ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

栃沢ダム

2024-06-28 08:00:00 | 福島県
2016年5月29日 栃沢ダム
2024年4月26日
 
栃沢ダムは福島県大沼郡会津美里町氷玉の一級河川阿賀野川水系氷玉川にある農地防災・灌漑目的のアースフィルダムです。
会津宮川地区は会津盆地南西部の会津美里町から会津坂下町に至る宮川流域に位置し、江戸期より本格的な新田開発が進められ寒暖差の大きな気候を生かし良質な米の産地として知られてきました。
しかし主要水源であり地域を貫流する宮川(旧名鶴沼川)は洪水による出水が多く、抜本的な洪水対策が求められてきました。
これを受け福島県は1950年(昭和25年)より宮川本流及び主要支流である佐賀瀬川・氷玉川上流部に3基の農地防災ダムを建設する『鶴沼川沿岸防災ダム事業』に着手します。
そして1962年(昭和37年)の宮川ダム、1969年(昭和44年)の二岐ダムに次いで1970年(昭和45年)に完成したのが栃沢ダムです。
当ダムの完成により事業着手から19年の年月をかけた鶴沼川沿岸防災ダム事業が竣工に至りました。
2004年(平成16年)の新宮川ダムの完成により4ダムの一体運用を行うため4基のダムは福島県農林水産部が管理主体となり、受益組織である会津宮川土地改良区が操作を行っています。
栃沢ダムは農地防災及び灌漑を目的とし、5月17日~6月20日の灌漑期には有効貯水容量29万7000立米すべてが灌漑用水容量となり、約50ヘクタールの水田に灌漑用水を供給します。
一方6月21日~10月の洪水期は有効貯水容量すべてが洪水調節容量となり、最大毎秒13.4立米の洪水をカットします。

栃沢ダムには2016年(平成28年)5月に初訪、2024年(令和6年)4月に再訪しました。
再訪時は土地改良区職員様同行で普段立ち入りできないダム構内の取材見学が叶いました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。

県道131号を大内宿方面に向けて南下すると前方に栃沢ダムが見えてきます。
(2016年5月29日)
 
ダムの下流にアプローチしますが立入り禁止のためここが限界
管理橋の奥に放流設備があるようです。
(2016年5月29日)

 
左岸の県道から見た下流面
宮川ダム・二岐ダム同様堤体はきれいに草が刈られています。
(2016年5月29日)

 
管理橋入口にゲートがあり普段は構内には入れません。
ゲート越しに撮った天端。
(2016年5月29日)

同じくゲート越しの上流面
奥に斜樋が見えます。 
(2016年5月29日)

 
上流面
初訪時は灌漑期真っ只中
6月20日からの洪水期に向けて徐々に水位を下げてゆきます。
(2016年5月29日) 
 
上流から見た横越流式洪水吐。
(2016年5月29日)

 
県道沿いの管理事務所
職員の常駐はありません。
(2016年5月29日)


ここからは2024年(令和6年)の見学取材の際に立入禁止エリアで撮った写真となります。
天端から洪水吐斜水路を見下ろす
1枚目、2枚目の写真は杉林のさらに下流から撮ったものです。
(2024年4月26日)


横越流式洪水吐
再訪時は灌漑期直前ということもありダム湖は満水、薄く越流しています。
(2024年4月26日)


洪水吐脇の竣工記念碑。
(2024年4月26日)


石碑の仕様は二岐ダムとほぼ同じで、ダムの諸元と事業関係者の名が刻されています。
(2024年4月26日)


こちらは水位計。
(2024年4月26日)

 
総貯水容量は37万6000立米と鶴沼川防災3ダムの中では最小
奥の山の向こう側には観光地でもある大内宿があります。
(2024年4月26日)

 
右岸の斜樋。
これは初訪時の写真
(2016年5月29日)

 
天端から下流を見下ろす。
(2024年4月26日)

 
右岸から上流面。
(2024年4月26日)

 
斜樋建屋内
ゲートは2門。
(2024年4月26日)

 
(付記)
今回はダムマイスターの取材という形で見学させていただきました。
宮川ダム二岐ダム、栃沢ダムについては一般のダム見学の対応は行われていません。
この点、くれぐれもご了承ください。 
 
0511 栃沢ダム(0427)
福島県大沼郡会津美里町氷玉
阿賀野川水系氷玉川
FA
23.7メートル
150メートル
376千㎥/297千㎥
福島県農林水産部
1970年

二岐ダム

2024-06-27 08:00:00 | 福島県
2016年5月29日 二岐ダム
2024年4月26日
 
二岐ダムは福島県大沼郡会津美里町佐賀瀬川の一級河川阿賀野川水系佐賀瀬川にある農地防災・灌漑目的のアースフィルダムです。
会津宮川地区は会津盆地南西部の会津美里町から会津坂下町に至る宮川流域に位置し、江戸期より本格的な新田開発が進められ寒暖差の大きな気候を生かし良質な米の産地として知られてきました。
しかし主要水源であり地域を貫流する宮川(旧名鶴沼川)は洪水による出水が多く、抜本的な洪水対策が求められてきました。
これを受け福島県は1950年(昭和25年)より宮川本流及び主要支流である佐賀瀬川・氷玉川上流部に3基の農地防災ダムを建設する『鶴沼川沿岸防災ダム事業』に着手します。
そして1962年(昭和37年)の宮川ダムについで1969年(昭和44年)に完成したのが二岐ダムです。
さらに翌1970年(昭和45年)の栃沢ダム完成により事業着手から19年の年月をかけた鶴沼川沿岸防災ダム事業が竣工に至りました。
2004年(平成16年)の新宮川ダムの完成により4ダムの一体運用を行うため4基のダムは福島県農林水産部が管理主体となり、受益組織である会津宮川土地改良区が操作を行っています。
二岐ダムは農地防災及び灌漑を目的とし、5月17日~6月20日の灌漑期には有効貯水容量82万7000立米すべてが灌漑用水容量となり196ヘクタールの水田に灌漑用水を供給します。
一方6月21日~10月の洪水期は有効貯水容量すべてが洪水調節容量となり、最大毎秒67.4立米の洪水をカットします。

