ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

上倉ダム

2019-05-31 01:27:52 | 佐賀県
2019年5月24日 上倉ダム
 
上倉(あげくら)ダムは佐賀県唐津市肥前町新木場の田野川水系田野新田川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
佐賀県北西部の東松浦半島はその大半が上場(うわば)台地と呼ばれる火山性土壌によって形成された台地で、水利に乏しく古くから農地開拓は困難を極めていました。
1973年(昭和48年)より国営の『上場土地改良事業』が着手され2期にわたる事業の結果5基のダム、13箇所の揚水機場、延長77キロの幹線水路の整備が行われました。
同事業により松浦川から揚水された水が5基のダムに合計で1000万立米以上貯留され、新たに5000ヘクタールを超える水田、畑、果樹園への灌漑用水の補給が可能となりました。
上倉ダムはもともと当地にあった上ヶ倉溜を上場土地改良事業で再開発し1992年(平成4年)に上倉ダムとして竣工しました。
運用開始後は唐津市と玄海町で組織される一部事務組合である上場地域農業開発事業組合が受託管理を行っています。
また総貯水容量は80万4000立米と5ダムの中で最も小さくなっています。
 
ダムのすぐそばに風力発電機が並び、「ビュンビュン」という轟音が響いてきます。
 
上流面はコンクリートで護岸。
 
天端は車道。
 
天端からの眺め
直下の建物は揚水機場
風力発電の右手にわずかに海が見えます。
 
総貯水容量は80万4000立米で国営上場土地改良事業で建設された5基のダムの中では最小です。
 
ダム湖中央部は岬になっておりそこに斜樋があります。
 
下流面は草が伸び放題。
 
斜樋のある岬の反対側に円形越流式洪水吐があります。
 
右岸から見た上流面。
こちらにも風力発電があります。
 
対岸から見た洪水吐。
 
夏場ということで下流面や天端、斜樋周辺も草がかなり茂っています。
草が刈られた秋冬に来ればまた違った景色が広がるんでしょうね?
 
2547 上倉ダム(1437) 
佐賀県唐津市肥前町新木場
田野川水系田野新田川
19.6メートル
196.8メートル
804千㎥/793千㎥
上場地域農業開発事業組合(唐津市・玄海町)
1992年

鷹島ダム(鷹島海中ダム)

2019-05-31 01:03:44 | 長崎県
2019年5月24日 鷹島ダム(鷹島海中ダム)
 
鷹島ダムは長崎県松浦市鷹島町里免にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
鷹島は伊万里湾口に位置する面積約16平米強、人口約2000人弱の島で長崎県松浦市に属しています。
島内では漁業と農業が主産業となっていますが、目立った森林や河川がなく農業用水については天水に依存せざるを得ず、慢性的な水不足に悩まされてきました。
1986年(昭和61年)に農水省の補助を受けた県営畑地帯総合土地改良事業が着手され、その中核施設として1994年(平成6年)に竣工したのが鷹島ダム(鷹島海中ダム)です。
ダム建設に際して、島内にダム建設適地がなかったことから島東部の里免地区と神崎免地区に跨る入り江を入り江をダムで締め切り淡水化し灌漑用貯水池としました。
海中ダムの名の通り全国で唯一海中に建設されたダムとなっています。
運用開始後は当時の鷹島町が受託管理を行っていましたが、市町村合併に伴い現在は松浦市が管理を引き継ぎ、島内約300ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
2005年(平成17年)に日本で唯一の海中ダム貯水池ということを評価してダム湖百選に選定されました。
 
唐津市肥前町から鷹島肥前大橋で鷹島へと渡ります。同大橋は2009年(平成21年)供用開始の全長1251メートルの斜張橋です。
鷹島は長崎県松浦市に属しますが道路は佐賀県とだけ繋がっています。
 
島に入ると『鷹島海中ダム』を示す標識があり、これに従えばダムのある日比漁港に到着します。
入り江を締め切って建設されたダムは、洪水吐がなければ防波堤と区別がつきません。
 
