ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

福井谷貯水池(福井谷川ダム)

2023-12-23 17:00:46 | 北海道
2023年10月25日 福井谷貯水池(福井谷川ダム)

福井谷貯水池は北海道樺戸郡新十津川町大和の石狩川水系福井谷川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
新十津川町は1889年(明治22年)の奈良県十津川大水害を契機に被災者約2500人が当地に入植したのを起源としています。
明治30年代には水田開拓が本格化し、現在では北海道有数の稲作地帯となっています。
福井谷貯水池もそんな新十津川の発展を支えた水源の一つで、1926年(大正15年)に道営事業により竣工、戦後1976年(昭和51年)に大規模老朽ため池事業による大規模改修を経て現在に至っています。
現在は新十津川土地改良区が管理し、約80ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
なおダム便覧では福井谷川ダムと記載されていますが、ここでは現地記念碑やため池データベースに倣い福井谷貯水池と記すことにします。

福井谷貯水池は滝川市中心部の北西10キロほどにあり車での到達は可能です。
ただしラスト2キロはダートなので走行には注意が必要。
池下に記念碑があり、ため池築造から大規模改修に至る経緯が詳しく刻されています。


堤高20.2メートル、堤頂長134メートルのアース堤体。
手前の水路は底樋門からの水路。


基部は石積みで中央の階段で天端に上がれます。


右岸池下の底樋門。
灌漑期が終わり流入水はそのまま放流されています。


左岸から下流面


洪水吐斜水路
減勢工にはバッフルブロックが並びます。


横越流式洪水吐。


水利使用標識。


天端から
洪水吐導流路と底樋からの水路が池下で合流
灌漑用水は福井谷川を経由して供給されます。


総貯水容量55万8000立米の貯水池
灌漑期が終わり水が抜かれるのは北海道では当たり前の光景。


右岸の取水設備。


上流面
影になり見づらいですが、コンクリートブロックで護岸。


取水設備は北海道でよくみられる多孔式斜樋。


斜樋の底部の土砂吐ゲート
非灌漑期は流入水はここからそのまま放流されます。

奈良県人である私にとって新十津川は縁浅からぬ場所。
さらに十津川の移民の苦難を描き斉藤由貴さん主演でNHKでドラマ化された『新十津川物語』の作者故川村たかし先生は高校時代の国語の教師というご縁もあります。

(追記)
福井谷川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました

0010 福井谷貯水池(福井谷川ダム)(2027)
ため池コード
北海道樺戸郡新十津川町大和
石狩川水系福井谷川
20.2メートル
134メートル
558千㎥/543千㎥
新十津川土地改良区
1925年
◎治水協定が締結されたダム