二岐ダムには2016年(平成28年)5月に初訪、2024年(令和6年)4月に再訪しました。
再訪時は土地改良区職員様同行で普段立ち入りできないダム構内の取材見学が叶いました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
県道59号線を佐賀瀬川沿いに南下すると正面に二岐ダムが見えてきます。
堤高30メートル、堤頂長123メートル
左岸(向かって右手)に洪水吐を配し、再訪時は灌漑期直前ということもあり越流しています。
(2024年4月26日)

 
洪水吐斜水路をズームアップ
地山の傾斜に併せて途中で斜度が変わります。
減勢工には副ダムがあります。
(2024年4月26日)

 
県道の下流側
ちょっとわかりづらい写真ですが手前が洪水吐からの導流部、奥が斜樋からの放流口になります。
佐賀瀬川に放流された水は下流の佐賀瀬頭首工で取水されます。
(2024年4月26日)

 
右岸県道から見た下流面
手入れが行き届き、下流面はきれいに刈られています。
(2016年5月29日)

 
初訪時
天端入口には厳重なゲートがあり関係者以外立入りを禁じています。
(2016年5月29日)

 
再訪時
取材見学ということでゲートを開けていただきました。
(2024年4月26日)

 
上流面上段はコンクリートで護岸
初訪時は灌漑期半ばということもあり、水位がかなり下がっています。
(2016年5月29日)


右岸湖畔にある取水設備を兼ねた管理所
建屋の向こう側に斜樋があります。
残念ながら、今回こちらの見学はできませんでした。
(2024年4月26日)

 
ここから先は立入り禁止エリアでの写真となります。
天端から下流面。
(2024年4月26日)

 
左岸の横越流式洪水吐
斜面に沿って大きく湾曲しています。
(2024年4月26日)

 
総貯水容量は84万4000立米
(2024年4月26日)

 
至近から横越流式洪水吐
再訪時は灌漑期を控え満水
薄く越流しています。
(2024年4月26日)

 
洪水吐導流部
ここから2枚目写真の斜水路に続きます。
(2024年4月26日)

 
洪水吐脇の記念碑。
(2024年4月26日)

 
裏にはダムの諸元のほか、事業関係者の名前が刻されています。
(2024年4月26日)

こちらはダムの下流約2キロにある佐賀瀬頭首工
ゴム引布製起伏堰、いわゆるラバーダムとスライドゲートの組み合わせ
ここで取水された水は1182ヘクタールの農地の水源となります。
二岐ダムの灌漑容量はそのうちの一部にすぎず、水源はあくまでも佐賀瀬川となります。
(2016年5月29日)


ここから佐賀瀬幹線水路で受益農地に供給されます。
(2016年5月29日)


頭首工のプレート。
(2024年4月26日)


水利使用標識。
(2024年4月26日)


(付記)
今回はダムマイスターの取材という形で見学させていただきました。
宮川ダム、栃沢ダム、二岐ダムについては一般のダム見学の対応は行われていません。
この点、くれぐれもご了承ください。
 
0509 二岐ダム(0423)
福島県大沼郡会津美里町佐賀瀬川
阿賀野川水系佐賀瀬川
FA
30メートル
123メートル
844千㎥/827千㎥
福島県農林水産部
1969年
◎治水協定が締結されたダム

宮川ダム

2024-06-26 08:00:00 | 福島県
2016年5月29日 宮川ダム
2024年4月13日
     4月26日
 
宮川ダムは福島県大沼郡会津美里町宮川の一級河川阿賀野川水系宮川にある農地防災・灌漑目的の重力式コンクリート・フィルコンバインドダムです。
会津宮川地区は会津盆地南西部の会津美里町から会津坂下町に至る宮川流域に位置し、江戸期より本格的な新田開発が進められ寒暖差の大きな気候を生かし良質な米の産地として知られてきました。
しかし主要水源であり地域を貫流する宮川(旧名鶴沼川)は洪水による出水が多く、抜本的な洪水対策が求められてきました。
これを受け福島県は1950年(昭和25年)より宮川本流及び主要支流である佐賀瀬川・氷玉川上流部に3基の農地防災ダムを建設する『鶴沼川沿岸防災ダム事業』に着手します。
そして1962年(昭和37年)に3ダム中最初に竣工したのが宮川ダムです。
その後1969年(昭和44年)に二岐ダム、1970年(昭和45年)に栃沢ダムが完成、これにより事業着手から19年の年月をかけた鶴沼川沿岸防災ダム事業が竣工に至りました。
2004年(平成16年)の新宮川ダムの完成により4ダムの一体運用を行うため4基のダムは福島県農林水産部が管理主体となり、受益組織である会津宮川土地改良区が操作を行っています。
ダム建設にあたり左岸の堆砂機砂礫が深いことから、右岸は重力式コンクリート、左岸はコンクリート中央遮水壁型(コンクリートセンターコア型)アースフィルダムとするフィルコンバインドダムが採用されました。
宮川ダムは農地防災及び灌漑を目的とし、5月17日~6月20日の灌漑期には有効貯水容量148万9000立米すべてが灌漑用水容量となり550ヘクタールの水田に灌漑用水を供給します。
一方6月21日~10月の洪水期は有効貯水容量すべてが洪水調節容量となり、最大毎秒202立米の洪水をカットします。

