と記されています。
一方現地記念碑には事業者として『安房郡八束村西耕地整理組合』の名があり
『起工 昭和十三年六月二十九日』『竣工 昭和十五年八月三十一日』と刻されています。
耕地整理組合は土地改良区の前身ですので、丹生堰は千葉県の補助を受けた耕地整理組合の事業で1940年(昭和15年)に竣工したということになります。
現在は南房総市富浦町八束西土地改良区が管理を行い丹生川流域および下流の岡本川右岸の水田に灌漑用水を供給しています。
丹生堰には2016年(平成28年)2月21日に初訪、2024年(令和6年)1月27日に再訪しました。
5枚目の記念碑の写真以外はすべて再訪時のものです。

館山道冨浦インター出口から丹生川沿いの指導を約3.5キロ、車で10分ほど北上すると丹生堰に到着します。
池入り口に車止めがありますが、事前に土地改良区に立入りの是非を確認しています。
堤高16.4メートル、堤頂長40メートルで堤体を道路が斜行、きれいに草が刈られており今も貴重な水源であることが伺えます。

 
高速の高架下
丹生川に面して洪水吐の隧道導流部吐口があります。

 
堤体を斜行する道路を進みます。

 
天端はコンクリート舗装ですがすぐ対岸で行き止まり
洪水吐のコンクリートが新しいので、改修工事の際に舗装されたと思われます。

 
天端に立つ記念碑
碑には『丹生川上之池』と刻されており、これが竣工当時の名だったのでしょう。
現在はため池データベースでも『丹生堰』と記されており、当ブログでも丹生堰を採用します。
裏面には池の諸元や関係者の名が刻されていますが、摩耗が激しく一部不明瞭となっています。
灌漑地区として『八束村 丹生 深名 青木』の名があり、灌漑面積は『五十九町八段八畝歩』=約58.6ヘクタールとなっています。
(2016年2月21日)


総貯水容量14万6000立米の貯水池。
ずいぶん水位が下がっていますが、初回訪問時も貯水池は空だったので非灌漑期に水が抜かれ田起こしに向けて湛水されるんだと思います。
房総の灌漑期は4月上旬から、それまでに満水になるか?


右岸の斜樋。
細くて見ずらいですがシャフトが3本。

 
池の直下を館山道が通ります。

 
右岸から
右手は館山道冨浦トンネル。

 
右岸の洪水吐
導流部は隧道で越流した水は2枚目写真の吐口へと流下します。

 
よく見ると隧道天井は凝灰岩の素掘り
改修で下流側はコンクリートで成形されていますが、竣工当初から隧道洪水吐だったようです。


右岸の崖にもトンネルが
入口には水神が祀られています。
もともとの斜樋への道が崩落したためこのトンネルが作られたようです。
ただ反対側出口の落ち葉がすごく進入は自重しました。
今にして思えば、突入すればよかった。

 
0654 丹生堰(0233)
ため池データベース 122340001
千葉県南房総市富浦町丹生
岡本川水系丹生川
16.4メートル
40メートル
146千㎥/146千㎥
富浦町八束西土地改良区
1940年

大谷川ダム

2024-02-12 08:00:55 | 千葉県
2017年1月28日 大谷川ダム
2024年1月26日
 
大谷川(だいやつがわ)ダムは千葉県南房総市山田の平久里川水系大谷川にある南房総市水道局が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
房総半島南部、南総里見八犬伝の舞台として有名な富山町では昭和40年代より町営水道事業開設がすすめられ、その上水用水源として1974年(昭和49年)に竣工したのが大谷川ダムです。
同時にダム直下に富山浄水場が完成し、同年より給水が開始されました。
その後2006年(平成18年)に安房郡6町1村が合併して南房総市が誕生、旧富浦町と旧三芳村を除く水道事業は南房総市水道局に統合されました。

大谷川ダムには2017年(平成29年)1月に初訪、2024年(令和6年)1月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ掲載日時を記載しています。

ダム下流には富山浄水場があり、関係者以外は立入禁止。
よってダム下からダムを見ることは叶いません。
初訪時はダム左岸からの見学にとどまりましたが、再訪時は浄水場の職員様の許可を得てダムを真下から撮影できました。
上水ダムなので洪水吐は自由越流頂1門だけ。
ダムの前の木が邪魔・・・・
(2024年1月26日)