陸上部分の高さは9.9メートルですが、基礎地盤となる海底からの堤高は29.9メートルでダムの要件を満たしています。
海面に接する部分は消波護岸となっています。
 
自由越流式洪水吐が2門。
 
減勢工は海です
下流面には鷹島の農地風景と古くから伝わる雨乞い神事の様子が描かれています。
 
ダム右岸にある金箔文字の竣工記念碑。
 
左岸から
このアングルで見ても背の高い防波堤にしか見えません。
 
天端から
ダム下は漁港。
 
貯水池はズバリ『淡水湖』
総貯水容量53万9000立米と離島の農業用貯水池としてはなかなかのサイズです。
 
隣接する揚水機場に置かれたダム湖百選のプレート。
 
天端は車道
対岸左手は揚水機場で、背後の台地上に広がる農地に揚水します。
 
上流面
クレストゲート2門と取水設備
こちらから見ると紛いないダム。
 
今回の佐賀、長崎遠征の目玉だった鷹島ダム。
日本で唯一の海中ダムにもかかわらず全国的ほとんど知られていないのが至極残念です。
アクセスは不便ですがぜひ多くの人に見ていただきたいダムです。 

3022 鷹島ダム(鷹島海中ダム)(1436) 
長崎県松浦市鷹島町神崎免
浦田比水路水系浦田比水路
29.9メートル
129メートル
539千㎥/460千㎥
松浦市
1994年

庭木ダム

2019-05-30 00:35:08 | 佐賀県
2019年5月23日 庭木ダム
 
庭木ダムは佐賀県武雄市西川登町神六の六角川水系庭木川源流部にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
農水省の補助を受け1985年(昭和60年)に着手された佐賀県営かんがい排水事業庭木地区の中核施設として1994年(平成6年)に竣工しました。
運用開始後は川登土地改良区が受託管理し、231ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。。
ダム湖畔には間断なく桜が植えられ、武雄市では知る人ぞ知る桜の名所となってります。
 
農水省のダムらしく洪水吐は自由越流式クレストゲート2門のみ、V字の斬縮型堤体導流壁を備えています。
 
右岸から。
 
右岸の竣工記念碑
文字は金箔です。
 
ダムサイトには古い石樋が置かれています。
もともと当地には溜池があり、かんがい排水事業で再開発ダム化されたようです。
しかし、コンクリがない時代の人々の水を得るための努力には頭が下がります。
 
上流面
クレストゲート2門と右手に取水設備。
 
減勢工
右奥は配水設備、左手前は放流設備。
 
アングルを変えて
ちょろちょろと河川維持放流が行われています。
 
ダム湖は総貯水容量60万立米。
湖畔には桜が植えられ春には見渡す限りの桜の饗宴となります。
 
天端は車両通行可能。
焼き物が盛んな佐賀らしく親柱には陶板の装飾がはめ込まれています。
 
左岸上流から
右手は管理事務所。
 
ダム便覧にはダム下からの写真が掲載されていますが、堤体と正対する場所は草が深く立ち入れませんでした。 
 
(追記)
庭木ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2557 庭木ダム(1435) 
佐賀県武雄市西川登町神六
六角川水系庭木川
26.2メートル
130メートル
600千㎥/557千㎥
川登土地改良区
1994年
◎治水協定が締結されたダム

横竹ダム

2019-05-29 14:00:18 | 佐賀県
2019年5月23日 横竹ダム
 
横竹ダムは佐賀県嬉野市嬉野町吉田の塩田川水系吉田川上流部にある佐賀県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
塩田川水系では出水が多く、1962年(昭和37年)7月豪雨で甚大な被害が発生したことを受け、県は1973年(昭和48年)に岩谷川内川に岩屋川内ダムを建設しました。
しかし、1976年(昭和51年)に再び大きな洪水被害が発生したことを受け、新たに吉田川への治水ダム建設事業に着手し2001年(平成13年)に竣工したのが横竹ダムです。
建設省(国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで、岩谷川内ダムと連携して塩田川水系の洪水調節を行うほか、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補強を目的としています。
 
横竹ダムは県道289号線沿いにあります。
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲート8門、常用洪水吐として自然調節式オリフィスゲートを1門を装備しています。
 
ダム下には桜が植えられ公園になっています。
県ダムのこの手の公園は荒れていることが多いんですが、ここはきれいに手入れされています。
ちなみにこの日はコンビニで買ったおにぎりをこのベンチで頂きました。
 
右岸から上流面
ダム下だけじゃなく天端両岸も公園になっています。
 
減勢工と副ダム
副ダムの下流には洗掘を防ぐためにブロック工が敷かれています。
さらに橋のすぐ下流には灌漑用の固定堰があります。
 
アングルを変えて
放流設備から河川維持放流が行われています。
 
総貯水容量429万立米の貯水池には特に名前はありません。
 
左岸の管理事務所
手前に艇庫とインクラインがあります。
 
ダム下流には肥前吉田焼の窯元があり、天端高欄には各窯元で焼かれた陶板がはめ込まれています。
 
天端は徒歩のみ立ち入り可能です。
 
管理事務所前の竣工記念碑。
金箔仕様です。
 
2551 横竹ダム(1434) 
佐賀県嬉野市嬉野町吉田
塩田川水系吉田川
FN
57メートル
249メートル
4290千㎥/3950千㎥
佐賀県県土整備部
2001年