宮川ダムには2016年(平成28年)5月に初訪、2024年(令和6年)4月13日に再訪しました。
さらに同26日には土地改良区職員様同行で普段立ち入りできないダム構内の取材見学が叶いました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
国道401号を宮川沿いに南下すると宮川にかかる胡桃橋で宮川ダムを真正面に見ることができます。
ここから見えるのは右岸の重力式コンクリート部。
完成当初はローラーゲート3門を装備していましたが、実際の運用でゲートを操作することがないためのちに自由越流頂に改修されました。
写真は再訪時のもので、灌漑期を控えてダム湖は満水。
上流の新宮川ダムの融雪放流に併せて当ダムもクレストから越流しています。
(2024年4月13日)

 
こちらは初訪時
すでに灌漑期に入っており水位が低下しクレストからの越流はありません。
減勢工右岸側(向かって左)の穴は仮排水路吐口です。
(2016年5月29日)

 
洪水吐をズームアップします。
当初ローラーゲートを装備していた名残でピアが残ります。
かつてはここにゲート巻き上げ機が設置されていました。
(2024年4月26日)

 
減勢工をズームアップ
上流側に大きな副ダムがありその直下にはバッフルブロックが並びます。
下流側の小さな副ダム左手の穴が斜樋からの放流口。
(2016年5月29日)
 
左岸から
手前がアースフィル、奥が重力式コンクリートのフィルコンバインドダムとなります。
(2024年4月13日)

 
左岸のフィルダム堤頂部
フィル部はコンクリート中央遮水壁型アースフィルダムです。
コンバインドのフィル部がコンクリートセンターコアアースというのは、全国でもここだけじゃないでしょうか?
(2024年4月26日)

 
左岸の管理事務所
職員の常駐はありません。
(2024年4月13日)


水利使用標識
灌漑容量が配分されるのは5月17日~6月20日の灌漑期のみ。
その後の洪水期は有効貯水容量すべてが洪水調節容量となるため、ダム湖は堆砂容量を除き空っぽになります。
(2024年4月13日)

 
上流面。
ここから見るとコンバインドダムだとよくわかります。
右奥は斜樋。
(2024年4月13日)

 
ここからは取材見学の際の関係者以外立入り禁止エリアでの写真となります。
この写真だけ見ると重力式コンクリートダムのようです。
(2024年4月26日)

 
重力式コンクリートとフィルの接続部
中央の穴は監査廊入口。
(2024年4月26日)

 
フィルダム下には石碑が2基
こちらは竣工記念碑。
(2024年4月26日)

 
隣にはダム建設に至る経緯や功労者が刻されていますが、こちらは摩耗が進み解読困難。
(2024年4月26日)

 
洪水吐上の管理橋から左岸の天端を俯瞰
重力式コンクリートダム部の天端は近年改修があり真っ白なコンクリート
フィルコンバインドダムでは常識ですが、万一の堤体越流に備えフィル部が一段高くなっています。
(2024年4月26日)


洪水吐の管理橋
かつてはここにゲート巻き上げ機が並んでいました。
鉄板部分は予備ゲート嵌め込み用の穴になります。
(2024年4月26日)

 
ダム湖は総貯水容量156万2000立米
ダム湖の彼方には新宮川ダムが遠望できます。
(2024年4月26日)

 
減勢工
上記のように手前には大きな副ダム、奥には小さな副ダムがあります。
(2024年4月26日)

 
右岸の斜樋
当初はゲートが3門でしたが、新宮川ダム完成によりゲート2門に改修されました。
(2024年4月26日)
 
 
斜樋建屋内
左が主ゲート、右手が副ゲート
2004年(平成16年)の新宮川ダム完成に合わせて置換されたゲートです。
(2024年4月26日)

 
1.4キロ上流の新宮川ダムから遠望。
(2024年4月26日)

(付記)
今回はダムマイスターの取材という形で見学させていただきました。
宮川ダム、栃沢ダム、二岐ダムについては一般のダム見学の対応は行われていません。
この点、くれぐれもご了承ください。
 
0504 宮川ダム(0425)
福島県大沼郡会津美里町宮川
阿賀野川水系宮川
FA
GF
42メートル
288メートル
1562千㎥/1489千㎥
福島県農林水産部
1962年
◎治水協定が締結されたダム

新宮川ダム ダム研見学会

2024-06-25 08:00:00 | ダム見学会
2024年4月26日 新宮川ダム『ダム研見学会』
 
福島県会津美里町にある新宮川ダムは、例年4月~5月の融雪期には18門のクレスト自由越流頂から融雪放流が行われ、その美しさ故に『東の白水堰堤』とも呼ばれ、ダム愛好家間では春の風物詩になっています。
しかし、ダム構内の立入りは制限されダムは左岸下流側とダム湖上流からの遠望に限られています。
一方、福島県 新宮川ダム管理所ホームページには事前予約でダムの見学が可能な旨が記されています。
昨年8月に日本ダム協会よりダムマイスターを拝命以降、フェイスブックの勉強会グループ『ダム研』メンバーを中心に平均月1回ペースで見学会を開催してきました。
2024年(令和6年)4月は、ゴールデンウィークに休みが取れない代休として4月25~26日に休暇を獲得し2泊3日で宮城・福島のダム歴訪を計画、その期間中、宮城の大倉ダム、福島の新宮川ダム大川ダムの3基のダムで職員様同行による見学会を実施することになりました。
さらに新宮川ダム見学に併せて、同ダムの受益組織である『会津宮川土地改良区』が操作を受託している鶴沼川防災ダムについてもダムマイスターによる取材という形で取材見学の許可を頂きました。
ここではまず福島県農林水産部が管理する新宮川ダム見学会について紹介したいと思います。
新宮川ダムの詳細については『新宮川ダム』の項を、鶴沼川防災ダムについては『宮川ダム』『二岐ダム』『栃沢ダム』の項をご覧ください。
 