ちょっと位置をずらして
ゲート上の管理橋には赤い鉄骨桁。
向かって右手(左岸側)の建屋はバルブ室。
ちょっと見づらいですがバルブ室の下から手前に黒い鉄管がありこれが浄水場へのライン。
(2024年1月26日)


ダムと同時に建設された富山浄水場
普段は嘱託職員さんが一人常駐しています。
(2024年1月26日)


ここから先はすべて2017年1月28日の写真となります。
左岸から。
昭和30~40年代のダムらしくゲート上は一段高くなっています。


天端への立ち入り許可はもらっていないので、左岸から見学するのみ。


上水ダムの取水設備といえば円形が多いのですがここは四角。
ゲート操作装置が3本見えます。

かなり色あせたダムの銘板。
竣工は昭和49年3月20日
事業者とすべきところ企業者になっていますが当時の富山町。
施工は間組(現安藤ハザマ)。


天端をズームアップ。



 
左岸上流から
ここから見えるのは落葉期のみでしょう。
南房総ではおなじみですが地質的な影響で貯水池はかなり濁っています。
浄水場での処理が大変そう。

 
再訪時は予定に入れておらず時間が余ったの急遽訪問。
当然事前の見学要請はしておらず、ダムマイスターの身分証明書を提示してダム下からの写真のみ撮影させていただきました。

昨今の人口減少、水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
 
2992 大谷川ダム(0815)
千葉県南房総市山田
平久里川水系大谷川
25.5メートル
50メートル
190千㎥/180千㎥
南房総市水道局
1974年

小向ダム

2024-02-09 08:00:31 | 千葉県
2017年1月28日 小向ダム
2024年1月26日
 
小向ダムは千葉県南房総市和田町小向、右岸が同町南三原の三原川水系三原川にある南房総市水道局が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
房総半島南端に位置する旧千倉町・和田町・丸山町は昭和40年代後半から3町共同で水道事業を進めるため一部事務組合である朝夷水道企業団を設立、その上水用水源として1976年(昭和51年)に竣工したのが小向ダムです。
併せてダムに隣接して小向浄水場も完成し、同年3町への給水が開始されました。
その後2006年(平成18年)に安房郡6町1村が合併して新たに南房総市が誕生、旧富浦町と旧三芳村を除く水道事業は南房総市水道局に統合され小向ダムの管理も同局が引き継ぎました。
小向ダムでは2020年(令和2年)にクレストゲート置換工事のため水位を低下させましたが、その後の記録的な少雨により貯水率が30%まで低減、渇水が2か月続き一躍その名を全国に広める事態となりました。

小向ダムには2017年(平成29年)1月に初訪、2024年(令和6年)1月に再訪しました。
初訪時の写真には撮影日時を記載、それ以外の写真はすべて再訪時のものです。

小向ダムは県道186号線沿いにあります。
数多い千葉県の上水ダムでは唯一ゲートを装備した本格的な重力式コンクリートダムです。
さらに洪水吐のローラーゲートも千葉県では珍しく、装備しているのはここと高滝ダムの2基のみです。

 
ゲートをズームアップ
こちらはゲート置換前、栗本鐵工所製のローラーゲート。
(2017年1月28日)

 
こちらは新しいゲート
大同機工製。


ダムの下段に白い水路管と桝が見えます。
これは利水放流用の設備で桝は量水計で放流の際には桝から溢流させる仕組み。

 
天端は対岸に通じる車道になっており、ゲート部分だけ下流側にクランク。


右岸ダムサイトの竣工記念碑。
当時の朝夷水道企業団により昭和51年に竣工と記されています。

 
上流面
ゲート左手に円形取水塔。

 
天端から減勢工を見下ろす
湾曲した2本の導流堤が特徴的
初訪時は左手の桝から河川維持放流が行われていました。
(2017年1月28日)