万才溜池

2019-05-29 08:30:08 | 佐賀県
2019年5月23日 万才溜池
 
万才溜池は佐賀県鹿島市山浦の石木津川石木津川源流部にある鹿島市多良岳土地改良区が受託管理する灌漑目的のアースフィルダムです。
佐賀県の有明海沿岸では温暖な気候と地味豊かな地質を活かし昭和30年代より丘陵地でのミカン樹園地開発が進められます。
鹿島市から太良町にかけての多良岳北東山麓では1964年(昭和39年)に約630ヘクタールの樹園地開発・収穫量9000トンを目的とした『国営多良岳農地開発事業』が着手されその灌漑・防除用調整池として1969年(昭和44年)に竣工したのが花取溜池です。
事業全体も1981年(昭和56年)に竣工し、当池のほか花取溜池笹原溜池七曲溜が築造されるとともに延長123キロの配分水路網が整備され、当地域は佐賀県屈指のミカン生産地となりました。
しかし1991年(平成2年)のオレンジ輸入自由化により、ジュース向け原液がほぼ輸入品にとって代わったことで汎用ミカン価格が急落し全国のミカン農家は大打撃を受けます。
当地域でも離農や耕作放棄などが相次ぎましたが、現在は最高級品質の『祐徳ミカン』のブランド化に成功したほかレモン等への品種転換などにより生き残りを図っています。
なお、名称に『溜池』がついていますが国営事業で建設された農業用調整池ということで『農業ダム』の扱いとなりため池データベースにも記載がありません。

今回は中木庭ダム下流の本城集落から隘路の市道を南下して万才溜池に至りました。
標高約440メートルの山中にひっそりと佇む溜池と言いたいところですが、溜池すぐ下で伐採作業が行われておりずいぶん見通しがよくなっています。
手前の道路は伐採のために作られたブルドーザー道です。
堤高17.5メートルですが、見た目はもっと高く見えます。
 
天端から海は見えませんが、溜池の少し北側からは有明海越しに佐賀平野が遠望できます。
 
ダム下に下りてみます。
錆びついたトタン張りの施設、水がごぼごぼなっていますがこれが調圧水槽(減圧水槽)。
ここから専用の配分水路で受益農地に用水補給します。
 
左岸の洪水吐導流部
この穴の元がどうなっているのか?
 
天端は市道で車両通行可能です。
林業従事者の車だと思いますが、1時間ほどの見学中に数台の車が通りちょっと意外な感じ。
 
上の写真のガードレールから見た洪水吐導流部。
 
総貯水容量11万3000立米と小ぶりな貯水池
右手は横越流式洪水吐。
よく見ると貯水池中央に橋が見えます??
 
左岸の斜樋。
 
上流面はコンクリートで護岸。
 
さて気になった橋を見に行きます。
池の中央に掛かる謎の橋。
通りがかった林業関係の方に話を伺うと、もともとここには10軒程度の集落がありこの橋はその集落の名残だそうです。
 
2531 万才溜池(1433) 
ため池コード 412070020
佐賀県鹿島市山浦
石木津川水系石木津川
17.5メートル
128メートル
113千㎥/109千㎥
鹿島市多良岳土地改良区
1973年

中木庭ダム

2019-05-28 20:00:04 | 佐賀県
2019年5月23日 中木庭ダム
 
中木庭ダムは佐賀県鹿島市山浦の鹿島川水系中川源流部にある佐賀県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、中川及び鹿島川下流部の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、鹿島市への上水道用水の供給を目的として2007年(平成19年)に竣工しました。
その後2016年(平成28年)に河川維持放流を活用した小水力発電所が増設され、九州電力のグループ企業である西技工業(株)の運用により最大出力196キロワットの発電を行っています。
 
中木庭ダムは鹿島と長崎県大村を結ぶ国道44号線沿いにあります。
ダム湖畔には約7000株のアジサイが植えられ、開花期には県外からも多くの観光客が訪れる花の名所です。
 
ダム下は放流設備の手前から立ち入り禁止となっており全景はこれが精いっぱい。
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲート10門、常用洪水吐として自然調節式オリフィスゲート1門を備えています。
 