2024年(令和6年)4月26日、見学会の開始は午前10時からですがその前にダム下へ。
例年ですとゴールデンウィーク前のこの時期に融雪放流が行われるのですが、今年の冬は記録的な少雪。
そのため融雪放流も前倒しとなり残念ながら放流はちょろちょろ。


国道401号線松坂第1トンネル内に新宮川ダムへの管理道路入口があります。
関係者以外立入り禁止の管理道路を進むと目の前にダム湖とダムの上流面が現れます。
灌漑期を控えダム湖は満水。


手前は表面取水設備、対岸の建屋は艇庫。


水利使用標識
会津宮川土地改良区管内4490ヘクタールの農地が受益地となります。
水稲向けが主となりメインの灌漑期は5月6日~9月10日ですが、畑地や果樹園地も受益対象のため、水利権は年間を通して配分されています。


管理事務所の玄関。


玄関わきの定礎。


まずは、ダムの操作室でダムの概要や運用方法について説明を受けます。
ここには福島県農林水産部の職員さんおよび会津宮川土地改良区の職員さんが常駐されます。


いよいよダムの見学開始
普段立ち入れない場所の見学はいつもドキドキです。


天端は4メートル幅。
堤頂長は323メートルに及びます。


左岸ダムサイトに石碑が2基
こちらは竣工記念碑。


裏には会津宮川農業水利事業の説明。


こちらにはダム湖である『会津美里湖』と刻されています。


新宮川ダムのキャラクターの『はかせくん』
『はかせ』は近接する博士山に由来します。
当初はクマタカという設定でしたが、実は博士山に生息するのはクマタカではなくイヌワシ。
ということで、のちにイヌワシという設定に変更されました。


いよいよ監査廊へ。
2004年(平成16年)の竣工から20年
内部のコンクリートは白くきれいな状態が保たれています。


左岸ダム下へ。
豪雪地帯ということで、積雪期用にシェルターつき通路が設けられています。


こちらは小水力発電所で最大出力は1100キロワット。
管理は会津美里土地改良区が行い施設管理用電力として利用され、余剰電力は東北電力に売電します。
中は見学できず。


発電所の水利使用標識。
最大取水量は2.6立米/秒、最大出力は1100キロワットですが、平時は1.8立米/秒を取水し約600キロワットの発電を行います。


発電所に隣接する放流設備内部
大口径および小口径の2門のジェットフローゲートを装備。
向かって左が主ゲート、右が副ゲートになります。


放流設備のプレート。


取水設備及び放流設備の図面。


向かって左手が小水力発電所。
右手は放流設備。
訪問時は発電所経由で放流されていました。


ダム直下の管理橋から
ここから融雪放流を見たかったなあ!!






底部監査廊を進みます。


排水ピット。


プラムライン。


三角堰漏水計。


揚圧計。


右岸の監査廊階段
新宮川ダムにはエレベーターはありません。


堤高69メートルの登り返しですが、すでにバテバテの方も…。


右岸から下流面。
農業用コンクリートダムとしては珍しく堤頂部を自由越流頂が占めます。


上流面。


艇庫の内部
豪雪地帯らしく巡視艇だけじゃなく除雪機やスノーモービルも格納されています。


天端から見た艇庫。


天端からダム下を見下ろす。


左手は先ほど見学した管理用発電所と放流設備。


天端から1.4キロ下流の宮川ダムを遠望
1962年(昭和37年)竣工の農地防災ダムです。

 
ダム湖は会津美里湖で総貯水容量1032万立米
本州の農業用ダムとしては屈指のスケールを誇ります。


堤頂部にあるプラムライン。


最後に取水設備へ
農業用ダムですから表面取水となります。


これにて約1時間45分の新宮川ダムの見学は終了。
基本的に見たいところはすべて見せて頂ける充実した内容となりました。
上記のようにこの冬は記録的な少雪のため、融雪量が少なく灌漑期に向けた貯留など関係者一同大変なご苦労をされています。
ご多忙の中、丁寧な対応をしていただきました福島県及び会津宮川土地改良区の皆様には厚く御礼申し上げるとともに、今年一年大きな災害なく安定した灌漑用水の補給ができますことを心より祈念申し上げます。

この後は宮川ダム二岐ダム栃沢ダムのいわゆる鶴沼川防災ダム群の取材見学となりますが、それはまた別項で。

新宮川ダム

2024-06-13 08:00:00 | 福島県
2016年5月29日 新宮川ダム
2024年4月13日
     4月26日
 
新宮川ダムは福島県大沼郡会津美里町松坂の一級河川阿賀野川水系宮川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
会津宮川地区は会津盆地南西部の会津美里町から会津坂下町に至る宮川流域に位置し、江戸期より本格的な新田開発が進められ寒暖差の大きな気候を生かし良質な米の産地として知られてきました。
しかし主要水源となる宮川は灌漑期の渇水が多くその他の小河川や溜池も水源としては不安定で、安定した水源確保や灌漑施設の整備は地域農家の悲願となっていました。
1980年(昭和55年)に農林水産省による国営会津宮川農業水利事業が着手され、灌漑排水設備の整備や圃場整備が進められました。
そしてその灌漑用水源として2004年(平成16年)に竣工したのが新宮川ダムで、事業全体も同年完了し、約4500ヘクタールに及ぶ当地区の農業水利事情は大きく改善しました。
また事業に併せて営農面でも改革が進み、特に直播水稲栽培の導入による生産の効率化は顕著で稲作のほか畜産・畑作・果樹栽培など大規模かつ多角的な農業経営が実現しています。
宮川流域には新宮川ダムのほか鶴沼川防災ダムと呼ばれる3基の農地防災ダムがあり、一体した運用を行うため4基のダムは福島県農林水産部が管理主体となり、受益組織である会津宮川土地改良区が操作を行っています。