 
総貯水容量95万立米のダム湖。
房総らしく水は濁っています。

 
新旧ゲートのプレート
このゲート置換工事のため水位を低下させたところ、記録的な少雨のため2020年(令和2年)12月から翌年1月にかけて渇水状態となりました。

 
新ゲートを見おろすと
ここではゲートの昇降にチェーンが使われます。
一般にワイヤーが使われチェーンのローラーゲートは初めて見ました。

 
件のチェーン。

 
円筒形の取水設備
荏原製作所製の選択取水設備。

 
左岸の艇庫とインクライン。

 
右岸にはホロージェットバルブ
利水放流用ではなく水位低下用。

右岸上流から
こちらは初訪時の写真で、円形取水設備の手前に利水放流用のフロート式表面取水設備が設置されています。
ここで取水された水が上から4枚目写真の水路管を経て利水放流されます。
(2017年1月28日)

 
同じアングルで再訪時の写真。
なんとフロート式表面取水設備が沈没。
近々改修予定とのことですが、それまでは利水放流設備は使えずバブルで代用するようです。

 
渇水騒ぎで一躍知名度を上げた小向ダムですが、千葉県で2基しかないローラーゲート装備ダム、さらには非常に珍しいチェーン式ローラーゲートなど見どころの多いダムです。

昨今の人口減少、水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
 
0670 小向ダム(0821)
左岸 千葉県南房総市和田町小向
右岸      同市和田町上三原
三原川水系三原川
37メートル
106メートル
950千㎥/750千㎥
南房総市水道局
1976年

白浜ダム

2024-02-08 08:00:22 | 千葉県
2017年1月28日 白浜ダム
2024年1月26日
 
白浜ダムは左岸が千葉県館山市畑、右岸が同県南房総市白浜町白浜の長尾川水系馬喰川にある南房総市水道局が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
昭和30年代に入り房総各自治体では海水浴客など観光客の増大に対応して、水道事業の開設が進みます。
房総半島南端の旧白浜町でも昭和30年代後半に町営水道の事業認可を受けその上水道水源として1966年(昭和41年)に竣工したのが白浜ダムです。
ダムと合わせて白浜浄水場も完成し、同年給水が開始されました。
その後2006年(平成18年)に安房郡6町1村が合併して南房総市が誕生、旧富浦町と旧三芳村を除く水道事業は南房総市水道局に統合されました。

白浜ダムはダム敷地への立ち入りが禁止され、初回訪問時はダムを見ることはできませんでした。 
2024年(平成26年)の再訪時は事前に南房総市に見学申請し、職員様同行での見学が叶いました。
1枚目の写真は初訪時、あとはすべて再訪時のものとなります。

南房総市白浜町の房総フラワーラインから北へ約4キロ、車で12~3分で白浜ダムに到着します。
道路は舗装済みですが、途中からは隘路になるため運転には注意しましょう。
初訪時は入り口に立ち入り禁止の警告板とチェーンが掛けられていました。
(2017年1月28日)

 
再訪時は厳重なフェンスが設置され、また敷地内には黄色い建屋(電気室)が新設されています。

 
職員さんに鍵を開けていただき敷地内へ。
写真はポンプ
ダムで取水した水をここまでポンプアップしたのち下流約2キロ地点にある白浜浄水場に送水します。

 
天端への入り口
取水口からの配管が伸びています。


堤体を俯瞰
堤高18.5メートル、堤頂長62.3メートルの小ぶりな堤体
堤頂部の白い鉄骨はホイストクレーンで配管の置換など資材運搬用です。

 
天端には導水管が這い、堤頂には白い鉄骨のホイスト
ちょっと他所では見られない独特の眺め。

 
総貯水容量23万立米のダム湖。
少雨で貯水池率は50%ほど。
南房総は若い堆積岩で形成されており、地質的な要因で貯水池の水はどこも濁りがち。

 
湖岸の巡視艇
満水ならこの船のあるあたりまで水があるそうです。


堤頂中央へ
左手のバルコニーが取水設備で配管が複雑に交差。
一本は浄水場向けでもう一つは水位低下放流用。

 
天端から減勢工を見下ろす。

 
放流管をズームアップ
ダムのある馬喰川は長尾川の右支流で河川維持放流義務はないとのこと。
放流管は主として水位低下目的で使用されるようです。


天端にある謎の構造物。
もとはここの照明灯があったそうですが必要ないため撤去、これはその基礎部分。

 
右岸上流から
ゲート部分だけ高くなっているのは昭和30年~40年ごろの上水ダムでよくみられる形状。
クレスト自由越流頂が3門
右から2番目の扶壁が取水設備で貯水池に水管が2本伸びています。
1本は取水用、もう1本は水位低下放流用。
その左手、湖面に突き出たラッパのようなものは水位計。