左岸ダムサイトの竣工記念碑
文字は金箔仕様です。
 
天端は車道になっていますが、右岸から左岸への一方通行
左手はエレベーター棟、右手は取水設備操作室。
 
右手で放流しているのが利水放流設備、左手の白い建屋が増設された小水力発電所。
 
減勢工を真上から
副ダムの下流側は洗掘を防ぐために石が敷かれています。
山向こうの長崎県の萱瀬ダムでも同様に石が敷かれていましたがちょっと形状は異なります。
左岸のコンクリートの上の石は落石ではなく、佐賀県を象って並べられたようですがわかりづらい。
 
ダム湖に名前はありません、総貯水容量は680万立米。
 
下流面
両岸に堤趾導流壁があります。
 
上流面
手前は取水設備、奥がオリフィスゲート。
 
アングルを変えて上流面。
 
インレットから
ダム湖上流湖畔には約7000株のアジサイが植えられ、九州では有名なアジサイ鑑賞スポットになっています。
見ごろは6月上旬から下旬で、アジサイ祭りの開催に合わせてダム見学会なども行われるようです。
アジサイを見るには半月ほど早すぎたようで・・・・。
 
2552 中木庭ダム(1432) 
佐賀県鹿島市山浦
鹿島川水系中川
FNW
69.5メートル
265メートル
6800千㎥/6300千㎥
佐賀県県土整備部
2007年

萱瀬ダム(再)

2019-05-28 14:15:08 | 長崎県
2019年5月23日 萱瀬ダム(再)
 
萱瀬(かやぜ)ダムは長崎県大村市黒木町の郡川水系郡川上流部にある長崎県営の土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1957年(昭和32年)7月豪雨により大村市街で甚大な被害が発生したことを受け、長崎県初の多目的ダムとして1961年(昭和36年)に萱瀬ダム(元)が完成しました。
しかしその後も2度にわたり計画洪水を上回る豪雨に見舞われたほか、長崎空港開港に伴う上水道用水需要の増加への対応から萱瀬ダム嵩上げ再開発事業が着手され、2000年(平成12年)に萱瀬ダム(再)が竣工しました。
再開発により堤高は51メートルから65.5メートルに嵩上げされ、総貯水容量は303万立米から681万立米へと2倍以上に拡大しました。
萱瀬ダム(再)は現在でも長崎県で最も堤高が高いダムとなっています。
萱瀬ダムは郡川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、大村市及び長崎市への上水道用水の供給を目的としています。
 
萱瀬ダム(再)は国道444号線沿いにあり大村市街から佐賀県鹿島方面に進むとダムに到着します。
ダム下は公園になっていますが、草が茂りかなり荒れ気味。
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲート10門、常用洪水吐として自由調節式オリフィスゲート2門を備えています。
 
右岸の国道から
再開発により堤高が14.5メートル嵩上げされました。
旧ダムの高さは今のオリフィスの下あたりになります。
 
 
右岸ダムサイトにある竣工記念碑
文字は金箔です。
 
上流面
多良岳一帯は成層火山でダムサイトには安山岩の岩峰が並びます。
 
天端から減勢工
副ダムの下流は河床に石が敷かれています。
左右両岸に建屋が見えますが、右手は放流設備、左手は長崎市向けの上水道用水送水設備ののようです。
 
総貯水容量681万立米のダム湖に名前はありません。
上流には独特の容貌をした多良岳主峰群が並びます。
 
左岸の取水設備。
 
左岸から下流面
左右両岸に堤趾導流壁があります
正面の建物は管理事務所ですが職員は常駐しません。
 
天端は車両通行可能で車でダム湖を一周できます。
 
上流から。
 
(追記)
萱瀬ダム(再)には洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。  

2640 萱瀬ダム(元) 
長崎県大村市黒木町
郡川水系郡川
FW
51メートル
180メートル
3030千㎥/2630千㎥
長崎県土木部
1961年
--------------
2645 萱瀬ダム(再)(1431)
長崎県大村市黒木町
郡川水系郡川
FNW
65.5メートル
240メートル
6810千㎥/5940千㎥
長崎県土木部
1961年 旧ダム竣工
2000年 再開発竣工
◎治水協定が締結されたダム

大多武溜池

2019-05-28 12:48:31 | 長崎県
2019年5月23日 大多武溜池
 
大多武(おおたぶ)溜池は長崎県大村市東大村の鈴田川水系鈴田川右支流(河川名未確認)上流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
長崎・佐賀県境をなす多良岳山麓には大河がなく、古くから小河川上流部を堰き止めた谷池が各所に作られてきました。
大多武溜池もそんな溜池の一つで、ダム便覧には大多武開拓農協の事業で1944年(昭和19年)に竣工と記されています。
現在は受益者で組織される『大多武ため池水利組合』が管理を行っています。
 