新宮川ダム建設に際しては農林水産省のダム事業としては初めてRCD工法が採用されたほか、プレキャスト監査廊や利水放流を利用した小水力発電所の併設など新技術が積極的に導入され、その後の農業ダム建設に大きな影響を与えました。
一方、例年4月~5月の融雪期には18門のクレスト自由越流頂から融雪放流が行われ、その美しさ故に『東の白水堰堤』とも呼ばれ、ダム愛好家間では春の風物詩になっています。
新宮川ダムには2016年(平成28年)5月に初訪、2024年(令和6年)4月には融雪放流とダム見学会に合わせて2度、計3度訪問しています。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
2024年4月26日のダム見学会の詳細については『新宮川ダム ダム研見学会』の項をご覧ください。

2024年(令和6年)は記録的な少雪のため例年よりも早く貯留を開始し、融雪放流も前倒しとなりました。
訪問時の放流量は毎秒5立米程度、例年に比べれば水量は少なめですがほぼ全門で越流が見られました。
(2024年4月13日)

 
美しい転波列が示現。
(2024年4月13日)


こちらは初訪時。
すでに灌漑期に入り越流はありません。
堤高69メートル、堤頂長323メートルの堤体にクレスト自由越流頂が18門並びます。
農業用ダムでこれほどの数の自由越流頂が並ぶダムはほかにはありません。
(2016年5月29日)

 
ここから先は2024年(令和6年)の見学会の際の写真で、普段は立入り禁止箇所での写真となります。
左岸から
農業用ダムでは珍しい堤趾導流壁を装備。
(2024年4月26日)

 
天端は幅4メートル。
(2024年4月26日)


上流面
四角い建屋は表面取水設備で右奥は艇庫。
(2024年4月26日)

 
艇庫をズームアップ
巡視艇のほか、豪雪地帯ということで除雪機やスノーモービルも格納されています。
(2024年4月26日)


左岸ダムサイトの記念碑
ちょっと見づらい写真になりました。
(2024年4月26日)


隣には会津美里湖の石碑。
(2024年4月26日)

 
水利使用標識
会津宮川土地改良区管内4490ヘクタールの農地が受益地となります。
水稲向けが主となりメインの灌漑期は5月6日~9月10日ですが、畑地や果樹園地も受益対象のため、水利権は年間を通して配分されています。
(2024年4月26日)


監査廊を下りてダム下へ
豪雪地帯のため、積雪期用として堤趾導流壁に沿ってシェルターつき通路が設けられています。
(2024年4月26日)

 
向かって左手が小水力発電所で最大出力は1100キロワット。
管理は会津美里土地改良区が行い施設管理用電力として利用され、余剰電力は東北電力に売電します。
右手は放流設備。
(2024年4月26日)

小水力発電所の水利使用標識
最大取水量は2.6立米/秒、最大出力は1100キロワットですが、平時は1.8立米/秒を取水し約600キロワットの発電を行います。
(2024年4月26日)


ダム直下から
残念ながら見学会の際の放流はわずか。
間近で美しい転波列を見たかった!
(2024年4月26日)


右岸から
堤頂長が323メートルに及ぶため、超広角じゃないとフレームに収まりません。
(2024年4月26日)


上流面
5月10日からの本格的な灌漑放流に備え満水。

 
天端から減勢工を見下ろす
減勢工には副ダム、左手は小水力発電所と放流設備
放流された水は下流の頭首工で取水され幹線水路を通じて受益農地に送られます。
(2024年4月26日)


天端から1.4キロ下流の宮川ダムを遠望
1962年(昭和37年)竣工の農地防災ダムです。
(2024年4月26日)

 
こちらは宮川ダムから見た新宮川ダム。
(2024年4月26日)


ダム湖は会津美里湖で総貯水容量1032万立米と本州の農業用ダムとしては屈指のスケールを誇ります。
(2024年4月26日)

新宮川ダムの構内は関係者以外立入り禁止となっており、一般にはダム下左岸側とダム湖上流から遠望するのみです。
しかし平日限定・事前予約で職員様同行による見学が可能です。
詳細は下記リンクをご覧ください。
 
(追記)
新宮川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0531 新宮川ダム(0426)
福島県大沼郡会津美里町松坂
阿賀野川水系宮川
69メートル
323メートル
10320千㎥/9300千㎥
福島県農林水産部
2004年
◎治水協定が締結されたダム

大倉ダム ダム研見学会

2024-06-12 08:00:00 | ダム見学会
2024年4月25日 大倉ダム『ダム研見学会』
 
昨年8月に日本ダム協会よりダムマイスターを拝命以降、フェイスブックの勉強会グループ『ダム研』メンバーを中心に平均月1回ペースで見学会を開催してきました。
ゴールデンウィークに休みが取れない代休として4月25~27日に2泊3日で宮城・福島のダム歴訪を計画し、その中で宮城の大倉ダム、福島の新宮川ダム大川ダムの3基のダムで職員様同行による見学が叶いました。
ここではまず宮城県土木が管理する大倉ダム見学の詳細を紹介したいと思います。
参加者は我が家夫婦とダム研メンバーのYさん、Kさんのほかツイッターで知己を得た東北在住のダム愛好家お二人を加えた計6人です。
大倉ダムについての詳細は『大倉ダム』の項をご覧ください。
 
2024年(令和6年)4月25日、午前中に鳴子ダムのすだれ放流を見た後約束の午後1時前に大倉ダム右岸ダムサイトにある管理事務所前に集合。
 

今回ダムを案内、解説していただくのは大倉ダム管理事務所の技術次長様、技術主幹のお二人です。
管理事務所内で簡単なレクチャーを受けた後見学開始。
まずはダム操作室。