 
ダムの南側2キロ地点にある白浜浄水場
当然のことながら立ち入りできません。

 
昨今の人口減少、水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
 
2993 白浜ダム(0818)
左岸 千葉県館山市畑
右岸 千葉県南房総市白浜町白浜
長尾川水系馬喰川
18.5メートル
62.3メートル
230千㎥/207千㎥
南房総市水道局
1966年

元名ダム

2024-02-06 08:00:00 | 千葉県
2016年1月21日 元名ダム
2024年1月26日

元名ダムは千葉県安房郡鋸南町元名の小磯川水系小磯川にある鋸南町建設水道課が管理する上水道用水目的のロックフィルダムです。
千葉県内では唯一のロックフィルダムとなります。
鋸南町の水道事業は1962年(昭和37年)の鋸山ダムと鋸南町浄水場の完成とともに給水が開始され、水道普及地域の拡大や観光客の増加に対応するため4次にわたる拡張が実施されました。
元名ダムは1975年(昭和40年)に着手された第3次拡張事業の中核施設として1979年(昭和54年)に竣工、翌年より運用が開始されここで取水された水は鋸南町浄水場を経由して町内各所に給水されています。

かつては天端への立ち入りができた時期もあったようですが、今は完全に立ち入りが禁止され2016年(平成28年)1月の初訪時は左岸を通る道路から遠望するにとどまりました。
2024年(令和6年)1月の再訪時は事前に鋸南町に見学申請を行い、建設水道課職員様の案内で見学が叶いました。
1枚目写真が初訪時、あとはすべて再訪時の写真です。
  
国道127号から日本寺方面に向かい、日本寺への道を左手に分けそのまま進むと元名ダム左岸に到着します。
千葉県唯一のロックフィルダムですが、リップラップには草木が繁茂しロックかアースか見分けがつきません。
(2016年1月21日)

 
天端の入り口。
チェーンが掛けられ立入りが制限されています。

 
天端からは東京湾越しに伊豆半島まで遠望できます。
正面は天城山系。

 
天端中央の竣工記念碑。

 
総貯水容量7万7000立米の小さな貯水池。
少雨のため貯水率は40%台。
正面に斜樋があります。

 
斜樋をズームアップ。

 
右岸の円形越流式洪水吐。

 
水位が低いので貯水池内まで下りられます。
ロックフィルなので当然上流面もロック材。


天端に戻りダム下へと降下します。
堤高28.2メートル
登山のガレた岩場下りのよう。


右岸の洪水吐斜水路。
右手は堤体になりますが、樹木が灌木程度まで成長。
ダムの構造に影響はないんでしょうか?

 
減勢工そばの放流口
ダムのある河川では維持放流の義務はなく水位低下用の放流口になりますが、最近は使ってないとのこと。

 
左岸湖岸の斜樋と水位計
ピアノ線のようなものが水位計で、その右手にシャフトがあります。

 
斜樋から洪水吐を遠望
水位が低いのがよくわかります
越流した水はいったん隧道を経て3枚上の写真の斜水路を流下します。

 
元名ダム見学の詳細は鋸山ダム・元名ダム 見学』をご覧ください。

昨今の人口減少、水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
 
0687 元名ダム(0197)
千葉県安房郡鋸南町本名
小磯川水系小磯川
28.2メートル
69メートル
77千㎥/76千㎥
鋸南町建設水道課
1979年

鋸山ダム

2024-02-05 08:00:00 | 千葉県
2016年1月21日 鋸山ダム
2024年1月26日
 
鋸山ダムは千葉県安房郡鋸南町元名の元名川水系元名川にある鋸南町建設水道課が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
昭和30年代に入り房総各自治体では海水浴客など観光客の増大に対応して、水道事業の開設が進みます。
1959年(昭和34年)に旧保田町と勝山町が合併して誕生した鋸南町も例にもれず、合併直後に町営水道を認可、その上水道水源として1962年(昭和37年)に竣工したのが鋸山ダムです。
ダムと合わせて鋸南町浄水場など水道施設も完成し同年給水が開始されました。
その後数次にわたり事業拡張が行われ、1979年(昭和54年)には2番目の水源として元名ダムが竣工、さらに1993年(平成5年)には利根川から取水し水資源機構房総導水路を経由した南房総広域水道企業団(通称南水)からの受水も始まり、現在の鋸南町の水道普及率は99%に及びます。