なおダム便覧では堤高17.5メートル、堤頂長157.5メートルと記されていますが、2020年(令和2年3月)に作成された長崎県のため池データベースでは堤高13.7メートル、堤頂長149メートルとなっています。
データベースのスペックを採用すると、大多武溜池は河川法上のダムの要件を満たさなくなります。
 
大村インターから大村レインボーロードを南下、三石バス停で立体交差する市道に入り進路を右手に取ると右手に中澤病院が現れます。
病院のすぐ先が大多武溜池となります。
堤体は犬走りを挟んで2段構成、堤体直下に太陽光パネルが並びます。
 
左岸の洪水吐導流部。
 
市道から天端に続く細い分岐が分かれます。
写真のガードレールは洪水吐に架かる橋部分です。
なお溜池左岸には某新興宗教の事務所があり、間違って敷地に入ると面倒なことになりそうなのでご注意を。
 
左岸から下流面
堤体は春に草が刈られたようで、草ボウボウと言った感じではありません。
ダム下には太陽光パネル、左奥の建物が目印となる中澤病院です。
 
上流面はコンクリートで護岸されており、堤体ほぼ中央に斜樋があります。
 
洪水吐導流部。
この下が上から2枚目の写真となります。
 
横越流式洪水吐。
 
総貯水容量は24万8000立米
ちょうど田植えシーズンに入ったところ補給が多いせいか水位が下がっています。
貯水池直上にも姥ヶ懐池というため池がありますが、管理者は異なっています。
奥に見える山は多良岳主峰です。
 
斜樋の操作建屋と言うか小屋。
 
斜樋。
 
ダム便覧では位置未確認となっていますが、大村市のハザードマップでは当池が大多武溜池となっているので間違いないと思います。
ハザードマップおよびため池データベースでは堤高が13.7メートルとなっておりこれが正しければ当池はダムではなくなります。
一方大多武溜池上流の姥ヶ懐池の堤高が15.1メートルとなっており、こちらは新規にダムに採用される可能性があります。

2602 大多武溜池(1430)
ため池コード 422050016
長崎県大村市東大村
鈴田川水系鈴田川右支流
17.5メートル(ため池データベース13.7メートル
157.5メートル(ため池データベース149メートル)
247千㎥(ため池データベース248千㎥)/247千㎥
大多武水利組合
1939年

重井田ダム

2019-05-28 11:00:51 | 長崎県
2019年5月23日 重井田ダム
 
重井田ダムは長崎県大村市の郡川水系佐奈川内川上流部にある防災目的のアースフィルダムです。
農林省(現農水省)の補助を受け1973年(昭和48年)に着手された長崎県の農地防災事業により1983年(昭和58年)に竣工しました。
運用開始後は大村市が受託管理し、佐奈川内川流域の農地190ヘクタールの農地防災を目的としています。
 
佐奈川内川に沿って東に進むと重井田ダムが見えてきます。
堤高41メートルのアースの堤体にはちょっと不釣り合いな巨大な洪水吐。
洪水吐は近年改修され、白さが一段と映えています。
 
左岸の竣工記念碑
文字が金箔仕様です。
実は長崎や佐賀の竣工記念碑の大半は文字が金メッキされています。
これはもともと中国の明や清の時代の風習で、大陸との玄関口だった当地でも中国の影響で石碑の文字が金メッキされるようになったそうです。
長崎、佐賀では記念碑のみならず墓石の文字なども金ぴかのものが多く見られます。
 
洪水吐と上流面。
 
草が生えていてよく見えませんが上流面はロック材で護岸されています。
 
天端は車両通行可能。
 
洪水吐導流部と減勢工
彼方に大村湾が望める『海が見えるダム』です。
 
横越流式洪水吐。
 
天端からの眺め
大村湾から対岸の西彼杵半島まで見えます。
高架橋は長崎自動車道。
 
有効貯水容量63万4000立米すべてが洪水調節容量となるため普段は貯水されません。
 
この斜樋が常用洪水吐となり、普段は流入量をそのまま下流に流下させます。
 
(追記)
重井田ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2627 重井田ダム(1429)
長崎県大村市野田町
郡川水系佐奈川内川
41メートル
170.6メートル
676千㎥/634千㎥
大村市
1983年
◎治水協定が締結されたダム