操作盤はパソコンを使った最新のものに置換されていますが、古いダムコンも残っています。


管理事務所内に掲示された完成直後の写真
当時は中央のスラストブロック(人工アバット)上に管理事務所がありました。


建設中の貴重な写真も残っています。




ダムの上流には名刹『定義如来 西方寺』があります。
こちらは大正期の観光絵図でダム地点は西方寺参詣途中の風光明媚な渓谷だったようです。


机の上には配布予定の大量のダムカード。


管理事務所からダムの天端へ移動します。
ダム右岸の大倉ダムバス停。赤が鮮やか。


上流面
こちらは右岸側の非越流アーチ堤体。


同じく右岸側のアーチ堤体下流面。
右奥がスラストブロック


アーチ堤体とスラストブロックの間にはくびれがあります。
スラストブロックは堤体を面というよりは点で支えている感じ。


左岸側のアーチ堤体下流面。

クレストはローラーゲート4門でゲートピアは鉄骨製。


減勢工。
手前には非常用放流バルブ、奥には左岸農業用取水管があります。


非常用放流バルブをズームアップ
大倉ダムでは利水放流や水位低下放流は発電所経由で行われますが、発電所の点検や改修際にこのバルブが使用されます。


天端は県道55号線
交通量の多い土日祝日は時計回りの一方通行となります。


ダム建設地点周辺は全幅200メートル程度の渓谷ですが、左岸側が深く浸食され大倉川の流路になり右岸側は河岸段丘となっています。
下流にアーチ型の副ダムがあり、右手段丘上はダム下公園です。


左岸から見たスラストブロック
アーチ堤体との接続点にくびれがあるのが分かります。


ゲートピア横には艇庫があります。
格納された巡視艇。


超広角で左岸アーチ堤体下流面。


24ミリで。


先述の非常用放流バルブ。


こちらは左岸農業用水取水管
広瀬川沿岸の仙台市大倉川土地改良区に専用水路で灌漑用水を供給します。


左岸農業用水の水利使用標識。


東北電力大倉発電所の取水口
昭和30年代ということで大掛かりな取水設備になっています。
主要な利水のほか、水位低下放流などもここを経由して行われます。


発電所の水利使用標識。


アーチ堤体と接続する県道55号線の橋梁
地震等の際に堤体に圧力がかかるのを防ぐため、ダム側は橋台に乗っているだけ。


車でダム下に移動します。
ダムの下流400メートル地点にある東北電力大倉発電所
もともと当地には水路式の旧大倉発電所がありましたがダム建設で水没するため新たな発電所に置換されました。
最大出力は5200キロワットでダムに発電容量はなく利水従属発電となります。
この発電所からの放流水が下流で灌漑・上水・工水として利用されます。


左右二つのアーチ堤体を支えるスラストブロック。


洪水吐を備えた左岸側のアーチ堤体。
手前にはダムカード風の写真フレーム。


ダム手前にはフェンスがあり一般の見学はここまで。


フレーム越しに。


ゲートをズームアップ。
例年ゴールデンウィーク前のこの時期は融雪放流が見られるのですが・・・・
今年は記録的な少雪の影響で放流はなし。


もう少しダムに接近して見たかったのですが、見学はここまで。
最後に記念写真。


見学会といってもといっても見学コースは一般の見学とほぼ変わりません。
でも常時職員様随行ということで逐次解説を聞きながらの見学は内容が濃く、参加者一同全国でたった一つしかないダブルアーチを堪能しました。
翌日は福島県の新宮川ダムと大川ダム見学のダブルヘッダーに加えて、鶴沼川防災ダム群取材見学という過密日程です。

大倉ダム

2024-06-11 08:00:00 | 宮城県
2016年4月 9日 大倉ダム
2024年4月25日
 
大倉ダムは宮城県仙台市青葉区大倉の名取川水系広瀬川左支流大倉川にある宮城県土木部が管理する多目的マルティプルアーチ式コンクリートダムです。
仙塩地区への工業用水・仙台平野への灌漑用水を目的とした名取川水系での河川総合開発計画は戦前より進められていましたが戦況の悪化により着手には至りませんでした。
戦後の復興を受けた水需要の増加や仙台市街を貫流する広瀬川の治水を目的として建設省により「大倉川総合開発事業」が採択され広瀬川左支流大倉川に1961年(昭和36年)に建設されたのが大倉ダムです。
大倉ダムは建設省の事業で建設された特定多目的ダムで、完成後に宮城県に移管されました。同様に建設省の直轄事業で建設され完成後に地方自治体に移管されたダムとしては京都府の大野ダムや秋田県の皆瀬ダムなどがあります。
大倉ダムは広瀬川および名取川の洪水調節(7月1日~9月30日の洪水期に最大800/秒の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定利水への補給、流域農地への灌漑用水の供給、仙台市及び塩釜市への上水道用水の供給、仙塩工業地帯への工業用水の供給、東北電力大倉発電所での最大出力5200キロワットのダム水路式発電をダムの目的としています。
 
大倉ダム建設地点は非常に安定した地盤でアーチダム建設に適しています。
しかし全幅200メートル近い谷を一つのアーチダムで結ぶよりも、中央にスラストブロック(人工アバット)を設置して2つのアーチダムを並立させるほうが経済的に優位ということでダブルアーチが採用されました。
ダブルアーチ式コンクリートダムとしては日本で唯一、ダムの型式であるマルティプルアーチとしても香川県の豊稔池ダムとともに2基しかない希少な型式のダムです。
構造令の改正により現在の日本ではマルティプルアーチダムを作ることはできないため、文字通り唯一無二の存在です。
そういった点を評価され2023年(令和5年)に土木学会選奨土木遺産に選定されるとともに日本ダム協会により日本100ダムに選ばれています。
大倉ダムには2016年(平成28年)4月に初訪、2024年(令和6年)4月に再訪しましました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載してあります。
再訪時は職員様同行でダム見学を行いました。そちらの詳細は『大倉ダム ダム研見学会』の項をご覧ください。