鋸山ダムはダム下、天端が立ち入り禁止になっており2016年(平成28年)1月の初訪時は下流から遠望するにとどまりました。
2024年(令和6年)1月の再訪時は事前に鋸南町に見学申請を行い、建設水道課職員様の案内で見学が叶いました。
撮影日時のない写真はすべて再訪時のものです。
 
鋸南町の国道127号線から町道を東進、町営鋸南町浄水場をやり過ごし約1.5キロ、車で10分弱で鋸山ダムに到着します。
ダム下は鋸南町建設水道課の資材置き場になっており立ち入り禁止
初訪時はここから遠望するのみでした。
(2017年1月28日)

 
再訪時は敷地の中で見学。
放流設備はクレスト自由越流頂5門だけという上水ダムらしい造り。

 
導流部下部に土砂吐ゲートがあります。
手前に伸びる細く黒い管が河川維持用のパイプ。
訪問時は貯水量が少なくなっており維持放流は中止。


堤体直下まで寄ります。
扶壁に溝が見えますが、完成当初はスライドゲートが嵌め込まれていたそうです。


資材置き場入り口から100メートルほど先に天端への入口があります。
上水用の貯水池ということでフェンスが閉ざされ完全立ち入り禁止。


フェンスの先にはコンクリートの構造物。
各種ダム紹介サイトなどでは副ダム?止水工?などの憶測がありますが・・・
職員さんによれば『これはただの通路』。
(2017年1月28日)


通路の先にもゲートがあり水利使用標識が設置されています。
県管理の二級河川ということで普段目にする水利使用標識とは書式が異なる。


いったん高さ10メートルほどの地山を登ります。
頂上には竣工記念碑があり竣工は昭和卅七年九月と記されています。


記念碑から堤体を見下ろすと
ゲート部が高く上流側の取水設備は半円形で、いかにも昭和30年代の上水ダムらしい造り。


堤頂の幅は1メートルほど。


天端からダム下の眺め
斜めの白い線の下に浄水場への導水管が埋設されています。
ちょっとわかりづらいのですが、写真左上側に微かに東京湾が見えます。
ということで『海が見えるダム』認定!


総貯水容量は14万7000立米
少雨のため貯水率は40%台。
まだ深刻というレベルではありませんが、職員さん曰く『まとまった雨が欲しい』。


クレスト自由越流頂
上記のように完成当初はスライドゲートが設置されておりその溝が残ります。


取水設備上のバルコニーを見下ろします。
右手のハンドルはそれぞれ4段ある取水口の操作用
左の二つのハンドルは水量調節用
基本水量調節は開放のままで、この2つのハンドルを操作することはほとんどないそうです。

 
ゲート上にもハンドルが並びます。
これはかつて設置されていたスライドゲート開閉用でゲートが撤去された今使われることはありません。

これは土砂吐ゲート開閉用
ハンドルは撤去され土砂吐は閉められたまま。


天端から導流部を見下ろす
越流しても放流量は多くなく減勢工も小さい
よく見ると副ダムがあります。


鋸山ダム見学の詳細は鋸山ダム・元名ダム 見学』をご覧ください。

昨今の人口減少、水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
 
0686 鋸山ダム(0198)
千葉県安房郡鋸南町元名
元名川水系元名川
19.1メートル
55メートル
147千㎥/131千㎥
鋸南町建設水道課
1962年

高滝ダム

2021-02-23 04:15:10 | 千葉県
2016年1月21日 高滝ダム
2021年2月19日
 
高滝ダムは千葉県市原市養老の養老川水系養老川中流部にある千葉県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで養老川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、千葉県営水道及び市原市営水道への上水道用水の供給を目的として1990年(平成2年)に竣工しました。
蛇行を繰り返す養老川地形を生かし、7万8000立米の堤体積で有効貯水容量1250万立米を支えており、貯水効率160倍と非常に効率の良いダムとなっています。
 