まずはダム下へ
公園として整備され、桜の時期には融雪放流と花見をセットで愛でることができます。
一方で、ダブルアーチをを一望するにはスペースがなくその姿を写真で伝えることができないのが残念。
中央のスラストブロックを挟んで二つのアーチダムが並びます。
(2016年4月9日)

 
こちらは洪水吐のある左岸のアーチ堤体。
クレストにローラーゲート4門を装備。
(2024年4月25日)

 
ゲートをズームアップ。
例年ゴールデンウィークを挟んだ時期に融雪放流を行いますが、再訪時は歴史的な少雪だった影響もあり放流はなし。
(2024年4月25日)

 
こちらは非越流の右岸側アーチ堤体。
(2016年4月9日)

 
ダムの下流400メートル地点にある東北電力大倉発電所
もともと当地には水路式の旧大倉発電所がありましたがダム建設で水没するため新たな発電所に置換されました。
最大出力は5200キロワットでダムに発電容量はなく利水従属発電となります。
この発電所からの放流水が下流で灌漑・上水・工水として利用されます。
(2024年4月25日)

 
管理事務所内にある完成当時の写真
こういうアングルで見れる場所があればいいんですけどね?
当時はスラストブロックの上に管理事務所がありました。
トイレの排水はどうしてたんだろう?
(2024年4月25日)

 
右岸ダムサイトの大倉ダムバス停。
(2024年4月25日)

 
下流面
こちらは非越流の右岸アーチ堤体。
(2024年4月25日)

 
こちらはゲートのある左岸アーチ堤体。
(2024年4月25日)

 
減勢工
ダム建設地点周辺は全幅200メートル程度の渓谷ですが、左岸側が深く浸食され大倉川の流路になり右岸側は河岸段丘となっています。
ちょっとわかりづらいですが下流にアーチ型の副ダムがあり、段丘上はダム下公園です。
(2024年4月25日)

 
ダム湖の大倉湖は総貯水容量2800万立米
ダム湖越しに日本200名山の船形連峰が一望できます。
ダム建設以前は川沿いに盆地が開け農地が広がっていました。
大倉ダムはその下流の狭窄部に建設されており、ダム建設地としては理想的な立地です。
(2016年4月9日)

 
天端は県道55号となっており車の通行ができます。
ダム上流には『定義如来 西方寺』があり交通量の多い土日祝日は時計回りの一方通行となります。
ゲートピアは鉄骨トラス製
ピアの手前には艇庫と灌漑用取水設備があります。
(2016年4月9日)


左岸から。
(2024年4月25日)

 
こちらは非常用放流バルブ
大倉ダムでは利水放流や水位低下放流は発電所経由で行われますが、発電所の点検や改修際にこのバルブが使用されます。
(2024年4月25日)

 
こちらは左岸農業用水取水管
広瀬川沿岸の仙台市大倉川土地改良区に専用水路で灌漑用水を供給します。
(2024年4月25日)

 
左岸農業用水の水利使用標識。
(2024年4月25日)

 
こちらは東北電力大倉発電所の取水口
昭和30年代ということで大掛かりな取水設備になっています。
主要な利水のほか、水位低下放流などもここを経由して行われます。
(2024年4月25日)

 
発電用の水利使用標識。
(2024年4月25日)

 
上流面
左が左岸農業用水の取水設備、その右手が艇庫。
(2016年4月9日)

 
上流から遠望。
(2016年4月9日)

 
日本で唯一のダブルアーチということで、見どころ満載。
ただ、やはり高所から堤体を俯瞰できる場所があれば!というのが偽らざる本音。
 
(追記)
大倉ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0292 大倉ダム(0298)
宮城県仙台市青葉区大倉
名取川水系大倉川
FNAWIP
MA
82メートル
323メートル
28000千㎥/25000千㎥
宮城県土木部
1961年
◎治水協定が締結されたダム

鳴子ダムすだれ放流

2024-06-10 08:00:00 | 試験湛水・放流イベント
2024年 4月25日 鳴子ダムすだれ放流

宮城県大崎市の
鳴子ダムでは、運用開始以来集水域の融雪で水位が上昇するゴールデンウィークの期間中に8門のクレスト自由越流頂から水を越流させる『すだれ放流』を実施し、春の風物詩として人気イベントとなっています。
すだれ放流には2016年(平成28年)と2024年(令和6年)の2度訪問しました。
ここではすだれ放流の写真を紹介したいと思います。
まずは2016年5月4日の初回訪問時
前夜にまとまった雨が降り水位が上昇、越流量が増えた中での訪問となりました。


当時はすだれ放流に併せてダム前面に鯉のぼりが張られていました。






越流した水が減勢工に収束するさまも美しい。


高速シャッターで切り取ると転波列も見えます。


未明の前線通過の影響で天端は強風が吹き、鯉のぼりもはち切れそう。
長閑に泳ぐというよりは激流を必死に遡上しているようです。


お天気も晴れたり曇ったりの繰り返し。








天端から国道に上がると日差しが戻ってきました。




国道わきの鳴子ダムの看板とともに。


ここからは2024年(令和6年)4月25日の再訪時の写真となります。
2022年(令和4年)のライトアップイベントでは予想以上の来場者により周辺の道路では大渋滞が発生、社会生活や鳴子温泉・鬼首温泉といった観光に大きな影響を与えました。
以来、すだれ放流はそれまでのゴールデンウィーク期間中からゴールデンウィーク前の平日開催となりました。
人気のイベントですが、やりすぎるとオーバーツーリズムの弊害もあるという好例です。