高滝ダムには2016年2月21日に初めて訪問し、2021年2月19日に再訪しました。
ダムを正面から見れるのは下流を高架橋で跨ぐ圏央道だけです。
ということで車の助手席からシャッターを切ってみました。
堤高に対して大きなローラゲートとピアがなんともアンバランスで、昭和20~30年代の発電用ダムのようです。(2021年2月19日)
 
非常用洪水吐として4門のクレストローラーゲートを備えてします。
写真左手前に常用洪水吐のコンジットローラーゲートと低水位放流バブルがあります。
 
右岸の土手に「たかたきダム」の植栽。(2021年2月19日)
 
頭でっかちなゲートピア。
よく見るとなかなか凝ったデザインです。
さすがバブル期のダム。
 
天端は車両通行可能
ピアには螺旋階段がつきます。(2021年2月19日)
 
減勢工
正面の高架橋が圏央道。
 
高滝湖
見えているのはダム湖の一端で、大きく蛇行を繰り返しながら上流に続きます。
 
天端高欄には地元の小中学生による壁画が描かれています。
これはダムそばを走る養老鉄道
天端を鉄道が走る唯一のダムです。笑
 
右岸から
ゲート手前の建屋が予備ゲート操作室兼選択取水設備。
 
一番右手のコンジットの予備ゲート左が選択取水設備です。
 
さらに引いて。
 
湖畔には市原湖畔美術館があり、湖面に巨大トンボが水上展示されています。
 
0681 高滝ダム(0210)
千葉県市原市養老
養老川水系養老
FNW
24.5メートル
379メートル
14300千㎥/12500千㎥
千葉県県土整備部
1990年

平沢ダム

2021-02-22 04:26:53 | 千葉県
2016年2月21日 平沢ダム
2021年2月19日

平沢ダムは千葉県夷隅郡大多喜町平沢の夷隅川水系平沢川源流部にある灌漑目的の傾斜コア遮水壁型アースフィルダムです。
夷隅川は千葉県最大の流域面積を持つ二級河川で、古くから流域の貴重な灌漑用水源となってきました。
しかし、房総半島南東部には地表近くに水溶性天然ガス層があり、夷隅川流域では渇水期に河床や水田からガス成分や塩分を多量に含んだ『かん水』が湧出し、農業に多大な悪影響を与えていました。
かん水対策として1978年(昭和45年)に夷隅町(現いすみ)に建設された荒木根ダムの実効性が高かったことを受け、農水省の補助を受けた県の鉱毒対策事業『大多喜地区』で1998年(平成10年)に平沢ダムが竣工しました。
運用開始後は大多喜町が受託管理を行っています。

平沢ダムには通常の灌漑用水容量とは異なり鉱毒希釈用水容量が設定してあり、灌漑期において流域の塩分濃度が上昇した際に希釈用水を放流し灌漑用水の中和を図っています。
農水省の補助を受けた鉱毒対策事業によって建設されたダムとしては千葉県いすみ市の荒木根ダム、宮城県の田ダム、山形県の生居川ダムがあります。
 
平沢ダムには2016年2月21日に初めて訪問し、2021年2月19日に再訪しました。
堤体は犬走りを挟んで2段構成、ダム下に放流設備があります。
(2016年2月21日)
 
余水吐から結構な勢いで越流しています。(2016年2月21日)
 
灌漑期に下流の夷隅川で塩分濃度が上昇すると、ここから希釈用水が放流されます。
 
下流面。
時節柄きれいに刈られています。
 
貯水池は総貯水容量116万立米。
満水です。
 
左岸の余水吐。
 
天端は車両通行可能
奥に管理事務所と斜樋があります。
 
上流面はコンクリートブロックで護岸されていますが、ずいぶん草が生えています。 
 
管理事務所と斜樋、巡視艇。
 
左岸の横越流式余水吐
満水のため薄く越流しています。
 
立派な竣工記念碑。
 
ダムの目的としてはAの灌漑に分類されますが、実際には灌漑用水ではなく鉱毒対策としての希釈用水の供給を目的とする非常に珍しい農業用ダムです。 
 
2976 平沢ダム(0238)
千葉県夷隅郡大多喜町平沢
夷隅川水系平沢川
25.6メートル
159メートル
1160千㎥/1088千㎥
大多喜町
1998年