2024年は平日3日間の開催。
初日、二日目は悪天候に祟られましたが三日目は一転して好天、絶好の放流日和。


日が差し込むと虹も現れます。


導流部でも転波列が現れます。


前回はなかったダムカード風写真フレーム。








前日までの雨で水位が上昇したため、すだれ放流に加えコンジットバルブからも放流されています。




華麗な越流と激しいバルブ放流、そして虹のテルツェット。


国道から俯瞰。




時間とともに来場者も増えてきました。


やはりすだれ放流は好天の下が美しい。
ダム愛好家の中ではライトアップ放流の再開を求める声も大きいいですが、この手のイベントは地元との協調あってのもの。
そもそも日中の放流でも十分すばらしい。

鳴子ダム

2024-06-07 08:00:00 | 宮城県
2016年4月 2日 鳴子ダム
     5月 4日
2024年4月25日
 
鳴子ダムは宮城県大崎市鳴子温泉の北上川水系江合川にある国土交通省東北地方整備局が管理する多目的のアーチ式コンクリートダムです。
東北地方では1947年(昭和22年)のカスリーン台風をはじめ毎年のように甚大な水害が発生する一方、戦後の食糧難や復興の遅れなど諸課題が山積していました。
これを受け、1950年(昭和25年)に成立した『国土総合開発法』に依り北上川流域での治水・灌漑・発電を目的とした北上特定地域総合開発計画(KVAが着手します。
これに併せて北上川の主要支流である江合川でも建設省(現国土交通省)直轄事業による多目的ダム建設が着手され1958年(昭和33年)に竣工したのが鳴子ダムです。
鳴子ダムは特定多目的ダム法に基づいて建設され、江合川の洪水調節(最大700立米/秒の洪水カット)、江合川流域9000ヘクタールへの新規灌漑用水の供給、東北電力鳴子発電所での最大1万8700キロワットのダム水路式発電を目的としています。
鳴子ダムは国内3例目のアーチ式コンクリートダムとして建設されましたが、それまで2例はいずれも米国をはじめとした海外からの援助や技術指導の下で建設されました。
鳴子ダムは日本人技術者のみで建設した初のアーチダムとして高く評価され日本ダム協会により日本100ダムに選ばれているほか、2016年(平成28年)には土木学会選奨土木遺産に選定されました。
 
鳴子ダムには2016年4月2日に初訪しましたが、この時は天端が開放されておらず同年5月4日の『すだれ放流』イベントに合わせて再訪しました。
さらに、2024年(令和6年)の『すだれ放流』の際に8年ぶりに訪問しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
またすだれ放流の詳細については『鳴子ダムすだれ放流』の項をご覧ください。

国道108号線沿いのダムの下流350メートルほどに駐車場があります。
駐車場から左岸の管理道路を進むと正面に鳴子ダムが姿を現します。
(2024年4月25日)


2016年(平成28年)に土木学会選奨土木遺産に選定されました。
こちらはそのプレート。
(2024年4月25日)

 
ダムサイトには交換されたハウエルバンガーバルブが展示されています。
(2016年5月4日)

 
さらに進むと、鳴子ダムの全容が姿を見せます。
2024年(令和6年)のすだれ放流はゴールデンウィーク前の平日三日間の開催です。初日、二日目はあいにくのお天気でしたが、訪問した三日目は絶好のお天気。
ダム下には虹がかかっています。
(2024年4月25日)

 
クレストには非常用洪水吐となる自由越流頂が8門
最大放流能力は998立米/秒
(2024年4月25日)
 
 
未明にまとまった雨が降り水位が上昇したため、クレストからのすだれ放流のほか低水放流設備であるコンジットバルブからも放流しています。
コンジットバルブはハウエルバンガーバルブで最大放流量は18.4立米/秒。
(2024年4月25日)

 
アングルを変えて
減勢工には円形のデフレクターがあり、越流した水を左岸側に寄せます。
(2024年4月25日)

 
こちらはバルブ放流のない2016年(平成28年)のすだれ放流の写真。
(2016年5月4日)


同じアングルで2024年(令和6年)の写真。
日差しが入ると美しい。
(2024年4月25日)


右岸から
写真右手の縦長の構造物はインクラインで定員は4人、最大斜度は60度もあるそうです。
一度乗ってみたい。
(2016年5月4日)

 
かつてはすだれ放流に合わせて鯉のぼりが張られていました。
奥の白い建物が管理所。
(2016年5月4日)

 
こちらが常用洪水吐となるトンネル洪水吐で最大放流量は750立米/秒。
堤体が薄いため堤体に常用洪水吐を作ることができず、結果として日本初のトンネル洪水吐が採用されました。
現在の洪水吐ゲートは2002年(平成14年)の施設改良事業で改修されたもので、新たに予備ゲートが創設されています。
(2016年5月4日)


ダム左岸高所の国道から俯瞰。
こちらは放流のない初回訪問時の写真。
(2016年4月2日)

 
こちらは2024年(令和6年)の写真。
(2024年4月25日)

ダム湖の総貯水容量は5000万立米、有効貯水容量3500万立米
近年の多目的ダムに比べて堆砂容量が多く配分されています。
右奥に見えるのが東北電力鳴子発電所の取水口。
ダム湖に発電容量の配分はなく利水従属発電となります。
(2016年4月2日)

 
上流面
左手の建屋はトンネル洪水吐ゲート。
(2016年4月2日)


自由越流頂とトンネル洪水吐ゲートの間に小さなゲートが二つあります。
右手はコンジットバルブの取水ゲートで予備ゲートが見えます。
左手は坂見堰取水塔でダムから発電所放流口までの農地への灌漑用取水工です。
(2016年4月2日)
 
 
東北電力鳴子発電所
最大出力1万8700キロワット
ダムに発電容量の配分はなく利水従属発電となります。
 
(追記)
鳴子ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0290 鳴子ダム(0289)
宮城県大崎市鳴子温泉
北上川水系江合川
FAP
94.5メートル
215メートル
50000千㎥/35000千㎥
国土交通省東北地方整備局
1958年
◎治水協定が締結されたダム